かずの観てきた!クチコミ一覧

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送り火

送り火

劇団民藝

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2017/04/14 (金) ~ 2017/04/24 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/04/16 (日) 13:30

日色ともゑの澄んだたたずまい、身のこなし、台詞。経験を重ねた彼女らしいかっこたる存在が、この戯曲を光らせている。女優の力を目のあたりにできる、素晴らしい舞台だ。

ミュージカルお菓子放浪記

ミュージカルお菓子放浪記

チーム・クレセント

あうるすぽっと(東京都)

2017/04/12 (水) ~ 2017/04/16 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/04/15 (土)

昨年亡くなった西村滋さんの自伝的小説を舞台化した。ミュージカルにしたことで、戦争孤児という今では重いテーマもすっと胸に入ってくる。もちろん原作にあるのだが、鋭い台詞が散りばめられている。軽快に進む舞台だが、戦争孤児という言葉を風化させないぞという、作り手の迫力がビンビン伝わってくる。

白い花を隠す

白い花を隠す

Pカンパニー

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2017/02/28 (火) ~ 2017/03/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/03/05 (日) 14:00

座席1階

従軍慰安婦の国際市民法廷をめぐるNHK番組の改変事件を、家族の人間模様をうまく絡めて描いた力作だ。台本の完成度の高さに感動する。石原燃という劇作家はこれまで見たことはなかったけど、注目すべき社会派作家だ。
ドキュメンタリーは、現場の人たちの声をきちんと伝えることが最低限の基盤だ。それを政治的圧力によって時の政権が変えてしまうのは、表現の自由の侵害で立派な憲法違反だ。しかし、メディアの端くれといえども制作会社の社員たちにも生活がある。特に巨大なNHKから干されてしまえば、会社が行き詰まって「路頭に迷う」ことになる。プロデューサー一人では戦えない。組織が存亡を賭けて戦うのは、ましてや現実的ではないのである。こうやって表現の自由はねじ曲げられ、抑圧された物言えぬ社会が作られていくのだ。
石原氏はこの事件を題材に戯曲化するのに3年をかけたという。十分に温め、考え、完成度を高めた作品だ。これを演じたカンパニーの役者たちにも拍手を送りたい。
米国でトランプ政権がメディアと対決し、自由な言論が厳しい局面に立たされている今、この戯曲を世に問う意味は大きい。

炎 アンサンディ

炎 アンサンディ

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2017/03/04 (土) ~ 2017/03/19 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/03/04 (土) 18:00

座席1階

再演の舞台、今日が初日。戦火が絶えない中東の現実を本質的な部分で刻み込まれる。中東の人たちに門戸を閉ざすトランプ大統領に見てもらいたい力作だ。終わった瞬間から体が震えるような感覚になる。3時間半という長さを感じさせない濃密な舞台は、小空間のシアタートラムならではか。演出も見事だった。

ネタバレBOX

ラストシーンの雨は、すべてを洗い流すのではなく、すべてを刻み込むナイフだ。
たわけ者の血潮

たわけ者の血潮

TRASHMASTERS

座・高円寺1(東京都)

2017/02/02 (木) ~ 2017/02/12 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/02/05 (日)

座席1階

中津留さんの新作を見たくて、久しぶりに東京に出てきた。舞台設定が特殊なのだが、ヘイト法案を軸にして展開する中津留ワールドは、今回も鋭い。曖昧さと軽さ、自分にだけ都合のいい言葉て空気が蔓延する今への直撃弾だ。相対する客席も相当な返り血を浴びる覚悟で臨む覚悟が必要だ。

SHAKESPEARE IN HOLLYWOOD~ハリウッドでシェイクスピアを~

SHAKESPEARE IN HOLLYWOOD~ハリウッドでシェイクスピアを~

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2016/08/31 (水) ~ 2016/09/14 (水)公演終了

満足度★★★★

知的なドタバタ劇
カトケン事務所の笑いは意表を突かれるものが多いが、今回もカトケンファン納得の笑いだ。シェークスピア戯曲の名セリフのパロディーがいい。
各劇団から意外な顔が出ているのも楽しい。中でも、カトケン舞台のフランス喜劇に初めて出て「カトケンさんに呼んでもらえるのが夢だった」などと語っていた瀬戸早妃が再び起用され、存在感を発揮している。

八百屋のお告げ

八百屋のお告げ

グループる・ばる

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2016/09/01 (木) ~ 2016/09/05 (月)公演終了

満足度★★★★★

元気の素がいっぱい
3回目の再演という。グループは30周年で、はや円熟の舞台である。新たな演出者を迎え一新したという今回は、元気の素が散りばめられた見事な舞台だった。
松金よね子ら3人の女優はぴったり息の合った軽妙なリズムで舞台を引っ張ったし、大谷亮介らゲストの男優3人もそれぞれ個性を発揮。リズムは
大きく振幅して客席を飽きさせない。

盛大なカーテンコールも納得だ。見てよかったと言える舞台。

狙撃兵

狙撃兵

劇団俳優座

俳優座スタジオ(東京都)

2016/07/23 (土) ~ 2016/08/07 (日)公演終了

満足度★★★★

メタファーを撃ち抜く銃弾
カナダの劇作家ジョージ・ウォーカー作の原題「デッドメタファー」の日本初演。分かりやすい物語だが、隠喩(メタファー)の効いた味のある舞台だ。
デッドメタファー、すなわち死喩は、ある言葉が使われるうちに別の意味を持つようになって変質していくこと。除隊した元狙撃兵が、再び狙撃兵として雇われるとき、その銃弾は誰を狙い、何のために放たれるのか。簡潔な、分かりやすい舞台だけに、客席に放たれるメタファーに考え込むことになる。

俳優座の出演者たちはさすがの演じぶりだ。特に、狙撃兵の身重の妻を演じた野上綾花に拍手!

ゴンドララドンゴ

ゴンドララドンゴ

燐光群

ザ・スズナリ(東京都)

2016/07/16 (土) ~ 2016/07/31 (日)公演終了

満足度★★★★

今回もズシリ、坂手ワールド
都会のビルで窓拭きに活躍するゴンドラをモチーフに、坂手洋二さんらしい硬派な社会派ネタを散りばめながら急テンポで展開する。今回は客席との心理戦のような舞台で、目が離せない。だから、結構ずっしりくる。覚悟して乗り込まないと、ずしっと疲れるかも。

でも、これが、練り上げられた坂手ワールドだ。だから、期待通りの舞台だった。ゴンドラという着想が見事だ。坂手劇を演じきった俳優陣に拍手。

ネタバレBOX

体と心が入れ替わるのは、だいたい男女間の設定だが、今回はゴンドラ作業員の男同志。入れ替わりは複雑に展開し、物語の深みを増していく。ここが、かなりの見どころだ。
改訂の巻「秘密の花園」

改訂の巻「秘密の花園」

劇団唐組

駿府城公園 富士見広場(静岡県)

2016/06/18 (土) ~ 2016/06/19 (日)公演終了

満足度★★★★

昭和の匂い、徳川の公園で
唐組の名作「秘密の花園」は、静岡ならではの雰囲気で行われた。徳川家の駿府城という土地の空気、昭和の匂いが濃厚な舞台、平成生まれと思われる若い多くのお客様。42年ぶりという静岡公演は、時空を超えたかのような雰囲気の中、盛大な拍手が鳴りやまなかった。

高校の夏服を着た女の子たちからは、物語が分かんないけど、という笑いも出ていたが、そんなことは関係なさそうだ。昭和のギャグ、音楽、男と女の微妙なトーク。これらを水を浴びるように味わいながら、テントの中は世代を超えた熱量が盛り上がり、一人一人が舞台に向き合うという演劇の原点が鮮明になっていく。

唐組の舞台、次はいつ見られるのか。拍手の大きさには、そんな思いも込められている。


農業少女

農業少女

劇団静火

七間町このみる劇場(静岡県)

2016/06/03 (金) ~ 2016/06/04 (土)公演終了

満足度★★★★

モモコの熱演に釘付け
15年ほど前、野田秀樹が書いた濃密な戯曲。静岡・七間町という濃密な街で、地元劇団静火が好演した。

松尾スズキが演出して、多部未華子が主役のモモコを演じたという記録がある。農業が大嫌いと九州を飛び出して東京行きの寝台特急に乗ったモモコは、ロリコン男に住まわせてもらいながらいかがわしい商売やボランティアなどさまざまなところに首を突っ込み、ウンコがウンコの臭いを消すという『農業少女』という銘柄の米を不登校の少女たちに作らせて儲ける、という策略に巻き込まれる。

野田MAPらしい、テンポよく意外な展開が続く戯曲だ。列車の音、携帯の着信音などSEまで自分たちでこなす静火の役者たちの、汗とつばの飛び散る熱演に心地よく巻き込まれる。特に、モモコの熱演に釘付けだ。千秋楽のモモコを演じたのは海野とも代。その小さな体からは想像がつかないような熱量が発せられていた。

静火はこれまで、シェークスピアなどに取り組んできた小劇団だったという。今年は野田作品をやると決めて、「農業少女」はその実験公演という位置付け。秋にやるのは野田MAPの第一回公演の演目「キル」。千秋楽のあいさつでは、この秋公演での出演者を客席から募集した。

東京・下北沢などの小劇場では、客席と舞台の距離が近いのが味なのだが、静火を率いる演出家の渡辺亮史氏は、この静岡・七間町を「下北沢にしたい」と意気込む。千秋楽で次回公演の出演を募るという劇団は、本家の下北沢以上にシモキタちっくである。七間町が静岡の演劇好きたちによってどんな化学反応を起こすか。これは見逃せない。

ネタバレBOX

やっぱりSEは、役者に口で言わせるより本物を使った方が。かなり厳しい演出に、役者たちはよく応えていたと思う。
セールスマンの死

セールスマンの死

文学座

あうるすぽっと(東京都)

2013/02/22 (金) ~ 2013/03/05 (火)公演終了

満足度★★★★

悲しいがまっすぐな親子
時代に取り残された男のかたくななまでな生き方、そのようにしか生きられなかったピュアな男と家族の姿が胸を打つ。東京で見られなかった文学座の名舞台を、静岡の地方公演で拝見した。

どちらかというとアトリエ公演向きの舞台なのかもしれないが、今日のステージは2階席もいれれば1000人は入る大舞台だった。そんな広い空間でも後ろの方まで客席の目を引きつけ続ける演技はさすがだ。

仕事一筋に生き、リタイア後はローンの終わった家で菜園をして、結婚して家族を持った息子たちの訪問を楽しみに生きる。日本でも、現代でもありそうな普通の夢。しかも、自分の意見を曲げず、息子たちの意見を聴こうとしないいわゆる頑固おやじ。アーサーミラーの作品だが、かなり日本的というか、日本人の俳優たちが演じて味を出せる舞台だとも言える。

ラストシーン、高齢の女性客がハンカチを握りしめる姿が目立った。まっすぐな親子をまっすぐに演じた俳優たちに、拍手を送りたい。

パーマ屋スミレ

パーマ屋スミレ

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2016/05/17 (火) ~ 2016/06/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

前向きに泣ける舞台
1960年代の九州、炭鉱町を舞台にした感動作。鄭義信の在日韓国人三部作の一つで、新国立劇場が一挙上演。三部作の中でもかなり悲劇的な物語だが、その涙はなぜか前向きな香りがして、心の底から見て良かったと思える。

東京五輪があり、高度成長の最中の日本で、石炭から石油へ世の中のエネルギーが変わる時代。その波に翻弄され、会社にも国家にも見捨てらた家族の人生。あの頃の出来事を歴史にしてしまうのはまだ早い。豊かになったはずの現代日本でも、会社や国家に捨てられて苦しんでいる家族への想像力が問われる。
この舞台は歴史を振り返っているわけではなく、私たちが気づかないでいる現実への扉となっている。

掛け値なしに見る価値のある舞台だ。俳優たちの実力が、それを支えている。

ブンナよ、木からおりてこい

ブンナよ、木からおりてこい

劇団青年座

旧さいたま市民会館おおみや(埼玉県)

2016/05/21 (土) ~ 2016/05/21 (土)公演終了

満足度★★★★

ブンナが愛される理由
青年座が千回を超えてロングランを全国で続ける、劇団の歴史とも言える戯曲。水上勉原作を、時の演出家がアレンジして常に新たな舞台を築き上げてきた。いま、新国立劇場演劇芸術監督を務める宮田慶子も若いころから関わってきた。ずっと見たいと思っていた舞台を、ようやく大宮でつかまえることができた。
カエルたち小動物を主人公に、生きるとは何かを分かりやすく演じていく。客席からは「青大将は毎回、イケメン俳優がやるのよね」という声も。ずっと楽しみにしているファンがついている舞台の一つなのである。
他者の命をいただいて自分の命をつなぐ場面では、シャボン玉による美しい演出があった。見て良かったと思える舞台だ。

トンマッコルへようこそ

トンマッコルへようこそ

ナッポス・ユナイテッド

Zeppブルーシアター六本木(東京都)

2016/05/04 (水) ~ 2016/05/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

桟敷童子が舞台を絶妙な色合いに
韓国で大ヒットした名作。東憲司だからこそ、という演出に加え、劇団桟敷童のおなじみのメンバーが、悲しい物語にさわやかな風を加えてみせた。劇団の本領発揮というところだろう。

国を守るためには武器を持って戦え、と言われる。武力にはそれ以上の武力が必要なのだ。では、武器を持たない人々は、本当に無力なのか?
この舞台は、武器を持っていた軍人たちによって救われた山奥の村の話だが、本当の強さとは何だろうと考えさせられる。

舞台は朝鮮戦争当時の半島だが、今はとてもリアリティを持ってのめり込める。

三代目、りちゃあど

三代目、りちゃあど

SPAC・静岡県舞台芸術センター

静岡芸術劇場(静岡県)

2016/04/29 (金) ~ 2016/05/01 (日)公演終了

満足度★★★★

国際色豊かな野田演劇
1990年に野田秀樹が初演しているが、全く古さを感じない。シンガポールのオン・ケンセンの演出手腕が光る。

郷ひろみとか70年台のJ-POPの多用には違和感もあったが、光と影、影絵をうまく使っての演出は見事だ。野田の戯曲は面白い。それにどう味付けするなのだが、十分に成功している。英語と日本語の字幕が出るのもいい。国際色豊かな野田の戯曲を感じられる。ふじのくにせかい演劇祭の、間違いなく目玉作品。

二人だけの芝居―クレアとフェリース―

二人だけの芝居―クレアとフェリース―

劇団民藝

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2016/04/04 (月) ~ 2016/04/21 (木)公演終了

満足度★★★★

奈良岡朋子の迫力がすごい
難解な劇である。パンフレットによると、それは訳・演出の丹野郁弓も認めているし、この二人芝居の出演者も同じだという。しかし、現実と空想、過去と現在、さらに芝居の練習と現実生活をシームレスに行きつ戻りつするこの会話劇を、奈良岡朋子と岡本健一が見事に演じきっている。

元ジャニーズの岡本健一は既に円熟というか、ベテラン舞台俳優の域に達している。そのベテランが「超ベテラン」の奈良岡朋子に堂々たる絡みを見せてくれるのだ。その岡本の迫力、言葉の強さ、声の通り具合にさらに負けない奈良岡の舞台は見事と言うよりない。40歳の年の差、86歳の迫力に客席は圧倒されている。だが、ある意味で、この奈良岡の迫力を引き出しているのは、岡本のすごさなのだろうと思う。

難解な会話劇で眠くなるかもしれない。だが、その節々で舞台に釘付けになる、その迫力を堪能したい。

ディズニーミュージカル「リトルマーメイド」東京公演

ディズニーミュージカル「リトルマーメイド」東京公演

劇団四季

四季劇場[夏](東京都)

2013/04/07 (日) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度★★★★

素直に楽しめる
ディズニーの有名作品でロングランだから、家族連れやカップルが客席に多い。子どもの視線を釘付けにして、しかも飽きさせない工夫が凝らされている。愛と勇気の物語、思わず口ずさむ楽曲。そして、海の中と宮廷などを瞬時に変えてしまう演出。ヒットの要件はそろっている。

アリエルを演じた小林由希子はよかった。空中、いや水中での動きにちょっと苦しさがあったようにも見えたが、歌唱は安定感がある。カニのセバスチャンの荒川務もよかった。

毛皮のマリー

毛皮のマリー

パルコ・プロデュース

新国立劇場 中劇場(東京都)

2016/04/02 (土) ~ 2016/04/17 (日)公演終了

満足度★★★★

やはり、美輪明宏でないと
寺山修司の名作で、あちこちで上演されてきた。だが、この戯曲は天井桟敷のときに寺山が美輪明宏に当て書きしたとされる。昨年末に花組芝居で上演されたのも見たが、今回の舞台を見ると、やはり美輪でないと思わせる。

モーニング娘。の曲を使ったりしていたが、それ以外はやはり、昭和のムードあふれる演出だ。それは、きっと成功の鍵だと思うのだが、オーディションで選んだという美少年役、勧修寺保都がどうしても浮いてしまう。時代の流れを埋めるのは難しいかも。特に、お客さんの層が幅広い今回の舞台では。

幅広い、と言ったのは、若い女性から年配の男女までという客層で、新国立中劇場は多彩な年代層で埋まった。笑うポイントがずれているというか、お客さんの年齢によって笑いが出る場面が違う。見ていて、それが結構な違和感がある。つまり、隣に座っている年配のおじさんがガハハと笑うのが、結構迷惑だったりする。
そういう意味でも特別な体験ができる貴重な戯曲だ。

イニシュマン島のビリー

イニシュマン島のビリー

ホリプロ

世田谷パブリックシアター(東京都)

2016/03/25 (金) ~ 2016/04/10 (日)公演終了

満足度★★★★

鈴木杏演じる暴力女の示すもの
生卵を頭でかち割るんである。かわいい顔した暴力女・ヘレンを鈴木杏、その弟を柄本時生が演じる。とにかく口は悪いし、すぐ殴る。気に入らないと売り物の生卵の相手に投げつける。その主な被害者は弟だ。

劇中、姉が「イングランド対アイルランド」というゲームを持ち掛ける。姉がイングランドの立場になってアイルランドの弟を殴る、蹴るという遊びだ。「これこそがアイルランドの歴史だ」と姉は言うが、相手を威嚇し、暴力で制圧する女から、この国の悲しい生い立ちを学ぶことができる。

さて、主役のビリーを演じた古川雄輝はなかなかの力演だ。「びっこ」に加え、結核に罹患。幼なじみのヘレンにも殴られたり蹴られたりするから、まさに体を張っての舞台だ。主役だけでなく、上記の姉弟、そして、江波杏子演じるアル中の老女など、脇を固めるメンバーも熱がこもった立ち回りを見せてくれる。

ネタバレBOX

生卵は本来、ここに書くべきかもしれませんが、タダ投げたりかち割ったりするだけでなく強烈な場面がもっとあります。
最前列の席の人たちは、生卵の汁をよけるビニールカバーで防御していました。

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