かずの観てきた!クチコミ一覧

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ラスト・イン・ラプソディ

ラスト・イン・ラプソディ

劇団俳優座

俳優座劇場(東京都)

2015/11/18 (水) ~ 2015/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

胸を打たれる人間模様
行き場のない患者を受け入れている診療所が舞台。入院できるベッドがあるので診療所というより病院か。実際にはあり得ない診療所であるが、患者たちの物語はリアルだ。
格差社会、そして貧困。どこの病院も受け入れないであろう人たちに、過去を持つ医師らスタッフが真正面から向き合う。患者たちはそれぞれ複座な事情を抱えているが、舞台は患者の今とこれからを中心に描かれる。
幅広い層を持つ俳優座の俳優たちだからこそ演じられる舞台。いかに死ぬかということは、どう生きるかということ。見る人の心に突きつけている、見事な舞台だ。

ネタバレBOX

患者だけでなく、医師らスタッフの衝撃的な物語も描かれる。いかに死ぬか、に手を貸した医師をただ肯定的に描くだけでなく、患者に告発されるラストがすごい‼︎
虹を渡る男たち

虹を渡る男たち

劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)

サンシャイン劇場(東京都)

2015/11/07 (土) ~ 2015/11/23 (月)公演終了

満足度★★★★

今回も笑えます
三宅裕司率いるスーパーエキセントリックシアターは、10代から60代までの幅広いメンバーで、「こなせない役はない」(三宅)という円熟期だ。ミュージカルコメディの先頭を行く心意気なんだろう。
今回はタイムトラベルがテーマだが、笑いのツボは多彩だ。また、このまま音楽番組に出てもいけるんじゃないか、という振り付けでのアイドルソングも楽しめる。
期待を裏切らない!ステージだ。

ネタバレBOX

三宅裕司によると、毎日の舞台で新しいネタを入れているとか。すべることを恐れない、サービス精神に拍手。
オレアナ

オレアナ

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2015/11/06 (金) ~ 2015/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★

劇場帰りに白熱トークを
何とも後味の悪い舞台だった。舞台の出来が悪いわけではない。むしろ逆で、強烈な後味を残した田中哲司、志田未来の大熱演二人芝居に拍手だ。
訴訟社会のアメリカで書かれたから、と見切ることはできない。この戯曲は、セクハラ事件という以外にさまざまなことを提示している。見る人によって、きっと受け止めは千差万別であるに違いない。劇場帰りには、きっと白熱トークになる。このような舞台は、そうそうあるものではないのでは?

ネタバレBOX

舞台は下手から上手に向けて傾斜がついている。下手に志田未来演じる女子大生。上手に田中哲司演じる大学教授の立派な机があり。いかにも意味深な舞台装置だ。

また、大学教授に掛かってくる電話がとてもうまく使われている。ぜひ、ご注目を。
再びこの地を踏まず

再びこの地を踏まず

文学座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2015/11/06 (金) ~ 2015/11/15 (日)公演終了

満足度★★★★

偉人の意外な素顔
野口英世と言えば、学校で教わる日本の偉人だ。大やけどの話、お母さんとの関わりなどで語られ、そういう側面でしか知らない人がほとんどではないか。
戯曲の前半は、とんでもない浪費家で大酒飲み、しかも女癖が悪いという意外な素顔で展開する。資料は踏まえていると思うが、マキノノゾミの創作も多少は入っているかな。米国留学資金を得るために資産家の娘と婚約して婚礼金をいただくというエピソードも。その後、米国人と結婚したということは、このお金(当時の金額で300円)は返したのだろうか?

だが、このトンデモ男には、人生の節目節目で支援者があった。これは野口の才能を見込んでというか、おそらく援助したいと思わせる人間的魅力があったのだろう。舞台ではそのあたりも含め、野口が相当な名声を得た後もなぜ危険を冒して、アフリカへ渡ってさらなる研究へと走ったのかが語られていく。

とても分かりやすい筋立て。盛り込まれているたくさんの笑い。楽しめる戯曲としてはとても完成度が高い。

野口が生まれ故郷の家の柱に刻みつけた文字である、タイトルの「再びこの地を踏まず」が舞台転換にうまく使われ、とてもかっこいい。

>(ダイナリィ)

>(ダイナリィ)

カムカムミニキーナ

座・高円寺1(東京都)

2015/11/12 (木) ~ 2015/11/22 (日)公演終了

満足度★★★★

キテレツだが奥が深い
カムカム25周年記念として、莉奈らを客演に迎えて盛大なる舞台。何だか訳の分からない物語なのだが、政府が露骨な劇団つぶしに走る劇中劇なども盛り込まれていて、結構強烈。秘密保護法が施行されて、劇団関係者にイヤーな空気が流れているが、これが絵空事ではないかもしれないという警鐘も入っている。

プロレスリングのような舞台を客席が囲むスタイル。役者たちは3方のお客さんにいずれも真正面からの演技を見せるために、リングを駆け回る。小道具の使い方も、一方向のお客だけしか分からないなどということがないように工夫されている。さらに、舞台の下をあえて少し見切れるようなつくりにし、その周囲も役者を走り回らせて活用する。いわば「2階建て」の舞台は、蜷川幸雄の演出でも見たことがある。

それはともかく、有名俳優を輩出している元気のいい劇団だけあって、どの役者も切れがいい。ちょっと気を抜いていると、劇中劇の演出家から檄が飛ぶ。まあ、これも演技なのでしょうが。

からゆきさん

からゆきさん

劇団青年座

紀伊國屋ホール(東京都)

2015/11/14 (土) ~ 2015/11/23 (月)公演終了

満足度★★★★

次の世代に受け継ぎたい舞台
青年座が四半世紀ぶりに上演する。「からゆきさん」と聞いて意味が分かる人が減りつつある今、次の世代に受け継いでいかなければならない舞台。俳優たちもそのつもりでの力演だ。劇団としての強い意思を感じた。

かつて西田敏行、高畑淳子という看板俳優たちが演じた舞台。今回は、やはり売り出し中の俳優が登板した。特に、各劇団の女優たちによるユニット「オンナナ」を立ち上げて劇団外でも活動の幅を広げる安藤瞳に注目した。娼館の女主人として冒頭から登場。美しさだけではない、貫禄も漂う演技だった。

男が都合良く女を捨てる、というだけでなく、国家が在外で貢献していた国民をあっさり切り捨てるという二重の構図。国家が国民を見捨てるというのはなにも戦前、戦争中の話ではない。からゆきさんたちが語る舞台は、そういう意味で特に、心に留め置きたい。

現代能楽集Ⅷ『道玄坂綺譚』

現代能楽集Ⅷ『道玄坂綺譚』

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2015/11/08 (日) ~ 2015/11/21 (土)公演終了

満足度★★★★★

マキノノゾミの舞台に酔った!
原作は三島由紀夫の近代能楽集で、卒塔婆小町と熊野から。マキノノゾミがこれを大胆にアレンジして、魅惑の舞台に仕上げた。

舞台はネットカフェだ。いきなり、ももクロの強烈なメロディーで幕開け。渋谷・道玄坂のネットカフェに居着いた連中が主役である。中でも、いきなり仙人のような風貌で現れた一路真輝には度肝を抜かれる。

時空を超える「能」の世界よろしく、一路真輝があでやかなドレスで登場するときは、二・二六事件前夜だ。シンプルな演出もさることながら、ネットカフェに巣くう人たちの生態をベースに、ほかの登場人物も同様に時空を超えていく。

三島が舞台を見たら何と言うだろうか。演劇の持つ創造性、観客の想像力を大いに刺激する秀逸な舞台だと言える。

見ないと損しますよ。

ネタバレBOX

デイトレーダー、危険ドラッグ。今風のキーワードがちりばめられた物語の展開に目が離せない。ネタバレ専用といっても書くのをためらわれるおもしろさ。これはやっぱり生で見るしかない
桜の園

桜の園

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2015/11/11 (水) ~ 2015/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★

田中裕子の貫録勝ち
これまで多くの名女優が演じてきたラネーフスカヤを、今回は田中裕子が担った。金銭感覚がないお嬢様育ちの女主人の振る舞い、感情。さすがの貫録だ。

脇役たちも存在感を発揮。特に、ラネーフスカヤの兄を演じた文学座の石田圭祐は良かった。悲劇なのだが重くなり過ぎず、軽快な雰囲気もあるのは、小道具などをうまく使った鵜山仁演出の妙。

物語は事前に勉強していった方が楽しめると思います。

ネタバレBOX

舞台を本物の子犬が走り、客席を巻き込んだ手品もあるので、お楽しみに
「タイタス・アンドロニカス」「女殺油地獄」

「タイタス・アンドロニカス」「女殺油地獄」

劇団山の手事情社

吉祥寺シアター(東京都)

2015/11/06 (金) ~ 2015/11/16 (月)公演終了

満足度★★★

残虐の海でうごめく人間
あまりに残虐ということでかつては海外で上演されなかったというシェークスピアの「タイタス・アンドロニカス」。スローモーションで役者を動かすなど、独特の動きで舞台を彩る安田雅弘が、どうこの戯曲を料理するのか、と思って吉祥寺へ出かけた。

殺戮、強姦、復讐。まともには取り組めない。目を引いたのは和服の衣装だ。布をうまく使って手首を切り落とした状態を表現するなど、多彩な工夫がある。さらに、役者の絶叫。スローモーションを得意とするこの劇団に、この演目はツボにはまるものなのかもしれない。

残虐の裏に見え隠れする人間の愚かさ。テロリストの作り方、という中身なので、受け入れがたいお客さんもいるかもしれない。

ネタバレBOX

舞台中央には冷蔵庫と電子レンジ。これがどう使われるかは、「タイタス・アンドロニカス」の物語を事前に学習し、想像してみましょう。

狂言回しとして喪服の女性が正座をして舞台のあちこちにいるというのはおもしろい。編み物をしている横で、殺戮が行われたりするのだから。
カイコ【全公演終了しました!!ご来場誠にありがとうございました!!】

カイコ【全公演終了しました!!ご来場誠にありがとうございました!!】

くちびるの会

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2015/11/04 (水) ~ 2015/11/10 (火)公演終了

満足度★★★★

深夜徘徊の勧め
作・演出の山本タカが、公演パンフレットの中で「深夜徘徊の勧め」として、丑三つ時に家を出て自分の住んでいる町を想像を膨らませながら歩くことを勧めている。本作はこれをモチーフにして、回想列車という自らの過去をめぐる旅を描いている。

当然、思い出したくない過去もある。それを真正面から突きつけられるのはしんどいなあ、と思う。人間、都合の悪いことは忘れてしまうようにできているのだ。個人的にはあまり乗りたくない列車だな(笑)

新宿三丁目・スペース雑遊の小さな場所で、舞台装置はいすが2つあるだけ。シンプルこの上ない舞台だから、問われるのは役者の演技力だ。主役を演じた杉浦一輝は鴻上尚史の「虚構の劇団」から参加。そのほかの役者も、ごまかしのきかない状況の中でレベルの高さを示している。

ネタバレBOX

携帯電話の電源を切りましょうという前説からうまく劇を始めている。列車の中、彼女とのアパートの部屋、教室。舞台装置がない中で、観客にそれを想像させてしまうのは、やはり役者の力だと思う。
海に響く軍靴

海に響く軍靴

博品館劇場

博品館劇場(東京都)

2015/10/30 (金) ~ 2015/11/15 (日)公演終了

満足度★★★

HIDEBOHのタップダンスに注目
映画と演劇が融合したような舞台。原案の北野武が最初は映画でと思っていただけあり、紗幕を使った映画的な演出になっている。エンドロールもあって、そこにカーテンコールの拍手が続くというちょっと変わった体験ができる。

物語は非常にシンプル。何と言ってもメーンは、HIDEBOHとTamangpのタップダンスの共演だ。これを生で披露するために、演劇スタイルにしたようなものだろう。
そのためだろうが、演劇としてみると物足りなさを感じるかもしれない。その裏返しとして、とても分かりやすいストーリーにショー的な要素を楽しめる舞台である。

ネタバレBOX

登場するのは、上記の二人に加え、日米ハーフでNYタイムズで働いている記者という設定の島田歌穂の3人だけ。カーテンコールの後には島田歌穂が懐かしのナンバーを歌うというショータイムも付いている。
うしろの正面だあれ

うしろの正面だあれ

山の羊舍

小劇場B1(東京都)

2015/11/04 (水) ~ 2015/11/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

蟻地獄を演じる4人
舞台には、演劇集団円と文学座からの男女2人ずつの俳優。気の弱い男性が、姉妹と父がそれとなく、意図的に(笑)巻き起こす会話に絡め取られ、蟻地獄に落ちていく。個人的には、今年春から始まった「別役実フェスティバル」参加作品の中で1,2を争う不条理劇の秀作だと思う。

オールナイトフジのレギュラーで、声優としても知られる山崎美貴の妖艶かつ冷徹な美しさに引き込まれる。その妹役、谷川清美は眉毛を微妙に動かす絶妙な演技を見せてくれる。会場は自由席で座れる下北沢小劇場B1。ぜひ、前の方で観劇されることをお勧めします。

ネタバレBOX

気の弱さというか、思慮深い遠慮が命取りになっていく。これは、われわれの日超生活でもよくあること。冒頭に出てくる姉妹の枕をめぐっての会話は、その後の強烈な展開を予感させる、秀逸な場面なのでご注目!
『いとしの儚-100DaysLove-』

『いとしの儚-100DaysLove-』

劇団扉座

座・高円寺1(東京都)

2015/10/29 (木) ~ 2015/11/08 (日)公演終了

満足度★★★★

心を揺さぶる百日の夢
扉座主宰の横内謙介が書き、2000年に初演。その後、タイトルを変えていろんな劇団が上演してきた名作を、本家が15年ぶりに再演。まず、この物語が非常に心を揺さぶる展開だ。誰にでも分かりやすい芝居を目指すという扉座だが、劇場で夢を見ることができる秀作だ。

主役は博徒の鈴次郎と、その相手役儚(はかな)。鈴次郎を山中崇史、儚をこの舞台を熱望していたというMEGUMIが客演した。何よりも、この二人、特に山中の熱演がとても光る。MEGUMIにはかなり色っぽい演技を想像したのだが、むしろ透明感のあるまさに名前の通りのはなかさを現出する舞台に驚かされた。

さらに、操り人形がきわめて重要な役まわりで舞台を彩る。物語の世界に引き込む仕掛けがたくさんあって、十分に楽しめる2時間である。

ネタバレBOX

鬼が死体からのぞみ通りの女を作り、100日間は「心と体がくっつかないからけして抱いてはならない」という設定。抱いてしまえば女は水になってしまう。
この100日間の物語だが、女(儚)も男(鈴次郎)も大きく変わっていく。狂言回しとして観客を沸かせる鬼も、歌舞伎役者のようでとてもよかった。
ホフマン物語

ホフマン物語

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2015/10/30 (金) ~ 2015/11/03 (火)公演終了

満足度★★★★

エピローグにお楽しみ
舞台芸術監督の大原永子さんがスコティッシュ・バレエで活動していたころ、登場する女性全主役を踊った経験があり、今回はその経験を生かして若手を指導してきた。シーズンキックオフを飾る今回はエピローグまでの全幕が披露された。

ホフマンを取り巻く女たち。それぞれの幕で、個性豊かな表情を見せてくれた。特に、第二幕のアントニアを舞った米沢唯さんが見事だ。

エピローグが実は、一番の豪華な場面ではないか。ここでも分かるが、ホフマンよりも、それぞれの女たちが実はメーンキャストとして大きな存在感を示していた。

ブロッケンの妖怪

ブロッケンの妖怪

東宝芸能・キューブ

THEATRE1010(東京都)

2015/10/30 (金) ~ 2015/11/01 (日)公演終了

満足度★★★★

個性のぶつかりを彩った演出
竹中直人と生瀬勝久の二人で「竹生企画」というのを作ったという。旗揚げ公演が4年前、「ヴィラ・グランデ 青山~返り討ちの日曜日」。今回は第二弾といい、演出は再び倉持裕が担当した。

この作・演出の妙が、超個性派の二人を見事に輝かせたと言ってよい。ブロッケン現象をモチーフに作られた物語は、奇想天外とまではいえないかもしれないが、舞台での次の展開にワクワクさせられ、十分に楽しめる2時間だった。
また、今回が初舞台という佐々木希だが、役者としては力量が問われる設定なのに、演じ分けはお見事だった。次の舞台が待たれる出来だ。

映像も効果的に使い、舞台の妙である早替わりも存分に披露して、あっという間に時間が過ぎた。「あ~おもしろかった」と言える舞台だから、見て損はありませんよ。

ネタバレBOX

ブロッケンとは、後ろから当たる光で遠い場所に自分たちの影が映る現象だが、もう一人の自分たちが映るという発想と、もう一人の自分と交流できるという発想。これはとても楽しい。

「あの時こういう道を選んでいたらどうなったか」という着想と物語は映像や舞台では定番なのかもしれないが、竹中直人と生瀬勝久のテンポのいい演技と丁々発止のやりとりが、新鮮さをずっと保ってくれる。
西遊記

西遊記

流山児★事務所

ザ・スズナリ(東京都)

2015/10/22 (木) ~ 2015/10/28 (水)公演終了

満足度★★★

踊る、歌う、西遊記
流山児★事務所の本領発揮の舞台。何度も何度も繰り返すデジャビュ・シーンに頭がしびれてくる。これでもかと脳天を突き刺す役者たちの姿に、満員の下北沢・スズナリが異次元に入っていく。

ただ、こういうテイストに拒絶感のある人がいるかもしれない。劇薬注意、という感じでしょうか。

これをひっさげて、アジア諸国を回るという。性別も、国籍も、年齢も超えるという流山児の挑戦に、アジアの演劇ファンはどんな反応なのか。期待したい。

ネタバレBOX

私が見た26日夜は、社会学者の宮台真司さんが来ていて、流山児さんに舞台に呼び出された。サプライズ・ゲストだ。宮台さんは何を思ったか、「西遊記」の来歴を語り、お客さんは「あ、そうか、これは西遊記だったんだ」と我に返ったのではないか。
オバケの太陽

オバケの太陽

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2015/10/23 (金) ~ 2015/10/30 (金)公演終了

満足度★★★★

東憲司さんの演出に拍手
ひまわりの花があふれた、昭和の香り漂う舞台で、物悲しくも一筋の希望が見える物語が進行する。劇団桟敷童子が炭鉱3部作と銘打った第一弾。
どの俳優もイキイキして、テンポのいい舞台だ。客演の青年座、尾身美詞もさすがの貫録。各劇団から集まった女優だけのユニット・オンナナの舞台も見たが、ひときわ輝いていた。
炭鉱町の記憶は遠くなりつつあるが、人間らしさで支えられていたのだ。ラストシーンであっと驚く展開をしてみせた、東憲司の演出も光った。11月から始まる2作目への期待も高まる。

ネタバレBOX

炭鉱町を汽車が走るぞ。お見逃しなく。
谷間の女たち widows

谷間の女たち widows

劇団昴

あうるすぽっと(東京都)

2015/10/17 (土) ~ 2015/10/25 (日)公演終了

満足度★★★★

女たちの躍動を見よ!
主役は、老婆ソフィアを演じた久保田民絵さんである。だが、谷間の川で洗濯をする女たちは、どの人も夫か父か、兄弟かを連れ去られて行方知れずだ。群像劇というわけではないが、どの役の女性も強烈な存在感を発揮し、舞台で輝く。劇団昴の女優たちが総力を挙げている。

それは、舞台装置が非常にシンプルで、女たちの全身の演技が、せりふと共にあふれ出てストレートに伝わってくるからだ。最初は抑圧に沈黙していた女たちだが、愛する家族を返してほしい、死んでいるのなら遺体を埋葬させてほしい、そして、その結果を招いた人を処罰してほしいと、ごく当然の要求を口にし始める。

もう一つの見どころは、表面的には民主主義に理解がありそうな隊長と、抑圧し沈黙させることが平穏の鍵と考えている副官の対立である。女たちの変化によって、隊長はどう変わっていくのか。ここに男たちの現実を見る。

自意識が過剰で、物わかりの良さそうな権力者ほど怖い、という歴史の教訓を明確に示した舞台。別に、わが日本国の今の総理のことを皮肉っているわけではありませんよ。

ネタバレBOX

一人の女に夫が帰される場面がある。そこで女たちが演じる入浴シーンが、はつらつとした生気をあふれさせているのがすごい。
リクレイムド ランド

リクレイムド ランド

Oi-SCALE

駅前劇場(東京都)

2015/10/21 (水) ~ 2015/10/26 (月)公演終了

満足度★★★

被害者家族の肖像
開演前から舞台袖にある二つのモニターで、死刑制度に賛成か反対かのインタビュー映像が流されている。この舞台が死刑制度をテーマにしているからなのだが、戯曲の中核を成すものは、被害者家族の「ある選択」だ。

死刑は何のためにあるのか。犯罪の抑止か、それとも究極の「償い」か。それとも被害者による復讐の姿なのか。犯人は死んでも、殺された大切な人は戻ってはこない。大切な人であればあるほど、家族が究極の選択に走る可能性はあるだろう。

細かいところに異論はなくもないが、よく練られた台本だと思った。

追加:舞台とはあまり関係ないけれど、前説で「携帯電話の電源を切って」のアナウンスがなかった。そのためかどうかは分からないが、上演中に携帯電話の画面で時刻を見ているマナーの悪い客がいた。せっかくのいい舞台だったのに、とても残念。

ネタバレBOX

「養子縁組」の条件はかなり厳しいものです。現実にはこの物語は難しいかもしれないが、被害者家族の気持ちは痛いほど分かった。

細かいことだけど、お巡りさんをなぜ、殺さなくてはならなかったのか。殺人をテーマにしている以上、新たな殺人事件をその次の展開もなしに黙殺してしまうのはどうかな、と思った。
モーツァルト/歌劇『フィガロの結婚』 ~庭師は見た!~ 新演出

モーツァルト/歌劇『フィガロの結婚』 ~庭師は見た!~ 新演出

東京芸術劇場

東京芸術劇場 コンサートホール(東京都)

2015/10/24 (土) ~ 2015/10/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

オペラと演劇の融合
制作発表の時に野田秀樹さんが言っていた、「オペラと演劇の融合」を十分に堪能できた。さらに、イタリア語と日本語のシームレスな歌唱、そしてせりふ。欧州で生まれ育ったオペラが、大和撫子と結婚したような舞台だった。

フィガロを「フィガ郎」とするネーミングは、発表の時は違和感を感じたけれど、実際に見てみるとすんなりというか、ぴったり来るから不思議だ。「庭師は見た!」という副題のように、庭師アントニオ(アントニ男)を狂言回しに使い、舞台は純和風。和風なんだけど、伯爵夫人の洋装はまったく違和感がなく溶け込んでいる。

このあたりが百戦錬磨の野田さんの演出だろう。さらに、オーケストラピットが客席からきちんと見えて、指揮者の井上道義さんのタクトも堪能できる。

見ないと損!と申し上げます。

ネタバレBOX

長い竹?の棒を効果的に使い、ある時は鳥居にも変身。観客の喝采を浴びた。
カーテンコールでは野田さんも登場。井上さんとそろって、この舞台の真の主役ぶりを印象づけた。

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