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東京ノ演劇ガ、アル。#2「BAR女の平和」

東京ノ演劇ガ、アル。#2「BAR女の平和」

オフィス上の空

東中野バニラスタジオ(Vanilla Studio)(東京都)

2019/05/03 (金) ~ 2019/06/02 (日)公演終了

満足度★★★★

アリストパネスの戯曲「女の平和」…アテネとスパルタの戦いを終わらせるために、両都市の女が手を結び、セックス・ストライキをおこなう下ネタ喜劇、と思って観たらガッカリする。どちらかと言えば「BAR女の平和」というタイトルを皮肉るような「BAR女の戦い」が熱く激しく繰り広げられる物語。もちろん女の戦いとなれば、恋愛における主導権争いだ。会話はあちらこちらに問題が派生し漂流するがごとく行き着く先が分からない。時に問題のすり替え、嫉妬、軽口裏切りなど女の本音・愚痴が聞こえてくる。その人間模様をいきいきと軽妙に紡いだ珠玉作。
(上演時間1時間) 【Eチーム】2019.5.29追記

ネタバレBOX

舞台はBarの店内。上手にテーブル席、下手にカウンター、ボトル棚が観える。中央の壁には区議会議員立候補の友人を励ます檄文。床には大きなダンボール箱が置かれている。シンプルなセットであるが、物語の展開には十分な作りである。

区議会議員に立候補した友人の激励会らしき集まりだが、当の本人がまだ到着しない。その間にセックスストライキの話題にふれるが、今夜集まる予定の5人が揃ったところから物語が漂流するようにあちらこちらに派生していく。表層的には、女の戦いである。キッカケは、議員立候補者の生田目あいこの親友・芝浦まきが夫を事故死させたと打ち明ける。自首を促すあいこに、木下ももかがあいここそが元凶だから身代わり自首すべきだと言い出す。まきの夫とあいこが不倫関係にあり、更にももかも不倫しており他人の夫を巡り嫉妬による責任の擦り付けという女の性(さが)が観えてくる。

また、花園れいは姑との折り合いが悪く、夫は子供の面倒を見てくれない。家庭生活の不平不満をぶちまける。これによって家庭や世間における女性の見方が見えてくる。Barのママ・山野かおりは初老の男と暮らしており、金銭面も含め何かと面倒を見ている。女の渦巻く感情...嫉妬・羨望・失望・裏切りなどが上手く散りばめられコメディタッチで観せる。

一方、女性の自立を訴える あいこに対し何をするにも決め切れない まきを対極におき自分で考えることの大切さを説く。この2人の存在が象徴している「自立」と「依存」こそが現代社会における女性の側面を切り取っているようだ。極端な「自立・依存」の善し悪しは別にして、かおりは初老男に甘く、れいは家庭に縛られ、あいこ・ももかはセックスストライキを建前にこっそり不倫をしている。公演はコメディとして笑わせながらも、底流には女(=人)が持つ表裏の感情、「建前」と「本音」をしっかり描いた公演は観応え十分だった。
次回公演も楽しみにしております。
Otogi ~bis dann~

Otogi ~bis dann~

FAM

上野ストアハウス(東京都)

2019/05/22 (水) ~ 2019/05/26 (日)公演終了

満足度★★★

生きること、信じることを熱く観せる青春群像劇。物語の構成としては解り難い所もあるが、それを凌駕する力強さを感じる公演だ。
説明に「命を賭けた数日間、彼等は物語を描いた。与えられた命に意味を与える為に」とあるが、冒頭が映画の撮影シーンでラストはそこに帰結する構成になっている。ラストと思しきシーンの後にも物語が続き、せっかくの余韻が台無しになり、伝えたかったテーマらしきものが曖昧になるようで勿体なかった。本物語なのか、劇中劇として収めたのだろうか。
(上演時間1時間45分)【Bチーム】 2019.5.29追記

ネタバレBOX

舞台は老朽化した安アパートの一室またはカジノに転換する。上手には階段が付けられ2階_居酒屋を思わせる。中央にはテーブル、椅子が置かれている。周りには海をイメージするようなボードが貼られている。季節はクリスマス時期、このアパートは隙間風が入り、住人は暖房器も持っていない。そして停電も頻繁に起きるという設定である。

梗概…アパートには色々な事情を抱えた人が暮らしている。その中の1人(男)が病で余命が僅かになり、残された日々をどのように生きるか。この男は自主映画を撮影しており、作品の完成は果たせそうにない。この男を巡り、アパートに住んでいる人々との交流や諍いを通して”生きる”とはを考える。同時に人と人の繋がりを温かく、そして酷く紡いでいく。
もう1人の主人公と思しき女優志願の女は、自我が強く事務所からの仕事が気に食わないと投げ出してしまう。この女の友人で町工場を経営している女は資金繰りに困っている。誰もが物心に悩みが…。公演は強い訴えというよりは、物語を楽しむといったもの。

物語は分かり易いが、その展開への納得させる場面が描かれていない。例えば医師が何らかの事情で賭け事の世界へ入っているが、その原因・経緯は何か。その説明不足が面白さを損なったように思う。
また、主人公の男が海を見ながら倒れるが、それは息を引き取ったとイメージさせる。しかしその後も話は続き、男の映画撮影の劇中シーンとしての物語なのか、男の生き様を映画化した後日談なのか判然としなくなった。
役者は熱演、特にアパート内における意見・感情が衝突した丁々発止は観応えがあった。台詞は魂が入ったような重みが印象的だ。

伝えたい内容は”生き様、生き甲斐”などの生ある者の尊厳を描いている。落語の「死神」を思わせるロウソクの話など、隠喩を用いて印象深く観せようと工夫している。カジノのシーンが表れるまでは純な人情劇といった雰囲気であったが、町工場の経営難をカジノへ結び付けるのは少し強引だったように思う。先に記した映画の劇中シーンまたは後日談?とカジノへの展開が物語の構成を解り難くしたようで残念だ。
次回公演を楽しみにしております。
トライアウト公演「Ukiyo Hotel」

トライアウト公演「Ukiyo Hotel」

Ukiyo Hotel Project

ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)

2019/05/24 (金) ~ 2019/05/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「横浜本牧に実在した、キヨホテルと娼婦・お浜をモデルにした劇画『淫花伝・本牧お浜』を再構成し、舞台化」したトライアウト公演は、観客参加型の艶劇であった。前説のようなところから本編へ巧みに誘い込み、同時に物語の案内役(主人公)が観客に話し掛けたり、客席に座るなど冒頭から観客を物語の世界(1920年代)へ導く。まずは耽美な雰囲気を視覚に訴えるため、妖艶なダンスパフォーマンスが繰り広げられる。
表層的には娼婦として生きた女の半生を、したたかに逞しく、そして高らかに歌い上げている。全体的に楽しめるが、自分的には気になるというか好まない場面が…。
(上演時間1時間45分)

ネタバレBOX

舞台はUkiyo Hotel のホールといったところ。2層になっており1階部の奥にUkiyo Hotel Band(Pf、Ba、Drs)、下手側に階段が付けられているだけのシンプルなもの。大きく開けた空間ではダンスや歌を披露すると同時に、Hotel 外の情景を描く。

好まないのは「性の決闘」(メリケンお浜と梅原北明)シーンである。白幕に影絵のような人物像を描き出す手法で観せているが、それまでの雰囲気が突然マンガ調というか見世物的になったようで違和感を持った。「性の決闘」という語感から過激なシーンにする必要はないが、あまりの子供じみた演出には戸惑う。公演全体の雰囲気に調和した演出を期待したいところ。
た ま ゆ ら

た ま ゆ ら

Fallen Angels

シアターシャイン(東京都)

2019/05/23 (木) ~ 2019/05/26 (日)公演終了

満足度★★★

大学のオカルト研究会(通称:オカ研)のOB・OGによるサスペンス、その出来事を通して浮き彫りになる人間関係の危うさを描いた公演。公演の舞台は、大学時代に合宿で利用していた人里離れた場所にあるペンション。そして台詞から信州という名、さらにこの地が「パワースポット」「ゼロ磁場」ということから「分杭峠」あたりを想像する。
この超常現象を扱った公演の最中に大きな地震があり、終演後ニュースで千葉県で震度5、東京23区あたりで震度3の揺れがあったと…偶然であるが驚いた。
(上演時間2時間) 後日追記

ネタバレBOX

セットは、衝立でペンション内の壁、そしていくつかの黒箱馬でテーブルや椅子を表すというシンプルな造作。
かげつみのツミ

かげつみのツミ

おぼんろ

BASEMENT MONSTAR王子(東京都)

2019/05/22 (水) ~ 2019/06/02 (日)公演終了

満足度★★★★

人間と人形の関係を悲しくも想い深く描いた感動作。主人公は”人形”であり、人形が持ったであろう感情を人間との関係を通して抒情豊かに紡いでいく。今回は客演が演技やパフォーマンスで楽しませてくれる。登場する人物(人形)等がすべて魅力的である。
おぼんろ らしい雰囲気の公演であるが、今回はいくつかのグループごとにバックステージツアーのような方法を用いて別世界(場所)へ導く。決して悪くはないが、移動先の空間が狭隘で、そこに大勢の観客(参加者)を招き入れ物語を観せるには...。
おぼんろ は参加者を大切(どの劇団も同様だと思う)にしており、舞台設営は板と客席が極めて緊密になった作りをしている。それを更に身近で親しみやすくするといった思いの観せ方にしている。
(上演時間2時間40分 途中休憩なし) 後日追記

俺は間違っている。

俺は間違っている。

空想実現集団TOY'sBOX

遊空間がざびぃ(東京都)

2019/05/22 (水) ~ 2019/05/26 (日)公演終了

満足度★★★★

妄想の世界に浸っている男が2人。自分の妄想が肥大化し制御できなくなって初めて”妄想”への逃避の危険性を知る、そんな寓話のような物語をコメディタッチで描いた秀作。
何となくAI(人工知能)におけるシンギュラリティ(技術特異点)を連想してしまう。これはAIが自らよりも賢いAIを作りあげるという連鎖により、予想しえない変化を与えるポイントであるが、この公演では自らの妄想が暴走して...。自分自身の妄想と対峙することで、自らの苦い過去に立ち向かう。序盤こそもたついたように思えたが、全体的にはテンポよく観応えのある公演。
(上演時間1時間45分) 後日追記

向井坂良い子と長い呪いの歌

向井坂良い子と長い呪いの歌

少女都市

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2019/05/21 (火) ~ 2019/05/26 (日)公演終了

満足度★★★

人間関係を幾重にも重ね交錯させ、その謎めいた中に人の懊悩を描いた野心作のようだ。
登場人物は、作・演出の葭本未織女史も含め6人だが、葭本未織女史は道化として場面転換の役割を担っているようだ。同時にこの公演は彼女の演劇に対する思(重)いのような物語でもある。実質5人という狭い人間関係の中で次々に明らかになる出来事、何となくご都合主義のような気もするが、逆に当初から仕組まれた出会いであったかも...。独自の演劇論を物語の中で激白する、それは葭本未織女史の演劇に対する考えを劇中劇として描いている。説明文は”青春群像劇”であるが、それは表層的なことで、真は心象劇といった印象を受ける。観せようとする熱意、意気込みは感じられる。同時に、悪くはないが青臭さも感じる。

ちなみに、5人全員に関係する重要な人物は、ある邦画を契機に流行りのような演出スタイルとなり、その観方、捉え方は観客次第といったところ。
(上演時間1時間45分)後日追記

GK最強リーグ戦2019

GK最強リーグ戦2019

演劇制作体V-NET

TACCS1179(東京都)

2019/05/11 (土) ~ 2019/05/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

最終日観劇。当日は1位ラビット番長「影の人」、2位大和企画「行ってみたいな、よその国」と閉会式という構成。それまでの期間にGK最強リーグ戦...GK史上最大の6チームが参加し、2作品ずつガチンコ上演。そして観客投票によって勝敗を決めてきた結果、先の2作品が残った。
最終日の2作品は奇しくも戦争に係る内容を、テーマ「路地裏」に絡めて描くというもの。それぞれ戦争を題材にしても違った印象を持つことができ、改めて演劇の魅力・面白さを知った。
(上演時間50分×2作品 途中休憩10分 閉会式40分)

ネタバレBOX

ラビット番長と大和企画、どちらも戦争に関わった路地裏である。
強いて言えば、ラビット番長「影の人」は音楽隊員を戦時中から戦後、そして現代という時代の流れの中に描く。音楽隊員の衣装は戦時中にも関わらず上下、白ブラウス・黒ズボンといった一見喪服のようでもあり音楽隊らしい服装である。その印象は、戦中・戦後にも関わらず汚れもなくスタイリッシュといったところ。内容的には心象風景を見るようで、その意味で外見はあまり気にならない。

一方、大和企画「行ってみたいな、よその国」はヨコハマメリーの待ち人という動かない佇まいと、戦後の混乱期を逞しく生きる女を描く。メリーさんの顔は白粉を塗り、フリルのついた純白のドレス。彼女以外の女の衣装は派手で、復員兵はボロボロという対照的なもので、全体的にバタくさいような印象である。まさしく生活感に溢れ、今日をどう生き延びるかという現実風景を観るようだ。

その物語の広がり方や視覚に訴える印象に違いがある。どちらが好みかは観客によって違うだろう。この企画はそうした観客の価値感の違いを前提に、それでも演劇的な質の向上を目指しているところが素晴らしい。

舞台セットは基本的に同じ。上手・下手側に家屋らしきものがあるが、そこからの出入りはない。中央は路地裏通路に街灯、その左右に3~4段高くし路地をイメージさせる。上手壁がレンガ作りで、所どころ剥げ落ちている。下手壁は波トタンで、どちらも”路地裏”の一角を連想させる。2公演に違いがあるとすれば、箱馬の位置が多少違うところと、「影の人」では上手側の家にマットのようなものを敷いたことぐらい。全体的に質素で陰影あるセットは、”路地裏”というテーマにぴったりの舞台美術であり、こちらも見所の一つ。照明は窓外の暖色光が寂しい(夕焼け)イメージ。共通テーマを設定するからには、それを観せ支える舞台美術や技術は重要である。

結果はネットで発表済であるが、次のとおりであった。

<個人賞>
助演女優 B:猿組「腹ペコの魔法使い」助手役 北川純子サン
助演男優 A:ラビット番長「影の人」西川役 西川智宏サン
主演女優 E:大和企画 「行ってみたいな、よその国」マリー役 野田あゆみサン
主演男優 A:ラビット番長「影の人」渡辺役 渡辺あつしサン
MVP A:ラビット番長「影の人」渡辺役 渡辺あつしサン

<作品・脚本・演出等の各賞>
作品賞 ラビット番長「影の人」
脚本賞 ラビット番長「影の人」脚本 井保三兎氏
演出賞 ラビット番長「影の人」演出 井保三兎氏
準優勝  大和企画 「行ってみたいな、よその国」
総合優勝 ラビット番長「影の人」

ラビット番長の名前が多いのは気のせいか?
次回からは全作品を観劇し、自分なりのジャッジをしてみたい。
次回「GK最強リーグ戦」を楽しみにしております。
「ダルマdeシアター2019」

「ダルマdeシアター2019」

チームホッシーナ

西新宿きさらぎクリニック(東京都)

2019/05/18 (土) ~ 2019/06/02 (日)公演終了

満足度★★★★

2012年カフェ公演として始めた「ダルマdeシアター」が、今回初めてクリニック公演になったらしい。「あなたの心と体、癒すつもりです」と言う謳い文句通りしっかり癒してもらった。フライヤーには「外用薬」と書かれていたが、「効用薬」と言ってもよいほどだ。役者と観客が一体となって盛り上げ楽しむ公演。いや~面白かった。
(上演時間50分)

ネタバレBOX

会場は本当に「西新宿きさらぎクリニック」という病院。その待合室のような所で演じる芝居は、半ばミュージカル仕立てで観客が座っている(待合室にある)ベンチに役者も座り歌う。歌に合わせて観客も手拍子をしたりして場を盛り上げる。

梗概…病院が日中は診療をし、その裏で劇団を作り患者の慰問を計画する。そのためのオーディションという設定。それぞれが得意な演目を披露するが、誰もが歌をうたい舞う光景が華やかで賑やかでもある。物語の展開というよりは、個々人の思いを表現(自己顕示)する。そこにはオーディションを通して、入団者の自信のなさ、不安などを昇華(自己再生)していく側面も描く。人が併せ持つ感情を垣間見せるあたりは秀逸。もちろん結果は予定調和のハッピーエンドである。ラストはオーディションが終わって流れ解散のようであったが、出来れば慰問に行くといった明るい展望が見える締め括りをしてほしかったが…。

役者の演技力は確かで、その掛け合いの息もピッタリ。この公演の魅力は個々の役者のパフォーマンス”力”に負うところが大きいが、同時にその観せるバランスが素晴らしい。今まではカフェ公演を行っていたということだが、どのような演出だったのか興味を惹く。
次回公演も楽しみにしております。
ねこのはこにわ

ねこのはこにわ

teamキーチェーン

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2019/05/17 (金) ~ 2019/05/21 (火)公演終了

満足度★★★★★

自分好みの公演...終演後、脚本・演出のAzuki女史に思わず番外公演かと訊ねてしまった。
確かに本公演とは違うフライヤーの作り、そしてチケットには鍵が付いており劇団名を思わせる。さらにラストシーンの哀(愛)惜に繋がる重要な”鍵”が…。細やかな仕掛けというか配慮が嬉しい。

物語は市井の暮らしの中、個性豊かな人々がそれぞれの事情に悩み苦しみながら、それでも明日を信じて逞しく生きようとする姿を描く。同時に2020年東京オリンピック・パラリンピックにわき立つ世相にチクリと物申す。表層的には何となく可笑しみを覚えるが、現実にありそうな出来事だけに身につまされる。現実と非現実が付かず離れず展開する、その芝居ならではの醍醐味を感じさせる好公演。

(上演時間1時間40分) 後日追記

ネタバレBOX

セットはグリーンハイツ内の6部屋...それぞれ炬燵、ベット、布団などを置き特徴を出している。真ん中は廊下であるが、斜めに配置することで遠近法効果によって奥行き感が出て広く感じる。2階建をイメージさせるため、上手・下手側に少しの段差を設けるあたりも細かい工夫。客席は基本的に凹形であるが、下手側奥に逆L字にいくつか椅子が置かれ、そこからどのように観えるのか興味があった。着座に迷っていると先入場の人が親切にも凹の最前列ど真ん中が空いていることを示してくれたので、その席へ。

梗概…グリーンハイツの住人はそれぞれに悩みや苦しみ、何らかの事情を抱えている人々。その人たちが緩い近所付き合いをしながら慎ましやかに暮らしている。東京のどこかにありそうな風景であるが、住人の1人がトラブルに巻き込まれ、それを契機に繋がりを深めていく。ちなみに冒頭流れるナレーションは203号室住人の両親のことのようだが…(後日追記)
あさどらさん

あさどらさん

十七戦地

座・高円寺2(東京都)

2019/05/16 (木) ~ 2019/05/17 (金)公演終了

満足度★★★★

TV朝ドラのダイジェスト版のような公演。脚本が柳井祥緒氏(十七戦地)、演出が望月清一郎氏(鬼の居ぬ間に)という組み合わせが、このような化学変化をし人間+社会ドラマを紡ぐとは...面白かった!
今まで観た「十七戦地」の公演は、どちらかと言えば社会派のようで、時事問題等への問いかけが多かった。また「鬼の居ぬ間に」は、ドロドロとした人間関係を通して人の深淵を狂覗するような印象を持っている。本公演とは違うイメージの公演を行ってきた2人が、まさしく”朝ドラ”イメージの公演を行ったことに驚いている。

卑小なことだが、劇場スペースが物語の展開(世界観)より広いように思える。年代を往還しながら展開するが、役者が演じている時代以外でも舞台上にいる。それは時間の流れ、人(家族)の繋がりをイメージさせるという演出効果と同時に、広いスペースを持て余すことを示すように感じられたのが気になるところ。
それと公演日が2日間(3公演)と少ないことが如何にも残念だ。
(上演時間2時間) 後日追記

いいヒト

いいヒト

トツゲキ倶楽部

「劇」小劇場(東京都)

2019/05/15 (水) ~ 2019/05/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

登場する もの はタイトル通り「いいヒト」ばかりである。公演の魅力は観終わって仄々とした優しさに包まれ、自分の気持も清々しくなるようなところ。冒頭の拘りは、この公演のテーマの暗示。好みの拘りは大切、一方それに拘り過ぎると価値判断が狭小になるかも...。「もの」もそうだが、「ヒト」も一面だけではなく、いろいろな接し方をして自分なりに判断する。そんな人間観察を意図しているような公演は、コメディという範疇を超えて面白かった。
卑小なことだが、物語の展開は難しくないが、存在と不在の関係にある もの の動きにぎこちなさが観えたのが少し残念なところ。
(上演時間1時間55分) 2019.5.19追記

ネタバレBOX

舞台セットは、大きな横長テーブルと椅子のみ。ここは老舗人形店の居間といったところ。冒頭は目玉焼きにかけるのがソースかしょう油かで言い合う父娘のシーンから始まる。人には何らかの拘りがあり、またその家にはそれなりの味付けなりがある。そんな違いを飲み込んでしまうのが業績不振なこと。そんな時、娘が付き合っている彼氏を連れてくるという。養子ゆえの社長、父親として悩み心配事は尽きない、そんな悲喜交々とした物語が本筋。

一方見えないであろう幽霊が…その性別・年代の異なる非存在が物語に割って入ってくる奇知。これが脇筋であるが、本筋に絶妙なバランスで絡んでくる。
社長、父親の悩みなど知らず賑やかな居間風景が滑稽に観える。現実問題である経営再建を秘密裏に行っている謎行動、そして娘の彼氏が幽霊を見えるという超自然現象的なことを言い出し、除霊師も加わってドタバタ騒動が起きる。登場人物はすべて善人で前向き。

トツゲキ倶楽部らしい、優しく心温まるユーモラスな雰囲気を漂わせ、同時に商店として厳しい状況にあるという独特な緊張感を描く巧みさ。シャッター商店街という地域の閉塞感が垣間見えてくる。また今を生きている人と幽霊、直接言葉を交わすわけではなく、この店の先祖や縁者が見守るという繊細さ。ドタバタと面白可笑しい展開の中に人を思い遣る細やかな心配りが観える、見事な公演であった。
次回公演を楽しみにしております。
Pancetta 10th performance “図”

Pancetta 10th performance “図”

PANCETTA

調布市せんがわ劇場(東京都)

2019/05/08 (水) ~ 2019/05/12 (日)公演終了

満足度★★★★

第9回せんがわ劇場演劇コンクール・グランプリ受賞公演/【2ヶ月連続受賞公演】第2弾。
自分も2ケ月連続で観劇するが、この公演は人の気持やある出来事のように視覚で捉えられない、または説明することが難しいことをパフォーマンス仕立てで描く。その描き方はシュールにして実に印象的である。
(上演時間1時間15分) 後日追記

【大好き】センパイを双子コーデでコロしてみた!

【大好き】センパイを双子コーデでコロしてみた!

舞台センコロ

cafe&bar 木星劇場(東京都)

2019/05/11 (土) ~ 2019/05/12 (日)公演終了

満足度★★★

タイトルから推察できるように、憧れの先輩の容姿、趣味趣向を真似た少女の模倣・独占欲を描いた少し不気味な物語。先輩と自分という2人だけの密やかな生活かと思えば、それを第三者に向けて配信するという自己顕示もある不思議な芝居。真似をされた人は、それが嬉しいと思うのか気味が悪い(ウザイ)と思うのか、どちらだろうか?そこに相手との距離感が見て取れる。一方的ながら、その感情表現は上手く表されていた。
(上演時間30分、アフタートーク30分) 【長谷川栞サン Ver】 2019.5.13追記

ネタバレBOX

セットは、人気動画配信者MAYUが住んでいる一室。上手側にパソコンとプリンター、中央にミニテーブルと客席寄り三脚に据えられた配信用カメラ。セットは作り込んでいないことから生活感は漂わない。むしろ人物造形を観せるにはシンプルなセットの方が分かり易い。MAYUは、「ミツハラマリ」という人物について語りだす。高校時代に憧れていた先輩のようになりたい。そして同じ大学に入学し住むところもルームシェアする。アクセサリーのような小物から、ついには容姿まで...。仲睦まじい先輩と後輩の間に何が起こり、「最後の動画」とは何を意味するのか。

全てを真似することによって自己は埋没もしくは消滅し、先輩の中に自己投影して生きるような不気味さを感じる。同時に、先輩「ミツハラマリ」は慕ってくる後輩を愛おしく思う反面、うっとうしく感じるのではないか。MAYUが色々なことに干渉し、管理下に置こうとするような怖さもある。2人の関係は先輩・後輩という間柄から、人間として独占欲というか支配したいという欲望が感じられる。

1人芝居であるからほとんどMAYUの1人称として淡々と語られる。これが2人芝居であれば自我の衝突か、もしくは親密度が増しある種、淫靡な関係をも想像してしまう。どちらにしても独占=究極の排他はこの結末になるのかもしれない。この物語にシェークスピアの有名な戯曲を絡めたラストは予定通りの展開で意外性がないのが残念。
演技は、MAYU=長谷川栞サンが等身大の女性のようで、その意味で動画配信している女性の部屋を狂視しているような錯覚に陥るようだった。

次回公演も楽しみにしております。
叫べ!生きる、黒い肌で

叫べ!生きる、黒い肌で

アブラクサス

サンモールスタジオ(東京都)

2019/05/09 (木) ~ 2019/05/12 (日)公演終了

満足度★★★★

物語はシバーナ(ニーナ・シモン)とビリー・ハンズベリー(ロレイン・ハンズベリー)という2人の黒人女性の交流(フィクション?)を通して描いた”反黒人差別”という人間+社会ドラマのようだ。
内容はドキュメンタリーを観るような重苦しさがあるが、回想手法と劇中歌によって演劇公演としての面白さを観せている。その視点は黒人側であるが、当時のアメリカの状況と黒人が抱いていたであろう感情は分かり易く描けていた。
できれば、差別行為がもう少し具体(視覚)的に分かると感情移入がしやすいと思うが…。
(上演時間2時間) 2019.5.13追記

ネタバレBOX

セットは段差を設け、上手側にテーブルと椅子、下手側に金モールのようなシャンデリアとピアノ。中央部は店内ステージや楽屋・控室をイメージさせる。舞台はシンプルであるが、それはセットによる物的印象よりも心象形成を大事にしたいとの表れか。

物語は、1986年から1953年へ遡行し、アフリカ系アメリカ人のシバーナ(Setsukoサン)の娘サラ・ウェイマンが祖母や叔父を訪ね、若かりし頃の母親のことを訊ねるところから始まる。シバーナは、幼い頃から黒人ではじめてのクラッシックピアニストになるための教育を受けてきたが、大学に入れずピアニストを諦め生活のために酒場でピアノを弾くことになる。そこでビリー・ハンズベリー(羽杏サン)と出会い、交流を深めることによって黒人への人種差別反対運動へ身を投じていく。その活動を通して当時のアメリカ社会における人種差別の実態が浮き彫りになっていく。タイトルにある”生きる”は、本人の生き様であると同時に、宿した”命”の生きるにも通じ、将来への希望(人種差別のない)を指すように思える。それゆえ回想シーンによって始まるのでは?

この公演は、黒人歌手の人物描写に力点を置いたのか、人種差別という社会問題に重点があるのか。もちろん、歌手である前に黒”人”であり、その境遇に不平等があれば改善運動をする。その活動は、その人の生き様であり人格そのものでもある。しかし芝居としては、人の内面心情を描くのか、その人が生きた社会環境を描くのか、その視点・力点によって脚本・演出が異なるのではないだろうか。
例えば、内面心情を描くのであれば、歌手という職業柄もっと歌うシーンを増やし、場合によってはピアノ演奏も行う。一方、黒人への人種差別反対という社会性を強調するのであれば、もっと虐げられたシーンを入れる必要があると思う。確かにレストランにおける着座の差別シーンはあったが、それ以外は台詞(選挙権なし等)によるもの。視覚に訴えることが出来る芝居の特長をもっと活かしてほしいところ。

物語の力点は判然としなかったが、シバーナという黒人女性歌手を通して1960~70年代のアメリカにおける人種差別が浮き彫りになってくる。繊細な感情表現、緻密なプロットという細微という丁寧さと同時に、骨太なテーマを据えた力作。役者はキャラクターと立場を際立たせた熱演。感情表現に濃淡がありバランス的には粗も見えるが、公演全体(脚本・演出等)の力強さが役者個々の演技にも好影響を及ぼしていたと思う。
次回公演も楽しみにしております。
無敵望遠鏡

無敵望遠鏡

宇宙食堂

吉祥寺シアター(東京都)

2019/05/09 (木) ~ 2019/05/14 (火)公演終了

満足度★★★★

アニミズムとテクノロジーが綯い交ぜになった異星の世界観。エンターテイメントな観せ方の中に色々な課題・問題を提起する社会性を潜ませた公演。タイトルにちなんだラストの台詞が印象的だ。
物語はある時期の日本の情勢を想起させるところがあり、それに鑑みるとこの公演はある目的地に行くまでの過程を描いている。できればその後の行動(何をするか)をもう少し鮮明にしておくと深みが増す公演になったと思う。それはある程度、物語の中で示唆するか観客の”想像力”に委ねてもよいが…。
(上演時間2時間)【Bチーム】 2019.5.13追記

ネタバレBOX

セットは、2層になっており2階中央に映写幕のような半円、1階中央に神社門(門に鉄鋲)があり左右対称に1/4円の階段があり2階に繋がっている。舞台と客席との間に紗幕があり、宇宙空間・浮遊感あるイメージの映像(ラストは羽の舞い落ち)を映す。

梗概…2169年(150年後)の異星-ガニメデ星における閉鎖的な状況下から物語は始まる。夜の外出禁止令は、夜空を眺めること、特に地球を望遠鏡で見ることは出来ない。この星を含めた4惑星(総称:ガリレオ惑星)はもともと地球からの移住者であり、地球が汚染し人類が住めなくなったことが発端。しかし、地球は汚染を除去しもとの美しい姿を取り戻していた。ガニメデ星は岩石星で資源が乏しい、また他の3惑星は食物の多交配を進めた結果、危険食が増え生命が脅かされている状況。そのため地球へ...。

この公演は明治維新を想起させる。鎖国政策は国内統治の観点では重要であったが、世界という枠組みからすると視野狭窄のような。確かに独自の技術や文化等はあったが多面的とは言い難い。その後開国し富国強兵への途を辿ったことは言うまでもない。
さて、ガリレオ惑星の状況は生存そのものの危機が迫り、何とか地球に打開策を求めるというもの。この求めているものが何なのか? 物語は地球へ行くための飛行技術のコンペや神への生け贄のような神事が展開されるが、あくまで”宇宙飛行の過程”のようで、具体的な目的(成果)が明らかになっていないのが物足りない。ここにラストの「想像力こそ無敵だ」という台詞を適用するわけではないだろう。

演出...神事(古代迷信イメージ)と飛行(未来科学イメージ)を融合したような世界観は奇妙であるが面白い。それを舞踊とアクションという異なったパフォーマンスで具現化しており上手い。この劇場の天井高の特長を生かし、1階と2階で自星と他惑星という異空間をイメージさせ、また飛行コンテスト等の跳躍・躍動感を演出する巧さ。内容はやや表層的に思えるが、それでもエンターテイメント性に富んだ楽しめる作品。同時に色々なことを考えさせる公演で、観応えがあった。
次回公演も楽しみにしております。
天狗ON THE RADIO

天狗ON THE RADIO

ものづくり計画

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2019/05/02 (木) ~ 2019/05/06 (月)公演終了

満足度★★★★★

地方のFM局の在り方をテーマにし、そこに関わる人々の人間模様を面白可笑しく描いた物語。平成から令和への時代の移ろいもそれとなく感じさせる抒情性ある好公演だ。
(上演時間2時間)

ネタバレBOX

舞台は天狗町(FM)ラジオ局内、上手にスタッフルーム、下手にスタジオ、下手2階部に別スペースを設け物語に空間的広がりを持たせる。セットはしっかり作り込んでおり、会場内に入ると一瞬にしてその場に引き込まれる。ラストはラジオの公開生放送という設定であるから、さしずめ観客は町民視聴者ということになるような。

梗概は、天狗町にあるコミュニティラジオ局「てんぐFM」。平成6年に始まり地域住民に愛されてきたが、資金難などにより閉局が決定。しかし過疎化が進み娯楽の少ない町の人達にとって、「てんぐFM」はコミュニケーションツールであることから、局の人達は起死回生を狙い公開生放送をするという妙案を思いつく。そこで天狗町出身で東京で活躍している有名なラジオパソナリティーを迎えて…。

冒頭、各地方大学の合否電報の文面を紹介する放送から始まる。もちろん”地方”というラジオ局をイメージさせるもの。放送エリア...けっしてマスメディアでは取り上げない地域密着メディアとして独自性を持った番組(地域の行政や地元情報)を発信をする。一方、賀間乳業のような出資者の意向も無視できない皮肉もチクリ。また天狗舞子などのボランティア(地元アイドル)?の活用など地方局ならではの特徴をさりげなく描く。そして防災・災害放送という重要な役割をラストの感動シーンへ繋げる。この多様・凝縮?した出来事と期間(平成31年3月22日~令和元年5月3日というわずか1カ月半程度)の緊密性が相まって面白く、そして考えさせる内容になっている。その展開の上手さは実に見事だ。
地方(FM)ラジオ局の内実をしっかり伝え、そこにリアルとユーモアを交えたドラマを描く。その脚本・演出は秀逸だ。 以降は千穐楽後に追記。
『浮世行脚』(うきよあんぎゃ)

『浮世行脚』(うきよあんぎゃ)

片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2019/01/04 (金) ~ 2019/01/14 (月)公演終了

満足度★★★★

グリーンフェスタ2019「特別参加公演」。新春3館同時公演の1つ。
「六道追分」に出てくる 鬼アザミという義賊一味の1人が主人公。3館同時公演でそれぞれ繋がりがあるが、当館だけ観劇しても楽しめる。「六道追分」に比べると艶やかさは薄れるが、逆に庶民の可憐だが強かさが滲み出ている。
(上演時間2時間) *ちなみに3館同時公演だから、上演時間は少し違え出演調整をしている。

ネタバレBOX

格子とジグザクに組んだ道のようなもの。舞台美術は簡素であるが、物語を牽引する上で必要な情景は組み込んでいる。逆に作り込んでしまうと、旅物として動きが封じ込められるような。

梗概…時・場所は江戸。三吉は冥途から鬼達が迎えにきて臨終を待った。ところが息を引き取ろうとした時、ある事からこの世に呼び戻ってしまう。死ぬに死ねなくなった三吉は家を出て旅に出ることに…。この三吉、「六道追分」で妻が病弱でいつか医者になりたかった男の後日談。同時に鬼アザミ一味に加わる契機も描く。この公演の謳い文句”人生の終着点に向かう男とそれを見送る女達の、馬鹿馬鹿しくも切ない人生道中。冥途と東海道を舞台に、人情味溢れる葬送の旅”が始まる。

この公演の魅力は「六道追分」との関連性で観ると分かり易い。六道追分では追手が迫る中、兄貴分が三吉を庇い逃がしてくれた。その後、真っ当に勉学に励み町医者になったと繋がる。前の悪行を清算するかのような善人ぶりが本公演。
この公演だけ観れば、江戸庶民の暮らしに寄り添った町医者、愛妻家であり、そんな男がひょんなことから旅に出るという人情喜劇のようだ。どちらにしても人情豊かな芝居を堪能できる。

前説でもあったが、3館同時上演だから登場シーンに役者が間に合わない場合がある。その時には大目に見てほしいと。自分が観た回は他館から来るのが遅れ、当館では同じシーン(旅物だから、同じところを何度も歩く)を繰り返し時間稼ぎをしていた。もちろん、観客は承知の上であるから笑い笑いの和やかな雰囲気だ。まさしく演劇はライブであると同時に観客と一体になって舞台を作るを実感する。同時に新春公演に相応しい温かさを感じた。
次回公演を楽しみにしております。
『六道追分』(ろくどうおいわけ)

『六道追分』(ろくどうおいわけ)

片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2019/01/04 (金) ~ 2019/01/14 (月)公演終了

満足度★★★★★

グリーンフェスタ2019「特別参加公演」。新春3館同時公演の1つ。
新春、3公演は観応えがあったと書きたいところだが、実は「夫婦明暮(BASE THEATER)」を観ることが出来なかった。予約しておいたが、用事が出来て泣く泣く観劇を諦めた。
さて、この「六道追分」は”鼠小僧治郎吉”のような伝承義賊を扱った物語で、新春に相応しく笑い、時にしんみりとさせるメリハリの利いた好公演。時は江戸時代、吉原遊郭という舞台は妖艶で華やか、もちろん衣装は着物姿で艶やか。新春早々”眼福”であった。
(上演時間2時間15分)

ネタバレBOX

時は江戸、場所は吉原遊郭。このシアターグリーンBIG TREE THEATERの天井の高さを利用した2層舞台で、1階部はその場(土地)に足を着け、2階部は旅先を思わせるような時間・場所の空間の違い、その広がりを感じさせる。もちろん、衣装はその状況に応じて変えるから、吉原の花魁が旅路姿になったときは今に見る着物になる。同時に化粧も変えているような?

梗概…清吉(通称・鬼アザミ)は子分の粂次郎、三吉(妻が病弱でいつか医者になりたい)と共に世を騒がせる”義賊”。いつしか守銭奴達を懲らしめる清吉一味は、江戸庶民の憂さを晴らす存在になっていた。しかし奉行所の取り締まりは厳しくなり、これを潮時と最後に選んだ場所が不夜城「吉原」である。特に悪どいやり方で暴利を貪る大店の「玉川屋」に忍び込む。一方、玉川屋の花魁は刃傷沙汰を起こし、足抜けを余儀なくされていた。そんな時、忍び込んだ鬼アザミ一家と出会い...。この公演の謳い文句”六道を彷徨う善人達の、馬鹿馬鹿しくも切ない人生道中。吉原と東海道を舞台に、人情味溢れる逃亡劇”が始まる。
この芝居は3館同時上演であるから、他の館との繋がりを用意している。それがこんな形で連動するとは...見事である。

物語の展開は分かり易く、気楽に観ていられる。内容的には追われる身であり、この先どうなるのかハラハラドキドキといった、気を揉むといった面白さがある。この旅ものの場面を動かしているのが、舞台美術であろう。2層にした効果を最大限に利用し、1階部ではその土地に留まっている状況を表し、2階部は旅路の歩を進める様子を描く。その場面状況が分かり易く、テンポ良く観られる。

新春公演に相応しく華やかな雰囲気。それは出演者(特に女性)が吉原という場所柄、花魁姿の艶やかさを出し、旅に出てからは町娘に扮しての可憐さなど、いずれにしてもその”艶技”であろう。冒頭は定番_出演者全員によるダンスはその圧巻シーンである。
次回公演も楽しみにしております。
新しい星

新しい星

甲斐ファクトリー

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2019/02/20 (水) ~ 2019/02/24 (日)公演終了

満足度★★★★

グリーンフェスタ2019参加作品。
物語はSFジャンルに入るのであろうか。しかしその底流に描かれているのは、現代日本のみならず世界で起きている問題を連想させる。物語の展開や状況説明等は、丁寧な台詞運びであまり混乱することなく観ることができる。
(上演時間1時間50分)

ネタバレBOX

セットは、荒廃した雰囲気を漂わすコンクリート壁(照明効果でそう見える?)、中央に出入口があり、上手に机・椅子、パソコンが置かれている。ほぼ素舞台で、空間の広がりを確保しアクションスペースを作っている。

梗概…あるウィルス(体内のミトコンドリア、DNA等が変化し と説明あり)に感染すると高熱を発してほとんど死亡する。原因を探るため世界各国へ出かける研究者。そのうち罹患しても僅かな確率で生存する者がおり、新たに"新人類"として勢力を増してくる。明晰な頭脳を持ち、旧人類をせん滅するような行動をとり、ここに新旧人類の戦いが始まると…。ラスト歪んだ思想のリーダーによる核ミサイルの発射を止められず、原爆投下を思わせる映像が映され…。

公演では新旧人類の戦いとして描いているが、これは今世界のどこかで起きている紛争やテロ行為を連想する。卑近なニュースでは移民等の受け入れによる民族、宗教またはそれら複数が錯綜した問題として考えられる。仮に移民を受け入れた国が、受け入れによって自国の伝統や文化が侵され始めたと…そんな光景を思い浮かべる。政治経済ほか色々な問題を内包し、理屈を言えば人によって主義主張が異なる危な(怖)いテーマを扱っているような気がする。

描くのに気をつかうテーマ、それをウィルス感染、新旧人類といった変化球で観せる巧みさ。ただストーリー性重視のためか、登場人物の心情表現が弱いようだ。
また日本を意識して描いている地名(八ヶ岳など)が聞かれると、近い将来、日本はどのような(外国人受け入れ)政策をするのかを考えてしまう。この公演ではディストピアのような世界観を見せられただけに。
物語として展開しやすいのかもしれないが、単純に新旧人類の対立(戦い)で良かったのか。このテーマだからこそ、その対立の結果(幸・不幸どちらでも)見える世界は?…をもっと鮮明にし(観客に)委ねるようなラストシーンにしても良かったのではないか。
次回公演も楽しみにしております。

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