リーディング・フェスタ2013 戯曲に乾杯! 公演情報 日本劇作家協会「リーディング・フェスタ2013 戯曲に乾杯!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    『クラッシュ・ワルツ』が受賞!
     日本劇作家協会新人戯曲賞の公開審査会を観覧。
     一冊の本にまとめられた5編の最終候補作を前日に一日で読みきるという一人SMに耐えた甲斐あって、7人の劇作家が受賞作を決めるまでの侃侃諤諤の議論を存分に楽しむことができました。
     いや~、ホント、選考会を見るのは不出来な演劇作品を観るよりずっとずっと面白い!
     戯曲を読むというのはじつに骨の折れる作業で、作中でいま何が起きているのかをト書きとセリフのみから読み取るのはなかなかにしんどかったが、あらかじめ読んでおいたお陰で審査員の皆さんがどの作品のどんな点を論じているのかがその都度よく分かり、時に大きくうなずいたり、時に首を捻ったりしながらずっと前のめりで観覧。若手の未来がかかっているだけに皆さん熱い議論を闘わせておられ、最初っから最後まで片時も退屈することがありませんでした。
     あえて挑発的に振る舞って議論を白熱させていく川村毅さん、テレビなどでもおなじみの話術で実質的な進行役を務め司会の小松幹生さんの顔色をなからしめていた鴻上尚史さん、作風同様に静かなのに言うべきことはしっかり述べる鈴江俊郎さん、みんなの話を聞いた上で新たな視点を提示して議論を活性化させる佃典彦さん、その包容力で場に安定感を与えていたマキノノゾミさん、熱弁を避けいろんな角度から冷静に劇を読み解いていく坂手洋二さん、そしてテレビのまんまの渡辺えりさん。
     個性的な面々の主張は言うまでもないことながらたびたびぶつかり合い、最後まで活発な議論が続いたが、そのことから再認識させられたのは“劇は見立て次第でいかようにも読める”ということ。
     たとえば、バルブがいちばん面白く読んだ『血の家』という作品。受賞作は満場一致でこれに決まるものと勝手に思っていた本作については意外や否定論も多く、「展開がご都合主義的」といった声がたくさん上がったが、川村さんは「すべては主人公の脳内の出来事だと思って読めばその辺は気にならない」と反論。それまで本作に否定的だった何人かの選者がこれを聞いてうなずいたのは、川村さんの見立てを聞いて劇の読み方が変わったからに他ならない。
     それから、受賞作となった『クラッシュ・ワルツ』という作品。内容がじめじめしていて個人的にはあまり好きになれなかったのだが、選者それぞれの見立てを聞いていくうち、これがいかに良く出来た劇であるかを確信。苦手意識を抱きながらも事前に読んだ段階で巧さは感じていたのだが、最後まで本作に否定的だった渡辺さんを除く6人の見立てはそれぞれに異なりながらもそれぞれに一理あり、結果バルブは本作が重層的な巧さを持つ傑作であることに開眼。それでも苦手意識は消えなかったが、“劇は多角的に読める”ということをイヤというほど思い知らされたのは大きな収穫でした。
     審査員の中で最も印象的だったのは渡辺えりさん。同じ話を何度も繰り返す、話の流れが変わるのも気にせず好きな時に言いたいことを言うなど、おばさんノリ全開だったが、後者により議論が一方向に流れるのを食い止めるという大きな役割を果たしていたのは無視できない功績でした。また、言うことが可笑しく、ツッコミ役の鴻上さんとのやり取りは爆笑モノでした。

    ネタバレBOX

     結果、刈馬カオスさんという方の書かれた『クラッシュ・ワルツ』が春陽漁介『ト音』と競り合ったのちに受賞。
    『ト音』は、二人の男子高校生がじつは一人だった、つまり二重人格者の物語だったと判るまでの煩雑なプロセスがもっと簡略化できたように思え、高評価に疑問だったので、『クラッシュ・ワルツ』が受賞作と決まって溜飲が下がった次第。
     でも、ほんとはやっぱり『血の家』に獲って欲しかった。。

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    2013/12/19 11:02

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