タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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ぼくたちの学校

ぼくたちの学校

演劇企画ハッピー圏外

TACCS1179(東京都)

2014/11/19 (水) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

満足度★★★★

そういえば学生運動が…
自分より先輩たちの世代で盛んだったようだ。そして学生寮に入寮した経験がないから、”そうだったんだ”という追体験もしくは俯瞰した見方になった。それでも1972年当時のノンポリ大学生を通してみた学生運動の雰囲気は出ていたと思う。その緊迫状況は、終盤になって発揮される。惜しむらくは、その表現が状況ではなく、セリフ(アジテーション)による説明になっていたこと。
もう一方のテーマ…上京した純情大学生の恋愛、女性同士の嫉妬・裏切りを交えた生身の人間像のあぶり出しが見物であった。
その演出には、「演劇企画ハッピー圏外」らしさが…
(後日追記)

通る夜・仰げば尊し

通る夜・仰げば尊し

劇団芝居屋

ザ・ポケット(東京都)

2014/11/19 (水) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

満足度★★★★★

覗かれる人生芝居の味わい
今回公演…消滅危惧地域となっている北国の辺鄙な地ホタムイが舞台になっている。わが故郷も山間部の豪雪地帯だった。懐かしさとともに、現在の境遇(都市部には演劇、映画、音楽等の文化に触れやすい環境下にある)は恵まれていることを痛感した。
僻地教育に情熱を燃やした教師の通夜、卒業生の想いは分かるような気がする。さらに地域が家族そのもののような絆の強さがあり、見方によっては過干渉かもしれない(笑)。
さて、芝居屋の公演が好きなところは、演技がしっかりしているところ。もちろん脚本・演出は秀逸である。今回、脚本・演出を行っている増田再起氏の出番が少ない。そして、本公演はオーディション(1名)以外は、劇団員だけで上演しているという。当日配布の「芝居屋とは」からその趣旨は読み取れた…
(後日追記)

「螺旋戦車PART20 virus hospital-pandemic-」

「螺旋戦車PART20 virus hospital-pandemic-」

SPIRAL CHARIOTS

ステージカフェ下北沢亭(東京都)

2014/11/16 (日) ~ 2014/11/16 (日)公演終了

満足度★★

呆気ない
あまりに呆気なさすぎて物足りない、というのが第一印象である。
観客参加型のゲーム演劇で、今年は4公演目であったが、こんなに早く解決してしまっては劇になっていないと思う。
本公演では、病院が舞台で「ウィルス」「感染ウィルス」を駆除するものだが、ほとんど推理することもなく、観客はほとんど正答した(わざと不正解に…大人の対応をした方3名)。
前説でもあったが、エピローグ、プロローグ以外はアドリブだからやむを得ないのだろうが…。

次回公演を期待しております。

音楽劇・聖なるかな

音楽劇・聖なるかな

海千山千プロデュース

OFFOFFシアター(東京都)

2014/11/12 (水) ~ 2014/11/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

お見事!
素晴らしいコメディ音楽劇…ストライクゾーンに速球が来た感じである。良質な笑いを誘いながらも、しっかり社会批判を込める。それも正面から堂々(シニカルではない)と行うから誰にも分かる。本当に10年後には現実になっていそうな物語である。
舞台は、宗教(修道院)…そこに政治的な話題(寄付金に課税)を取り上げ、さらに修道士達の人間としての苦悩が…どちらかと言えば避けてしまいがちな設定であるが、上手く描いていた。
また、音楽劇…専門家ではないキャストの味わい深い歌声は、温かみがあり印象に残る。なにより歌詞が、劇中のセリフとして生きている。
今「音楽劇・聖なるかな」は、4年前の男性版として上演しているが、更に条件・状況を変えて再演してほしいものである。
全てにおいて満足した公演でした。

ブルドッグは支配できないⅡ

ブルドッグは支配できないⅡ

湾岸ビルダーズ

ワーサルシアター(東京都)

2014/11/15 (土) ~ 2014/11/17 (月)公演終了

満足度★★

残念ながら…
自分はあまり好きな公演ではなかった。何を表現したかったのか、が分からない。脚本家・演出家が描きたい思いは大切だが、観客(自分)はついて行けなかった。もう少し観客を意識した目線がほしい。芝居は虚構の世界だが、それにしても、もう少し現実性を持たせないと感情移入出来ない。最後は、ハートフルコメディのような結末だが、印象に残らない。

ネタバレBOX

間違えられて捕まった男(桐島)を中心に、留置所に拘留された人間達が起こす、笑いあり涙ありの人間ドラマ…という謳い文句であった。
確かに、舞台設定はそうなのだが、留置所にしてはあまりに自由すぎて、その拘束感がない。また看守があまりに丁寧な対応で、サービス業における接客のようだ。
なにより留置所4号棟には幽霊が出るという噂があり、その通りに出没する。その幽霊は誰にも見えてしまい、生身の人間として行動しているのが不思議だ。もっと幽霊を登場させている理由付けを考え、その存在?をどう芝居に活かすか。

公演全体を通じてドタバタコメディ風で、メリハリが薄くなった分だけ、最後のハートフルな想いは飛んでしまった。

もう少し描きたい内容を整理・構成すれば、面白いと思う。
次回公演に期待しております。
巨人伝説

巨人伝説

劇団俳優座

俳優座劇場(東京都)

2014/11/06 (木) ~ 2014/11/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

虚人伝説
人間の生に対する執着…究極には、見栄や外聞もなく虚勢を張ってでも生き抜く。その魂胆が見て取れる秀作だと思う。
あまり書き過ぎると、自分が透けて見えるようで恥ずかしく、また怖い。

全てにおいて印象深い公演でした。

Antique

Antique

Project ONE&ONLY

「劇」小劇場(東京都)

2014/11/12 (水) ~ 2014/11/16 (日)公演終了

満足度★★★★

懐かしい雰囲気
優しい空気がゆっくり、また時として激しく流れる感覚が心地良い。小さな場内に大きな想いが詰まった不思議な空間を創り上げた。
アンティークショップの雰囲気は出ていたが、よく見ると不自然な(古美術品、骨董品というものから外れた)物も置かれていた。そこはご愛嬌だろう。想いが込めれた品々は、その想いが既にアンティークという解釈なのだから…。

ネタバレBOX

ストーリーは、店内のアンティークを巡る、店主(老女)と客(男)の会話によって展開する。その会話は「主語は?」がセリフの接頭語のようになっており、“誰の想い”、または”誰への想い“を感じ取ると、劇中の回想シーンが面白い。多少くどいと思うが、会話の主導権を転換させるには効果的だったと思う。
公演全体を貫いた思いは、表面的には攻撃的なセリフの応酬だが、底流には思いやりが…。

今後の公演も楽しみにしております。



マッチ売りの少女

マッチ売りの少女

CHAiroiPLIN

d-倉庫(東京都)

2014/11/06 (木) ~ 2014/11/09 (日)公演終了

満足度★★★★

マッチ売りの少女の…
交響曲(シンフォニー)のようだった。
「死」を連想させる原作に比べ、本公演は「生」を感じた。



ネタバレBOX

原作は大晦日の夜、少女が寒空の下でマッチを売っていた。なかなか売れず、あまりの寒さに、少女は少しでも暖めようとマッチに火を付けた。その時流れ星が流れた。祖母が「流れ星は、消えようとしている誰かの命なんだよ」と言っていたのを思い出す。最後のマッチに火を付けた。その時、祖母が現れ、少女を優しく抱きしめて空へ昇っていった。新年を迎えた翌朝、少女はマッチの燃えかすを抱えて、幸せそうに微笑みながら死んでいた。

本公演は、逆に希望の火(灯)が見えたかも…。戯曲をダンス表現で観(魅)せてくれた。
自分のイメージは、スズキ拓朗氏の太いマッチ棒(独舞)は擦らない。精神的支柱のようで、いくら弄ばれても揺らがない。一方、少女マッチの群舞は、紅蓮のようであるが、その先は儚さを感じてしまう。同一場面において、「独舞」「群舞」は交わることはないが、常に対比させるような印象を持たせる。そして、群舞のマッチ棒は静かにマッチ箱へ…不条理を逆手に取った逞しい公演に感じた。
今後もすばらしい公演を期待しております。
爆弾魔メグる

爆弾魔メグる

あたらしい数字

王子小劇場(東京都)

2014/11/07 (金) ~ 2014/11/10 (月)公演終了

満足度★★★

坦々と…
進展する普通の恋愛劇だった。
自分の中に爆弾は膨らんでこなかった。黒い風船という比喩爆弾は膨らませた大きさは変わらないのだろうか。私(めぐる=女子高生)にくれたときから、20歳代前半までの状況の変化に応じた爆弾のあり様は…

旗揚げ公演で爆弾とくれば、もっと刺激的な内容かと思ったが、誰もが澱のように沈澱させる嫌な気持ち。その爆発する限界点の描き方が弱かったようだ。もっと良い子が内に溜め込んでいく様をデフォルメして表現してもよかった。

ネタバレBOX

私の爆弾はもちろん、高校時代の友達やアイドルが抱えた爆弾も描いた。登場した女性の爆弾を描いたことから、相対的に私の抱えた爆弾の威力(印象)が弱くなったように思う。他の人のエピソードをすべて自分に向けて溜め込む、そんなイメージを持たせたら、威力は違ったと思う。

舞台の観せ方は上手い。最小限の動きで場面転換を図っている、一方、暗転した場合はその時間が長く、観客の集中力を欠く。

演技は平均しておりバランスが良い。若い女性の本音的なことがチラッと見え隠れするところは面白かった。

全体的には面白い視点と舞台構成は確か。
今後が楽しみな劇団だと思いました。

かなたから

かなたから

アンティークス

「劇」小劇場(東京都)

2014/11/06 (木) ~ 2014/11/09 (日)公演終了

満足度★★★★

真面目な…
公演スタイル。伏線を施した内容は回収・説明していた。
また、”かなたから”にあえて繋げなくても十分面白い。逆にSF風にすることで現実の社会性や人間性という身近な問題を回避したようで表層的な印象になった。また、演出として20数年間という経過を描いているので、その状況の変化はキャストの演技力に負うことになった。しかし、基本的には幼子時代から成人までを演じたが、途中回想シーンも取り入れながら違和感なく最後まで観ることができた。

ネタバレBOX

結末は、少女はエイリアン?不妊夫婦に拾われ、その子として育てられるが、母親がカルト教団に入信し、その団体に懐疑的な父親と夫婦喧嘩が高じて…父親が母親を含む親族を殺してしまう。父親は無実を訴え20年に亘る再審請求で無罪を勝ち取る。実は少女の親友の母親(教団信者)が犯人という結末。
長い年月を描いているが、全体として少女の成長記録のようで、裁判等(再審請求の署名活動は、少女およびその友達の活動的側面のようだ)はその一部の出来事として捉えている。ストーリーは伏線をはり、それを丁寧に解いていく親切さ(前述済み)。
好感の持てる公演であるが、最後は100歳まで生き邂逅したような件があったが必要だろうか。
今後の公演にも期待しております。
IN/GO rewrite

IN/GO rewrite

EgofiLter

ワーサルシアター(東京都)

2014/11/06 (木) ~ 2014/11/10 (月)公演終了

満足度★★★★

ザワザワする不思議な感じ
サイコ・サスペンス風な展開だが、宗教・民俗学的な背景を取り込み、重層的な観せ方にしていた。
少し気になるところが…

ネタバレBOX

ストーリーは、母親の葬儀のため、久し振りに実家に帰ってきた次女と近所の人たちや葬儀社係員との人間関係を中心に展開する。母親を嫌悪して長いこと帰らなかった理由とは・・・ここから謎解きが始まる。

気になる点は次のこと。
1.ストーリー構成にメリハリが乏しく、また見せ場のような印象に残る場面が少なかったと思う。
2.暗転時間が長く、集中力を欠いてしまう。
3.濃密な会話劇があるが、演技力(キャラの濃淡?)に差があるようで、バランスを欠いたような違和感を覚えた。

それでも全体的な仕上がりは面白く、妖しげな雰囲気は出ており見応えがあった。また、舞台セットは見事に作り込んでおり、覗き見しているようなワクワク、ドキドキ感を持てた。

今後の公演にも期待しております。
The Wonderful World ~サヨナラ愛しき世界~

The Wonderful World ~サヨナラ愛しき世界~

ネオゼネレイター・プロジェクト

小劇場B1(東京都)

2014/11/06 (木) ~ 2014/11/11 (火)公演終了

満足度★★★★

不気味さあり
オドロ怪しい雰囲気が漂う舞台セット。場内に入った途端、異空間を思わせる素晴らしさ。薄暗い室内は時間感覚が定かではなく、これから起こる不思議な出来事を考えると、”逢魔が時“か。

ネタバレBOX

廃墟と化したビルの地下、そこに不思議な機械が設置されており…。現在と近未来の時空間を往来し、退廃・破壊的な状況からの打開を図る、そんな明日を信じる物語である。
事象に時空間移動、医師を思わせる白衣、意味不明な言葉の羅列…芝居によく使用される妄想・幻覚治療…覚醒したら精神科病院だった、というオチかと思った。しかし、あくまで現実社会として描いていた。ストーリーが混沌、漂流したようで一見破綻したように思った。
演出は、時空間移動する際、暗転させるがその時間が長く、また場面転換後のテンポが緩慢になり、見ていて集中力を欠いてしまう。確かに状況が違う設定になるが、そこはセットの一部(機械or部屋番号)が変更するのみ。全体の流れを大切にしてほしかった。出来れば素晴らしいセットに見合った緊張感ある演出を保ってほしかった。

とはいえ、得体のしれない恐怖のようなものは十分感じられるし、迫力もあった。女優陣のキャラ・特技などは明確に表しており、その演技は見応えがあった。

今後の公演も楽しみにしております。
サムライ・シェークスピア "R&J”

サムライ・シェークスピア "R&J”

シアタージャパンプロダクションズ

笹塚ファクトリー(東京都)

2014/11/05 (水) ~ 2014/11/09 (日)公演終了

満足度★★★★

演舞による演出は見応えあり
シェークスピアの「ロミオとジュリエット」(邦題)を原作として、舞台を日本に見立てた公演である。もちろん梗概は原作を踏まえたものになっているが、描く視点をロレンス神父を悲劇に導いた被疑者として捉え、法廷心理劇を構築している。だから、証言者としてのロミオやジュリエットの親近者、従者が証言台へ立つが、その発言は時・場所・状況・立場で違う。事象は羅列されるが、真実は明らかになるのか。
ニューヨーク公演に向けた日本プレビューということを前提に観ないと、ツッコミ所が…芝居と同様、アメリカという違う場所・状況等考えあわせると合点できる。

ネタバレBOX

この公演の面白いところは、観客は俯瞰しているが、当事者達は断片的、もしくは思い込みによる証言になる。同じようなことが我々の日常生活・行動にもみられると思う。自分の立ち位置による見方は主観的であり、一事象を見ているが、他者から見た場合はどうだろう。現実に舞台を観るように俯瞰していないのだから。この公演の眼目の一つが視点の転換(主人公は二人ではなく、二人を誤って死なせたロレンス神父を被疑者にした劇)を試みたという。その意味では、試みは成功したかもしれない。

一方、その描き方は事象の再現・回想で、あえて場面を分割し、回想ごとに繋ぐ必要はなく、時系列的にストーリーを展開したほうがわかりやすいと思う。この分割/結合という観せ方がテンポのキレを鈍くしたようで残念である。

もう一つの見所は、”舞”である。序盤の群舞や、芝居の所々で剣舞が観られる。時代劇のような殺陣もあるが、それはストーリーを構成する演出として取り込まれている。「舞踊」そのものは見応えがあったが、芝居・舞踊の関連性が今ひとつ融合していないようで、公演の中で分離した演出に見えた。またサムライに原作の名前はビジュアル面も含めて不似合いだと思う。日本公演では、なぜ日本・サムライにする必要があるのか、という違和感が残る(ニューヨークでは喜ばれるか?)。
あくまで日本公演の視点での感想である。
最後に、シェークスピア劇にある有名なセリフなど、アフォリズムな言葉があると、印象深い公演になると思う。

ニューヨーク公演の成功を願っております。
裏マン寄席in中目黒

裏マン寄席in中目黒

劇団裏長屋マンションズ

ウッディシアター中目黒(東京都)

2014/11/03 (月) ~ 2014/11/04 (火)公演終了

満足度★★★

ゆる~い笑い
赤塚真人座長をはじめとした落語好きによる、落語二席、落語芝居二物語。全てがゆる~い笑いに包まれる。今まで観た劇団裏長屋マンションズの公演は、泣き笑いの人情物だったが、今回は徹底的に笑いだけ。わざとなのか定かではないが、台詞忘れ、噛み、トチリなど普通の芝居であればヒンシュクもの。しかし、この劇団だけは大目にみてしまう。それは、観客を大切にしていることが十分感じられるからだろう。
常連客に愛され、支えられていることは一目瞭然だ。そして、赤塚座長の樂日打ち上げ会の誘いに、その会場案内を手にして嬉々とした観客がなんと多いことか…このサービス精神が集客力の源と実感した。

次回公演は、少し違う劇風になりそうな説明であった。それはそれで期待しております。

宇宙へのマーチ

宇宙へのマーチ

タッタタ探検組合

赤坂RED/THEATER(東京都)

2014/10/30 (木) ~ 2014/11/03 (月)公演終了

満足度★★★★

捻り、イロニーがあれば。
まず、舞台セット(仕掛け)は素晴らしい。そしてキャストのキャラクターを意識した演技は安定感があって安心して観ていられる。
脚本は、あまり捻りが感じられず、小じんまりとまとまったようで、本来の劇団のカラーが出ていないように思う。
宇宙開発が政府主導ではなく、民間企業の共同出資で行われるという現実感、そこに隠された思惑がチラつく。
公演はコミカル仕立てだが、その底流には、閉鎖的状況下における人間のエゴ、民族的問題を意識した描写が見え隠れする。この硬派的な投げかけをコミカルに軽く流すと言うイロニーが弱かったようだ。

この記載は、いつもレベルの高い公演をしている劇団への期待の表れである。

泥の子

泥の子

劇団 きみのため

劇場HOPE(東京都)

2014/10/29 (水) ~ 2014/11/03 (月)公演終了

満足度★★★★★

逞しく生きる
1948年当時…生きるためになりふり構わないという、バイタリティを感じさせる公演だった。一方、貧しさ故の悲哀も十分描き込んだ秀逸な作品だと思う。戦後の食料というと、食糧管理法の下で、栄養失調で亡くなった裁判官のことを思い出す。闇米拒否する清貧さによるそうだ。
さて、単に善悪だけを論じることに意味がない状況下…この苦難を経て今の日本がある。この公演は、登場したような人達の姿を通して、現在の有り様を考えさせる一石を投じた作品だと思う。刑務所のほうが食事の心配がないようなセリフがあったが、現在では働く場所、就業形態の不安定化による生活困窮が問題になっている。正直者(法遵守した人が死亡)が……不条理にならないようにする必要があるだろう。
さて公演だが、舞台セットは悲惨な状況を感じさせる見事な作り込みであった。そのセット(窓からの出入りも含め)を十分活用した演出も見事であった。一部小物等(盗品靴が新品、黒先生の靴下が新しい)に違和感はあったが、そこはご愛嬌だろう。
全体的には、社会的訴求力のある好公演であった。

今後の公演にも期待しております。

ネタバレBOX

ところで、黒先生(塚本一郎)が臨終間際に姉御(西村有加)に告白するシーンは、やはり吐露することで、気が楽になりたかったか。説教をしていた人間が…やるせなさすぎるが、さらに人間の暗部をえぐり出し、予定調和で終わらせない。逆に印象付け見事な結末に導いた。
姉御が、遺骨を抱いて号泣するラストシーンは感動的であった。
夜食の時間

夜食の時間

張ち切れパンダ

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2014/10/31 (金) ~ 2014/11/05 (水)公演終了

満足度★★★★

序盤とラストの落差が凄い
願い通りに食したら…序盤とラストの劇風を激変させる演出には驚いた。詳しくは書けないが、個人的には受け入れられる内容で見応えがあった。

ネタバレBOX

ある地方の小料理屋が舞台…このセットの作り込みは見事で、本当に店内に居るような感覚になる。この店内で人情ものが展開すると思われたが、途中から急展開。観終わってみれば”サイコ”もしくは”ホラー”ミステリーという印象である。

さて梗概は、父親が亡くなり、実家の小料理屋を継ぐため、彼女を連れて戻ってきた男が主人公。その男、幼馴染の女性を乱暴した過去がある。その幼馴染は、それでもその男を慕っており、彼女(妊娠中)と幼馴染の女の戦いが凄まじい。最後は、男も巻き込んで殺人事件になるが…。
登場人物の性格付けは明確で、観ていて面白い。会社の先輩・後輩の思惑違い、女同士の恋愛(レズ)、やる気のない若者店員などその演技は見事であった。
その中で、特に天乃舞衣子サンについて記しておく。彼女と会うのは、映画「花と蛇 ZERO」封切り前のPRイベント以来であった。映画と違って、芝居はライブであり一瞬一瞬が勝負であるが、本公演では持ち前のキャラ(映画と同様エロチック…自分も自認して話していた)を十分発揮し、観(魅)せていた。

今後の公演にも期待しております。
2つの重力の間で

2つの重力の間で

屋根裏展望台

王子小劇場(東京都)

2014/10/31 (金) ~ 2014/11/03 (月)公演終了

満足度★★

主観と客観の間で
作・演出の岩城泰斗氏の頭の中では整理出来ていたのかもしれないが、観客からすると、描きたい叉は訴えたい内容が伝わってこない。演出手法、テンポも緩慢だった。
着想は面白いが、それを表現しきれていない。
自分が描きたいことを大切にする、一方で観客の目線を意識することも大切であり、バランスが重要であろう。

舞台は、白線で12分割された四角い枠。後方は大きなデジタル掲示板という、ほぼ素舞台である。冒頭目覚まし時計を持って時刻をセットし、終演まで置いたまま…。

ネタバレBOX

公演時間90分が気になったのが、残念である。
10年後に隕石が衝突し地球が消滅するという、限定状況における思考・行動を描きたかったようだが、同じ動作の繰り返し、無言状態におけるデジタル表示…。10年間を単にデジタルで年数を刻むだけである。時間の経過に伴う空気の流れ、意識・状態の変化など、表現の面白い部分が削ぎ落とされてしまった。デジタル表示による書簡のやりとりではなく、セリフの応酬が観たかった。

ダンボール箱を積み上げては、女性が崩していく。これの繰り返しは何をイメージしているのか?
段々と常識、非常識(線路を歩く、他人の家に上がり込み盗撮まがい)という境界が曖昧になり、狂気の様相を見せる場面があったが、深く踏み込んでいかない。
滅亡が直ぐではなく、10年後という絶妙な設定が良かったのに…。老人なら諦め境地か、幼子を抱えた人は、独身の男・女は…どういう心境・行動をとるのだろう。

今後の公演を期待しております。
ヴェニスの商人 [Kingdom Come]

ヴェニスの商人 [Kingdom Come]

獣の仕業

pit北/区域(東京都)

2014/11/01 (土) ~ 2014/11/03 (月)公演終了

満足度★★★

創作舞踊が良い!
今年は、シェイクスピア生誕450年にあたり、色々なイベントが催された。そして劇団「獣の仕業」にとってシェイクスピア三作目にして、いったん総仕上げに位置付けるそうだ。
今回の「ヴェニスの商人」は原作にとらわれず、むしろ分解/再構築を試みたようだ。しかし、原作を知らなけばその意図は知ることは出来ない。そのため、前日に会場道順とともに原作粗筋がメール配信されてきた。実に親切な対応で感心した。
さて、公演はやはり有名なエピソードを散りばめないと説明出来ないようだ。その表現方法が創作舞踊と配役のシャッフルである。若さ溢れるパワーが観客を圧倒する。
しかし、やはり原作を知らなけば理解しずらい。それも悪役「シャイロック」の独白や内省なのだから尚更である。
さらに場面を絞り込むなどの工夫があったら素晴らしい公演になったと思う。
今後の公演を楽しみにしております。

In The PLAYROOM

In The PLAYROOM

DART’S

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2014/10/31 (金) ~ 2014/11/09 (日)公演終了

満足度★★★★

面白いが…もう少し工夫があったら
サスペンス・ミステリーと銘打った芝居…観客も参加しているような錯覚を覚えさせる面白さがあった。上演会場のある区域がプレイエリアとして設定するから、今回は新宿が舞台になった(前回は渋谷区)。
客席は、対面式の雛壇並び。中央をプレイルームに見立て、組み立てテーブルを配置しパイプ椅子を周りに並べる。さぁゲーム開始…。
先にも記したが、脚本は面白いが、演出に工夫が必要だったと思う。

ネタバレBOX

ストーリーは面白いし見応えもあった。次の点に工夫があれば、もっと興味深く観られたと思う。
第一は、
プレイヤーは、基本的に初め座った場所(椅子)から動かないこと。対面式観客席からは、ほとんど背中ばかり観ている役者がいる。なんらかの理由を付けて座る位置を変え、変化を持たせてほしかった。

第二に、
早い段階で亡くなった役者(当然、セリフな少なくなる)が活きた状況がないため、中盤以降、浮き上がった存在に思えた。

舞台は、観せる⇨魅せることに通じると思う。
さらに魅力ある公演を期待しております。

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