タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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Unbreakable -アンブレイカブル- 第二章

Unbreakable -アンブレイカブル- 第二章

演劇レーベルBo″-tanz

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2015/09/10 (木) ~ 2015/09/14 (月)公演終了

満足度★★★★

戦いの続きを観たくなる内容
本シリーズを昨年観ているから、前説で第一章概要を聞いて思い出した。初めて観るとその言葉・台詞に翻弄されるかもしれない。
なにしろ、旧約聖書偽典、ギリシャ神話、物理学・地質学、そしてその雰囲気テイストは、昭和の香り...その色々な材料(要素)をしっかり混ぜた豪華料理は、美味(上手)く堪能した。

その内容とは...

ネタバレBOX

ダーク・ファンタジー...ではあるが、そこにはしっかり脱力系ギャグも盛り込まれている。敢えて失笑を覚悟した、観客サービスである。
しかし、この公演の面白さはその脚本はもちろん、観せる演出、音響・照明という技術が素晴らしいところ。この独特の世界観が観る者の心を放さないのだろうと思う。
さて、この劇団の特長として映像を利用した描写が美しい。天使の翼...Wスクリーンにすることでその迫力を増し、観客も観やすくなった。前作を踏まえ、単にその続章公演ではなく、ステップ・アップさせてくるところが好ましい。

梗概は説明「天界を裏切った堕天使〈グリゴリ〉とそれを追う翼をもがれた天使〈殺戮天使〉との戦い。" グリゴリ達が堕天した時、天界からの追撃によって致命傷を負った〈サタナイル〉は醜い虫の姿になり地に潜っていた。 メルトダウンにより目覚めた〈サタナイル〉は地上に現れ”ある場所”を目指し暴走を始める。 ネフィリム事故の後始末にそれを利用しようと画策する〈石間興産〉の陰謀が絡む」というもの。

この話...どうしても原発を想像(創造)してしまう。この公演の物語性だけでも面白いのだが...。

最後に、芝居の展開上、辻井純奈(羽生田早穂サン)の件が唐突で混乱してしまったが、伏線があったのだろうか。”アマダスの弾丸”発後の説明セリフしかわからなかった。

次回公演も楽しみにしております。
第三章があるような含みの終わり方ですからね。
【ご来場誠にありがとうございました!】ギンノキヲク FINAL

【ご来場誠にありがとうございました!】ギンノキヲク FINAL

ラビット番長

南大塚ホール(東京都)

2015/09/11 (金) ~ 2015/09/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

再演...やはり素晴らしい。
公演は特別養護老人ホーム「紀陽の里」で、そこで働く人々と利用者および家族の方々の心温まる内容である。「ギンノキヲク」シリーズは全四作あり、すべてを観させていただいた。それぞれの公演は一話完結になっているので、どの公演からでも楽しめる。

本「ギンノキヲク FINAL」は、昨年も池袋演劇祭参加作品として観劇し、その素晴らしさに感激したことを思い出す。昨年は別の観点で観ていたが、本年は純粋にその優秀賞作(再演)を楽しんだ。

ネタバレBOX

この公演で一番関心しているのが、井保三兎 氏の当日パンフに書かれている序文「家族が倒れて実家で24時間体制の介護を1年半体験しました。再び東京に戻って来た時…以前と同じように介護の仕事をしようと思って出来なくなりました」という箇所である。
介護…それは高齢化社会において行政はもちろん個人の生活においても大きな課題である。それは、芝居の中でも家族を介護することは、仕事以上に大変であったと悲哀をもって語ったことに凝縮されている。
自分も両親の介護を...自宅での介護の限界は十分承知しているつもりである。しかし、施設へという選択をするまでは相当の勇気というか覚悟を要したことを覚えている。

本公演の素晴らしいところは、単に人間味・人情味を描くだけではなく、そこで働く職員の労働環境もさりげなく問題提起している。昼夜の交代勤務、仮眠室のベットの不足、事務机での仮眠...。
最近は介護ロボットの開発も進んでいるようだが、最後は人間的な絆が大切になろう。

公演全体を通して、その人に対する思いやり、優しい気持ち...それが溢れんばかりに感じる。コメディな作風であるが、その底流にある問題提起は鋭く、大変見応えのある公演であった。
あの日はライオンが咲いていた

あの日はライオンが咲いていた

PocketSheepS

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2015/09/10 (木) ~ 2015/09/13 (日)公演終了

満足度★★★★

心温まるも、厳しい現実
タイトル...「あの日はライオンが咲いていた」は、多くの観客の涙で大輪を咲かせたようだ。心温まる話...とある病院の片隅で一人の少女のために語られる物語、である。しかし、人の思いやりという心温まる面と、一方その現実をどう捉え、対応していくのかを鋭く問う面、その両方が上手く描かれた秀作である。
劇団PocketSheepS 初の再演だそうである。その自信作の内容は...。

ネタバレBOX

本公演の素晴らしいと感じたところ...。
脚本・演出は、病人を主人公「梢」にした、当人だけのために語られる物語...いわゆる劇中劇であるが、序盤から梢が持っている本が「モモ」であることから、時間に関係する話であることを暗示させる。その導入の仕方は上手い。
そのテーマの観せ方は、ファンタジーのようで、淡い浮揚した雰囲気が物語の底流にある重く悲しい出来事を隠しており、徐々にその深刻さが分かってくる。その観せる興味をしっかり最後まで繋ぐ構成・演出は秀逸であった。

「記憶」という、目に見えない事柄の確認・消去という両面から捉え、どちらも当人を思い遣る優しさの表れ。一方、その自分のものである「記憶」を第三者が操られるという危惧と怖さ。

この物語(劇中物語)は、主人公の会社の「エデル」プロジェクトが記憶の一部を預かり管理するもの。その被験者として選ばれた。他にもプロジャクト開発部の人間2人も被験者になり、それぞれ被験者になった理由・経緯などが展開する。その消去(預けた記憶)とは、という謎と、それが何であったのか知りたくなる心理描写も面白い。しかし、これは全て自分側から見た事象であり、そこに隠された真実は...健忘が進む患者を思い遣るプロジェクトである。

また、キャストの衣装がカラフルで上着、タイツなども色彩統一していたようで、その感じもお伽噺を彷彿とさせる。そしてラストにしっかり泣かせてくる。あのエアーデルワイスが舞い落ちるシーンは...やられた。
気になったのが、キャストの演技力である。その力量に差があり、観ていて違和感を持ったのが残念でならない。

「あの日はライオンが咲いていた」は、百獣の王といわれるライオンのごとく鋭い印象を刻み込んでくれた。
ちなみにエーデルワイスは、ライオンの足裏(肉球含め)に似ていることから、その別名を「ライオンの足」と言うそうである。

次回公演を楽しみにしております。
よみ人シラズ

よみ人シラズ

ナイスコンプレックス

吉祥寺シアター(東京都)

2015/09/09 (水) ~ 2015/09/14 (月)公演終了

満足度★★★★

いろいろ考える
この公演は、観ていて胸が締付けられる思いであった。第二の故郷である広島県内で、某高校における日章旗掲揚・君が代斉唱を端に、教師が卒業式前日に自殺した事件(こと)があった。確かこのことが「国旗及び国歌に関する法律」成立のきっかけとなったと思う。

この芝居は、描く内容が観客によって受け止め方が違うであろうことを承知で、それでも敢えて問題提起したと思った。その表れが、タイトル「よみ人シラズ」...実に上手いネーミングである。この公演の素晴らしいと感じたところは、問題の根幹を見据えつつ、しかし直截的に描くことをせず、その思いを観客に委ねたところであろう。確かに主張は垣間見えるが、そこは余韻として受け止めた。

ネタバレBOX

梗概は、2015年生まれのアキラが成人式を迎える2035年。2020年の東京オリンピックを経た本当に近未来の話である。その時に国歌として「君が代」斉唱を促されるが...。
表層的には、君が代を巡り、過去・2021年(小学校入学式)・現在(2035年)という1100年の時代空間を旅する。そして更に自分の生立ちで小学校入学式でのトラウマ(苛められたと誤解)になっていた耳が聞こえない、を成人式において邂逅・誤解が氷解、克服するような成長物語。

その舞台は、ほぼ素舞台であるが、中央上部に日章旗(真ん中部分は刳り貫き、旗後部から出入り)が掲げられている。板上は登場人物分のパイプ椅子が並べられているが、それは常時あるわけではない。

さて、「君が代」の考え方として、時代は文徳天皇の第一皇子惟喬親王の時代へ。親王に仕えていた者が詠み人知らずとして扱われるが、この詞が朝廷に認められ、詞の元となった”さざれ石”...が登場する。
そして時代は下り、紀貫之編纂での取り扱い。ここでの「君が代」の解釈はどうか、という学問史書の内容も披瀝する。
更に時代は下り、明治時代...第二次世界大戦という戦前までの「君が代」とは...万葉集などでは「君が代」自体は「貴方(あるいは主君)の御寿命」から、長(いもの)にかかる言葉である。転じて「わが君の御代」となる。国歌の原歌が『古今和歌集』の賀歌であるため、「我が君」の「君」とは天皇なのかどうかということがしばしば問題にされる、らしい。刷り込みも示唆するような展開もあったが...。

この”君が代”斉唱の時に、起立の号令に従ったのは、アキラだけであった。耳が聞こえないから...しかし、その歌詞に引き込まれた、というのが事の始まり。そして斉唱号令を掛けたのが父親であり、耳が聞こえないアキラを厳しく育て上げた。そのいくつもの思いが「君が代」を通じて描かれた秀作である。

描き方が難しいようなテーマであるが、今、いろいろなことを考える...自分で考えるという姿勢が大切である。この物語では敢えてそれに挑み、主人公の身体的ハンデによる心を上手く使い、自分の成長と同調したようなストーリーに感心した。

次回公演を楽しみにしております。





SMOKIN’ LOVERS(20名様限定公演)

SMOKIN’ LOVERS(20名様限定公演)

惑星☆クリプトン

BAR BASE(東京都)

2015/09/04 (金) ~ 2015/09/13 (日)公演終了

満足度★★★

楽しめた【灰】
渋谷・松涛Bar BASE。事前の案内にあるとおり客席20名ほどの中での芝居...紫煙の中、9話が繰り広げられる。自分は、アルコールだけではなくその親近感、臨場感という雰囲気にも酔った。惑星☆クリプトンVol.2(実質的には3公演目)には、その内容(劇場規模等も含め)のモチーフ、コンセプトを模索し、いかに観客に楽しんでもらうか...そんな思いが籠められているようで好感を持っている。

しかし、現実に公演を観ると残念なところもある。

ネタバレBOX

OP
前説...携帯電話等の電子機器は電源からお切り下さい、と

NATURAL AMERICAN SPIRIT
芝居の演出を巡る自己主張...同時に自分にとってのタバコとは。

PIANISSIMO
キャバ嬢2人の職場話...売れっ子嬢が年齢とともに客離れ。枕営業と結婚話に揺れる女心。

PARLIAMENT
恋人同士の語らいから、男の浮気疑惑へ進展。包丁による刃傷沙汰か。

KOOL
恋人同士の語らいが、男・女の結婚願望の逆転。女は歌手を目指して芸能事務所へ。

DUNHILL
いつもの...Barで知ったかぶり客の羞恥話。コミカルな遣り取りが笑える。

CASTER
いままでの会話...絡み合う男女の思い。中川えりかのアカペラ「心の草原」「ベットで煙草を吸わないで」は見事。”KOOL”で歌手へ、と言った女が登場。

ECHO
女に今更は...ない。失って初めてその大切さが分かる。

Marlboro
あんたと同じタバコを吸ってみたい...。

この9話のうち、キャストの動きがあったのは、中川えりかのアカペラ時のみ。それ以外は、カウンターの中央席での会話劇に終始しており、キャストの両側の観客しかその演技・表情が見えない。
できれば制約ある空間を舞台に選んだ以上、もう少し観客が観える工夫が必要だろう。

ちなみに、自分は唯一あったカウンター後のソファーで観たが、キャストの横顔のみ...少し残念。それでもミム・メモさんの学生時代からの女友達の方と並んで観られてラッキーかも。

芝居は、Barで本当に恋人同士の会話を知らずに聞き入るような、そう盗み聞きするような臨場感が良かった。この雰囲気を味わえるのは、この場所を選択した演出家の慧眼であろう。あとはその観(魅)せ方であろう(ここが重要であるが)。
今回は作・演出はミム・メモ、そしてキャストとして緒川凛として出演...3役お疲れ様です。

次回公演を期待しております。
今日はこのくらい

今日はこのくらい

Outside

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2015/09/03 (木) ~ 2015/09/06 (日)公演終了

満足度★★★★

地元愛
どこかの地域にありそうな話。日常の延長線上にある物語で、その意味で親しみが持てるが、一方芝居として観ると盛り上がりに少し欠けたと思う。話の展開もわかり易く、登場人物の性格もしっかり描いている。しかし、坦々としたテンポが...。

ネタバレBOX

街興しのプロジェクト...本公演ではサッカーチームとの提携か。シャッター商店街という言葉が出てから久しいが、大都会は別にして地方都市の商店街ではそのような光景を目にする。
そこの住民にすれば街の活性化は重要であり、その有効な手段としてスポーツ・クラブなどとの提携は重要であろう。その事業に関わる人々の取り組み...その描きがアッサリとしていて残念に思った。

今日的な課題であり、関心が高いテーマであると思われるだけに、”今日はこのくらい”にしてほしくなかった。もっと提携か招致か、自分の中では判然としないが、どちらにしてもそれまでの過程(軋轢、障害があれば、なお面白い)をドキュメント風に描いていれば、もっと興味を惹いた。テーマの描き出しが中途半端であり、観せる演出としてもあまりインパクトが感じられなかった。それだけに勿体無い公演であった。

次回公演を楽しみにしております。
BIRTH ~ペルー日本大使公邸人質事件~【アンケート即日公開】

BIRTH ~ペルー日本大使公邸人質事件~【アンケート即日公開】

劇団バッコスの祭

萬劇場(東京都)

2015/09/02 (水) ~ 2015/09/07 (月)公演終了

満足度★★★★

テーマが...
「ペルー日本大使公邸人質事件」を題材にした公演...他の劇団でも上演しているが、政治・経済・民族などといった多角的な視点が必要になる。その要素があまり感じられなかった。武装集団(テロリスト)と人質...どちらを主眼に置いていたのだろうか。
この公演で気になるところが...。

ネタバレBOX

1996年12月17日から1997年4月22日(現地時間)までの127日に及ぶ事件を概観しており、今までの公演に比べ、オリジナリティというか大胆な発想の下にある内容ではなかったこと。

作・演出は森山智仁 氏である。実は、その作家性に魅力を感じていたが、今回は事実取材等を重ねているのであろう。その意味で手堅い...守りの公演というイメージである。自分は、今年この題材を観るのは3公演目である。前方公演墳「もうすぐ、お家に帰ります」(2015年5月」、Trigger Live「祝祭」(2015年7月)である。やはり同じような事実をもとに、またストックホルム症候群をイメージさせる親和性も描く。このチラシのことば...「歪で美しい何かが生まれた。」は物語の進展においては興味を惹くが、逆にその特異性に他の作家同様に目が行ってしまったようだ。
観客の主義、主張を声高に代弁しても面白くない。

描き方が、広く満遍ないペルーの国内事情を説明していることから、その不満が表層的になっており、説得力に欠けた(政治・経済・社会問題が重層・錯綜しているが、芝居としては的を絞るほうが解る)。さらに日本の取材姿勢について、一部マスコミの突出した行動に世界的な批判も出ていたと思うが、今回公演でもそれをイメージさせる場面が多々観られた。

もう一つ、この劇団の魅力はそのアクションにあると思っている。今回も確かにあったが、それはパーティに乱入する時、後日チャビン・デ・ワンタル作戦と呼ばれる制圧時だけである。このラストのセルパ(丹羽隆博さん)落下シーンは見事。しかし、過去には殺陣等、その迫力あるアクションが多く観られたことを思うと、少し残念であった。

以上が自分の感想であるが...。

今回、初めて「バッコスの祭」を観たら、その物語(展開)は丁寧で分かり易いし、登場人物はキャラクターを描きこみ、その親しくなる過程を微笑ましく、それ故に悲しくなる結末に心を打たれるだろう。舞台美術...舞台中央を二階部にし、上手から横向階段で上がる。また上手客席側に横長ソファー。全体的に豪奢な造りがイメージできる。そして舞台技術の音響・照明はいつも効果的で見事。

また、いつも遊び演出があるが、今回はフアナ(金子優子さん 当日パンフに「史実とは異なる架空の人物」との注釈あり)が記念撮影に応じる際に見せるヘン顔、その他にも小ネタはあったかもしれないが。その意味で、劇団カラーを薄めてまで真摯に取り組んだ公演であろう。多くの観客に受け入れられる選択をした好公演である。

次回公演も楽しみにしております
紙の花たち

紙の花たち

スポンジ

「劇」小劇場(東京都)

2015/09/02 (水) ~ 2015/09/06 (日)公演終了

満足度★★★★

紙のような裏表が...
表層的に観れば人間...特に女性の外見と内面が描かれていると思うが、それが全てではないことは明らか。紙のように見た目はどちらが表で裏かは判らない。触り感触を確かめるように、人も触れ合い感じあうことが大切なのだろう。
もっとも物語は、そんなキレイごとではなくドロドロした醜悪な面も見せながら、それでも生きていく...そんな逞しい女性像が描かれる。

ネタバレBOX

民宿「ひまわり」が舞台...そのセットは、上手側から入り口、受付カウンター、その前(客席側)にすのことミニテーブル、中央から下手にかけてテーブル席2つ。上手奥が二階へ通じる階段。下手正面にある壁が折りたたみ式になっており、それが開くと二階部屋が現れる。

小豆島という、いわば限定された場所(閉鎖的だと語弊があるが)における開放できない女、解放しすぎた女、解放(く逃避)をする女...その女性の態様が少し怖く描かれる。
実家の民宿を経営する希(後藤いくみサン)、そこへ姉・栞(あんじサン)が突然帰ってくる。同じ頃、アベック客として雪子(志賀聖子サン)が宿泊する。その彼女たちは内面いろいろな悩み、問題を抱えている。平穏な生活を送っていた希を刺激しだし、日々の(もしくは蓄積されていた)憤懣が爆発する。
さて、栞は東京でAV女優(単体)、希は地元で結婚(男は旦那しか知らない)、雪子は男を騙し奪金品のAV(企画)女優という素性である。
栞の素性がわかり、結婚しようとしていた話が流れ...その地域の特性が現れる状況設定に小豆島がある。実に上手いシチュエーションである。

この出会いは、爆発する契機になり、自分自身の本性を知り人生が変わり始めることになった、かもしれない。厭らしいが本音が言える、思いを行動するという性差に関係なく人間が思っている感情が打つかってくるようだ。
当日パンフで中村氏がインド映画 グル・ダット監督の言葉を引用し「いつか自分が狂うんじゃないかという恐怖を持っている。孤独というのは本当に重苦しくのしかかってくるものなんだ。」と書いており、続けて「…小豆島を舞台にした孤独な女性たちの物語です」とある。しかし、それが生きるということであり...というと何故生まれてくるんだという禅問答になる。その孤独であるが、孤独はまだ耐えられる、しかし孤立は耐えられない...とは太平洋ヨット横断した堀江謙一氏の言葉であったような...。

その孤独の脚本作りを続け、次回作を楽しみにしております。
モーリタニアの空

モーリタニアの空

劇団PATHOS PACK (パトス パック)

シアター711(東京都)

2015/09/02 (水) ~ 2015/09/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

素晴らしい公演
人間が生きる...その様を庶民の目線でしっかり描く。そこに現代社会が抱える問題をさり気なくちりばめ...いや核心的に表現した秀作である。
登場する人々の苦悩と喜び、そしてそれを優しく見つめる...その俯瞰した世界観が場面に広がりをもたらす。
タイトルはアフリカ大陸にある国「モーリタニアの空」であるが、物語の”空”は日本、その理由は...

ネタバレBOX

一人の人間ドラマであり、同時に社会ドラマとしても骨太の内容を織り交ぜている。逆に社会性ある内容を個々人の視線で捉えた物語とも言える。どちらにしても拱手傍観でよいのか、という問題提起をしている。
 主人公という人間が、私という三人称の立場に変え、何も持っていない、誰にも知られないことは存在しないに等しい。この俯瞰したような表現と、擬人化したカラスの群れ、それは暗に全体主義に飲み込まれる民主主義の危うさを暗喩しているようだ。飢餓・紛争、それらのヒューマン報道写真家の彼の存在。。。そこに民衆の視点が重なる。しかし、その彼が亡くなり、社会的な意味での危惧と残された彼女の人間的な心情という、表現的には正しくないが、硬軟の両面から捉えた秀作である。

他愛ない日常の暮らし出来事が、女性の凍って閉ざしていく心を優しく氷解させていくような、そんな温かさに救われる。日常の暮らしは生きている証、悲しい出来事は、人との繋がりの中で起こる些細な変化や刺激で忘却させてくれるかもしれない。それは人間が持っている良くも悪くも特徴だろう。それがなければ、悲しみだけが堆積してしまうのだから。

(2015.12.28追記)
2015年12月26日に「禁じられた歌声」が公開された。監督はモーリタニアに生まれ、西アフリカ・マリで育ったアブデラマン・シサコ氏。
町をジハード主義者が占拠し音楽は禁止、サッカーも出来ない。未婚のカップルは投石によって公開処刑される。この映画は2012年にあった投石処刑事件に基づく悲劇を美しい映像で描く。平和で美しい場所で悲劇が起きた。残虐行為を残虐に見せるだけではなく、暴力の異常さを際立たせる。必見

次回公演を楽しみにしております。
笛を吹け吹け 双子のフロイライン

笛を吹け吹け 双子のフロイライン

演劇企画ハッピー圏外

TACCS1179(東京都)

2015/09/02 (水) ~ 2015/09/06 (日)公演終了

満足度★★★★

大胆解釈した物語
ハーメルンの笛吹き男...怖い教訓イメージがあるが、この公演では虚実の伝承ゆえに、その不確実を逆手にとって大胆に解釈した物語。
そして演劇企画ハッピー圏外らしい、軽妙だがしっかり物語に引き込む魅力ある演出は見事である。
伝承...その謎を解く展開は、わかり易く本当に楽しめる芝居になっている。

子供のころに聞いた伝承は、教訓または風刺のようであったが、本公演では、政治情勢などが絡む人間ドラマになっている。その意味では寓話というよりは、この公演のような歴史書(編纂)と評するほうが相応しい。この物語の中心となる街の統治を巡る権力闘争(政争)は、そこに住んでいる人々の生活に大きな影響を及ぼした。知られた諺に「木の葉を隠すには森に隠せ」ということを聞くが、その悲しい苦渋の選択とは...。

ネタバレBOX

敗れた前領主の跡継ぎ王子を匿うため、街中の同じ年頃の子供の行方を晦ます。
不安定な政情時、その犠牲になるのは弱き立場の者たち。その行動をするまでの経緯を歴史書編纂という形で描く。その演出は、時計の針を逆回転させるようなシーンを挿入し納得させるような展開である。それがミステリー・サスペンス風で最後まで飽きさせない。
この物語を歴史編纂として紡いでいくが、ありきたりの歴史書の範疇を超える異形なものに仕上げている。双子の王子は生まれて直ぐ里子に出されるが、それを恨むこともしない。なぜそのような運命を辿ることになったのか、物語を遡行することから始まる。そして自分が生を享け、その役割を全うしようとする。そして第三者(観客)がその記録を見守るという形のようである。

伝承を大胆に解釈...あたかも在るような資料を博捜し、登場人物(街人)にインタビューをする。綿密に叙述させ、「在る」ことの謎を解明して行くようであった。物語は自在に時間軸を行き来し、空間を飛翔させ想像させる。この公演の最大の見せ所であった。

次回公演も楽しみにしております。
保健室探偵カネコ【終演しました!ありがとうございました!観てきたランキング1位獲得!】

保健室探偵カネコ【終演しました!ありがとうございました!観てきたランキング1位獲得!】

もぴプロジェクト

cafe&bar 木星劇場(東京都)

2015/08/26 (水) ~ 2015/09/06 (日)公演終了

満足度★★

低ナンセンス...コメディ?
チラシに「やりたい放題企画VOL.1」とあるが、本当にやりたいことをやったのだろうか。何を伝えたいのか、観せたいのかが分からなかった。その訴えたい”何か”が整理できていないような感じである。やりたい放題でも構わないが、そこに観客を意識した”自分の思い”があったんだろうか。

この劇団は2回目の観劇となる。前回は新宿眼科画廊「メモリー・アンド・メモリー」であるが、その時はトラジディーのような展開であったが、今回はコメディ。その意味で、劇団主宰で作・演出の下平慶祐 氏の引き出しは多いと思う。

ネタバレBOX

梗概は、説明を引用すれば「主人公、金子太一は都内の東帝高校で勤務する養護教諭。 普段は学園の衛生環境を守るために活躍する彼だが、実は裏の顔は探偵なのである。しかし、それは誰にも知られてはいけない秘密。」ということで、その事件解決を図るらしいが...。そもそもどんな事件で、何を解決しなければいけないのか?
所々にダンスパフォーマンスも入り、明るく元気なのは良いが、もう少しこれは観てほしい!という主張がほしい。場面がバラバラでストーリーがまとまっていないため、その思いが伝わらない。

先にも記したが、主宰者は色々な芝居が描けると思う。
次回公演を楽しみにしております。
青い地球は誰のもの 「OUR BLUE PLANET」

青い地球は誰のもの 「OUR BLUE PLANET」

DGC/NGO 国連クラシックライブ協会

サントリーホール ブルーローズ(小ホール)(東京都)

2015/08/30 (日) ~ 2015/08/30 (日)公演終了

満足度★★★

盛り込みすぎ
第一部「ミュージカル」、第二部「シンポジウム」という構成であるが、その組立て方に工夫が必要だと思われた。それこそ観せるのが先か、聞かせるのが先か...。中途半端な形での公演になったと思う。

”劇“が終わったところで席を立つ人が多かった。その後のシンポジウムで訴えたかったのではないか。しかし、そのシンポジウムも登壇者の自己紹介のような発言で、全体としてのまとまりがなかった(全体で約30分で、本当にアピールのみ)。

この”環境”の重要性は誰もが疑わないだろう。ただその考え方、取り組み方は人の立ち位置によって異なるだろう。

さて、第一部「青い地球は誰のもの 『OUR BLUE PLANET』」の登場人物は、演奏家、ミュージカル俳優、舞台俳優、声楽家と、それぞれ違う分野(音楽として括る)で活躍している人達である。周知イベントとして各分野の協力を得て成立していることも分かる。
その上で、あくまで観劇という観点での感想は、個々の素晴らしい演奏なりは楽しめたが、全体として魅力の融合は観られなかった。本当に特長が生かしきれていないのが残念である。

合唱で気になったことが…。

ネタバレBOX

合唱団は、小学生低学年から高校生またはそれより年上と思われるメンバーで構成されていた。確かに幅広い人たちに支持されている、というメッセージ、または次世代を意識したかもしれない。しかし、年齢層に幅があり、その音域、声量に差が出ていることは間違いないだろう。
せっかくこれだけ各ジャンルで活躍している人たちの協力を得ているのであれば、合唱団もそれ相応のメンバーで歌ってほしかった(合唱指導も大変だったと思う)。

ちなみに、自分の席の隣に合唱団...子供ゆえに出番がない時は座席でも身動きが多くて、集中して観ることが出来なかったのが残念であった。
劇作家協会公開講座 2015年夏

劇作家協会公開講座 2015年夏

日本劇作家協会

座・高円寺2(東京都)

2015/08/08 (土) ~ 2015/08/09 (日)公演終了

面白かった!!
8月9日(日) 《別役を待ちながら》 総合司会:鴻上尚史 鈴木 聡

劇作家協会の公開講座らしく?観応えのある内容であった。
このイベントを★評価するのは難しい。内容はもちろん素晴らしく楽しめた。また今後の観劇の参考になるようなこともあった。
例えば、「不条理」を描くとき、どの位置・場所にいるか分からなくなり迷子になるなどと、現場舞台でもそうならば、観客(自分)などはついて行くのが大変かも、など変に感心してしまった。

さて、当日は二部構成になったいた。
第一部【14:00ー あしたの別役】 《20分×3本》別役戯曲の抜粋
その後、鴻上尚史と鈴木聡が、各カンパニーに作品解釈や狙いを聞く。

上演順
○こゆび侍『にしむくさむらい』   [演出]成島秀和  [出演]背乃じゅん(こゆび侍)、宮崎雄真(アマヤドリ)

○□字ック『或る昼下り』   [演出]山田佳奈  [出演]堂本佳世(□字ック)、他

○あやめ十八番『向こう横丁のお稲荷さん』   [演出]堀越 涼  [出演]大森茉利子、金子侑加、笹木晧太(以上 あやめ十八番)、他

[トーク出演]大森茉利子、金子侑加、成島秀和、背乃じゅん、山田佳奈、堂本佳世

第二部
【16:00ー わたしの別役】
○ 「別役実」×「ケラリーノ・サンドロヴィッチ」対談映像
○劇作家たちが「別役実」の人と作品を語り尽くす。登壇:岩松 了、鐘下辰男、坂手洋二、宮沢章夫、渡辺えり 。

9.1迄に追記

BABELL

BABELL

BABELL

新宿眼科画廊(東京都)

2015/08/28 (金) ~ 2015/09/02 (水)公演終了

満足度★★★

熱演 「インターホン」
この集団...BABELLは、独自のイマジネーション揺るがない個性、変わり者だから描ける不思議な世界、を観せてくれるという。居酒屋ベースボールの異端児と自認している彼らが綴る物語...初単独公演らしいが、その演技は熱かった。全体的には好感が持てる公演であった。

ただ、話の内容は分かるが、その展開というか構成で少し気になるところも...。

ネタバレBOX

梗概は、親友である恵吾と啓祐、それに恵吾の彼女・幸子を中心にした三角関係。それに啓祐の友人2人が関わり、些細なキッカケで人間関係が壊れていく様子が描かれる。

さて、気になったのはシチュエーションである。
啓祐が彼女を奪うのではないか、という恵吾の猜疑心はなんとなく分かるが、自殺を図るキッカケが...彼女に聞かせるためのハーモニカ奏を啓祐が先に行ったからか。
もう一つ、この三角関係に直接絡まない啓祐の友人2人の存在である。終盤は交わるようなストーリーであるが、別展開という印象が強く違和感があった。
また、ありえないピアノのシーンなど、敢えての演出であり、何を伝えたかったのか観せたかったのか理解に苦しむ場面もあった。

芝居という虚構の世界を承知で、それでも、ありそうな設定と考え難い設定という微妙な感じは、少し落ち着かなかった。

総じて役者の演技は安定しておりバランスも良かったと思う。

今後の公演にも期待しております。
天皇ごっこ~母と息子の囚人狂時代~

天皇ごっこ~母と息子の囚人狂時代~

オフィス再生

APOCシアター(東京都)

2015/08/28 (金) ~ 2015/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

芝居は心魂に響く...
人の生き様はそれぞれ...その意味で芝居として観ると鬼気迫る内容であった。脚本は見沢知廉と母の物語だ。説明によれば「彼が遺した『母と息子の囚人狂時代』をテキストとし、母の生前に取材した様々な事実を積み重ね」たものだそうだ。そしてその演出、音楽・照明等の技術がすばらしい。

ほぼ同世代で、彼・見沢知廉こと高橋哲夫の通った学校の卒業生に知り合いがいるはずであるが、この公演まで詳しく知らなかった。



ネタバレBOX

場内全体は黒を基調にしており、役者の服装も見沢本人(上半身裸)と母親・高橋京子(着物)以外は黒色である。また照明は薄暗く不安、閉塞を感じる。
舞台セットは、床壁に白線(発光テープ)で四角い枠が刻まれる。正面、数段上と、下手の数段高くなっているところに役者が背を向けて佇む。
舞台上には、多くの細姿見。下手奥は階下(劇場は2階であるため、実際は1階)から人が上ってくる。もっともこの場所は8階(投身自殺した住居階数)だろう。

この舞台の特徴は、その深奥にある苦悩、自信、不安、憤怒など人間の感情の渦が強く描かれ、それが痛みとなって伝わってくるようだ。その演出と音楽・照明効果が見事にマッチしている。始まりと終わりの音楽のアンバランス、照明の強弱・方向とそれを助長するようなマッチの炎、両手にはハンディライト、姿見は場内の照明が交差・拡散する。その中で鏡の世界と向き合う役者。


閉塞感(もしくは不自由)を象徴するような鉄条網、一方、上を見上げて動かない...空(自由か)というセリフが印象的である。
心の乱れは、本や原稿用紙が乱雑に、ほんとうに散らばっている。
重苦しい雰囲気だが、その重厚感のほうが圧倒していた。脚本・演出とも泣かせようと意図していないが、自然と落涙する...そんな母への想いが伝わった。

次回公演も楽しみにしております。
美しい日々

美しい日々

TEAM 6g

萬劇場(東京都)

2015/08/26 (水) ~ 2015/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★

深みのある内容を丁寧に描く
物語の展開が丁寧で分かり易い。観客に観てほしいという姿勢に好感が持てる。
そのテーマから重たくなりそうだが、その演出はどちらかというと軽妙で、問題意識もさらりと観せる。重厚感を好む観客には物足りないかも...。しかし、自分は本公演の観せ方でも物語に引き込まれたし、楽しめた。

ネタバレBOX

梗概...プロローグがラーメン家での他客の因縁をつけられ暴力を見ないふり...暗転して舞台は、病室内に変わる。主人公は高校の教師であり、甲子園出場が決まっている。その学校の生徒が万引きをするが、その犯人は野球部員でる。それを見ていたが学校や世間体を気にし、誤認逮捕された生徒を庇わない。そしてその生徒が自殺未遂を...
一方、この病院に医療過誤の噂があり、それを取材・調査している女性弁護士が登場する。この二つの話は直接交わることなく、別の話のように展開していたと思ったが...。エピローグはプロローグへという、芝居でよく見かける展開に収まる。
この舞台セットは、下手にラーメン屋のミニカウンター、そして紗幕の奥が病室になっている。そこにはベットがあり入院患者が4人。さらにその奥に二階部が設けられ、そこにも紗幕がある。そこは屋上で、自殺未遂を図る場所をイメージさせる。

この公演は、脚本・演出が丁寧で、また舞台セットはそれを助ける見事な作り込みである。萬劇場という奥行きのある舞台の特長を十分生かしていた。

この公演を表層的に観れば医療過誤の追求が弱いと思う。ラストは女性弁護士の父親がこの病院の医療(手術)ミスで死んでしまう。それを告発するのが、直接ミスした医師を医学界から追放するだけで終わっている。
本来であれば、個人責任の追及だけではなく、病院全体の隠蔽工作も含めその態勢を追求すべきところであろう。

しかし、観方を人の心のあり方...真実と正義というキーワードから見れば、二つの物語は緩く交わる。教訓のようにならず、面白楽しく観せるという描き方は成功していたと思う。人は誰でも煩わしいことには関わり合いたくない、自己保身があるのではないか(少なくとも自分にはある)。その気持の自己変革を底流に描いており、テーマからすると重苦しくなりそうであるが、そこは軽妙だがしっかり観せており、自分は好感を持った。

次回公演を楽しみにしております。
浅草紅團・改

浅草紅團・改

劇団ドガドガプラス

浅草東洋館(浅草フランス座演芸場)(東京都)

2015/08/21 (金) ~ 2015/08/31 (月)公演終了

満足度★★★★★

お見事...
 『木曜の夜にはズロースが落ちる』と川端康成が新聞小説に記したばっかりに榎本健一率いる『カジノフォーリー』は連日連夜の超満員でごったがえしたそうです。 よーし、ドガドガもひとつあやかってみるか...を確かめるべく、木曜日の夜に観劇した。けっこう早く劇場に着いたつもりであるが、既に整理番号15番であった。
その公演は、やはり期待を裏切らない見事なものであった。

ネタバレBOX

本当に舞台上は、浅草風情(実際の上演場所も浅草・東洋館)が醸し出されている。場内全体をそのように感じさせる演出はいつもながら見事である。
舞台セットは、物語の展開とともに言問橋の橋桁や浅草寺境内・拝殿をイメージさせる。セットはシンプルであるが、役者の登場が上手・下手やセット中央の出入り口だけではなく、客席の両通路、上手の2階部など各所を...それだけで賑わいを感じる。

物語は、昭和初期の浅草を舞台に路地に生きる人たちの哀歓を描いた都市・風俗劇といったところ。この舞台では浅草だけではなく、その周辺も視野に入れていたようだが。関東大震災以降の都市変貌・風俗と昭和恐慌の影さす終末的な不安と喧騒の世情が見事に映し出されていた。そう映写機を通して見る当時の昭和モダニズム...その演出は雑多のようであるが、それはルポルタージュのような切り取りのように観せている。

もちろん、ダンス、歌は素晴らしいし。その雰囲気は耽美であり妖艶でもある。それが舞台上だけでなく、舞台と最前列客席の狭いスペースでも行われ、その圧倒的迫力...堪能した。

次回公演も楽しみにしております。
サミュエル

サミュエル

劇団俳協

TACCS1179(東京都)

2015/08/20 (木) ~ 2015/08/23 (日)公演終了

満足度★★★

コメディ...かな
準劇団員公演...最近は必ず観劇させてもらっている。本公演は今まで観た中では短い...1時間5分であったが、笑いの連続であった。俳協の公演は、どちらかと言うとキッチリというイメージであるが、今回は少し違った。

表層だけ観ると身の下話もチラホラあり、ドタバタが多く雑多な感じである。
一応「愛」の確認作業とその微妙なズレが面白いのかも...。

ネタバレBOX

梗概は、説明文...「狭いアパートの一室を舞台に展開する男と女の恋の物語。 登場する人物はいずれもどこか抜け落ちていて、微妙にずれている。 ありふれた日常会話とドラマの果てのラストがいとおしくも切ない。」から引用。この説明からすると愛ある会話劇ということを想起したが、印象は違った。

まず、舞台セットは主人公のマンションかアパートの一室。上手にベット、中央に本棚、中央下手寄が玄関で脇に下駄箱。下手に衣装BOXが二段重ねしてある。

主人公は、司法試験を目指す浪人(アルバイト)という設定。それにしては受験専門書もない。そのヒモ的存在であるが、「性」には関心がある、というかそれに執心している様子のみしかうかがえない。この男の彼女が病気見舞いを理由に部屋まで押しかけてくる。主人公の慌てふためくコメディ...。

本公演、観ている時は面白いと思ったが、心に残るものがなかった。俳協・準劇団員公演は楽しみに観ており、いつも印象深いものばかりであったが、今回は残念でならない。

次回公演を楽しみにしております。
パ・ド・ドゥ

パ・ド・ドゥ

劇団俳協

TACCS1179(東京都)

2015/08/20 (木) ~ 2015/08/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

愛...
パ・ド・ドゥはバレエ用語で二人で踊ること。特にその場面は「愛」を表現している。本公演も愛を描いた内容であるが、そのシチュエーションが変わっている。
説明にある、絡み合う「嘘」と、明かされない「過去」 冷たい接見室で繰り広げられる二人の「パ・ド・ドゥ」 ...それは愛の桎梏が裁かれるまでの”手かせ”を象徴しているかのようだ。
舞台には二人しか登場しないが、その他の人物もその台詞から人物像が浮かび上がるようである。
脚本・演出・演技とも素晴らしく、1時間40分がアッという間に過ぎるほど観応えがあった。

ネタバレBOX

愛の桎梏が裁きを受けるまでの手枷を象徴しているようだ。
接見室での2人(元夫婦)の濃密な会話劇。その舞台セットはスチール机とパイプ椅子のみ。ラストは、それまでの漂流するような会話や行動が、今でも愛するが故のことだと分かってくる。この元夫婦の言い分の主導権争いのような二転三転する駆け引き...本当に緊迫感ある空間を描き出している。

さて、女性の感情から見えること。元夫の歓心を得たい、また自分を見てほしいと切望する愛らしさ。その反面、怖い女心が垣間見える。
一方、男性は自由気ままで、無関心、無頓着という浮揚したイメージである。
この男女の間にある感覚的な隙間、そこに生ずるズレ・歪み、更には別の感情...機微のようなものが巧く表現され、ミステリー要素も加わり最後まで目が離せない。昔の流行歌♪別れても好きな人 を思い出した。

次回公演も楽しみにしております。
ミソロジカル:カナタ~時の向こうに~

ミソロジカル:カナタ~時の向こうに~

れんアカデミー

座・高円寺2(東京都)

2015/08/23 (日) ~ 2015/08/24 (月)公演終了

満足度★★★★

平和、そして生きる大切さ
子供が主役の反戦物語。当然、戦後70年を意識した芝居である。この平和を享受している今には、先人の筆舌につくせない...がある。それを演じている子供がどこまで理解できるか分からない。セリフが上辺だけかもしれない。それでも”平和”は重要であることに変わりない。

この公演までに、子供たちはどれほどの稽古をしたのだろうか。たしかに公演であるから観客に観てもらうことは大事。その点、自分は楽しめたしメッセージも伝わった。
レベルアップは当然であるが、劇団にはそれぞれ特長があり、その良いところを表現していってほしい。
少し気になったところも…。

ネタバレBOX

パンフレットには、「なんでもそろう時代の子 不満をいっぱい抱えてた/なんにもなかった時代の子 希望を一杯しょっていた」というキャッチコピー。
そして、コトダマたちのいたずらで、神話(ミソロジカル)のカナタで出会う。ちいさな運命のものがたり、である。そのいたずら...時間の裂け目にあるクレイドルという空間での出来事であるが、実際観るのは時空を越えて70年前の太平洋戦争中の子供たちとの触れ合う不思議な物語である。

本公演は、もともと架空もしくは仮想の物語であり、そこにリアリティを持ち込んでも違和感を感じてしまう。現在と時空を越えた(戦時)状況にある違いから、何が大切であるかを学ぶ、それをどう感じるかという感覚的なものがしっかり描かれたのではないか。感じ方は人それぞれであり、それをどう解釈し理解するかは子供たちの成長とともに歩いてくる。

戦後70年という節目からは、体験は「歴史」になり、あとは追体験になりつつある(自分も戦後生まれ)。しかし戦争は事実あったことで、それの痛みを忘れることはできない、というメッセージは伝わる(実は「痛み」どころではないが)。

少し気になったのは、音楽である。舞台に簡易ピット...と言ってよいかはあるが、楽器はパーカッション...コンガ?、トランペット、アップライトピアノのようであったが、コンガの音が芝居とマッチしていたのかが疑問である(楽器選定の意)。他の2楽器はなんとなく芝居と合っていたと思うが...。折角の生演奏であったが印象に残らなかったのが残念である。

次回公演も楽しみにしております。

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