うつろな重力
シアターノーチラス
RAFT(東京都)
2017/03/15 (水) ~ 2017/03/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
人の不幸をビビるくらいの至近距離で存分に堪能しました。
小さな劇場なので限られた人数しか体感する事ができない贅沢な空間。
後味が決して良いわけではないが、それを遥かに凌ぐ舞台の面白さに満足感が漲ります。
まとわりつく不遇を振り払う事すら疲れ切った様子の姉。
幸福オーラバリバリで姉を見下した感じが意地悪気な妹。
憎悪と絆と虚栄が複雑にブレンドされた感情関係が絶妙でした。
姉妹を取り巻く人物もそれぞれにスパイシーで、静かにそして確実に壊れていく姉の姿に説得力を持たせます。
気をつけないと誰もが陥ってしまうかもしれない悪意の罠。
「人間関係ホラー」という新たなジャンルを発見した気分です。
快楽の谷
劇団 背傳館
王子小劇場(東京都)
2017/03/08 (水) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★
大学時代なぜかアニメ研の部室に入る機会があり、何とか話を合わせようと当時のある人気アニメを面白いと発言した途端、猛然と抗議され、あちこちで論議が勃発し始めたので、這う這うの体で退出した記憶が蘇りました。
どうやらアニメ界の腐敗に加担した作品を褒めてしまった様です。
「しっ知らんがなっ!」
本作はこの時の、別の空間を生きているようにも感じてしまった人達を彷彿させ、興味深かったです。
エロゲー制作事務所の、とある時間をそのまま切り取った形での進行で、説明的な台詞は特にない為、何とかその日常風景から内情を探り出そうと集中力が高まります。
エロゲ―新作がヒットしたのに、誰もさほど盛り上がることもなく、事件が起こっても不思議な収拾力をみせますが・・・
共感性ゼロ、心情不明・・・識別不可能ッ レーダーマ~ン♪(古く且つマニアックですいませんがピッタリきた曲)
只々リアルなひとつの世界を目の当たりにした残像が後に漂います。
1名だけでも普通?な登場人物を投入してもらえれば良きナビゲーターになってよかったかも。
肝っ玉おっ母とその子供たち
東京演劇集団風
レパートリーシアターKAZE(東京都)
2017/03/10 (金) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★
年月をかけ良く手入れのされた、いぶし銀のような作品でした。
予測不能のリスクを意識しながらも戦争の機に乗じて商いに奮闘する肝っ玉おっ母。
戦争を恐れ憎んでいるのか、それとも商売上歓迎しているのか、矛盾した人間臭さとパワフルさにはぐうの音も出ないが、どうにもその生き方は観ていて危なっかしい。
案の定、子供が次々と死んでいくじゃないか!
家無しの母1人子3人にとって、その当時どういう生き方が正しかったのか皆目見当もつかないが・・・。
母親の一面を見せながらも、したたかに生きていこうとする中年女の幌車を引く姿が目に焼き付いて離れない。
そして怒り、悲しみを焼き尽くしたような目力も。
第19回公演『隣人』
劇団天然ポリエステル
OFF OFFシアター(東京都)
2017/03/08 (水) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★
シリーズ第5回公演からの途中参加ながら「寂し部」のキャラクターはしっかり脳にインプットされていました。
「寂し部」のお馴染みの面々&公演ごとの客演、のスタイルは抜群の安定感。
さらに「寂し部」に新スタッフ陣も加わったようで今後も楽しみです。
第4回公演をDVDでゲットしたので、シリーズの半分はコンプリートできてヨカッタ。
このシリーズ第4回公演「稀人」は今月12日(あと3日!)までノーカット版でYouTube動画にて配信されているそうです。
エリちゃんの呪い
法政大学Ⅰ部演劇研究会
法政大学市ヶ谷キャンパス 外濠校舎 多目的室1番(東京都)
2017/03/04 (土) ~ 2017/03/07 (火)公演終了
満足度★★★★
渋谷辺りでの上演が最も効果的だと思われる作品。
ピンクの汚部屋が印象的。
「美」に固執した生き方を選んでしまったエリカ。
外見美を存在意義と思い込んでしまっている。そして覚せい剤の罠。
心の闇と薬の恐ろしさを説教臭く無くポップに描いているところが、若者から若者に向けてのメッセージらしくて好感。
社会的意義のある公演だからだろうか、しっかりしている。
そう、ポップでカラフルなのにとてもしっかりしている。
悪女たちのララバイ
劇団クロックガールズ
新宿シアターモリエール(東京都)
2017/03/02 (木) ~ 2017/03/06 (月)公演終了
満足度★★★★
怪女5人による遺産相続バトルって面白く無いわけがない。
最後のオチは途中で分かってしまったが、それでもしみじみとした余韻が残ります。
中村中さんが、ちゃっかり笑いをとる演技をされていたのは意外でした。
大東京ダダダ’ダンシングスターダストDX
創像工房 in front of.
慶應義塾大学日吉キャンパス塾生会館(神奈川県)
2017/03/03 (金) ~ 2017/03/05 (日)公演終了
満足度★★★★
冒頭の掴みからの怒涛の場面転換の数々。
役者さんの振り切った演技、何気に凝った衣装、美術。
舞台を大いに盛り上げる照明、音響。
どれをとっても素晴らしかったがストーリーが読み古した漫画の様でもどかしい。
ワンシーン、ワンシーンの観せ方、やり取りは絶妙なのに全体のストーリーがもどかしい。
もどかしいと言いながらも、この中から間違いなく日本のエンターテインメントを牽引する人材が輩出されるであろう事を確信させる力強い公演でした。
get cranky
劇団スクランブル
シアター711(東京都)
2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了
満足度★★★★
ナイナイのお見合い大作戦というバラエティー番組は、参加者の中でも注目されるのは主に人気のある男女、もしくはキャラの濃い人物である。
今回の作品は、逆にその他大勢にあたる人達が繰り広げる恋愛バトルにスポットをあてた感じと言えばいいのだろうか。
TV番組的にはあまり旨味のない人達かもしれないが、本作はそういう「そこそこで普通」な人達のドラマチック未満なドラマをうまーく描写しており、ちゃんと見せ場やクライマックスも用意されている。
限りなく身近に感じる恋愛モノと言えるかもしれない。
超美形やブサイクが登場しないラブストーリーは劇的なうねりこそ発生しないが、大いなる親近感をもって笑わせてくれる。
劇団モットーである「最高の暇つぶし」のニュアンスが分かった様な気がしました。
「緑のオウム亭ー1幕のグロテスク劇ー」
雷ストレンジャーズ
小劇場B1(東京都)
2017/03/01 (水) ~ 2017/03/05 (日)公演終了
満足度★★★★★
外は革命直前の物々しい状況。にもかかわらずエンタメボケした貴族達が「犯罪人ごっこ」に現を抜かし、挙句の果てに右往左往するであろう姿を苦々しく楽しむ予定の観劇でした。
ところが実際には、どれが本当の犯罪でどれが即興芝居なのか区別がつかなくなり頭が混乱してくる中、これはちょっとヤバいだろうという状況になった時、なんと自分自身も一人の貴族と気持ちがリンクしてしまい「こんな面白い場面、めったに観られるものじゃないっ!もっともっと刺激をカモーン!」と欲求心に火がついてしまっていました。
これじゃエンタメ亡者じゃん!ガーン
もちろん劇中劇だと分かったうえでの感情ではあるが自分にもこんな野次馬根性みたいなモノが潜んでいたとは。
我ながら滑稽であるが、ちょっとショックでした。
演出の術中にはまったという事なのでしょうが。
観客席は小劇場B1ではお馴染みの舞台から見て正面と左手の2方向。それに加えて右手にも一列だけ設けられています。
舞台デザインからしてどの席から観ても面白そうで、どこに座るか非常に悩ましいところ。
全体をまんべんなく楽しむなら当然中段~後方になりますが、劇中の混沌に巻き込まれるなら(舞台からみて)右手一列と貴族席近辺がお薦めです。
なんだか劇中の演出のひとつとして活用されている気がしますが、それを含め普段の観劇では中々無いアングルを楽しめます。
悦楽乱歩遊戯
虚飾集団廻天百眼
ザムザ阿佐谷(東京都)
2017/02/26 (日) ~ 2017/03/05 (日)公演終了
満足度★★★★
美輪明宏版とは違った「黒蜥蜴」はいかほどのモノか期待しての観劇。
原作を劇団カラーにどっぷりと染め上げたエログロ、アブノーマル感たっぷりのアングラワールドは江戸川乱歩作品の懐の深さも同時に実感でき、とても良かったです。
脳裏に焼き付く総合美術、コアなファンがついているのも納得できます。
ただ開演前に役者さん達が、景気よく物販活動されるのはちょっと・・・
頭の切り替えがうまく出来ず、すぐに劇中に入り込めなかったのが惜しかった。
しかし公演後では舞台も役者もグッチャグチャで難アリだし、ファン恒例のお楽しみかもしれないので慣れればいいのか。
妖しい感じで売るっていうのはどう?
トラブルショー
ミュージカル座
光が丘IMAホール(東京都)
2017/02/23 (木) ~ 2017/02/27 (月)公演終了
満足度★★★★
さすが鉄板シチュエーションのコメディーミュージカル。
綿密に考え抜かれた構成は一切創り手に任せて、観る側は只々心躍るミュージカルショーと勃発するトラブルを楽しんでいればよく、何とも贅沢な時間。
メイドインジャパン作品ゆえにギャグに使われる固有名詞は全て日本のモノ、人物なので妙に親近感がわくミュージカルでした。
アテンションブリーフ
劇団うけつ
しもきた空間リバティ(東京都)
2017/02/24 (金) ~ 2017/02/26 (日)公演終了
満足度★★★★
人気者ゆえに友人観客動員数も随分多かろうと思える俳優陣。
各自色んな大学から集まったメンバーだからか、それぞれが個性豊かで普通の学生より一皮むけている感じがしました。
特に川野辺氏の腹の据わった感が尋常ではなかった。
気になるのは、身内は特にアドリブものにはハードルが低くなりがちで受けやすいかもしれないが、そこに甘んじた方向へは進んでいって欲しくないところ。
通常の枠にはまらない劇団カラーはメンバーのタレント力と併せて将来性をビシバシ感じられ、この先の進化が楽しみな劇団です。
持ち回りでツイキャスとかやってみたら面白そうだと思うのだが。
戦争戯曲集 三部作
劇場創造アカデミー
座・高円寺1(東京都)
2017/02/21 (火) ~ 2017/02/25 (土)公演終了
満足度★★★★
第三部 『大いなる平和』を観劇。
休憩時間を差し引いても4時間30分の恐るべき世紀末を描いた大作。
溢れだすほどの感情とセリフ量に、これはなるほど演者にとって成果の問われるハードな修了作だと思いました。
狂気的な政治、混乱する市民そして‥全面核戦争。
悪夢のように荒廃した世界の中で営まれる人間関係は逞しくもあり虚しくも映ります。
未来の象徴である赤ん坊に対しての捉え方が強く印象に残る作品でした。
大勇者伝〜大勇者への道〜 / 大勇者内伝〜大勇者として〜
あ
シアターブラッツ(東京都)
2017/02/16 (木) ~ 2017/02/20 (月)公演終了
満足度★★★★
大勇者伝を観劇。
どんな大勇者のバトルが繰り広げられるのかと思ったら、そっちか~っ!
でもなかなか面白かったぞ。
勇者モノがとことんスットコドッコイに脚色され、余す所なく 楽しめました。
こういう2,5次元世界を独自にディスった作品を好む人は多いはず。
(2,5次元にあまり詳しくなくても楽しめましたが)
ちょっと勿体ないのは宣伝として、このシチュエーションがうまく伝わっていないと思える所。
ミニPVでいいので、あればすごく参考になると思うのだけれど。
ギンノベースボール
ラビット番長
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2017/02/15 (水) ~ 2017/02/19 (日)公演終了
満足度★★★★
気概があっても体は思うようについてこない。
こうと言ったらなかなか折れない武骨な性格。
何だか田舎の父親の姿が重なって熱いものがこみ上げてきました。
どこにでもありそうな家族。そして起こり得る老後の障害。
この物語の後にもさらに人生は続いてゆき、どういう方向へ転がっていくのか分からない余白の部分が残りました。
ともあれ誰にもいずれは訪れる老いという不自由も全てひっくるめての人生を堪能。
どうせなら最後まで有意義に生きようとする姿勢から、色々と学べる所が多い作品でした。
七本の色鉛筆
玉川大学芸術学部パフォーミング・アーツ学科
玉川大学 大学3号館(東京都)
2017/02/15 (水) ~ 2017/02/19 (日)公演終了
満足度★★★★
公開に向けて然るべき指導者のもと多くの時間を費やし練習を重ねてきた公演である事がヒシヒシ伝わってきます。
楽しませることを充分に意識された演出は、3時間強退屈知らずで大したものだなーと思いました。
この卒業公演に関わる全ての学生さんの、もてなし精神に徹した温かい想いが会場全体を包み込み、ラストの挨拶では目頭が熱くなってきます。
玉川大学の水と緑が豊かなキャンパス、美しい校舎、様々に恵まれた環境の中で教育を受けてきた学生さんの幸福感がデコレーションされ、それが独自のカラーとなって、いつもの観劇とは趣の異なる楽しい時間を過ごさせていただきました。
帝都天籟
劇団熱点
千本桜ホール(東京都)
2017/02/11 (土) ~ 2017/02/12 (日)公演終了
満足度★★★★
同じ女性を狂おしいほどに愛した3人の男性。
3人それぞれが彼女と過ごした激動の日々の中に、様々な謎や矛盾が浮かび上がってきます。
昔、十朱幸代主演で舞台化された「悪女について」を彷彿させ、ストーリーの行方に目が離せません。
男女のドロドロ劇の枠を超えた顛末もダイナミックで面白かったです。
熱い芝居を自認するだけに劇場の大きさを遥かに超えたエネルギーが炸裂していました。
欲を言えばもう少しゆるーい場面も設けて抑揚があった方が、終盤の迫真の演技がより際立った様な気がします。
そのゆるさの中に情緒が加われば、もう完璧!
とは言え、あえて旗揚げ公演にハードルの高い作品を創り上げ、これを全員若手の役者さん達が堂々と演じ切ったわけですから、その自信に満ちた熱いエネルギーに感服いたします。
あと劇作家役の宇都宮さんの演技が印象的でした。
芝居中に観客をしっかり見据える演技はとても珍しく迫力が俄然アップします。
これって集中力いるだろうなー
Melody
TEAM 6g
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2017/02/08 (水) ~ 2017/02/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
「涙活」というイベントがある様ですが、この公演は2時間たっぷりと笑って、泣けて、元気がもらえて、ズバリ涙活に必要な要素が全て揃っています。
人に好かれやすい人がいるように、人に好かれやすい演劇があるとすれば、このような公演なのではないかと思いました。
オセロ王
劇団鋼鉄村松
王子小劇場(東京都)
2017/02/01 (水) ~ 2017/02/05 (日)公演終了
満足度★★★★
1999年人類滅亡。
いわゆるアダムとイブ、生き残りのキャラクター性がその後を引き継ぐ人類に色濃く影響を与える。
浅い文明社会、ちょっとお間抜けな世界観の中、結構シリアスに人権問題が絡んだオセロトーナメント戦が展開。
いつもの王子小劇場より客席を多く(満員御礼!)設けてオセロスタジアムにしたセットや、名物MC、体型凸凹スナイパー等アイデア盛り沢山のパラレルワールドでした。
『追加公演決定!5日19時』キャバレーの男たち
ゴツプロ!
駅前劇場(東京都)
2017/01/26 (木) ~ 2017/02/06 (月)公演終了
満足度★★★★★
小劇場に行くと受付けや場内の熱気、目の前に広がるセット、それだけで開演前なのに早くも「あっ、この公演アタリだっ」と確信できてしまう事が、たまにありますが今回がまさにそれでした。
舞台は昭和39年のキャバレー。
リアルとか生々しいというよりも、その時代・場所が持つ古き良きエッセンスを抽出した感じの演出で、何とも居心地がよくその空間に身を置くことが出来る幸せを感じます。
ひとりの歌姫に惹かれた男達が働くキャバレーは、猥雑ながらも彼女への愛情で結束され、すごく楽しそう。
楽しさと哀しさの入り混じったストーリーは難しく考える必要もなく、いくらでも観てられるわー。という感じでした。
時々、舞台から懐かしいようなイイ香り(お香?)がフワ~ッと漂ってくるのも良かったです。