1
『僕と死神くん』『KNOCK KNOCK KNOCK 或いは別れた記憶たち』
ポップンマッシュルームチキン野郎
PMC野郎らしさをあえて減らしたと感じられるSF仕立ての短編集「KNOCK KNOCK KNOCK 或いは別れた記憶たち」と2009年・2011年上演作の再々演「僕と死神くん」との2本立て公演。恒例の開場中(開演前)パフォーマンス15分をあわせると4時間近い芝居を観させてくれる。
短編集の巧みさに比べると再々演作の構成がご都合主義的であることが浮き彫りになるが、この劇団らしい力業を用いながらしっかりと最後まで魅せてくれた。
短編集の構成は見事。数本の短編とその合間を埋める小芝居という構成だった過去短編集から一歩踏み込み、作家の脳内に入ることで消された己の過去と向き合うことを選択する男の物語となった。SFであり、刑事モノであり。かなりシリアスに寄ったのはそのためだろう。
「別れた記憶たち」という表記がひっかかっていた。
"分散した記憶(物語)"であるだけでなく"別離の記憶(物語)"だったのだ。
吹原作品が家族の物語をえがくのは常ながら、長編・短編集とも喪失・別離をしっかりえがいており客席からすすり泣きが聞こえるタイミングの多いこと!
生きる苦しみを知ること、死者と向き合うこと、愛すること、殺すこと。
シンプルかつ重い題材たちが心を打つ。
作家が希望を託した物語たちは当然ながら希望を宿し、
一度狂いかけた男もまたその希望を受け取ったかのように(おそらくは受け取ったのだと思いたい)自分の物語に舞い戻る。
何度も書くが短編集の構成は見事だった。
個人的には
2014年に観た短編をまたやっていただけたこと、
福地教光さんが着ぐるみで出演している姿を観られたこと
が単純に嬉しく、
また
短編集内「みにまむ」福地教光さんと増田赤カブトさんの二人芝居が
大変に、格別に贅沢な作品であったことを覚えておきたい。
2019年の観劇納めがこの公演になります。ありがとうございました。
2
くるおしき綾、絢爛なれ
OG-3works
出だしから漂う空気感が男女のそれで一気に引き込んでいただいた。
そういう話だと事前に公開されていたあらすじで知っていたしTwitterのクチコミからも読み取れたわけだがさすが、話の芯はそこではなかった。ミスリードのしかたが巧い。
お話を楽しめたし、お目当てのご出演者さんがたの演技も良かったという点で星はゆうゆう4点を超える。
毎度満足度の高い作品を見せていただきありがとうございます。
三人組が引き続きということで嬉しかった。関係性はあのままか~!
観客が一息つけるところということでうまく作用していたと思う。
次回公演を決められたとのことで次作も楽しみにしています。
細川さんの考える「誠実さ」はそういうことなんだなあと感じてます笑
言葉の多さは軽々しく見える一方、言葉の少なさは相手を追い詰める。
勉強になります。
3
メガネニカナウ5
メガネニカナウ
いやはや今回もたまらない3本否6本立てであった。
観ておいて損は無い関西小劇場のお祭り感たっぷりの公演である。
バンタムクラスステージ主宰細川さんの新作、期待通りだった。
大人の男が若者の幸せを祈ってしてやれること。
観客の観たいものを観させてくれた。
ゲッコー!ゲッコー!ゲッコー!
この名前だけで2019年も細川作品を観られて良かったと思ってしまった。
河口仁さんの役が最初に殺害されてしまってどうなるかと思ったらなるほど!
観劇後はやたらとトム・クルーズが印象に残る笑。
勝山さんと二朗さんによる山本香織さん遣いが定番化。
しかし細川さんによる山本香織さん遣いも初めてなのに手慣れたもので
山本香織さんのすごさが浮き彫りになる。
贅沢につかわれましたね!
上杉逸平さんは3作すべてに出演されるわけだがまたその上杉逸平さん遣いも
シリーズ通してこなれてきたなあと感じる。
笑わせていただきました。
ただしシリーズが5にも及ぶと悪い意味での「慣れ」というのも出てくるもの。
難しいことだが「身内感」が悪い意味で出ないようにしてほしいと
苦言を呈しておく。
さいごに。
石畑さんの猫、最高でした。ありがとうございました。