1
市民プールにピラニアが出た!!
劇団かもめんたる
市民プールピラニア事件を柱とする劇なのかと思いきや、さにあらず、そんな珍事件を生み落とすまでに人間関係がこじれきった、ある小都市を地元とするハンパで間抜けで付ける薬のないならず者グループが話の軸。子供時代、ピラニア事件を起こした青春時代、そして大人になった今になっても地縁のしがらみに縛られて愚行を繰り返す彼ら。ただでさえしょうもないその生態を岩崎う大が極限までバカバカしく、またシニカルに描き出して、異常な面白さでした。文句なしの2018年ナンバーワン!
2
あじのりの神様
あひるなんちゃら
あひるなんちゃらが隠し持つ、ファンタジー劇団という性質が強くにじみ出た一作。あひるなんちゃらの舞台を毎度にぎわす、どこか呑気でおバカな面々は、本作のファンタジックな世界観によくなじんで、観ているうちに、おだやかで、あたたかな心持ちになっていった。
それにしても、前作のアフターイベント「次回作タイトル決め会議」でお客さんからもらったタイトルから、よくぞここまでの傑作に仕上げたもの。この劇団の地力を思い知らされた。
3
GHOSTs
青年団国際演劇交流プロジェクト
世界の深淵を見せてくれた。
4
「サマータイムマシン・ブルース」「サマータイムマシン・ワンスモア」交互上演
ヨーロッパ企画
『サマータイムマシン・ワンスモア』を鑑賞。楽しかったぁぁ〜っ! 続編は作りづらいと言われるなか、正編との繋がりを大事にしながら面白おかしく話を先に進めていて、申し分なし。演劇界には純粋なエンタメ作品を見下す傾向がある気がするが、優れたエンタメ演劇を作るほうが、思わせぶりなだけで実(じつ)のないアートもどきを作るよりもずっとずっと偉業。と本作を観て痛感した。
5
ニューレッスン
ジョンソン&ジャクソン
まるでシャンパンタワーを築くかのように、緻密に、丁寧に組み上げられたブルー&スカイ流ナンセンスを堪能。大正末期(くらい?)の荘厳なムードがバカバカしさを際立たせて、べらぼうな可笑しさでした!
6
修道女たち
キューブ
快楽を罪と見なして禁欲的に日々を送るのみならず、苛烈な宗教弾圧にも耐え抜き、あるかどうかもわからない“死後の救済”にすべてを賭けるシスターたちの生き方って本当に尊いのか? 随所にちりばめられた小ギャグの数々にたびたび吹き出しながらも、深く深く考えさせられる一作でした。
7
毒づくも徒然
MCR
『あの世界』を除く3作品を鑑賞。報われないアーティストの孤独と破滅を、猪股和磨が迫真の演技で表現した『櫻井さん』が出色!
8
隣の芝生も。
MONO
欧米コメディ風の洒脱なストーリーに日本的情緒、そして深遠な人間観が畳み込まれた、じつに味わい深い一作でした。時事性が控えめなので繰り返しの上演にも耐え得そうだし、今後、MONOの大切なレパートリーになってゆくのでは? それぐらいの佳作。
あるていど謎をとどめて終わるほうが劇は心に残るものだが、本作はその“謎めかし”の匙加減も絶妙! お陰で、豊かな余韻に浸りながら家路につくことができました。
9
ふくしゅうげき <東京>
ブルーエゴナク
憎しみ合いの向こう側に、許し合いの可能性をほんのり透かし見せてくれる、素晴らしい作品でした。演技と踊りを融合させたような、独特の演出にも惹きつけられた。
10
さらばコスモス
世界劇団
“外からの影響を一切受けず、演劇という表現形態を独自に作り上げ独自に進化させた?”と疑いたくなってしまう、片山さつきが「離れ小島」と呼んで批判された某地の劇団によるガラパゴス的劇作品(とあえて書かせていただきます)。
そう言いたくなるくらい、これまでに日本で観てきたどの演劇にも似ていない。
劇効果を高めるために大ボリュームで音楽を流し、絶叫調のセリフが飛び交い、人間心理の機微、人間関係の綾などといったしゃら臭いものは一切描かれず、音楽に頼ることなくボソボソとした自然な会話のみによって人間関係の機微を浮かび上がらせるアゴラのシアターカンパニー・青年団とは真逆の作風。
これもあえて青年団の逆をやったわけではなく、やりたいことをやりたいようにやったらたまたまそうなっただけなのに違いない。
劇にはある母娘(おやこ)が出てくるのだが、母は継母が夫の連れ子をいじめるような激しさで実の娘を罵り倒すばかりで、そこには“愛憎相半ばする”といった親子ならではの微妙な心理は微塵もなし。
なぜなら作者が描きたいのは世界開闢にまつわる大きな大きな物語であって、大きな大きなこの世界の構成単位に過ぎない一人一人の人間がどんな思いで日々生きていようが知ったこっちゃないのである。
しかし、小を捨てて大を取った劇世界はたいそう魅力的。マクロな想像力が紡ぎ出すでっかいでっかい作品世界に圧倒された。