タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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ジャングル ~柔和なジャングルの猛者~

ジャングル ~柔和なジャングルの猛者~

IQ5000

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2014/12/19 (金) ~ 2014/12/22 (月)公演終了

満足度★★★★

翔るような
舞台セットは無いに等しいから、キャストの演技力に状況説明がかかっているが、見事に広がりのある世界観をイメージさせてくれた。

ネタバレBOX

タイトルそのもので、ジャンル内をある目的のために駆けめぐる。その集団は色々な思惑が絡む国際組織で、冒頭、そのスケールの大きさを示す名前が列挙(紹介)される。ほぼ素舞台にキャストが駆け回る姿は、さもジャンルを疾風する様である。その間に民族平和、共存共栄、環境保全、資源保護…等という時事ネタ、世界情勢・問題の題材が炙り出され、観客へその問いを投げかけているようだ。
芝居はテンポよく進むが、いつも足が動き(野営の時だけが止まった)、緩急がなく一本調子になっていたと思う。もう少しメリハリを利かせた方が落ち着いて観られる。
なお、前説同様の諸注意は、本編では不要だと思うが。

今後の公演にも期待しております。
体夢-TIME

体夢-TIME

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2014/12/11 (木) ~ 2014/12/23 (火)公演終了

満足度★★★★★

感じる…時間
普通、時間は過去から未来に向かって流れると思われる。しかし、屁理屈は承知の上で、例えば砂時計は、上部が未来、括れた所が現在、そして下部が過去として見れば、時間の流れは逆転している。
本公演は体夢(タイム)の悲惨な出生から物語が始まるが、9歳の時、15年後と初老期の自分が現れ、同時並行して存在する、という、通常の“時”の概念がない。将来から来た自分が告げる未来の姿とは…。

ネタバレBOX

”絶望“が暗示されながらも今を懸命に生きる…その姿が健気で愛おしい。社会がパンデミックに侵され人類滅亡の寸前…その世は作為の結果か、それとも無作為が原因か。人間の愚かな行動・活動や見てみぬふりをするような無責任な態度に対する警鐘・批判が込められた骨太な作品という印象である。
舞台セットは、奥行きを利用し、緞帳に代わる重層化した仕切りボードを開閉させる。その仕掛けで暗転に代わる状況転換を現し、さらに天井から役者が降下してくるという立体的な演出で、まさしく時空間を描いた。舞台全体が目に見えない“時“と”汚染”という抽象的なことを可視化できたと錯覚させたようだ。
余談だが「指サック人形」は、最近話題の映画「寄生獣」に出てくるVFX映像「ミギー」を模したような…。

今後の公演も楽しみにしております。

「あいのおはなし」

「あいのおはなし」

Succeed Project

博品館劇場(東京都)

2014/12/27 (土) ~ 2014/12/30 (火)公演終了

満足度★★★★

厳冬時にあたたかい話
銀座・博品館という、割と収容人数が多い客席のあちこちですすり泣きの
声、声…。哀しく暖かい“あいのはなし”という謳い文句のとおり、心を揺さぶる。

説明にあるように、主人公(アイ)が自らの命を絶とうとしたが、一命をとりとめ、この世とあの世の境にある”プレイハウス“で魂が体験する奇妙な出来事が哀しくもあたたかい。オーソドックスなストーリーだが、改めて“生きる”とは…。


ネタバレBOX

分かりやすいストーリーであるが、あまりにストレート過ぎた気がする。野球で言えば、場面ごとに速球を投げてくるが、豪速球ではない。たまには、捻り・変化球で楽しませてほしかった。打者としての観客(自分)を三振にとり唸らして(より感動させて)ほしいと思った。
父親一人で育ててもらい、小学生の時から良い子を知らず知らず演じてきた主人公の始めて思うように事は運ばない…現実・社会の厳しさに直面して戸惑いはあると思う。父親に心配をかけない、またその父親が再婚を考えていること、などの葛藤はあるにしても、事故か故意か判別出来ないが死に至る気持になるか?
当面の就職活動にしても、誰もが苦労すること。
ストーリーは分かりやすい反面、安直になっていたように思う。

今後の公演も期待しております。
ダキニ城の虜

ダキニ城の虜

舞台芸術集団 地下空港

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2014/12/16 (火) ~ 2014/12/22 (月)公演終了

満足度★★★★

色々なギャップが楽しい
究極な合理主義、資本至上主義への鋭い批判を描きながら、その演出は、シリアス・コメディと両面の様相を上手くミックスした稀有な感じだ。

また、テーマの着想が面白く、その観せ方にも工夫があり、最後まで飽きさせることがない。ほぼ素舞台を縦横無尽に動き回ることで、巨大ショッピングモールをイメージさせ、動作に緩急を持たせることで、隠蔽・逃避と緊迫している感じがよく表れていた。

芝居の底流にあるテーマとその描き方のギャップが面白いと思った。
一方、人間臭さ(母への思慕)ということが、動機…。

ますます、この芝居の制作思考が自由・柔軟であることに驚いた。
今後の公演にも期待しております。

ハムレット

ハムレット

東京演劇集団風

レパートリーシアターKAZE(東京都)

2014/12/23 (火) ~ 2014/12/25 (木)公演終了

満足度★★★★★

やはり素晴らしい!
シェイクスピア四大悲劇の1つ。時代を経ても、多くの劇団で上演している演目であり、それをどう演出するか、どう演じるかで印象も違う。逆に言えば有名なだけに、演出の良し悪しや役者の技量が一目瞭然となる。
本公演は全国の中学・高校を巡回公演をし、30ステージで若い観客に「ハムレット」の問いを投げかけた。そして、公演を現地の学生とともに作り上げている様子のパネル写真が、東京演劇集団風の本拠地である劇場ラウンジに飾られていた。
この戯曲は、サブタイトルにある“to be or not to be”のセリフが有名であるが、その真意を制作側は上手く伝えられるか、観客はそれを読みとれるかが問題だ。
本公演はわかり易いだけでなく、その観せ方も強く印象付けるものであった。

ネタバレBOX

“to be or not to be”は、殺された父親の亡霊に復讐を示唆されたハムレットが、「神に代わって叔父を制裁するほどの正義が自分にあるのか」と躊躇し、なかなか復讐に踏み切れない…ということらしい。主人公は、何か一つの目標を目指して突き進もうとして、その一点にすべてを賭ける。余裕のない厳しい世界-それが「あれか、これか」の悲劇である。

さて、本公演でも見せ場は、衣装を着たままハムレットが水槽の中に沈み、観客を凝視する。そして数秒(分)間の後、水槽から半身を出し有名なセリフを…迫力満点である。
12月の夜公演で水中(それも氷まで入れる)へ、そして役者の鋭い眼光。水槽という物理的なもの、役者の凄まじい精神演技力、その両方が観客、少なくとも自分の背筋を凍らせた。

実に見事な芝居であった。
次回公演にも期待しております。
シカク

シカク

企画演劇集団ボクラ団義

サンモールスタジオ(東京都)

2014/12/18 (木) ~ 2014/12/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

ボクラ団義の新たな挑戦…お見事!
タイトル「シカク」…解説では『視覚』と『死角』が作り出す 出演者全回変わりの異形のほぼ四人芝居 『会話』と『静』が織り成すサスペンス超会話劇、という謳い文句。あらすじから犯罪絡みであることは容易に想像できよう。
言葉で紡いでみると、「罪」を犯せば「罰」を受ける、そしてその報いは「死」か「苦」…。生きながら責め苦を味わう恐ろしさ。そんな人間姿が炙り出される秀作。その描き方は、タイトルの文字列変更、つまり「シカク→カクシ」のとおり芝居のいたるところに伏線が隠されている。

ネタバレBOX

ボクラ団義は、「殺陣、ダンスパフォーマンス」、「群像劇」というイメージであった。それが、メイン4名による濃密な会話劇を展開したところに驚きを感じた。

しかし、公演の内容は素晴らしい!。ストーリーの展開で少し強引なところもあったが、総じて飛躍するが現実にありそうな…そんな微妙に納得するような筋書きが、キャストの確かな演技力で描ききれていた。

作・演出 久保田唱 氏の挨拶文では「ちょっと挑戦であるこの公演を番外公演ではなく『本公演』として銘打ってやりたかった。」とあるが、その意気込み、想いは十分表現されていたし、観客としての自分も満足させてもらった。

次回公演はどうなるのか、楽しみであり、期待もしております。
くれない博徒

くれない博徒

蜂寅企画

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2014/12/25 (木) ~ 2014/12/28 (日)公演終了

満足度★★★★

大衆演劇…面白い!
中尾知代氏の作・演出は「沈没のくれなゐ」(2012年)「氷のほむら」(2014年)の2公演しか知らないが、本公演も含め時代劇に対する想いとしっかりした取材に好感を持っている。
最近は反社会的勢力に対する取締り強化という背景もあり、昭和時代にあったようなヤクザ映画の上映もなくなっている。しかし、その時代に観た任侠映画を彷彿とさせるような雰囲気のある芝居は面白かった!

ネタバレBOX

2014年11月には日本を代表する男優2人が鬼籍に入った。その2人の代表的な作品は任侠映画(映像イメージは異なる)であり、当時の映画隆盛期にシリーズ化されたものもある。

さて本公演は、主人公の任侠鉄火な女(おりん)の復讐劇である。この復讐モチーフはシェイクスピアの四大悲劇の1つ「リア王」のようであるが…。

王であった時は自分が愚かで弱い存在であることを認めなかったリアは、彷徨して苦しんだ末、末娘の愛に救われ己の愚かさを悟る。リアに最初からその自覚があれば、悲劇は生まれなかった”はず”なのに。本劇中のセリフ「あの日までは…もし、たら、れば、は 博打と色恋にゃあ御法度!」と同様、仮定の話は無意味だろう。
しかし、シェイクスピアを例に、彼は悲劇・喜劇の両戯曲があり、多様な人間を描く「万の心を持つ」(ミリアド・マインデッド)とも言われ、彼の世界は「多声性」(ポリフォニー)に満ちており、価値は1つに定まらない。

多少、意味合いは違うが「くれない博徒」も観客の捉え方は様々であろうが、まだまだ”伸びシロ”が、いや蜂寅企画は中尾氏一人であったと思うので、”才能”というべきだろう(高い所からの言いようで、失礼)。

舞台美術・衣装は拘りが出ており素晴らしい。
今後の公演にも期待しております。

ちなみに、登場人物の「おりん」は「逃亡者おりん」(テレビ東京系列)、八重洲の銀次」は「素浪人月影兵庫」の旅連れ「焼津の半次」(現・テレビ朝日)に名が似ていますが…。
Truth of the snowstorm -トゥルース オブ スノーストーム-

Truth of the snowstorm -トゥルース オブ スノーストーム-

SORAism company

d-倉庫(東京都)

2014/12/10 (水) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

満足度★★★

映画ロケの話はどうなったの
説明だけ読むとシリアスな感じを受けるが、実は緩いサスペンスもしくはミステリーコメディといったところ。
謎解きがあり、それなりに楽しめるが、キャストが多くて観客なりに推理しようにも難しいと思う。また猿蟹屋敷に居る…

ネタバレBOX

映画監督が妹を自殺に追い込んだ女性(女優)をロケ中に殺害しようとするストーリー。その復讐が”猿蟹合戦”を模するような仕掛けで観せようとする。プロローグで監督と屋敷に居る”山の神”の約束事が描かれるが、その関連付が冒頭である必要があるのだろうか。山の神なる怪かしを登場させなくとも十分話は面白い。推理ものならば、すべてお見通し(俯瞰)というものがいては興ざめだ。


奇を衒わず、もっと現実感に則した芝居であっても面白いと思う。
今後の公演に期待しております。
First Contact

First Contact

ハム・トンクス

シアター711(東京都)

2014/12/04 (木) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

強烈な気質
茨城県民…特に女性のデフォルメした気質は強烈な印象を与えた。舞台中央に2014年土浦花火大会のポスターが貼られるなど、郷土愛溢れる内容だった。
さて、女性キャストのインパクトある演技は素晴らしかったが、そこには確固たる主張が示される。最近の風潮に照らすと…実に興味深い。

ネタバレBOX

色々な意味で、自己主張することが上手く出来ない…そんな風潮があるような感じがしている。もう少しネガティブに考えると、主張を遠慮もしくは恐れているように思う時がある。
本公演では、男性キャストがその主張が上手く出来ない、優柔不断振りを演じ、その対比として女性の明確な主張(気丈な気質面も含め)が際立った。その意味で演出の妙は成功したと言える。また、方言台詞が強い口調に拍車をかけて迫力満点だった。
表面的にはコメディであるが、内容は深いように思った。
次回公演も楽しみにしております。
花と魚(劇作家協会プログラム)

花と魚(劇作家協会プログラム)

十七戦地

座・高円寺1(東京都)

2014/12/12 (金) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

十七戦地の中ではピカ一
2011年に十七戦地旗揚げ公演として書き下ろされ、同年、第17回劇作家協会新人戯曲賞を受賞した代表作。
本公演の内容はもとより素晴らしいが、2014年という3年後に再演したところを評価する。
ストーリーは解説文にあるが、その内容は東日本大震災の背景をモチーフにしていることは容易に想像できる。人間は”忘却”するという良し悪し両面がある、この特質を持っている。時間とともに風化しそうな問題をしっかり捉えて離さない、そんな柳井氏の強い思いが出ていた秀作である。

ネタバレBOX

村おこしのイベントを控えた住民たちは、怪物の駆除派と保護派で村が二分され対立が激しくなる。そして、村人の一人が襲われるという事件が発生する。

地方都市の経済的は、政府の補助金、地元漁業、そして観光イベントといった現実感あるもの。一方、怪物という少し現実感から離れた生き物...これを自然保護に置き換えれば、原発の話が透けて見える。
同じ土地で育ってきても、その境遇や立場によって考え方は違ってくる。しかし、彼らはその土地を愛しつつも、自らの故郷での産業発展が見込めないことも承知しているようだ。地方ならではの苦労を肌身に感じて育っているかのような、説得力のある会話(せりふ)である。
この二分された住民の主張はそれぞれ理屈が通っており、怪物の駆除か保護かの判断は第三者(民間の野生動物調査員)に委ねる。怪物という危険排除と怪物を保護し、寄り添い、生命の神秘を探る。東京のど真ん中であったら、どう対処するのだろうか。地方という地域事情だからこそ切迫・切実感がある。

とても芝居の中だけの話とは思えない切実感があるのは、都市的な経済発展志向の偏重のようだからである。それは現代社会が消費経済を優先するためには、例えば原発などを確保するため、将来のリスクを貧しい地方に押し付けるという構図に共感してしまうからだろう。

この高円寺・1という小空間の中で、人類はどこに進むのかを問われているようだ。この鋭い投げかけが重く心に響く。壮大なテーマであるが、それを実にコンパクトに描いた秀作である。

次回公演を楽しみにしております。
タイム・フライズ

タイム・フライズ

ミュージカル座

THEATRE1010(東京都)

2014/12/18 (木) ~ 2014/12/23 (火)公演終了

満足度★★★★★

見応え十分!
説明にある「昭和の団塊世代の若者たちと、閉塞感のただ中にいる平成の若者を対比させてジェネレーション・ギャップを描き、自分たちの時代は自分たちの手で創って行こうというメッセージを投げかけた。」は十分描かれたと思う。しかし、制作サイドの思いと同様に、観客側にもジェネレーション・ギャップがあったようだ。休憩時間に母娘の会話が聞こえてきたが、どうしてあの時代の学生はあのように熱くなれたのか…と。

時代背景を描き切るには難しく、観る世代によって受け止め方も違うだろう。しかし、表層的に捉えたとしても青春群像劇の醍醐味は十分味わえる秀作だと思う。

ネタバレBOX

ストーリーは、説明文の通り。
わかり難い点は、過去へタイム・スリップ、また逆に現代へ戻ってくる契機・原因の説明がないこと。しかし、まだ科学的に説明できないこととして、詮索は止めた。
公演の底流にある若者が自立していく成長過程と国家・時代という大きなスケールの両面を上手く描いていた。特に時代(1968年)が沖縄返還前(当時は沖縄からベトナム戦争へ、そして現在でも米軍基地問題は解決していない)であること、1945年広島市への原爆投下によって体内被曝した女性が平和運動の延長として学生運動に身を投じる姿は、若者へのメッセージだけでなく現代に生きる日本人…一人間として魂を揺さぶられた。学生運動という行為の良し悪しは、本公演において問題にしていない、という点も当時では当たり前だったのだろうが、その評価は後世に委ねられた。
舞台は、盆を回転させ躍動感、臨場感を増し、キャストの演技力をより一層引き立てた。申し分ない公演であった。
その河を渡れ

その河を渡れ

朋ノ会

新宿眼科画廊(東京都)

2014/12/20 (土) ~ 2014/12/24 (水)公演終了

満足度★★★

消化不良かも
壁、舞台中央に置いてあるテーブルなど会場全体が白を基調にしている。また、登場人物4名中2名が研究所勤務で白衣を着ている。白=清潔というイメージの中で、台詞だけで汚い河をイメージするのは難しかった。それ以上に、この公演で訴えたかったことが…。漠然とわかるような気がするが、纏まりがついているのだろうか?
”汚い河”が本当にあるという現実話か、自省という比喩話か今一つ理解できなかった。

ネタバレBOX

300年前からある”汚い河“は、何を契機に出来たのか。自分と瓜二つという、もう一人の自分の存在を否定する。
また自省話であれば、なおさら怖い。白衣・白基調の部屋のイメージから精神を病んだ話かとも思ったが、そうでもないようだ。

自分は、朝鮮半島における南北国境をイメージしてしまった。もとは同じ民族であったが、朝鮮戦争によって国が分断し憎しみ合うようになった。そこには深く悲しい思いがあるだろう。

さて、芝居ラストシーンで主人公の女性がテーブルに乗って独白するが、その姿こそ自分に向き合っての心魂の叫びだと思って観た。瓜二つという自分が演じきれない、もしくは演出しきれず中途半端になったような気がする。本当に訴えたかった内容が描けたのでしょうか。フライヤーの文字のようにもがいているのでは…それも大切です。
次回公演に期待しております。
この橋、渡るべからズ

この橋、渡るべからズ

東京パイクリート

劇場MOMO(東京都)

2014/12/10 (水) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

満足度★★★★

頓知…鈍知か
タイトルは、言わずと知れた一休和尚の有名な頓知話。しかし、本公演は思っている結末にはならない。高尚と思われている和尚が民衆の役に立たないという、コメディでありながらシュールな内容というギャップが楽しい。他人任せで何事も丸く収まるという、安易・事なかれ主義に対する批判が見え隠れする。“ワンシチュエーションコメディ”と謳っているが、その底流は頓知では解決できないかも…。あまり深く考えず、鈍感になって舞台表現だけを素直に楽しんだほうが賢明だ。

ネタバレBOX

ところでタイトル=一休和尚を連想したが、はたして本公演の主人公は誰だったのだろう。あまり、一休和尚の頓知話(解決しないまでも)が少なく印象に残らなかった。やはり、登場人物がチョイと発する台詞・仕草など芝居全体を通しての喜劇だったのでしょうか。

次回公演も期待しております。
時代絵巻AsH 其ノ伍 『白殉〜はくじん〜』

時代絵巻AsH 其ノ伍 『白殉〜はくじん〜』

時代絵巻 AsH

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2014/12/09 (火) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

満足度★★★

緊迫感がない
フライヤー同様、上品な幕末伝…新撰組始末記という感じであった。京都で活動していた時が、歴史上のエピソードが多く演劇・映画でよく見る。しかし、土方歳三が五稜郭で戦死するまでを新撰組の活動期間と捉えた場合、会津藩やその後に続く奥州各戦線での活動は歴史における溝に落ち、忘れ去られたかのようだ。
本公演は、そんなエポックな時を切り取っているが、あまりに上品で時節における切迫感がない。また新撰組幹部の人間像は、京都における活動から心証は良くない。時代状況・人間像を表層でしか捉えていないと思う。

演技は迫力ある殺陣、心情が伝わる細やかさなど硬軟とも観せてくれた。
舞台美術は、武家屋敷中庭という雰囲気が出ており素晴らしかった。

ネタバレBOX

主人公・斎藤一は、新撰組ファンであれば知っていよう。しかし、やはり近藤勇、土方歳三、沖田総司などの名に比べると知名度が…。前作との関わりがあるからメインではあるが、もう少し本人像を掘り下げた取材を行ない、エピソードを散りばめてほしい(もっとも新撰組一の謎の隊士らしい)。その上で時代背景・状況を絡めた公演にすると、より見応えのある素晴らしいものになると思う。

今後の公演に期待しております。
Jailhouse(ジェイルハウス)

Jailhouse(ジェイルハウス)

Performance team PADMA

ブディストホール(東京都)

2014/12/18 (木) ~ 2014/12/23 (火)公演終了

満足度★★★★★

見事なパフォーマンス
”驚愕のパフォーマンス+演劇“という謳い文句に嘘はない。場面毎に異なるパフォーマンス(マウンテンバイク、縄跳び、試し割、フラフープ等)を繋ぎ、ストーリーとしての刑務所生活を描き、脱走への前奏(次回公演)へ…その流れるような演出は見事!
演技?…個々人の身体能力は高く、それを集団演武でも観(魅)せる。長時間公演であるが、そんなことは感じさせないし、観客を巻き込み飽きさせないよう工夫するサービス精神はさすがである。

ネタバレBOX

男性囚人と男性看守2名の中に女性看守(神戸アキコ)が一人混じって行われる劇中寸劇がまた面白い。
失礼ながら体育会系とは思えない、神戸アキコさんが男性キャストに補助されながら後方宙返りする姿も一見の価値あり。上演後、笑いながら神戸さんは、本当はやりたくないと言ったんだけど…。
次回公演が待ち遠しいです。
コンフリクト

コンフリクト

演劇ユニット チャンぷる

現代座会館(東京都)

2014/12/17 (水) ~ 2014/12/21 (日)公演終了

満足度★★★

新たな冒険活劇
まず、この公演場所…現代座はNPO法人による運営で、今回のような商業公演以外に市民参加による上演にも使用されているとのこと。劇場は地下にあるが、その建物の事務所は1階にあり、懐かしい映画「同胞」(山田洋次監督。1975年制作)の写真が掲げられていた。そして巡回公演として有名な「ふるさときゃらばん」との関わりが深いとの話も聞けた。地方出身者である自分にはありがたい演劇集団である。

さて、本公演であるが人間関係が複雑になるが、当日パンフで関係図が示される。キャストは約20名でアンサンブルも含めて運動量がすごい。
ストーリーは、わかり易いが、結末はそう単純ではない。そこには願いをひとつだけ叶えることができる宝石、” レーヴ”の悲しい魅力が秘められていた。演出は、麻見拓斗氏らしい軽妙でウイットの利いた場面があり楽しめた。演技は架空の王国における冒険活劇らしく、殺陣シーン(フェンシングの突く刺すではない)は見応えがあった。

ネタバレBOX

第26回池袋演劇祭参加作品「あの空の向こうへ」を観劇した際、ノーコンタクツ・麻見拓斗氏の公演を観たいと思っていた。それが演劇ユニット「チャンぷる」の旗揚げ公演として観られたのは嬉しい。さらに護送船団方式の古山彩美サンの演技も堪能した。池袋演劇祭の時は代役として一週間で演技マスターしたと聞いていたので、その実力は承知していたが、その持ち味(長身)を十分に活かしており迫力充分であった。
しかし、脚本・演出・演技とも満足するのだが、何故か心に残るまたは響くという、刺激が不足しているように感じられたのが残念であった。強い者に憧れ、その者を倒したいと思う人間の業…それがレーヴによって本能が呼び起こされる。そして強者である仲間と剣を交える、という悲しい心魂を描いているのだが…。
次回公演に期待しております。
メリークルシミマス

メリークルシミマス

パフォーマンスユニット【Bremen】

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2014/12/19 (金) ~ 2014/12/21 (日)公演終了

満足度★★

もう少し深みがあると
タイトルから想像がつくが、主人公の大学生朝霧洋一は、クリスマスを楽しめない。いつも一人寂しく時を過ごす。そこには幼いときのトラウマが…
ストーリーは単純で演出も甘い感じがした。全体的には優しく温かい感じがするので好感は持てるが、もう少し脚本を作り込んで欲しかった。

上演後、このパフォーマンスユニット主宰のいちまつサンと話をさせていただいたが、今回のような劇場公演だけでなく、普段は幼稚園、公民館でも演じるとのこと。このような巡回公演を行っていることは喜ばしい。
都心には大・小劇場が多くあり、観劇の機会も恵まれているが、地方都市では厳しい。多くの方に観劇してもらえるよう、活動を続けてほしい。

その際、劇場公演と巡業公演とでは、観客の目線も違うかもしれない。そこを意識して芝居をしてはどうか。

ネタバレBOX

洋一が小学5年生のクリスマスの日に両親が飛行機事故で死亡。それからクリスマスの日は悪夢のような気がして、まさしく”メリークルシミマス”になった。当日は兄とその恋人による恋愛誤解、姉の職場放棄、はたまた幼馴染の家が火災になって転がり込んでくる。その主人公を中心にしたキャスト7名によるドタバタコメディ。しかし、どうしても感情移入できなく、眺めるだけになったのは残念であった。
ストーリーも予定調和のハッピーエンド。もうすこし捻りがあっても良かったと思う。
今後の公演に期待しております。
何がすごいの?シェイクスピア!

何がすごいの?シェイクスピア!

ACTURE

汐留ホール(東京都)

2014/12/21 (日) ~ 2014/12/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

良質なシェイクスピアの解説書
シェイクスピアの戯曲のワンシュチュエーションを演じながら、当時の演劇事情と現代演劇への影響をわかり易く解説していく。
今年は、シェイクスピア生誕450年の記念すべき年であるが、年末にこのような素晴らしい公演を観られて良かった。

ネタバレBOX

シェイクスピアの戯曲とは…愚かしくも切ない人間の本質と、人生の儚さと美しさを描き、多くに人の心を揺さぶり続ける名言の数々。
ハムレットの有名台詞「to be,or not to be,that is the question」は、どう訳すか、それが問題だ!という日本演劇史にも及ぶ幅広い内容だ。
因みに、坪内逍遥は「世に在る、世に在らぬ、それが問題じゃ。」、河合祥一郎「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」など他の訳も披瀝された。
また、彼らしい戯曲の特徴は…悲劇か喜劇か?そこは観客の想いのままか
戦争のような悲劇を描く一方、喜劇によって人間の愚かさを寿ぐ。
100分の公演で、良質な解説書を読破した充実感。お見事でした。
次回、公演も楽しみにしております。
Bon Voyage!!

Bon Voyage!!

BOCA BoccA

OFF OFFシアター(東京都)

2014/12/05 (金) ~ 2014/12/09 (火)公演終了

満足度★★★★

人生は航路か
行き先は定めつつも、天候や潮の流れで変化する…この公演の前半部分と後半部分では印象が違って観えた。
説明にある”切なくも優しい、愛の物語”が示される後半になって、何を描きたかったのか分かるが、それまでの展開は上手く繋がっていかない。
もう少し早い段階から物語の方向性(目的地)を示したほうが、乗船客としては安心する。

ネタバレBOX

破天荒な作家が実家であるバー(昔は居酒屋)で生前葬を行う。これは出版社の企画ということにして、作家の元からいなくなったパートナー兼秘書である女性を呼び戻す手段。実はその女性は余命1年もなく、作家に迷惑を掛けないために家を出た。そこからは、作家の女性に対する想いを切実に訴えるシーンが圧巻…”切なくも優しい、愛の物語”を描いたヒューマンドラマ。この場面へ導くまでのストーリーが緩慢すぎた。

脚本・演出は生前葬というシチュエーションで、既に鬼籍に入っていることから、想いを吐露させる状況作りは上手い。何の遠慮もなく思いのたけを喋らせる。重みのあるセリフが聞けるが、印象はというと…。

先にも記したが、公演全体のバランスが上手く繋がっていれば素晴らしい芝居だったと思う。そう思うと本当に残念である。

次回公演も楽しみにしております。
スノードロップ

スノードロップ

みどり人

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2014/12/05 (金) ~ 2014/12/10 (水)公演終了

満足度★★★★

ザワザワ感がギラギラ感へ
今夏(2014年8月)に上演された1話・2話と冬(12月)に上演された3話・最終話で話の方向が変わったと思うが…
この公演も季節の変化と同じように話も変化したのだろう。スノードロップの花言葉のように「みどり人」という制作側は”愛”を持っていたが、受け手(観客)である自分の心は”いちころ”だった。

ネタバレBOX

1話・2話の時は、渡辺浩二(杉本秀透)の浮気に妻・花音(宮本愛美)が嫉妬し、浩二が勤める旅行会社が入っている同じビルのバーガーショップに勤め監視するような展開だった。その時は、ざわざわと粟立つような不気味な感じがした。確かに2話終盤には、今回上演に繋がる塩谷寛一(旅行会社営業部長=そぎたにそぎ助))が登場する。
今回は1話・2話のダイジェストを今回から登場する人物が、自己紹介も兼ねて数分で復習した。
3話・最終話…冒頭の復習は、雑居ビル清掃員の矢野富貴子(辻川幸代)の塩谷部長に対する”復讐”劇へ変わった。
連ドラ風四話完結公演ということであったが、別々の公演としてでも十分に伝わる内容だと思う。それだけ、単独でも観させる力のある芝居だから、あえて連続にする必要がないかもしれない。
ちなみに、それぞれの話に副題があるとは知らなかった。
第一話(向日葵の回)、第二話(弟切草の回)、第三話(竜胆-リンドウの回)、そして最終話(スノードロップの回)というらしい。
さすが、第一話から花言葉を並べると…「私はあなただけを見つめる」「怨み」「悲しんでいるあなたを愛す」そしてスノードロップへ。お見事でした。

次回公演にも期待しております。

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