1
ベンバー・ノー その意味は?
はえぎわ
■約110分■
はえぎわ約3年ぶりの新作公演。
シンプルな舞台の上で次々と演じられる断片的シーンが脈絡を生んだり生まなかったり、笑いを生んだり生まなかったり、哲学を生んだり生まなかったり…。こうした“はえぎわのような演劇”は他に類がなく、はえぎわ公演でしか味わえないことを強く強く再認識し、急な公演だったために参加できないメンバーもいたものの、この稀有な演劇集団が久々に揃ってじつに“らしい”公演を打ってくれた、そのことにまず感動。
なくなることをテーマにするあたりがまず“らしい”し、そこから“ない”と“ある”の弁証法を展開し、それが、ないことをあることに、あることをないことにすることで成立するこのジャンルを自己言及的に語った演劇論にもなっていて、こうしたメタ構造もじつにはえぎわらしく、その相変わらずっぷりに嬉しくなった。
ただひとり客演として参加した内田健司さんはイキのいい演技で作品を活気づけて、本作の見応えを倍加。劇団員になっちまえ!
2
アンジェリーナ3:49
MCR
■約90分■
MCRを観始めて間もなく10年。「ここ10年で最も振りきった、振りぬけた作品になった」という作者の言葉に偽りなし!!
3
りぼん,うまれかわる
ナッポス・ユナイテッド
■120分強■
容姿やキャラクターが似すぎているあまり、冒頭の20分ほど、ヒロイン役の深川麻衣さんのことを、共演女優の中西柚貴さんだと信じて疑わずに鑑賞。そのうち、同じ舞台上に中西さんもいることに気づき、ようやく錯誤を覚った次第(爆)。
それはそれとして、輪廻かもしれない事象の真相をミステリー仕立てで炙り出していくストーリーの面白さたるや!
ヒロインの鞄をプチ悲劇が襲うシーンはヒロインの持ち前の可愛さと演技力を音効、照明が強力バックアップして鉄板の笑いを生んでおり、山崎彬の演出家としての才気をあらためて思い知らされた。
4
ワクチンの夜
城山羊の会
■115分強■
色欲ムキ出しの祖父、出そうとせずともにじみ出てしまう嫁、ムッツリスケベのその息子、息子と同じ大学に通うフツーに色恋を楽しんでそうな男女…それぞれに色欲の表し方の異なる男女が関わり合って生まれる数々の喜劇的状況を堪能!
ただ、上演時間の過小告示はやめてほしい。約105分と発表されていたのに…。告示を信じて予定を組むので、本当に困る。
5
フタマツヅキ
iaku
■約115分■
大好きだったお笑いから遠ざかってほぼ何もせず、献身的な母に甘えてばかりの父のことが大嫌いなはずの花楽君。その感情の軌跡に、不自然というか、劇をイイ話に持っていかんがためのご都合主義的なバイアスがかかっているのを感じはしたが、あのラストシーンには高ぶった。
同じ横山拓也作品である6位の『ジャンガリアン』よりも題材がマニアックで、こちらのほうがより好き。
6
ジャンガリアン
文学座
■約140分(途中休憩込み)■
iakuの横山拓也が文学座に脚本提供。横山作品らしくたくさんの笑いを孕みながらも、寛容と不寛容をめぐる素晴らしい人間ドラマに仕上がっていた。
7
更地の隣人
青年団若手自主企画vol.85 近藤企画
◼️100分強◼️
人間の綾に満ちた、素晴らしい物語。折笠富美子さんの、声優さんらしい、情感豊かな演技に惹き付けられた。
8
てくてくと【4月28日~4月30日公演中止】
やしゃご
◼️約110分◼️
発達障がい者が社会に出て働くことに付きまとう様々な困難をリアリズム寄りの脚本・演出で淡々と、しかし精緻に描き出した一作。デリケートな問題を扱いながらもそこにユーモアさえ忍ばせ、きちんと演劇として面白いものに仕上げているのがすばらしい。
9
猫を探す
このしたやみ
■約85分■
大学事務員の地味なアラ還男にもあった、女性がらみの蹉跌。それを可笑しみを滲ませながら丹念に描いていて、同じく若くはない男の一人としてしみじみ見入った。
10
奇跡を待つ人々
東京夜光
■約115分■
一つのSF作品として、すなわち世界観の相克の劇として、途中までとても面白く観た。
ラストがよく呑み込めず「観てきた!」投稿時は星4つとしたが、こりっちアワードに向け年間ベストテンを決めるにあたり選外とするのは忍びなくなり、大枠の面白さを評価してランクインさせた次第。