タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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イチエフ・プレイズ

イチエフ・プレイズ

ワンツーワークス

ザ・ポケット(東京都)

2015/07/17 (金) ~ 2015/07/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

恐怖が始まる…観応えがあった
本当に怖く、壊れていく様が観てとれる。この芝居が素晴らしいと思ったところは、当事者間の問題として描き、他者(他の地域等)と比較するような安易な観せ方にしないところ。
リアリティある設定、本音のセリフ内容、その自然体の中から浮き彫りになる恐怖。その目に見えない”敵”は、現在だけでなく将来をも蝕む(汚染)。一方、今を生きる人々の日常生活は待ったなしに迫る。未来を考えて現在を犠牲にするのかという叫びも聞こえそう。

原発...都市的な消費経済を優先する現代社会の落とし子。将来のリスクを地方都市に押し付けるという構図が観える。本公演は都邑対立ではなく、地元の人々の生活の中で問題提起するという、コンパクトにして壮大な人類の未来への考察した秀作だと思う。

ネタバレBOX

舞台セットは和室、上手にサイドボード等、下手は仏壇、そして中央に卓袱台が置いてあり、そこが芝居の主場所である。周りは回廊のようになっており、外への通路でもある。そして関心したのが、和室の四隅に羽目板が5cm前後の間隔で横打されている。それが鯨幕のように見えて、その家族で起こった状況が一目で理解出来たようだ。

そして演技...プロローグを始め、いたる場面でストップモーション/モーショントレーサーのような動作は、独特で目を奪われるようであった。

その家族、人物像が明確になるような丁寧な作り込みであった。
登場人物の夫々の思いや状況がはっきりしている。

 夫は、仕事への執着心、誇りを持っている。地域や会社での評判を気にする。会社は裏切らないとの忠誠心のようなものも見える。しかし、親会社からの圧力もあり、下請け会社の立場では労災申請をしないでほしい。そこに働く人へのしわ寄せ。
 妻は、夫の健康には気遣う。しかし、会社での様子や仕事内容は知らない。実のところ危険認識については鈍い。家庭内平穏が第一優先。
 娘は、恋人の健康が気になる。結婚や将来妊娠した時の不安が払拭できない。父と娘の対立はどちらも本音の正論。
 彼氏は、仕事への誇り、危険であることを認識しつつも仲間を裏切れないジレンマ。
 記者は、基準内にも関らず発症するという、異常なことしか記事にしない。逆に言えば基準を超えて発症事例は当たり前で売れない。それこそ異常な報道姿勢であるのだが...。被ばく量の測定は、過重労働...過労死・労災認定と同じで、どの時点からとらえても年間(輪切)の計測値を捉えるという当たり前がない。
 義妹は、自分の賃貸家屋が汚染区域にあるため家賃収入が無くなった。経済的逼迫から原発反対運動へ...。

夫々が抱えている問題は目先の現実、それが本音であり間違っているとも思えない。そういうあり得る設定から浮かび上がる日常の現実にどう対処するか?実に見えない敵は現在だけではなく未来にも悪影響を及ぼす。

目先優先になりがち、しかし当事者にすれば当たり前であろう。その地から遠く離れた場所から理想・理屈を並べても説得力に乏しい。しかし、放置することができない問題でもある。そこは観客(自分)が考えるところ。内包する問題...その多くを提示しているが、焦点が暈けず核心(和菓子の餡の部分)を鮮鋭にした公演であった。

次回公演も楽しみにしております。
水槽【ご来場誠にありがとうございました。次回は12月】

水槽【ご来場誠にありがとうございました。次回は12月】

シアターノーチラス

新宿眼科画廊(東京都)

2015/07/24 (金) ~ 2015/07/29 (水)公演終了

満足度★★★★

濃密な会話劇
家庭という小世界の中での不安や疑念を巻き込んで展開する...そう水槽の中で蠢く人間模様が濃密に描かれる。ミステリー要素を含んだ極上の会話劇…自己または他者による評価を更に客観的に捉えた多面・多重構成のような芝居は、観応えがあった。粟立つような感覚は、本当に素晴らしかった。
また会話は、全員とが組み合わさる、いわばリーグ戦のようでそれぞれの関係性が明確になるような工夫がされており、見事な演出であった。

ネタバレBOX

梗概は、説明「海へ旅立つための支度をする家族。しかし父親の姿はない。父親は去年の夏、その海で死んだ。それは事故だったのか、それとも事件だったのか。家族の中にうごめく小さな疑惑。不可解な死と向き合う人々の会話劇」のとおりである。家族といえども一皮剝けば自己本位の醜悪な姿が浮き彫りになってくる。日常会話に潜んでいる鬱積、嫉み、卑屈、欺瞞...等々が纏わりつくように迫ってくる。この嫌らしい感覚を持たせる見事な芝居であった。本性剝き出しだが、その原因とも言える、”なぜ父親が亡くなったのか”という些細な好奇心、その”理由”を聞いたこと。そして聞いた本人は、その原因に関係していないことを承知(もしくは無意識を装い)で、これから家族になろうとしている親兄弟姉妹を翻弄する。この不快感もよく現れていた。

そして、タイトル「水槽」の存在が不気味である。夏場だけ開店するレストランの入り口横に置かれたそれには、客が海で獲った魚介類を一時的に入れる。しかし、水槽の中では弱肉強食の世界...いわば餌食になってしまうこともある。実に比喩的な台詞を聞かされる。この75分という割と短い時間の芝居であるが、実に丁寧で濃密な家庭内会話、そしてミステリー要素まで取り込み面白かった。

なお、狭い会場内においてクーラーの音が、独り言のような台詞を聞きづらくしていたのは残念であった。

次回公演を楽しみにしております。
「キミシダイ列車」/「The Beginning」

「キミシダイ列車」/「The Beginning」

TEAMトライデント

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2015/07/23 (木) ~ 2015/07/26 (日)公演終了

満足度★★★★

キミシダイ列車…疾走
ストーリーはわかり易く、爽快感が最後まで持続…疾風するような芝居だった。熱血青春ドラマを観ている感じであった。役者の熱演は、場内の冷房を感じさせない?ような体現運動であり、観応えがあった。
しかし、演出で気になるところも…。

ネタバレBOX

梗概は、説明にあるとおり「自転車選手の息子ながら自転車嫌いの少年と、少年の父親に憧れるも病気により入退院を繰り返す少女の物語。 病気の悪化により亡くなってしまう少女だが、自転車に乗っている間だけは少年は彼女と会う事が出来た。 その少女の為、大嫌いな自転車に乗り、レースへと参戦する」というもの。その少女の死がアッサリと描かれ、いや描いていない。
自分の好みであるが、この死に向き合った場面を入れ、多少の”泣き”を観たかった。自転車レースでも観(魅)せてくれた、山越え、平坦ロードと見せ場を作ってくれたように、物語にももう少し起伏を盛り込んでほしかった。

もう一つ、疾走シーンは素晴らしいが、こちらも単調というか平坦なロードのイメージしかわかない。例えば山越えでは反り返る姿勢、平坦になれば前傾姿勢等、その走っている臨場感が欲しかった。あまりに清々し過ぎて印象付けが弱くなってもったいない。もう少しインパクトと少女の死を乗り越えた余韻が...。せっかく少女の声が聞こえなくなり、自立できたことを伝えられたのだから。

次回公演も楽しみにしております。
「アル・タルフ」- 獅子の一瞥 -

「アル・タルフ」- 獅子の一瞥 -

劇団ギルド

ART THEATER 上野小劇場(東京都)

2015/07/25 (土) ~ 2015/07/26 (日)公演終了

満足度★★★

アル・タルフ…にしてほしくない!
多重構成と多面的表現の公演は面白かったが、その観せ方にもっとメリハリがあれば良かった。そうすれば当日パンフ「3人の女優ありきからスタートしたエンターテイメント」の新作は理解出来ただろう。
さらに、劇団解散を謳いあげたことを冒頭に記述しているから誤解しやすいが、作・演出の高谷信之 氏の自伝的な戯曲の上演を検討しているらしい。1960年に多感な年頃であった氏は、当時の事、思いを軸にした作品を書き上げている。しかし今は、カルペ・ディエム(今宵は愉快に飲み歌おう)に舵を限りなく左舷に切った、と書いている。
その思いと若い役者への期待感は伝わった。

ネタバレBOX

アル・タルフ…アラビア語で「終わり」を意味する。しかし現在、1960年当時(安保闘争)をリアルに知る方に劇団を解散してほしくない。

公演は、タップダンスから始まるが、構成は劇中劇である。正確には劇中の稽古を観せているが、始めからなのか、途中で登場した女優からのシーンなのか判然としない。既に実生活に観えた(始め)時から芝居だったと思うが、フリップを持ち出すなど芝居(稽古)シーンらしくない。状況や台詞でしっかり説明できていると、最後の虚実(劇中劇)の落差があって印象的だったと思う。

多重構成とはもちろん、劇中劇(稽古)として観せていること。またテーマ性は特に無いとあったが、最後に女優陣が”獅子の一瞥”について高唱する件では、獅子の”左”肩を温めてじっと様子を窺う姿が見える。
多面的とは、個々の女優の観せ方である。タップダンスで魅了したmaimiさん、中盤から登場した佐藤好さんは従順な妹役から豹変していく演技力、北村りさ さんは圧倒的な存在感を示した。それぞれの特徴を現した芝居であったこと。

公演としては、何を観せ訴えようとしたのかが不明瞭になったのが残念である。最後の獅子の一瞥に込めたセリフ?または唱和?こそしっかり伝わる内容にしてほしかった。

次回公演「‘60~18ロクレイ、イチハチ」も楽しみにしております。
紫陽花の下に死体は眠る

紫陽花の下に死体は眠る

惑星☆クリプトン

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2015/07/22 (水) ~ 2015/07/26 (日)公演終了

満足度★★★

もう少し新鮮さがあると…
人はこんなに簡単に人を憎み殺意を抱くのか。その復讐場所…夏祭りに相応しい舞台を作り込んでいた。全体的な雰囲気は、中途半端に笑いをとることはしないで、あくまで狂気・猟奇を描こうとしていた。そこはブレずに一貫性を感じた。
しかし、その物語は既に見慣れたシチュエーションのようで、新鮮さが無かったと思う。

ネタバレBOX

既にどこかで観たような生き残りゲーム...その意味で新鮮味がない。また、その観せ方も単調である。
舞台セットは、上手に盆踊りの中心に設営されるような櫓、その下に「玩具金魚すくい」の水槽がある。中央は外に通じる通路等、下手は皮(破)幕が掛けられている。舞台セットは作られたが、櫓(上部)は使用しない、下手の幕には映写する予定であったが、初日は機械トラブルで出来なかった(最後のキャスト挨拶で謝罪していた)。セットの効果が活きていなかった。

梗概は、夏祭り会場に無理やり連れて来られた男女が、生き残りをかけて一対一のゲームをする。このゲームを仕込んだ黒幕がいるが、表面的にはこのゲーム主催の会社・フロアー支配人が進行役になる。
このゲームが「金魚すくい」のみで、勝敗は多く掬い上げた点とモニター越しに見ている会員と呼ばれる者たちの恣意的な評点の合計点で決まるという。夏祭りならば、射的、輪投げなどのゲームで変化を出しても良かった。

また暗転時間が長く、観る集中力が途切れる。この間に歌が流れるが、主題歌を聞かせるためであろうか。

この公演の最大の疑問が、先に書いた黒幕の動機である。あまりに単純で弱いような気がした。また、唯々諾々とゲームをするのか?このゲームを仕切っていた支配人の狂気と黒幕の狂気の落差について行けない。また、なぜ参加者の名前が「K」に拘るのか?

舞台からは、広大な土地や紫陽花の彩りが感じられない。絶望感と妖美さがイメージできると良かった。
プロローグの凄惨な姿が印象的だっただけに残念である。
ちなみに、最初の一瞬の姿(作・演出 ミム・メモ さん)は、数十年後の母親・恵子(若林美保 さん)という繋がりでしょうか?
本公演は、もう少し新鮮さと観せる工夫があれば…本当に残念である。

次回公演を楽しみにしております。


マドモアゼルはプリンス ムッシュはプリンセス ~桜木邸連続殺人事件~/ダンパチ13・銀

マドモアゼルはプリンス ムッシュはプリンセス ~桜木邸連続殺人事件~/ダンパチ13・銀

ショーGEKI

「劇」小劇場(東京都)

2015/07/17 (金) ~ 2015/07/26 (日)公演終了

満足度★★★★

「劇」笑劇場は衝撃かも...
演劇的な理屈など細かいことは言わないで、肩の力を抜いて楽しんでしまう。そんなエンターテイメント笑ーであった。

そしてしっかり観せるミステリー・ストーリーとその演出は面白かった。とにかく観客を楽しませようとする、そのサービス精神で溢れた芝居である。笑い笑い...そして笑いで、最後まで明るく楽しい内容である。

ネタバレBOX

舞台は素舞台で、若干高い位置に設営してある。そこに小道具・小物を携えた役者が登場し、場面を作り上げていく。
客席は、横長ベンチに個々の座布団が置かれている。普通であれば後列に向かう中央通路があるが、今回はない。すべての列がベンチ席になっているから、入口(上手側)から入って下手席から順々に詰めて座るようになる。もちろん早く会場入りし中央席に着けるが、その場合、下手に行く観客が通りやすいように...との場内案内がある(心配りである)。最前列は舞台に近いため、演技の迫力は必至、しかし、冒頭の登場人物紹介では透し幕に映像を映し出すが、それが見えない。一方、2列目以降は前列の人の頭を気にしなければ、プロローグ映像が見える。好みの問題であろう。

さて、自分のお気に入りのシーンは、次のところ。
1つ目は、ベランダから下を覗き込んだ、俯瞰シーン。これは体力勝負であろうが、面白い観せ方であった。
2つ目は、シーンではないが、すべての役者の早着替えである。フォーマルな場合(パーティーシーン等)があり、結構時間を要するであろうが、見事に着替えていた。

そして、最後に推理劇であるから、その内容にも注目したが、特異な例ではあるが、しっかり考え構成されていた。上演時間、最後の挨拶含め約2時間、観応えがあった。

次回公演を楽しみにしております。


果てとチーク×コワい女シリーズ第一弾 『害悪』

果てとチーク×コワい女シリーズ第一弾 『害悪』

劇団森

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2015/07/17 (金) ~ 2015/07/19 (日)公演終了

満足度★★★

凝った作り…
久し振りの早稲田小劇場どらま館…そこでの「害悪」は詰め込みすぎた印象である。凝らした演出は観にくく理解し難かった。
しかし、訴えようとする姿勢は真摯で好感を持った。
その凝った芝居は…。

ネタバレBOX

舞台セットは、少し高い位置に設営し下の席からは見上げるようで観にくいだろう。パイプで三面に区切り、上手は某組織の事務所、真ん中は事務所に勤めている女性姉妹の部屋、下手はその姉妹の寝室(または外の道?)を現しているようだ。そして正面舞台とは別に回廊花道を作り、その真後ろでも芝居を行った。しかし、当日は満席で詰めた状態で、さらに中央通路に増席をするほどで、振り向いて観ることが出来なかった。

さて内容は、「トロイヤの女たち」をモチーフ...過去から現在に至るまで戦争・紛争を繰り返し、そのたびに幼き子や女性が犠牲になってきた、そのことを人類に鮮烈に問いかける話である。そこには神と人間の存在がある。

本公演は、下手で戦争に行った夫や息子が戦死(インターネット上の仮想敵国との戦争か?)しても、姿・性格も同じアンドロイドが代わりに癒すという斡旋商売(契約)のようである。一方、その戦争で攻撃している相手がネット上の架空仮想国のようである。この虚実混合した物語に混乱を覚えた。さらに中央では生身の人間が生活しており、三姉妹の会話がきわめて人間的である。同性愛(レズ)、妊娠などのセリフがポンポン飛び出す。

この現実とも虚構とも言える独特の世界観...そこに見える問題提起。しかし、自分にはテーマの投げかけが、種々のレトリックが用いられているようで理解し難かった。
仮想敵国を滅ぼしてはならない、という均衡を保もつ姿は、どこかの国の事情を投影しているようで、苦笑した。
一応、戦死者を慰めるのに不可欠になったアンドロイドは、逆に人間の「悲しみ」「寂しさ」という感情を麻痺させ、戦争・紛争に恐怖を抱かなくなるというアイロニーを描いたのか。それが冒頭、社会的に受容された狂気の契約(クレーム)に繋がるのか。何でも(人さえも)代替可能という、現代の寓話でしょうか。

なお、観せ方として、セリフが被り、また敢えて同時に離す場面はなお理解しにくい。最後は、凄惨な場面で終わるが、そこには生人間とアンドロイドを確認し合うための行為...そんな近未来が見えるようだ。
「トロイアの女たち」の「神」と「人間」を「アンドロイド」と「人間」に置き換えたような感じもした。

次回公演も楽しみにしております。
闇

ドキドキぼーいず

調布市せんがわ劇場(東京都)

2015/07/12 (日) ~ 2015/07/12 (日)公演終了

満足度★★★

視覚的に観せる...
第6回せんがわ劇場演劇コンクール参加作品。

繰り返しの動き、発声練習のようなわざとらしい大声...演劇ワークショップのような印象を受けた。たぶん敢えての取り組みであろうが、粗暴のような感じがした。

ネタバレBOX

多くの役者が登場し、相互に不規則と思えるような動きだが、実は優れたフォーメーションであった。何か不気味で何か起こりそうな気配…最後に金属バットを持った人物が...作品のみどころ・意気込みは、登場人物の誰かが人を殺す。物語はそれだけです、とある。

薄暗い照明の中に、鈍い光の金属バットがドキドキする。ボレロとよくマッチした舞台絵図であった。

次回公演を楽しみにしております。
ふみ

ふみ

LiveUpCapsules

調布市せんがわ劇場(東京都)

2015/07/12 (日) ~ 2015/07/12 (日)公演終了

満足度★★★★

短い時間の中で分かりやすい芝居
第6回せんがわ劇場演劇コンクール参加作品。

大きく2つの物語に分かれるが、一貫して自分の信念を貫き通した与謝野晶子が描かれる。脚本はしっかり書かれ、演出も面白い。
明治文壇で活躍した与謝野鉄幹・晶子夫妻の出会いと結婚が1つ目の話、晶子が詠んだ句をめぐり、評論家・島村抱月との論戦が2つ目の話であるが、その繋がりは微妙である。しかし、晶子の激しく一途な思いは2つの話があってはじめて伝わると思う。
芝居の内容がよく分かる脚本・演出であり、その観せ方も粋であった。

ネタバレBOX

明治の文壇史の一端をダイジェストで観たようだ。芝居の脚本・演出は丁寧で骨太い感じがあった。日露戦争当時の日本...国粋的な論調の島村抱月との論戦は、文学的見地というよりは国是に対する見方。一瞬、教育的な芝居になりそうであったが、前半の恋愛場面からの繋がりで中和させたと思う。

さて先に戻るが、鉄幹主宰の歌会への投稿を始め、”文”のやり取りは扇を文にみたて、それを投扇することによって粋に描く。時代背景を考慮した着物姿と相まって優雅の中に凛とした与謝野晶子が描かれていた。

次回公演を楽しみにしております。
○口なし

○口なし

chon-muop

調布市せんがわ劇場(東京都)

2015/07/12 (日) ~ 2015/07/12 (日)公演終了

満足度★★★★

記憶を記録する
第6回せんがわ劇場演劇コンクール参加作品。

迷宮の中で、さらにもがき苦しんでいる様子。登場人物の自分さえも否定するような今日的な空想劇のように感じた。
哲学者J=P・サルトルの戯曲『出口なし』から着想...その発想から既に難しいイメージを持ってしまった。

ネタバレBOX

さて、死んであの世とこの世の境...迷宮にいて自らの心情を吐露する男女の姿のようである。そこが地獄であるらしいが、そのイメージはない。3人のエピソードとなぜ3人がそこに入るのかが分からない。3人の関係、「出口なし」に入る説明をもう少しして、観えるようにしてほしかった。

全体としては不思議空間に誘われた演出はすばらしい。その独特の世界観と内容がうまくマッチして見れれば、「○□なし」の地獄が見えたかも...。

次回公演を楽しみにしております。
こんな気持ちになるなんて

こんな気持ちになるなんて

劇団しようよ

調布市せんがわ劇場(東京都)

2015/07/11 (土) ~ 2015/07/11 (土)公演終了

満足度★★★

想像の世界感…
第6回せんがわ劇場演劇コンクール参加作品。

想像力を豊かにする、そうすると少し気味悪くなってしまうような物語である。
「存在」と「非存在」を描いたもので、ある物が人間の体の中に入り存在していた物が段々と無くなるような...。
その説明は、一人の無表情のキャストがフリップを掲げて...。

ネタバレBOX

口から入って、食道、胃、腸へ...。
その不思議感覚は初めてである。

さて、最後にスイカが舞台中央に据えられ、それをスイカ割りするその行為は、自分には意味不明であった。
しかし、観る人が見れば解るのだろうか。

次回公演を楽しみにしております。
月に吠えろ

月に吠えろ

オーストラ・マコンドー

調布市せんがわ劇場(東京都)

2015/07/11 (土) ~ 2015/07/11 (土)公演終了

満足度★★★

オーソドックスな…
第6回せんがわ劇場演劇コンクール参加作品。
その中で、一番わかりやすく、「せんがわ」という冠を付けたコンクールとしては共感が持てる内容だと思う。

確か、このコンクールの3~4回目ぐらいまでは、「せんがわ」という街をテーマないしイメージできるような内容が芝居に組み込まれていることが、応募条件だったと思う。その意味で、本作品は、このコンクールを通じて「その才能が調布市せんがわ劇場を中心に、仙川を文化の街としてますます発展させてくれることを期待」に合致したようだ。

それに応えるかのように、劇団の作品のみどころ・意気込みが、「地元の方々と共有できる演劇作品を作りたかった。」とあり、せんがわ商店街で取材を重ねたことを記している。

その芝居は...。

ネタバレBOX

昭和の雰囲気を醸し出すような、義理と人情が垣間見える内容である。
自転車屋の店主・萩原作太郎は、代々続くこの店を継いだが、時代の波に押され経営は悪化している。そしてお構いなしに変貌し続ける商店街 。今後どう対処していくのか、残された選択肢は二つ。

初めて芝居を観る人にもわかり易い展開で、また演技もしっかりしている。
この劇団、今年3月に映画監督・小津安二郎に捧ぐ「家族」を上演しているが、自分はそれを吉祥寺シアターで観ている。やはり、懐かしい感じのする芝居のスタイルは変わらないのだろう。このしっかり芯のある舞台姿勢を応援していきたい。

次回公演も期待しております。
尖ったものは、みんなそこに置いてください。

尖ったものは、みんなそこに置いてください。

集団たま。

調布市せんがわ劇場(東京都)

2015/07/11 (土) ~ 2015/07/11 (土)公演終了

満足度★★★

現代寓話…奇妙なこだわり
第6回せんがわ劇場演劇コンクール参加作品。
現実なのか想像の世界なのか曖昧な不思議な物語。

観念的でシュールなことは何となく分かるが、その訴えたかったテーマ性なりが見えてこなかった。舞台上にいる犬の目線(下から見上げる)での世界観であろうか...。

ネタバレBOX

語り部は”犬”であり、居る場所がコンビニ前の路上という設定である。そこに出入りまたは通りすがりの人物を通して描く世界観...現実とも非現実とも取れる内容に戸惑いもあった。
この劇団ならではの視点、描き方は初めて演劇を見る観客には奇妙であり、理解も難しいと思った。
もっとも演劇コンクールであるから、その本質はしっかり捉えられているかも...。

次回公演を楽しみにしております。
変身

変身

ttu【2017年5月末解散】

新宿眼科画廊(東京都)

2015/07/17 (金) ~ 2015/07/22 (水)公演終了

満足度★★★

視点の違いを理解しないと…
本公演「変身」と言うよりザムザ家は、難しいと思う。そこは、当日パンフの演出・山田真美 女史の説明を読んでいただこう。

さて芝居は公演中のため、内容の感想は「ネタばれ」へ。
制作サイドの課題だと思うが、梅雨時(観劇した日も小雨)であることを考慮した対応をお願いしたい。会場は、1階と地下の両方を借りていたようだが、1階会場の在時間は地下へ誘導する10分程度だった。それであれば、外(公道)で待たせず、受付順に1階会場へ入れたほうが良いと思う。
素材と場所をかけあわせて起こる化学反応を遊びながら、創作活動を行っている劇団(ttu)からすれば、新宿眼科画廊という「家」のなかにザムザ家が立ち上がる瞬間を楽しでもらう、という演出効果を狙ってのことは承知の上で…。
また、地下会場は冷房がきき過ぎだった。


さて「変身」刊行100年目を迎えて、描いたものは…。

ネタバレBOX

「変身」は、ある朝セールスマンのグレゴール・ザムザが、途方もない“虫”になっていた。本公演は、この男ではなく、その家族の視点で描いている。変身した主人公が『不在』であり、グレゴールが変身する前に借りてザムザ一家が住んでいたかつての『家』からの視点て『変身』を描く(山田真美 女史)。この劇団の真骨頂である「素材と場所の化学反応」である。

主人公が虫に変身して、自分の人間感情が段々と壊れていく狂気・恐怖の過程は伝わらない。逆に家族(一家)との関係が浮き上がるはずだが見えない。始めは家族の繋がりが見えるが、いつの間にか疎まれ邪魔扱い。主人公不在であるから家族による間接状況が上手く表現できるか。小説は「虫」が見えないが、自分で想像できる。芝居は可視可能だと思うと、その存在を無視出来ない。それだけに家族(周囲)状況が追い込まないと不思議感覚が立ち上がってこない。そう、画用紙の中心を淡色で描いた場合、その周りを色彩強くしないと暈けるような。自分の感性が乏しいのかも...。

演出は、1階ザムザ家から地下ザムザ家へ誘導する。そして、舞台中央の四角いテーブルと四脚の木椅子に集中させるため、終始薄暗い中で蠢く人物。その人物の手には俯瞰するような四角い又は歪め額縁、虫眼鏡をイメージさせる小道具。そしてこの小説の象徴的なリンゴも。役者は役柄を変えながら巧みに演じる。この演出・演技は確実に家族の小さな(立場)変化、時間(社会的状況)の流れを現しているのだ。

稽古では、虫を演じないことからスタートしたと...。騙られることに気をとられていると、(小説)語られていることを見逃すかららしい。

やはり自分には、カフカの「変身」は過たるほど難しかったかも。

次回公演を期待しております。

ペテンの系譜

ペテンの系譜

ゲラニルゲラニルピロリンGGP

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2015/07/07 (火) ~ 2015/07/12 (日)公演終了

満足度★★★

もう少し深みがほしい
GGPがお贈りするスタイリッシュ・コメディー!という謳い文句であるが、同じような出来事の繰り返しである。イメージは空疎という感じである。

この公演は、シアターグリーンリニューアル10周年記念若手劇団応援企画(Sprout Support)である。劇場が力を入れていることは分かる。
それだけにその内容は...。

ネタバレBOX

ペテンという語感ではなく、単なる隠し事...嘘の上塗りで、何を描きたかったのかが分からない。スタイリッシュ・コメディーというが、嘘を隠すためのドタバタが繰り返されるだけのような上滑り。そのコミカル演技だけでは、真に笑えない(実質☆2だが、将来性にかけて☆3へ...期待しております)。

ペテン芝居として、観客を良い意味で騙すような仕掛けがほしい。物語としての面白さから、意外性への落差、そこに観客(自分)は魅力を感じるのだが。
役者(子役も含め)は熱演していたと思うが、それが生きていなかったのが残念である。

次回公演を期待しております。
紫陽花の夢

紫陽花の夢

劇団水中ランナー

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2015/07/15 (水) ~ 2015/07/20 (月)公演終了

満足度★★★★

心温まる...(Bキャスト)
四葩の別がある紫陽花、開花後は順に色彩が変化するため、「七変化」の別名もある。さて、障がい者を抱える二家庭の心情を中心に制作され、好感を持った公演である。
二家庭とも四人家族であって、紫陽花の別...四葩が寄り添うように生活し、一人ひとりの人生の色彩を変化させてきた。その変化の節目に見る夢こそ...。

さて芝居は、取材を重ね熟慮して作り上げたのではないか、と思うような丁寧な仕上げ方である。それを前提にしつつも、気になることが...。

ネタバレBOX

この公演は、先にも記したが取材をし、描く対象が難しいことから熟慮したのではないか。その描き方に誤解を与えないような話の進め方(脚本・構成)、そして観やすくするための舞台セットもしっかり作り込んでいる。上手は液晶TVが置かれている低台・フローリングスペース、中央は応接セット、下手は別空間をイメージさせるベットがある。
この障がい者を抱える二家庭(斉藤家・黒木家)が、以前あった障がい者交流会で知り合い、親交を深めてきた。この舞台(セット)となるのは、黒木家の親戚で、支援施設・双葉園を経営する家である。障がい者は、どちらの家族も末弟という設定であるが、斉藤家の障がい者は1年前に亡くなっている。一方、黒木家は母親が交通事故で亡くなり三回忌法要の時期を迎えている。両家とも長兄・長女・末弟(障がい者)という構成である。斉藤家の母は息子が死んだことを受け入れられず、双葉園に入所している。そんな家族が結婚や将来の生活、介助などに悩み・考える姿が感動的である。

あくまで芝居としての感想である。この整理されたような話が気になる。
丁寧であるが、障がい者がいる家族が抱える苦悩は、どこか模したようである。最後はハッピーエンド的に結ぶ予定調和...ありそうなエピソードが表層的のようで、泣ける芝居であるはずが感情移入できない。いわば定番の収め方。例えば、兄が、姉が障がい者だったらどうか。異性兄弟姉妹を家庭内で介助するには。弟だから守るということなのか。エピソードのはめ込みではなく、どう考えていくか、その問題提起をするような切り口があっても...。ちなみに、夢とは子供時に描いたものから変更(変化)した、“中間の夢”を持つことらしい。

また、演出面で、特に前半は暗転が多く、全体を通じても場面転換は薄暗、スポット照射等、照明技術に頼っていたように思う。

この作・演出の堀之内良太 氏はしっかり制作される方だと思えば、もう少し自分のカラーを出しては...更なる高みを目指してほしいと思う(偉そうなことを書いて失礼)。

最後に制作サイドになるのだろうか。自分が観させていただいた回は、終わった後、多くの役者とその知り合い(観客)が舞台前(通路)で談笑しており、下手側から帰る客の邪魔になっていた。
せっかく余韻のある芝居、味わい深さが興醒めしないような配慮をお願いしたい。

第4回公演にも期待しております(第3回公演ということに驚いている)。
チャイルドボイス

チャイルドボイス

『熱きロマンを胸に、生きる勇気と希望を与えるべく突っ走り続ける奴ら。』

シアターサンモール(東京都)

2015/07/15 (水) ~ 2015/07/20 (月)公演終了

満足度★★★★★

しっかり観せる
前回公演「梅子と『ボクらの青春交響曲』」も観ているが、その時は小学生時代からの秘密基地という設定で、いい大人が小学生に扮し熱演していた。その公演はグリーンフェスタ2015参加作品で、見事フェスタの「BOXinBOX THEATER賞」を受賞した。その時の謝辞で「いい歳した大人が小学生を演じてと言われようが、子供(たぶん弱い立場)を演じて行きたい」そんな趣旨を述べていた。そして、今回はなんと保育園児へ更に幼くなっている。
この6歳未満の子供たちの世界観...そして自分たちも過ごしたであろうその時間を忘れて大人になっている。しかし、確かにその時間を過ごしたのであるが...。
芝居、ダンスパフォーマンスと、そのパワー溢れる内容は本当に素晴らしかった。

ネタバレBOX

さて、初日は満員御礼の挨拶があるほどで、受付対応に手間取り開演時間が遅れた。全席指定であるが、席がトラブルすることもあり、混乱があったようだ。ちなみに前回公演では、自分もその洗礼(ダブルブッキング)を受け困惑したことを思い出した。制作サイドは事前の確認メール等、親切な対応をしていることから、2日目以降は善処するだろう。

芝居の梗概は、「ひまわり保育園」園長である父親が病で入院し、その代理となった元ヤンキーの里中丈一郎(夢麻呂さん)。子供嫌いの彼だが、保育士の資格は持っているところが面白い。その彼だけに聞こえてくる園児達の「もうひとつの声」と彼だけに見える「もうひとつの姿」...それは幼児とは思えない言葉遣いと格好である。そして大人顔負けの陰惨で暴力的な行動に丈一郎は立ち向かう。そして、子供たちの抱えている心の闇に近づいて行く、といった物語である。

この笑い笑いの連続の後に、しっかり泣かせるシーンを用意する。芝居の基本のような展開であるが、その観せ方がユーモアかつシニカルという輻輳さが、観客(自分)を楽しませる。そして寓言で教訓のようになりがちな話を、ダンス等のパフォーマンスでカバーしエンターテインメント仕立てにする手腕は素晴らしい。やはり良い芝居には光る台詞「心の目で見て、心の耳で聞く」という当たり前だが、出来ないのが大人かもしれない。それが子供が大人に気を使い、いつもいい子で気に入られたい、子供心が痛いほど伝わる。親の都合も含め、虐待問題へ発展させるところも社会性がチラリ。
餓鬼(蛟?)...迫力あり「心」の擬態(人)化は上手いし、宙づりと幕影(法師)も印象に残る演出であった。

少し気になったのが、次のところ。
幼稚園と保育園の違いを説明する件、縦割り行政への批判であろうか。公演は子供の内心を中心にした話であり、公演時間(3時間超)を考えれば、必要だったのか。
もう一つは、離婚して妻が育てている自分の息子のこと。携帯電話での会話中「息子に言った事がない」は、どんな言葉だったのだろう。聞き逃したのかな~(ラスト、園児2人を抱きしめて言った言葉か?)。

次回公演も楽しみにしております。
もしかして、赤ん坊にまで...。


僕の中にある静けさに降る、騒がしくて眩しくて赤くて紅い雪

僕の中にある静けさに降る、騒がしくて眩しくて赤くて紅い雪

天幕旅団

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2015/07/09 (木) ~ 2015/07/13 (月)公演終了

満足度★★★★

独特の世界観[カラフル版]
第一印象は、エンプティ-タイムといったところだ。時間を感じさせない、その不思議感覚を堪能した。

ほぼ素舞台で、そこに色鮮やかなスカーフのよう布が一面に...。照明は薄暗く、その照度強弱によって、場面状況や感情表現を示す。物語は白雪姫をモチーフにしており、大まかな展開はわかる。この芝居は、その構成が3場面から成っているようだ。その観せ方は、文章で言う起承転結のような感じ、観てもらうということを意識したものだ。その現れが舞台を中央平台、少し高い位置に設営し、三方向にひな壇客席にしていた。どの角度から観ても楽しんでもらえる、そんな自負があったのだろう。雰囲気は夢幻・夢想の世界観を表現しており、先にも記したとおりインパクト・出来事などは明るい(強い)照射で効果を出す。時として動作は同じことの繰り返し、それは日常生活の淡々とした暮らし振りと変化の兆しの時に顕著になる。この照明と並び効果的だったのが小道具・小物の使用である。

ネタバレBOX

白雪姫の構成を見ると、第一は継母との美の競演、第二に小人との生活、第三に王子との出会いに大別できる。もちろん公演であるからよく知られた展開とは違う結末になる。それでも寓話性は健在で人が持っている優しさ、その反面(反動)に孤影の怖ろしさを現す寂しさ、自分を守るために主体(姫)の否定(死)という狂気に繋がる。

舞台背景を明確にしないで、曖昧、抽象的にすることで観客が自由に想像できる舞台空間は良かった。だから観終わった余韻が心地よい。

なお、気になったところ...

継母との関係、美競演の場面は冗長に感じた。王子が現れるところと二分されるようで、物語としては分割してしまった。あくまで小人(スカーフの色で性格わけ)が持っている色々な側面を描いており、それは人間観察といったところ。この場面がしっかり描かれているからラストシーンが生きてくる。

心残りは、「極彩色の絵」であるカラフル版と、別バージョンのモノクロ版、イメージとしては「白描絵」も観たかった。この公演…「額縁の中の濃密な芝居」を比較したかった。

次回公演も楽しみにしております。
「月暈とメスシリンダ」(公演終了 ご来場ありがとうございました)

「月暈とメスシリンダ」(公演終了 ご来場ありがとうございました)

Sky Theater PROJECT

小劇場B1(東京都)

2015/07/07 (火) ~ 2015/07/14 (火)公演終了

満足度★★★★

梅雨時の五風十雨…
世の中平穏無事の様子…家族が1日を無事に過ごせる、そんな普通の毎日が幸せであることを改めて教えくれる。
芝居は、善人ばかりで心温かくなる内容である。観終わった後で優しい気持ちになれる。
しかし、気になるところも...。

また、理解不能であったのがタイトルである。

ネタバレBOX

月暈は、月の周囲に見える光の輪…とチラシに書いあったが、それをイメージする場面があったのだろうか。確かに月見のシーンがあり霞んでいたらしい。また、メスシリンダ(「ン」が逆)は、水等を量るシーンが多々あったが、予知能力なのだろうか。言葉遊びのようであるが、“暈”は、水を量る”嵩“に掛かっているのだろうか。遊び=子供…舞台の設定が駄菓子屋なのだから。

日常生活の多くは、平凡で坦々としており、その繰り返しであろう。しかし、芝居は観せるために起伏に富んだ、もしくは心情溢れる物語を紡いでほしい。その意味で、この芝居印象が弱い。
また、場面転換に暗転を多く使用しシーンが細切れのように感じた。
公演全体として優しさは伝わるが、その反面、淡色のようでインパクトが今ひとつ。
また、この劇場(小劇場B1)は、入り口左右に客席がある。今回はその入り口コーナーに横並びにソファーを、その奥にスチール製の事務机4つと椅子を向かい合わせに置いてある。芝居はソファーに寝るシーンがあり、左手奥の座席からは観えないと思う。舞台セット・配置にも工夫が必要だった。

物語として、都合の良い男...自分側の孝養、女性を待たせる勝手さが、なぜか緩い描き方。そこはやはり家族、または家族同様の人間関係の大らかさでしょうか。

次回公演を楽しみにしております。




つじたくvol.1

つじたくvol.1

タクフェス

Zeppブルーシアター六本木(東京都)

2015/07/07 (火) ~ 2015/07/08 (水)公演終了

満足度★★★★

すばらしかった!
オムニバス4珠玉作とその幕間のダンスパフォーマンス...観応え十分な内容であった。
自分が観た7月9日(マチネ)は、会場のZEPP六本木の客席が前・後に二分(中間列が疎ら)されていたようで、場内全体で盛り上がっていたか、少し心配である。これだけのパフォーマンス、会場全体で楽しみたいと思った。

ネタバレBOX

開演までの時間を、ゲストの「ハレルヤシスターズ」がお笑いで盛り上げる。そのままの流れを維持し、つじたく(辻本茂雄、宅間孝行)の珠玉4作が上演される。その幕間にダンスパフォーマンスが披露される。先にダンス...ジャンルは、ソングリーディング JAZZといったところ。

さて、短編は15~20分程度であるが、そのどれもが真に面白く(シュールさも含め)、”最高最強の笑いの満載”は本当であった。
演目1「新幹線B席!」
一人の寝不足の男が新幹線3人掛の真ん中(B席)に座り、その後サラリーマン上司部下の2人が。手違いでA・C席に座り、何やら騒がしく話し、飲みだす...迷惑な話。

演目2「初恋レストラン」
地方レストランのテーブルに美人の女性...アイドル女優が座っている。そこに汚い身なりのダンプ運転手が来店する。偶然にも元恋人同士。女性が売れなくなりAV出演を打診されている。さて、この元恋人同士の顛末は...。

演目3「誘拐犯の憂鬱」
男2人が女性を目隠して誘拐してくる。実は身代金目当で誘拐したのは、男1人の彼女。彼女の実家が富豪と知っていての犯行。実は彼女は虚飾の人物で、すべては嘘ばかり。目隠し外した彼女は逆ギレして...。

演目4「DUET」
死んだ男の妻と後輩が一周忌(?)の墓参りに来ている。後輩は先輩の妻(未亡人)が好きである。それを見守る死んだ男(完全に成仏していない)を迎えに駄天使がきた。黄泉への旅立ちまであと少し。その男がとった行動...。

本当に素晴らしい笑い、泣ける作品であった。
次回、「つじたくvol. 2」を早く開催してほしい。

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