満足度★★★★★
鑑賞日2018/02/10 (土) 14:00
月船さららと結城座の出会いは、奇跡的だと思う。
でなければ、「ゴーレム」のような伝奇物は具現化できなかったろうし、ましてやこの作品のように泉鏡花の世界を見事に立ち上げることはありえなかったろうから。
「天願版・カリガリ博士」のチケットを購入した時、あとで気付いたのだけれど人形劇だと判り、しまった、と思った。まあ、購入したのだから仕方ないか、と足を運んだのだけれども、この失敗(と当時は思った)がその後の観劇に対する視野を凄く広げてくれた気がする。
どうも人形劇は、苦手だ。文楽も何度か見たけれど、好きな浄瑠璃演目でも、数人がかりで所作を操るのはせわしない。操り人形他でも同様で、上から動かそうが下から動かそうが、動かしている人間の所作が気になってしょうがない。
しかし、「天願版・カリガリ博士」しかり、「ゴーレム」しかり、この「衣衣」しかり、人間と人形とが一緒に演じることで、幽界と現実との狭間を見事に取り払い、観客にその世界を自由に行き来させてくれる。そこには生があり、生を与えられた虚が共存する。その玄たる世界観が見事。
月船さららさんの表現したい世界を「二輪草」に観たとき、その後に「ゴーレム」を観ていかにもと膝を叩いた次第。
「天眼版・カリガリ博士」で、後藤仁美氏のデビューに立ち会った至福を反芻しながらMetroという月船さらら表現の場に潜り込めた幸運に浸りながら、この「衣衣」にて泉鏡花の幽玄美を堪能させてもらったことに感謝。