バルブはFB認証者優遇に反対!!の観てきた!クチコミ一覧

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大きなものを破壊命令(再演)

大きなものを破壊命令(再演)

ニッポンの河川

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2014/03/01 (土) ~ 2014/03/09 (日)公演終了

満足度★★★★

魅惑の演劇ごっこ
 優秀な作・演出家と演技達者なベテラン4女優が本気で取り組んだ「演劇ごっこ」。そんな印象の舞台。
 彼女たちが性別や老若を問わず一人多役で色んな人物を演じながら荒唐無稽な劇世界を自由に遊び回っているような65分は遊走的でひたすら楽しい。
 これまでその作品に触れる機会のなかった福原充則氏が織り上げた、言葉遊びと豊饒なレトリックに満ちあふれたセリフの数々にも楽しませてもらったが、なんといっても本作の肝は先述の「ごっこ」感。
 役者が音響と照明を兼ねているのも人手不足からそうしているかのようで「ごっこ」っぽいし、併走する2つのエピソードを役者たちが頻繁に行き来しながら劇を進めるのも、移り気で飽きっぽい子供たちが遊び感覚で気の向くままに演劇をやっている感じで「ごっこ」感濃厚。そもそも、一人多役というのがまんま子供のごっこ遊びだ。
 そんな型破りなこの劇をどう終幕させるのかヒヤヒヤしたけど、なかなか綺麗に締めくくられていてホッとしました。
 というわけで、演技がハイテンポで一本調子なのがやや気にはなったものの、満足度は4点。
 ただ、正統派の演劇からはほど遠いので評価は分かれそう。

ネタバレBOX

「首絞めジャック」というあだ名の殺人鬼と戦う埼玉県・熊谷市の不良少年のエピソードと、出兵して帰還してきた四姉妹のエピソードが併走。
ジャックに殺された少年が薄れゆく意識のなか夏祭りの花火に見とれるくだりで劇は終わるが、それまでがずっとバカバカしいだけに、叙情的で美しいこのエンディングは胸に沁みた。
失望のむこうがわ

失望のむこうがわ

アル☆カンパニー

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2014/02/14 (金) ~ 2014/02/23 (日)公演終了

満足度★★★

三浦作品初観劇
昼メロみたいな題材を三浦大輔が思わぬ形で料理した大人の会話劇。
話が面白くなるまでにかなりの時間を要するが、そこまではご辛抱を!

ネタバレBOX

話が面白くなるのは、妻の浮気をめぐって揉めている熟年夫婦のもとを、夫に呼びつけられた間男が訪ねてきてから。
全てを話すよう夫に迫られた若い間男は誘いに乗って浮気に狂う妻を面白がっていたことを白状し、「ババアの息、超臭えんだけどw」「ババアの喘ぎ声、超キモいんだけどw」などとLINEに書いて笑い者にしていたことまで告白。
さらに、呼び出しに応じたのは、ダメ人間の自分が修羅場に耐えて人間的に成長するためであることを述べ立て、「だから、済まないとかいう気持ち、全くなくて…。俺の人生のために2人(=夫妻)を利用しました!!」とまでぶちまける。
間男の告白から妻が被害者であること、コケにされていたことを知った夫は浮気した妻をそれ以上責めることができなくなり、加えて、妻を浮気に走らせた不甲斐ない己までが蔑まれていたことに気づき、自分たち夫婦が取るに足らないしょうもない存在であることを思い知らされて意気消沈。
間男が去ると、夫妻は自分たち自身を笑うほかなくなり、さっきまでの修羅場が嘘だったかのごとく自嘲的な笑みを浮かべながら楽しげに会話を始める…。
破局しかけた夫婦を、皮肉にも妻の間男が救い主となり復縁させるという筋立てはこれまでに接してきたどの浮気譚にも見られなかった類のもので、興味深く鑑賞したが、間男が現れる前、浮気した妻を夫がくだくだしく問いつめるくだりは目一杯の綾が凝らされているとはいえ類型的で新鮮味に欠け、少々退屈。
よって星は3つとします。
サンダーバードでぶっとばせ!!

サンダーバードでぶっとばせ!!

ブラボーカンパニー

テアトルBONBON(東京都)

2014/02/20 (木) ~ 2014/03/02 (日)公演終了

満足度★★★★

結末が最高!
とにかくオチが秀逸!
独立したコントに思えた合間合間の寸劇の数々が徐々に本筋へと回収されていく構成も見事だし、再演用に差し込まれた時事ネタもくだらなくっていい。

私の観た公開ゲネは女性客がほとんどで、正直、ゲラな方が多かったが、的外れな箇所で笑う人はあまりおらず、皆さん、いいタイミングでいい感じで笑うので和やかな気分になってきて、当方、一度ならず貰い笑い。劇場でコメディを観る楽しさに浸りました。

ネタバレBOX

銀行強盗団の一人、中山(山本康弘)を撃ったのが誰なのか判らないまま終幕したのは残念。
ちゃんと観てれば見抜けたのかしらん??
行動・1

行動・1

射手座の行動

新宿眼科画廊(東京都)

2014/02/07 (金) ~ 2014/02/12 (水)公演終了

満足度★★★★★

地味ながらも笑える良質な短編集
緻密な脚本に基づく精妙な会話劇4編を堪能。
日常の中の小さな綻びが徐々に広がってゆくこの種の笑劇は大好物♪
岡部たかしさんの軽妙にして飄々とした演技は相変わらずの可笑しさでした。

ネタバレBOX

岡部たかし扮するタクシードライバーがタヌキほか三匹の小動物を続けざまに轢いて乗客に責められる「タクシー」と題された一編が個人的イチオシ!
しのび足のカリン

しのび足のカリン

ロリータ男爵

OFF OFFシアター(東京都)

2014/02/05 (水) ~ 2014/02/11 (火)公演終了

満足度★★★★★

劇団初見! 面白い!!
大の大人が全力でバカをやると異様に面白い。「大人の学芸会」のような本作を観てそのことにあらためて気づかされた。
そのバカワールドの構築に大きく寄与していたのがパワフルなベテラン役者勢。
とりわけ、美声を限界まで張り上げての超ハイテンションな演技で爆笑をさらっていたオネエ系美男優・足立雲平さんには圧倒された。

ネタバレBOX

とはいえ本作、ただのおバカ芝居にはとどまらず、楽屋オチ満載の演劇内幕コメディとして楽しんでいたところ、話は中盤から生者と死者とが火花を散らし合う壮大な恩讐劇へと発展!
そこへ泥棒譚やミュージカルシーンを絡め、呆れるほどくだらないギャグをちりばめ、さらには「表と裏」をめぐる哲学まで織り込み、一つの舞台作品にまとめ上げる手腕には感服!
終盤部はバカを飛び越え感動的ですらあって、激しく心を揺さぶられた。
ロリータ男爵初参加ながら立派に主役の泥棒少女役を務め上げ、フレッシュな演技で劇を活気づけた橘花梨も天晴れ!
HOME SWEETS HOME 【ご来場ありがとうございました】

HOME SWEETS HOME 【ご来場ありがとうございました】

青春事情

ザ・ポケット(東京都)

2014/02/05 (水) ~ 2014/02/11 (火)公演終了

満足度★★★

コメディ色がもともと強いが
もっと強めても良い気がした。

ネタバレBOX

というのも、人間ドラマとして観た場合、話があまりにベタすぎて、ちょっと退屈してしまったので。。
それはメインストーリーだけでなく、差し挟まれる3つの小エピソードも同様。「甘いケーキと甘くない人生のおはなし」と釣り書きにあるけれど、話の作りは少々甘すぎると言わざるを得ない。
それでもなんとか観通すことができたのは、ケーキ屋の主人に扮した加賀美秀明さんの名演によるところ大。
内容がベタなだけに本作、紋切型のクサいセリフが相次ぐのだが、加賀美さんの軽やかでサッパリした語り口がクサいセリフの数々から湿っぽいセンチメンタリズムを消し去り、クサいセリフが多い劇を観る際に感じる照れ臭さをあまり感じることなく観賞することができました。
電磁装甲兵ルルルルルルル

電磁装甲兵ルルルルルルル

あひるなんちゃら

OFF OFFシアター(東京都)

2014/01/28 (火) ~ 2014/02/02 (日)公演終了

満足度★★★★

初出演の田代尚子が健闘!!
女優陣が競い合うようにボケ倒す滑り出しから早くも可笑しく、ニマニマしたり、吹き出したり。中でもあひるなんちゃら初登場の田代尚子さんがイイ味を出していた。
三瓶さんと堀さんにつけられた設定にも大笑!!

ネタバレBOX

ある芝居に出ているのを見た作・演出の関村さんが「あの役者さん面白いヤツっぽいなあ」と目をつけ、口説き落として出てもらったという田代尚子さんが関村さんの期待に応えて異様な面白さを発揮。ポーカーフェイスでボケるところやちょっと尊大な感じがもう卒業したアノ人を彷彿させ、あひるなんちゃらの劇世界にガッチリはまっていた。やっぱり、この劇団の芝居にはアノ人のような趣を持つ女優さんが必須なのだと改めて感じた次第。アノ人はボケとツッコミをWでこなしていたけれど、演技がシャープな田代さんならツッコミも務まりそうだし、今作でもその片鱗は見えたので、今後は“二刀流”での活躍を期待したい。
体型もキャラもまるで違う三瓶大介さんと堀靖明さんが双生児という設定はそれだけでも噴飯物。そこに合体ロボット・ルルルルルルルのもう一人の操縦士・アオヤマ(篠本美帆)にしか二人を見分けられないという「そんなバカな!」な設定が加わって、双子のくだりには笑い崩れるほど笑わされた。
一方が青、一方が赤という、テツ&トモのようなダッサいジャージ姿も最高!
合体ロボの操縦に憧れる地球防衛軍(?)のゴミ処理係・タナカの夢がついぞかなわず、沈んだ表情でゴミ処理をするタナカの姿で劇が終わるのはやや淋しい。
犬猿の仲のアオヤマと双子がまたぞろくだらない言い争いをして終幕―。
そんな賑やかな終わり方でも良かったのではないだろうか?
海のバッキャロ―!!~まごころ食堂編~

海のバッキャロ―!!~まごころ食堂編~

株式会社Ask

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2014/01/14 (火) ~ 2014/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★

原田里佳子見たさに観劇♪
ゴリカコ氏こと原田里佳子の思いがけない小ささに、そしてほぼ出ずっぱりの主人公を小さな体で演じきった頑張り屋っぷりに驚嘆!
ゴリカコ氏が出ていなければまず観なかったに違いない海辺の食堂を舞台にした人情劇だったが、丁寧に作られていたうえ役者さんが皆さん達者で、グイグイ釣り込まれた。
人情味あふれる食堂付きの調理師を演じた石坂史朗という役者さんがとりわけ巧い!

ネタバレBOX

ゴリカコ氏の役どころは今は亡き父親が残した食堂で女将として健気に頑張る娘さん。
父親が海に流した瓶入りの手紙を常連客が偶然拾い、それをゴリカコ氏演じる那美が一読して話は終わるが、那美に宛てられた手紙の書き手が父親ではなく、父親よりも先に死んだ母親だったのにはビックリ!
那美への愛情がたっぷり詰まった母親からの遺書はそれだけでも感動モノなのに、このどんでん返しが感動を助長して、思わず目頭が熱くなってしまった。。
少年の日の思い出

少年の日の思い出

こゆび侍

新宿眼科画廊(東京都)

2014/01/17 (金) ~ 2014/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★

なぜ昆虫には男の子がはまる?
主人公ハインリヒが虫に魅せられた少年の日々の透明性、清冽さを美しく描いた好舞台。
島口綾さんの名演が光った。

ネタバレBOX

その美しさに魅せられてひたむきに蝶や蛾を追い求め、好きが高じて悪事まで働いてしまう落第生の少年の純粋な心を島口綾さんが女ながらに巧みに表現!
蝶や蛾をチョークで箱に描きつけて表現する演出も良かった。
針金の先に模型をつけて昆虫を表現するようなダサい演出がなされていたら、感動は半減していたかも。
『最新の私は最強の私』『油脂越しq』

『最新の私は最強の私』『油脂越しq』

Q

3331 Arts Chiyoda(東京都)

2014/01/16 (木) ~ 2014/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★

Q初体験。面白い!
ガールズトーク演劇。
他の作品は観てないのでなんともいえないが、本作についてはこう括って構わないのではないだろうか。
短編2編から成る本作は、2作品とも、女優たちが自分の性やカラダ、恋愛などについて赤裸々に語り合う内容で、男性客たる私は興味津々で鑑賞。テーマがテーマだけに、扱い方を間違えると客を不快にさせかねないが、両作とも、交わされる会話は飛躍と逸脱に富んでいて楽しく、クスクスと笑いながら最後まで堪能できた。
笑いにくるまれていながらも、女優たちの交わす話は女にとってとても大事な恋や性に絡むものゆえ切実で真に迫り、たびたびハッとさせられたことも付記しておきたい。

ネタバレBOX

『最新の私は最強の私』、『油脂越しq』。上演された2編のガールズトーク演劇のうち、バルブがより楽しんだのは十代少女の世界を描いた前者のほう。
内容もさることながら、2人の女優がセリフを言う際のぶっ壊れたイントネーション、そして喋りつつ繰り出す奇矯な動きには若さゆえの無根拠なバイタリティが体現されているかのようで、描き出される十代少女の世界に妙なリアリティを与えていた。
また、変な発声と動きには、ときどき入り込んでくる紋切型の会話からベタ感を、観念的で難解めいた会話から嫌味を取り去る効果もあったように思う。
夢も希望もなく。

夢も希望もなく。

月刊「根本宗子」

駅前劇場(東京都)

2014/01/10 (金) ~ 2014/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★

観て気まずくなった
若いカップル、少なくないのではないだろうか(笑)。
でも、若い人が観てこそ意味のある一作だと思いました。

ネタバレBOX

 というのも、ヒロインのちひろのように、生きる上での大きな選択を若さ故に誤ることは二十代ではいくらでも起こりうることなので、反面教師にしてもらうためにも。
 ちひろは若さ故に人を見る目が育っておらず、アーティスト気取りの単なる俗物野郎に惚れて男を才人だと思い込み、好きな演劇をやめてまで男に尽くすも、男が才能も甲斐性もないただのヒモだとやがて気づき、果ては男の浮気が発端で十年に及んだ恋は破局を迎える―。
 これで終われば、若さ故の迷妄により貴重な二十代を棒に振った愚かな女の物語に過ぎないが、本作がいいのは、話がそこでは終わらずにコミカルなシーンで締めくくられている点。
 ちひろと同じくアーティスト気取りでヒモ体質の彼氏に逃げられたばかりか男の子供まで身ごもった友人の杏奈が産気づいてちひろ宅に現れ、ワーワー喚きながら出産する喜劇的なシーンは“ちひろ以上に不幸な女”を笑い者にすることでちひろの不幸を矮小化し、それを杏奈の不幸と変わらぬ“お笑い草”へと変えてしまう。
“笑い飛ばせないものはこの世にない”と思わせてくれるこのシーンがバルブは大好き!
 ちひろの元彼のようなダメ男と現在進行形で付き合っている若い女性も、ああいう男と別れたばかりのアラサー女性も、このラストシーンを観ていくらか心が軽くなったのではないだろうか?
 十年前の杏奈とまりかが前半で歌う劇中歌も良かった。
人魚の夜

人魚の夜

青☆組

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/01/10 (金) ~ 2014/01/20 (月)公演終了

満足度★★

お茶ばかり入れている
登場人物がお茶を入れすぎ!
それも含め、難点の目立つ舞台だった。

ネタバレBOX

美意識、すなわち美への志向性は窺えるのに、狙った美しさがどれ一つ成立していない。
まずこの点が気になった。
舞台装置とその使い方、演技のつけ方などがどこか粗雑で、これでは美など生まれえない。
演劇で美を作り出すのがいかに難儀なことなのかを、逆に思い知らされた。

ストーリーにも踏み込むと、夫と楽しげに暮らしていた冬子が永遠を手に入れようと台風のなか海へ出かけ、水死したことも引っかかる。
島が女不足に陥ったその昔、島を繁栄させるべく女人に姿を変えて上陸してきた人魚たち―。
冬子はその末裔であり、ふるさとである海への恋しさから上の行動を取ったのだろうが、一方で人魚族は無人島になりかけていた島を女人に化けてまで救おうとした人類愛あふれる種族でもあるわけで、ならばその末裔である冬子は人類愛に富む人魚族の一員として別段不仲でもない夫と最後まで添い遂げてもよかったのではないだろうか?
ふっと、そんな疑問が湧いた。
夫婦関係が険悪なら死にたくもなろうが、冬子と夫・孝博との関係は円満そのものだったのだ。

それより何より本作の一番の問題は、現実に触れている感じがしない点。
本作のようなファンタジー色の強いものでも、優れた作品は何らかの形で現実と交わるものだとバルブは信じる。

初青組だったが、残念ながら満足は得られなかった。
新年工場見学会2014

新年工場見学会2014

五反田団

アトリエヘリコプター(東京都)

2014/01/02 (木) ~ 2014/01/04 (土)公演終了

満足度★★★★

頑張り所のチョイスが適切
 前田司郎率いる五反田団と岩井秀人率いるハイバイ。2団体が中心となり毎年始に行っているというエンターテインメントショーを初観覧。
 当日パンフによれば、この見世物は前田氏いわく「毎年、年始に悪ふざけをすることで、初心を忘れないように気をつける催し」だそうで、岩井氏いわく「毎年「そこまで本気じゃない感じでやる」主旨でやっている」そう。
 両氏の言葉に嘘はなく、五反田団が演った『クリィミー☆チカ』もハイバイの演った『大衆演劇のニセモノ』もその名に恥じない
“悪ふざけ演劇”だったが、だからと言ってテキトーづくしというわけでもなく、二団体ともある部分にはとても力を入れていて、その“頑張り所”のチョイスが適切だったせいなのか、両作とも大いに楽しめた。

ネタバレBOX

 五反田団『クリィミー☆チカ』は、元カレに借金を踏み倒されて金に困った女が主人公。
 女は偶然出会った宇宙人に授けられた魔法を使って美女に化け、変身前の容姿では働けなかったキャバクラで人気嬢となって大金を稼ぎ、店に来た芸能関係者にスカウトされてアイドルにまで登りつめる。
 センスのいい中学生が授業に退屈してノートに走り書きしたようなストーリー自体も楽しめたが、最も魅了されたのは、アイドルになった女が全キャストをバックダンサーとして従えつつ歌い踊るラストシーン。
 バックダンスの振り付けが丁寧かつきめ細やかになされているせいで、女が歌う某魔女っ子アニメの超テキトーな替え歌との間にいい感じのギャップが生まれ、この上ない可笑しみを感じたし、中央で歌う女がバックダンスに支えられてすこぶる魅力的に見えた。
 華麗に踊るバックダンサー陣が終始“シラケ顔”を貫いていたこともギャップの可笑しみを生んで、笑ったのなんの。
 稽古中、テキトーでも許されそうなこのバックダンスの練習に最も時間が割かれたことは想像に難くないが、その甲斐あってとても楽しい娯楽作に仕上がっていた。
 ハイバイ『大衆演劇のニセモノ』は、岩井氏が「一回見てみたらスンゲー面白かったので、その記憶だけでやってみ」たという、大衆演劇の紛い物。大衆演劇をまともに観たことのないバルブが観ても面白かったので、大衆演劇通の人にはより楽しめたにちがいない。
 五反田団がバックダンスに力を入れていたのに対し、ハイバイが本作で力を注いでいたのは“大衆演劇ならではの約束事”。殺陣のシーンなどは流し気味なのに、“役者は登場時と見せ場を演じた直後に名を呼ばれ見得を切る”“花形役者は力み返った口調で喋る”などの大衆演劇の決まり事は過剰なくらいにきっちりとやってのけ、それが得も言われぬ可笑しみを生んでいた。大衆演劇に不慣れな感じを出すため、名を呼ばれた後しばしあたふたしてから見得を切るのも可笑しかった。
 こうしたことに飽きてくる中盤以降は話自体が面白味を増していき、結果、最後まで飽かず鑑賞。キリシタン狩りで家族や仲間を失った男の復讐譚というよくある話ではあったが、繰り返し演じられてきたせいで話が精錬されており、グイグイ釣り込まれてしまった。
 ベスト俳優は五反田団の作品でアイドルを演じた内田慈(うちだ・ちか)さん。美人でハキハキしている上、休憩時間中、観客にホットワインを配っている時の対応も良く、好感を持ちました。
カルメン

カルメン

シアターカンパニー 象の城

相鉄本多劇場(神奈川県)

2014/01/04 (土) ~ 2014/01/06 (月)公演終了

満足度★★★

カルメンに魔性が感じられず
「なぜドン・ホセはカルメンを殺したか」このテーマで学会にてプレゼンをする女子大生が聴衆にカルメンという物語を知ってもらうため、そして自身が考えるヒントを得るため学友たちに同作を演じてもらう、という趣向。
 プレゼンの一環ゆえ演劇的完成度はさほど求められないということなのか、演じながら役者が素で笑ったり、ギャグがてんこ盛りだったりと、このカルメンはかなり自由。
 そこが面白味となっているのだが、カルメンまでがふざけているのはどうかと思った。
 カルメンは幾多の男を虜にする魅惑的な女であり、殺された背景にはこの魔性が大きく関わっているのであってみれば、プレゼンのための資料演劇として見た場合、カルメンはもっと魅力的な女として描かれるべきである。なのに、ああもふざけてばかりでは色気の“い”の字も感じられず、そんなカルメンにホセが惚れたこと自体が嘘くさく思えてくるし、少なくともバルブはあのカルメンには決して惚れない。
 カルメンがあんな風ではそれも当然、という気もするが、カルメンへのホセの愛があまり伝わってこないのも問題。“ホセがカルメンを殺した理由”を探るための資料演劇として見た場合、カルメンに対するホセの愛の深さも、やはりきちんと描かれるべきである。

ネタバレBOX

 ホセによるカルメン殺害の「暖かな真相が、いま明かされる」と釣り書きにあるのに、結局明かされないのも残念。
 手放しでは褒めづらい一作だったが、“プレゼンの一環として演じられる”などの工夫を盛り込み、カルメンをストレートに舞台化しなかった点には大学生らしい野心が感じられ、好感を持った。
 数あるギャグの中では、ホセの告解を聴く修道僧が教会の経営難から“イエスさん人形”(でしたっけ?)なるオモチャを売り歩くシーンがお気に入り。お腹を押すとピコピコサンダルのような音がする可愛いキリスト人形からはキリストが備えるべき権威が根こそぎ奪われていて妙におかしく、クスクスと声を立てて笑ってしまった。
銀色の蛸は五番目の手で握手する

銀色の蛸は五番目の手で握手する

ポップンマッシュルームチキン野郎

シアターサンモール(東京都)

2013/12/27 (金) ~ 2013/12/30 (月)公演終了

満足度★★★★★

現代の昔話!?
 カップルなど若い客が多いのは何より。お陰で会場内に熱気があった。
 毎度の如くぶっ飛んだギャグが目白押しでしんみりとばかりもしてられなかったが、物語自体はまるで昔話のような普遍性を感じさせるとてもイイ話でした。
「最高傑作の手ごたえを感じております」と吹原さんが書いているのはこの辺りのことを指しているのかも。。
 サッカーシーンに戦友・8割世界の野球演劇『そこでガムを噛めィ!!』の試合シーンの影響が感じられてちょっと微笑ましかったです(笑)。

ネタバレBOX

 自己犠牲が報われて夢が叶うという、まさに昔話のようなストーリーをサッカーに絡めて巧みに展開していてお見事!!
 ハッピーなラストシーンはもっと引っ張っても良い気がしたが、抱き合って勝利を喜び合う初恋の女性は既婚者なわけで、そこであっさり終わらせるほかなかったのかもしれない。
リーディング・フェスタ2013 戯曲に乾杯!

リーディング・フェスタ2013 戯曲に乾杯!

日本劇作家協会

座・高円寺2(東京都)

2013/12/14 (土) ~ 2013/12/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

『クラッシュ・ワルツ』が受賞!
 日本劇作家協会新人戯曲賞の公開審査会を観覧。
 一冊の本にまとめられた5編の最終候補作を前日に一日で読みきるという一人SMに耐えた甲斐あって、7人の劇作家が受賞作を決めるまでの侃侃諤諤の議論を存分に楽しむことができました。
 いや~、ホント、選考会を見るのは不出来な演劇作品を観るよりずっとずっと面白い!
 戯曲を読むというのはじつに骨の折れる作業で、作中でいま何が起きているのかをト書きとセリフのみから読み取るのはなかなかにしんどかったが、あらかじめ読んでおいたお陰で審査員の皆さんがどの作品のどんな点を論じているのかがその都度よく分かり、時に大きくうなずいたり、時に首を捻ったりしながらずっと前のめりで観覧。若手の未来がかかっているだけに皆さん熱い議論を闘わせておられ、最初っから最後まで片時も退屈することがありませんでした。
 あえて挑発的に振る舞って議論を白熱させていく川村毅さん、テレビなどでもおなじみの話術で実質的な進行役を務め司会の小松幹生さんの顔色をなからしめていた鴻上尚史さん、作風同様に静かなのに言うべきことはしっかり述べる鈴江俊郎さん、みんなの話を聞いた上で新たな視点を提示して議論を活性化させる佃典彦さん、その包容力で場に安定感を与えていたマキノノゾミさん、熱弁を避けいろんな角度から冷静に劇を読み解いていく坂手洋二さん、そしてテレビのまんまの渡辺えりさん。
 個性的な面々の主張は言うまでもないことながらたびたびぶつかり合い、最後まで活発な議論が続いたが、そのことから再認識させられたのは“劇は見立て次第でいかようにも読める”ということ。
 たとえば、バルブがいちばん面白く読んだ『血の家』という作品。受賞作は満場一致でこれに決まるものと勝手に思っていた本作については意外や否定論も多く、「展開がご都合主義的」といった声がたくさん上がったが、川村さんは「すべては主人公の脳内の出来事だと思って読めばその辺は気にならない」と反論。それまで本作に否定的だった何人かの選者がこれを聞いてうなずいたのは、川村さんの見立てを聞いて劇の読み方が変わったからに他ならない。
 それから、受賞作となった『クラッシュ・ワルツ』という作品。内容がじめじめしていて個人的にはあまり好きになれなかったのだが、選者それぞれの見立てを聞いていくうち、これがいかに良く出来た劇であるかを確信。苦手意識を抱きながらも事前に読んだ段階で巧さは感じていたのだが、最後まで本作に否定的だった渡辺さんを除く6人の見立てはそれぞれに異なりながらもそれぞれに一理あり、結果バルブは本作が重層的な巧さを持つ傑作であることに開眼。それでも苦手意識は消えなかったが、“劇は多角的に読める”ということをイヤというほど思い知らされたのは大きな収穫でした。
 審査員の中で最も印象的だったのは渡辺えりさん。同じ話を何度も繰り返す、話の流れが変わるのも気にせず好きな時に言いたいことを言うなど、おばさんノリ全開だったが、後者により議論が一方向に流れるのを食い止めるという大きな役割を果たしていたのは無視できない功績でした。また、言うことが可笑しく、ツッコミ役の鴻上さんとのやり取りは爆笑モノでした。

ネタバレBOX

 結果、刈馬カオスさんという方の書かれた『クラッシュ・ワルツ』が春陽漁介『ト音』と競り合ったのちに受賞。
『ト音』は、二人の男子高校生がじつは一人だった、つまり二重人格者の物語だったと判るまでの煩雑なプロセスがもっと簡略化できたように思え、高評価に疑問だったので、『クラッシュ・ワルツ』が受賞作と決まって溜飲が下がった次第。
 でも、ほんとはやっぱり『血の家』に獲って欲しかった。。
栄え

栄え

MCR

駅前劇場(東京都)

2013/11/06 (水) ~ 2013/11/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

音楽Pと学生2人のやり取りが可笑し♪
 かなり異色の学園もの。作・演出の櫻井さんはこのところシリアス味の強いテレビドラマやラジオドラマをたくさん書いていて、おのずからバランスを取ろうとするのか、いつも以上にギャグ満載、バカパワー炸裂の一作でした。
 もちろん、いつもながらにドラマとしての骨格も磐石で、“未来は変えられるのか?”という王道ゆえに扱い方が類型化しやすいテーマを“物事に簡単に白黒つけない”この劇団ならではのスタンスで演劇化しており飽きさせない。
 上の問いかけに対する答えがややネガティブ寄りな点も、感動的なんだか間抜けなんだかよく分からない結末もこの劇団らしくて良かった。
 多々ある笑い所の中では“未来の敏腕音楽プロデューサー”と学生2人のやり取りがバカバカしくってイチ押し!!
 しかし、ギャグ抜きでも充分鑑賞に耐えそうな良質なドラマに無数のギャグがちりばめられたこんな劇を平日昼割2500円で観られたのはお得すぎる♪
 天晴れ、MCR!!

ネタバレBOX

 伊達香苗さんのむっちりした学ラン男装姿にグッときてしまった男性客は私だけなのだろうか…。
KUDAN  ~この地球(ほし)の汚れた片隅で生まれた命~☆無事終演致しました。ご来場ありがとうございました!☆

KUDAN  ~この地球(ほし)の汚れた片隅で生まれた命~☆無事終演致しました。ご来場ありがとうございました!☆

TOKYOハンバーグ

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2013/12/11 (水) ~ 2013/12/16 (月)公演終了

満足度★★★

何のために“くだん”は生まれた?
 原発事故で被曝した牛から人間の子供が生まれるという着想は秀逸。ただ、せっかくのそのアイデアを生かしきれていないのがなんとも残念。。
 牛たちが幕間に踊る暗黒舞踏めいた妖しいダンスには魅せられた。

ネタバレBOX

 被曝を理由に殺処分されそうになっていたところを、牧場主の厚意によって解放され、森へ逃げた牛たち。その中の一頭、脱走前から身ごもっていた牝牛が何の因果か“人の子”を生み落とすのが「KUDAN」というタイトルの由来。
 漢字で「件」と書き、半分「人」で半分「牛」のその妖怪は説明書きにもある通り予言者的性格を持つ神秘的な存在として日本各地で古来より知られているらしく、本作でもその超常的能力を発揮して大活躍するのかと思いきや、これがほとんど活躍しない。
 これが先に「アイデアを生かしきれていない」と書いた理由である。
 マリアと命名されたその件(くだん)は光藤依里というメチャ可愛い女優さんが演じており、その人目を惹く容姿にもかかわらず影が薄いのは、多くの観客の期待に背いて超常性をほとんど発揮しないからに他ならない。
 殺処分を敢行するため逃亡先の森にまでやって来た白い防護服姿の人間たちにテレパシーで「森に入るな」「牛を殺すな」などと伝えることから、どうやらマリアは牛たちの味方らしいのだが、予知能力を生かして仲間を助けるといったことはせず、けっきょく牛たちは人間どもに追いつめられてガスで殺され、唯一生き残ったマリアは「私は、なぜ、生まれた?」と自問。そこで劇は終幕し、マリアは仲間たちの屍に囲まれてただその場に立ち尽くす。
 生命の源を表す「マリア」という名を与えられながら仲間たちを死ぬ運命から救い出すこともできないというこの結末は、件(くだん)の妖力をもってしてもどうにも出来ない人間どものただならぬ利己性を描いていると受け取けとることもでき、だとするならば本作は強烈な諷刺劇だと言えるが、「何の因果」で件(くだん)なる存在が生まれてきたのか、その説明は欲しかった。
 
1万円の使いみち

1万円の使いみち

monophonic orchestra

新宿眼科画廊(東京都)

2013/12/13 (金) ~ 2013/12/25 (水)公演終了

満足度★★★

心からの拍手を送れず。。
 思わぬ形で戻ってきた1万円を映画学校に籍を置く青年が思わぬ形で使う話。
 何か物足りなさが残り、カーテンコールで心からの拍手を送れなかった。
 

ネタバレBOX

 同じ映画学校に通っていた大切な女友達が自殺するのがすべての発端。
 遺書で指示されていたのか、主人公の久我大和は故人に貸していた1万円を学友の美佳(津留崎夏子)づてに返却され、どうせ上げるつもりだったそのカネを元手にドキュメンタリー映画を製作。「好きに使っていいよ」と行きずりの大学生・代田新(篠崎大悟)に渡し、「これでいろんな人に会いに行きたい」という新をカメラで追いつつ私鉄で旅をする。
 作・演出の須貝さんがアフタートークで語ったところによれば、「これは主人公が悲しみを乗り越え、また前を向いて歩き出すまでの話」だそうで、この言葉を裏付けるように話は開放感あふれるシーンで終わるが、カーテンコールで心からの拍手が送れなかったのは多分この開放感を共有できなかったのが原因。
 開放感を味わうためにはその前にしっかりと“閉塞感”が描かれる必要があるのに、その描き方に不足があるのだ。
 自殺した女とやはり親しかった美佳とふたり、紐にからまりながら憂い顔でその死を語り合う場面は悲しみを雄弁に物語っていたが、それだけではまだ不十分。まだまだ悲しみを描き込まねば、終幕で表現される“開放”が“開放”として感じられない。
 さらに言うなら、悲しみを表現するには死んだ女が主人公にとっていかに大切だったか、そこも描かれる必要があるだろうに、その点についてはほとんど描かれていなかった。
 ただし、ノーテンキと言っても差し支えないほどの突き抜けた明るさで主人公を元気づける代田新というキャラクターはすこぶる魅力的。こんな男と旅をすれば大和の悲しみも癒えそうに思えたし、演じ手の篠崎大悟が所属するロロの舞台が観たくなった。
時々は、水辺の家で

時々は、水辺の家で

monophonic orchestra

新宿眼科画廊(東京都)

2013/12/16 (月) ~ 2013/12/25 (水)公演終了

満足度★★★★★

朗読劇という形式と内容が見事に和合!
 絵にたとえるなら淡い水彩画のごとき静謐なストーリーに朗読劇という簡素なスタイルがよく合っていた。
 人間の機微を描く劇には必須の笑いもいいバランス、いいタイミングでちりばめられ、しかも作り手のユーモアセンスがいいのかスベっていない。
 少し前から応援している主役の川田智美さんがその顔立ちゆえ振られがちな少女役でなく繊細な演技で大人の女を演じているのも新鮮で何より。
 スタイルと内容が噛み合った良作。
 観た誰もが微笑を浮かべて劇場を去れるような、こぢんまりとはしているけれどそれだけに愛おしくなってくる、そんな一作でした。

ネタバレBOX

 水辺の家に住みついている画家たちの交わす美術ウンチクトークの奥深さにびっくり! 一夜漬けでこれだけの知識が身につくはずもないので、作・演出の須貝さんはよほどの美術通なのだろう。

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