かずの観てきた!クチコミ一覧

541-560件 / 633件中
花より男子 The Musical

花より男子 The Musical

東宝・キューブ・ネルケプランニング

シアタークリエ(東京都)

2016/01/05 (火) ~ 2016/01/24 (日)公演終了

楽しめます
原作が好きな人はもちろん、あまり知らない人も楽しめます。会話劇の得意な青木豪さんのなせるわざかな。
でも、一部の人の歌唱に若干の不安も。尻上がりに調子が上がることに期待!

東京裁判 pit北/区域閉館公演

東京裁判 pit北/区域閉館公演

パラドックス定数

pit北/区域(東京都)

2015/12/22 (火) ~ 2015/12/31 (木)公演終了

満足度★★★★★

見事な裁判劇
青年座の「外交官」を見てから、野木萌葱さんのファンになった。この「東京裁判」は絶対に見たいと思っていた。なんと年末押し迫ってまでやっている。しかも、パラドックス定数が劇団化したときに「東京裁判」を上演したその、東京・王子の小劇場で。その小劇場は年内で閉館という。これはもう、絶対に行くしかない。

会場は若い観客で超満員だった。ものすごい熱気の中繰り広げられた会話劇は、A級戦犯たちを弁護する5人の男たち。右上の裁判官に向かい、正面の検察官に向かい、男たちは奮闘する。戦勝国の論理で裁かれる敗戦国の政治指導者たち。私は個人的には、国家を破滅に導いた指導者たちはそれ相応の責任を取るべきだと思っているが、この弁護の男たちは、それぞれ個人的に様々な物語を抱えていて、それが、この裁判劇を奥深いものにした。

この脚本は見事だ。それを演じきった5人の俳優にも拍手を送りたい。

ガーデン~空の海、風の国~

ガーデン~空の海、風の国~

オフィス3〇〇

ザ・スズナリ(東京都)

2015/12/16 (水) ~ 2015/12/29 (火)公演終了

満足度★★★★

命をつなぐ水を、庭にまく
渡辺えりが約20年の時を超えて再演。中嶋朋子を迎えての舞台は、小劇場に力強く、不思議でしかも妙に現実感あふれる世界観を描いてみせた。
庭にまかれる水が、原始からの命をつないでいく。演出家としての渡辺えりが思いを込めたのは、小さなころから苦労のし通しだった実のお母さんへの物語という。各所で小さな笑いを取りながら、不思議な感覚のまま進んでいくのは、女性という生き物の人生を微妙な変化をつけて描いているからだろう。

渡辺えりと中嶋朋子の早変わりがすごい。この実力派女優の力演を間近で見られる。それだけでも見る価値があるが、初演時とは比べものにならないほど不安定さを増した今だからこそ、体全体で受け止めたい世界観だ。

ネタバレBOX

渡辺えりや中嶋朋子のセーラー服。怖いもの見たさでなく、何だかホッとするような感覚になるから、あら不思議。フォースの覚醒とか、今ふうのギャグはあまりにもベタだった。
<不思議の国のアリス>の帽子屋さんのお茶の会

<不思議の国のアリス>の帽子屋さんのお茶の会

演劇集団円

シアターX(東京都)

2015/12/19 (土) ~ 2015/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

不条理を優しく包むファンタジー
不条理劇の別役実作品。別役フェスティバルでは、以前に俳協が上演したものを見たが、冬休みの子ども向けにアレンジしてあって毒味を優しく包み込むような出来映えだ。ドタバタのギャグを織り込み、子ども客の笑いを引き出して、とても明るい舞台だ。

といっても、単なるコメディ仕立てではなく、やっぱり別役作品。辛口の部分もたっぷり。子どもにもちゃんと、世の中、そう簡単でないよと語りかけている。

ネタバレBOX

前の方に、子ども優先席がある。観劇人口を増やしたいと、劇団側の熱意が伝わってくる。
熱海殺人事件

熱海殺人事件

ホリプロ

紀伊國屋ホール(東京都)

2015/12/08 (火) ~ 2015/12/26 (土)公演終了

満足度★★★★

今しか見られない再演
つかこうへいの名作を、つかとともに演じてきた風間杜夫と平田満。そして、つかの愛娘というメンバーで見られる機会は今後また、巡ってくるのか。そう思うと、今しか見られない再演と言えるのかもしれない。
つか作品独自のスピード感が、何だか心地よい。愛原実花も本当によく、食らいついていた。演出のいのうえひでのりは、この作品に特別な思い入れがあるという。昭和テイストを絶妙にアレンジしているのも、思いの強いの表れだと思う。

ネタバレBOX

今ふうのギャグも入っているが、やっぱり熱海殺人事件。この作品ならではの笑いを楽しみたい。
口笛は誰でも吹ける(Anyone Can Whistle)

口笛は誰でも吹ける(Anyone Can Whistle)

タチ・ワールド

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2015/12/17 (木) ~ 2015/12/23 (水)公演終了

満足度★★★

失敗作とは思えない
あのソンドハイムの作品なのに、ブロードウェイではあっという間に打ち切りになったという。それゆえ、ほとんど上演されなかったというミュージカルを見る機会に恵まれた。
派手さはなく、多少理屈っぽい感じもあるが、駄作とは思えない。「世の中全部狂っているが、確かなものはある」というくだりも、共感できる。
演じた俳優たちも、なかなかの実力派だ。エコー劇場はそれほど大きな舞台ではないが、演出もシンプル。ただ、長尺のセリフに聞き取りにくいところがあって、舞台から視線が外れることも。

実験浄瑠璃劇『毛皮のマリー』

実験浄瑠璃劇『毛皮のマリー』

花組芝居

あうるすぽっと(東京都)

2015/12/16 (水) ~ 2015/12/23 (水)公演終了

満足度★★★

実験は成功か
寺山修司は演劇実験室を名乗ったが、花組芝居は実験浄瑠璃劇で寺山の毛皮のマリーをやってみせた。アングラ劇の決定版みたいなこの戯曲を、「あうるすぽっと」という大きな劇場で、しかもゆったりとしたいすで見ているのは、何だか時代を飛び越えたというか、ちょっとした違和感というかタイムスリップ感も覚えた。

寺山生誕80年の締めくくりだ。寺山の母親に対する複雑な感情を裏返しにして乗せたような、そんな気もする「毛皮のマリー」。先入観なしに見ると、ちょっとこれはと思う人もいるかもしれない。花組芝居がわりとそのあたりをはっきり打ち出しているので、強烈な寺山テイストを求めていった人は満足度が高いのではないだろうか。

私は梅組を見た。「役者は役に化ける」というせりふが出てきたが、まさにそのような舞台だったと思う。客席から合いの手も入ったりして、盛り上がっていました。

わからなければモモエさんに聞け

わからなければモモエさんに聞け

劇団青い鳥

小劇場B1(東京都)

2015/12/15 (火) ~ 2015/12/20 (日)公演終了

満足度★★★★

年を重ねる息遣いを味わう
何カ月に一度、お母さんとデパートへ行き、食堂でいつもと同じ大好きなオムライスを食べる。こんな子どもの頃の思い出を持つ世代のハートを直撃する。
エレベーターガールも、特別な人だった。白い手袋、抑えているが透き通った声。夫が単身赴任中、息子たちが既に巣立った女性が、エレベーターガールの募集広告に惹かれる気持ちは、同じ世代なら男でも分かる。
年を重ね、記憶を刻むというラストシーンに
胸を打たれる。客席から手拍子が起きるリズムのいい舞台も魅力。寒いギャグやオーバーアクションはご愛嬌かな。

ネタバレBOX

女性だけで演じる舞台で、少し厳しい局面もある。山口百恵の名曲を堪能できるが、ある意味、モモエさんでなくても成立するのでは?
消失

消失

ナイロン100℃

本多劇場(東京都)

2015/12/05 (土) ~ 2015/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

示唆に富む、ケラ流の笑い
同一キャストでの11年ぶりの再演。なぜ今、この演目をケラさんがやるのか。示唆に富む舞台となった。
出演者の年齢設定も年相応に上げてある。40過ぎでの結婚話も何だか、リアリティがあって笑える。戦争が終わった直後という場面も古さを感じない。初演時よりも、現実感があるのが怖い。
大倉孝二、犬山イヌコらのナイロンの役者たちも、何だか迫力があるのは現実感を台本から感じているからではないのか。客演だがナイロンのメンバーみたいな八嶋智人の立ち回りも息がぴったり。

もう、これは「近未来」の話ではない。この舞台からはいろんな怖さが提示される。ケラ流の笑いに流されながら、悪夢を見てみるのも
「消失」の楽しみ方だと思う。

ネタバレBOX

初めて見る人は、まさかロボットだったとは、と驚天動地。これも現実に近づいています。
くるみ割り人形

くるみ割り人形

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2015/12/19 (土) ~ 2015/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

何回見ても飽きない魅力
やはりこの季節は、この演目だ。入り口前にはお店も並び、Xマスムードいっぱい。
ステージは主役級が勢ぞろいだ。安定感が違うし、この舞台を大切にしている意気込みも伝わってくる。最初と最後に、高層ビルと雑踏が演出され、携帯で夜景を撮る人を入れるなど現実感を強調。クララの夢物語の発着地なのだが、それだけに間に挟んだ夢物語が浮き上がるという形だ。

漂流劇 ひょっこりひょうたん島

漂流劇 ひょっこりひょうたん島

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2015/12/15 (火) ~ 2015/12/28 (月)公演終了

満足度★★★★

お約束の曲も、流れます
円形にせり出し、回転する舞台でオムニバスのように繰り広げたというのが、まずは成功の秘訣だったのでは。かつて、テレビで見ていた人も、この番組を見ていなかった人も、とても楽しく、笑える舞台だ。

テレビ放送されたのが前回の東京五輪のころ。カラーテレビもあまり普及していないころだが、NHKが折に触れて再放送していたから、何となく登場人物も分かる人が多いのかもしれない。でも、トラヒゲやドン・ガバチョは人形劇のイメージと重なるようで、重ならない。そこがまた、串田演出の妙なのだろう。

楽曲は全く新しいものだが、やはり、最後にお約束の曲は聴くことができる。宇野誠一郎、そして井上ひさしへのトリビュート舞台でもある。

ネタバレBOX

演出の串田和美も舞台に登場し、劇のフィナーレに向けて自ら引っ張っていく。
白石加代子のドン・ガバチョはなかなかいい雰囲気。トラヒゲをやった小松政夫もそうだが、この舞台、やはりオリジナルの人形劇を見ていた世代の方に、一日の長がありそうだ。
レミング―世界の涯まで連れてって―

レミング―世界の涯まで連れてって―

パルコ・プロデュース

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2015/12/06 (日) ~ 2015/12/20 (日)公演終了

満足度★★★★

寺山と松本のアンサンブル
言葉の錬金術師・寺山修司を、言葉を解体して変拍子のリズムで刻む維新派・松本雄吉がどう料理するのか。以前のパルコでの舞台を見ていない私は、とてもわくわくして東京芸術劇場へ出かけた。

率直な感想は、この二人はとても相性がいいのではないか、ということだ。寺山が書いた戯曲に、松本のリズムが妙に調和するのだ。この独特の大空間を作り上げた松本という人物はとてもすごいと思うのだが、何よりもこの演出家に応えて見せた演者たちに拍手を送りたい。

パンフレットに霧矢大夢がこう書いている。

これはきっと「正解のない」作品。やる側も見る側も、寺山修司さんの言葉と松本雄吉さんの感性に振り回され、操られながら迷宮に迷い込んでいく。そんな、翻弄されることを楽しめばいいのかな、と。

まさに至言だ。寺山劇だけでは体験できない、松本劇だけでも体験できない空間に身をおぼれさせるのが一番。2015年の暮れ。池袋には今、ここでしか体験できない異空間が出現している。

ネタバレBOX

役者の個性を消す維新派のスタイルだが、維新派そのものの舞台とは違うため、今回は松本演出でも役者がその個性を輝かせているのがいい。個人的には、主役の二人よりも、占部房子の演技が輝いていた、と感じる。
舞台『夜想曲集』

舞台『夜想曲集』

ホリプロ

天王洲 銀河劇場(東京都)

2015/05/11 (月) ~ 2015/05/24 (日)公演終了

満足度★★★★

東出くんの意外な素顔
カズオ・イシグロ氏の5編からなる短編集から「老歌手」「夜想曲」「チェリスト」の3編を選んで一つの物語にした。舞台初出演という東出昌大が悩める音楽家として舞台で見せる姿は、テレビドラマでは見られない新たな発見になった。

シックな、とても美しい舞台だ。安田成美や、近藤芳正という俳優たちがなせる技なのかもしれない。大人の雰囲気で進む落ち着いた流れも魅力的だ。

イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー It runs in the family ~パパと呼ばないで~

イット・ランズ・イン・ザ・ファミリー It runs in the family ~パパと呼ばないで~

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2014/09/20 (土) ~ 2014/10/13 (月)公演終了

満足度★★★★

痛快、笑える舞台
ウソにウソを重ねて切り抜けようとするのは男のサガか(笑)
舞台は病院で、翻訳劇なのだが実際に日本でもありそうなシチュエーション。現代は、血は争えないなあ、というちょっと冷笑的なタイトルだが、見終わって笑いながらこのタイトルに納得する。

錦織一清が主役としての存在感を発揮している。脇を固めている、はしのえみ、池谷のぶえが特によかった。

とりあえず、お父さん

とりあえず、お父さん

ホリプロ

天王洲 銀河劇場(東京都)

2015/12/03 (木) ~ 2015/12/23 (水)公演終了

満足度★★★★

台本を生かし切った演者たち
浅利慶太氏は、劇の成功で演出などが力になるのは2割で、基本的には台本の力である、と言っていたような気がする。アラン・エイクボーンによるこの作品は、彼の出世作だったという。とにかく、台本が面白い。演者たちもそう、口をそろえている。柄本明は「この台本をきちんとやることだ」と言っていたそうだ。だが、この舞台が成功しているのは、面白い台本をきちんと生かし切った4人の演者たちの力のたまものだと思う。

主役の藤原竜也は今日、少し声がかれ気味だったように思う。最初はちょっと元気のなさそうな様子もあったが、尻上がりに調子を上げていた。相手役の本仮屋ユイカ。彼女はテレビドラマでもこうした喜劇テイストのドラマに出ていて経験はあると思うが、もはやかわいらしいだけの女優ではない。ごまかしの利かない舞台で、女のしたたかさを十分に発揮していた。

そして何よりもこの舞台を締めたのは、柄本明と浅野ゆう子だ。このベテランの二人の力量によって、若い二人をぐいぐい引っ張っていた。勘違いに勘違いを重ね、ウソを隠そうとまたウソをつき泥沼にはまる。この戯曲の古典的と言っていいおもしろさを、4人は今の時代でも十分笑えるおもしろさとして立派に引き出したと思う。

ネタバレBOX

やはり何と言ってもラストシーンだ。すべてを一瞬にして理解したシーラ、浅野ゆう子だ。この冷たくも鋭く、ある意味ですべてを包む優しさとも感じられる微笑み。その表情を見るのが、この舞台の最大のポイントだと思う。
ファルスタッフ

ファルスタッフ

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2015/12/03 (木) ~ 2015/12/12 (土)公演終了

満足度★★★★

愛すべき酔っ払いの物語
ドタバタ喜劇で、オーケストラの演奏中にも客席から笑いが漏れる。何と言っても、この世はすべて冗談なのですから。

二人の既婚女性を誘惑をしようと乗り込んだのだがその女たちの策略で洗濯かごに入れられてテムズ川に放り込まれたり、オバケが出そうな深夜の公園に誘い込まれていじめられたり。巨体の大酒飲みは、その道化師ぶりを存分に発揮する。

最後の盛大なアンサンブルがとてもいい

泳ぐ機関車

泳ぐ機関車

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2015/12/05 (土) ~ 2015/12/15 (火)公演終了

満足度★★★★★

今作もヒマワリに元気が出る
「オバケの太陽」に続いて、私はこの炭鉱三部作を拝見した。前作に続いて胸を打つ物語、それを力演する客演を含めた出演者たち。手作り感あふれるが迫力ある舞台セット。見事でした。

悲しく、やるせない、救いようのない展開だが、前を向ける。その舞台装置が機関車であり、ヒマワリなのだ。炭鉱の底に沈む海として、水の使い方も効果的で、演出の勝利。

もし、あなたがこの小劇場から明日への勇気がほしいなら、見逃す手はありません。

ネタバレBOX

末の弟、語り手であり、主演なのだが、小柄で表情豊かな大手忍のハマリ役ではないか。感動を牽引する舞台である。
バグダッド動物園のベンガルタイガー

バグダッド動物園のベンガルタイガー

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2015/12/08 (火) ~ 2015/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

人間も動物も幽霊に
バグダッドには、人間も動物も幽霊になってさまよっている。人間と動物、生者と死者が交錯する舞台。戦争の現実をこのように描いた作品は、異色なのではないか。
トラッシュマスターズの中津留章仁により、衝撃的な台本がさらに力を増した。客席はちょっとしたセリフの面白さで何回も笑いが漏れたが、私は笑うどころではなかった。そのセリフの重さに心を奪われていた。
演出からは恐らく、相当ハードルの高い指示が出ていたと思うが、虎を演じた杉本哲太、イラク人通訳の安井順平がとてもいい。

12月文楽公演

12月文楽公演

国立劇場

国立劇場 小劇場(東京都)

2015/12/02 (水) ~ 2015/12/14 (月)公演終了

満足度★★★★

せつなすぎる袖萩
これは名作だ。親子の情の切なさが胸に響く。それを伝える人形の動きの見事さ。歌舞伎として人間が演じるより深く突き刺さってくるかもしれない。

朱雀堤の段では、物乞いに身をやつした袖萩が娘のお君と一緒に登場するが、このお君がとても健気だ。袖萩は浪人と恋に落ちて勘当された身。父親は、天皇の弟環の宮が何物かにさらわれ、苦しい立場に追い込まれているが、その捜索としてここに来た時に物乞い小屋の女が自分の娘であると気付く。しかし、盲目の袖萩は父が来たことに気付かない。

父と娘の関係は、次の環の宮明御殿の段でさらに、劇的になる。雪の降る中をお君に手を引かれて父がいる御殿に来るが、その女が袖萩と気付いた父親は戸を閉めてしまう。母の浜夕が娘の姿に驚くが、夫の手前素知らぬふり。そして袖萩が歌祭文に乗せて親不孝をわびるそのシーンが本当に切ない。

父親も結局、環の宮失踪の責任を取って切腹、袖萩も我が身の不幸を嘆いて自害する。人形たちの名演技もさることながら、情感を込めた大夫の語り。物語に引き込む伝統の技は、脈々と続いている。

書を捨てよ町へ出よう

書を捨てよ町へ出よう

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2015/12/05 (土) ~ 2015/12/27 (日)公演終了

満足度★★★★

藤田流、寺山ワールド
今、池袋ではこの初期作品と晩年作「レミング」という二つの寺山作品が同時に鑑賞できる。しかも、今作「書を捨てよ町へ出よう」は、若手の注目株、マームとジプシーの藤田貴大、レミングは大阪発で注目の維新派、松本雄吉。30歳の藤田、69歳の松本。二人がどう、寺山を料理するかが大きな見どころだ。

藤田の舞台はとてもユニーク。見る人それぞれの寺山像が浮かぶような、万華鏡のような仕上がり。お笑い芸人の又吉直樹、歌人の穂村弘の映像を効果的に使っているし、藤田が自分で咀嚼した寺山を2015年という舞台空間に再現し、記憶にとどめていく意志を感じる。

寺山の書いた同名エッセイ集「書を捨てよ」は、読んでから行った方がいいです。何倍も寺山を楽しめます。

ネタバレBOX

客席通路で役者が着替えるなど、客席も舞台だ。見るなら、後方の席を取るべし。

このページのQRコードです。

拡大