満足度★★★★
その歌はあの日を思い起こさせるのか。
高校のシャンソン部を舞台にした青春歌劇。
ネタバレBOX
開演前のナレーションで
エセミュージカルと言っていたが、
ミュージカルほど確立した世界観でなくても、
個人的には良い意味でアクが強くなく、ドラマを盛り立てるのに
大事なシャンソンの歌は良かったと思う。
高校卒業から1年、
元シャンソン部の部長だった橘(赤間直哉)は
伊豆にある母校を訪ねていた。
顧問だった牛坂先生(辻沢綾香)と会い、
シャンソン部結成からを振り返る。
劇中でシャンソンが一人芝居と言われるように、
ある意味シャンソンを歌うこと=モノローグに近いのでは
という印象も受けた。
片思いが繋がらない、再会の約束など
切なさを盛り上げる要素はたくさん。
ただ中盤とか少し笑いを狙い過ぎたかなと思えたところも。
桐嶋薫(井端珠里)が歌うフランス語の「愛の讃歌」は
とても見応え、聴き応えがあって素晴らしかった!
お目当てで観た陣内ユウコさんも歌にドラマに素敵だった!
満足度★★★★
リチャードの歪さとは何なのか。
女体シェイクスピアも7作目。『リチャード三世』を芝居で見るのも初めて。
ネタバレBOX
15世紀、ヨーク家とランカスター家の内紛である
薔薇戦争の最中のイングランド。
病床に伏していた国王エドワード四世(八坂沙織)の弟
リチャード(安藤聖)は、王位を狙うために暗躍する。
今回はまた素舞台。開演前は幕で隠されており、
幕が開かれる(実際は下りる)とそこには女優七人の後姿。
この劇中でも見栄をきるような、瞬間瞬間の見せ場の作り方は
さすが中屋敷さんの演出だなぁと。
チェスの盤上のような舞台で
騙し騙され、憎み妬みが渦巻き、
血で血を洗う殺し合いが。
リチャード(安藤聖)以外はフライヤーのような露出が多めのドレス、
リチャードだけはパンツルック。
リチャード三世がせむしである設定のため、
歩き方や仕草をそのように見せていた。
その回のアフタートークで中屋敷さんの解説によると、
他で上演される『リチャード三世』の場合、
「いかにリチャードが歪であるか」を表現するかがポイントとなっているが、
『完熟リチャード三世』では、
周りの人物をファッションショーのモデルのように美しく振舞わせることで、
逆にリチャードの歪さを表現したというのがあり、
とても腑に落ちた。
安藤聖さんの好演もあるだろうけど、
他の女優が見た目も仕草も艶っぽく女性らしさを出すことで、
リチャードだけが異質だなと自然に思わされた。
リチャードは稀代の大悪党とされるが、
彼に翻弄されたり利用する周囲の歪さが
リチャードとなって現れているようにも思えた。
今回の女体シェイクスピアは、
普段男性の俳優がやるのを女優がやるという以上に、
女優だから出来ることを見せてくれたように思えた。
柿喰う客の女優陣も皆艶っぽくこれまで以上に
女優としての魅力が溢れてた。
安藤聖さんは自分が演じるリチャードを上手く体現し、
八坂沙織さんは正統派な美しさ、
内田亜希子さんは凛として大人の女性の色気があり、
岡田あがささんはキレキレな美しさとコメディセンスも良い。
精鋭女優七人でがっちり吉祥寺シアターの空気を掴んでいた。
満足度★★★
夏目漱石とはどんな人だったのか。
とても芝居に集中する環境でした。
ネタバレBOX
個人的に「こゝろ」以外に
夏目漱石の著作を読んだことがなかった。
当日パンフレットに載っていた
作/演出の谷さんの言葉通り、
夏目漱石の人となりをwikipediaで参照。
幼少期も特にそうだが、生涯を通して
なかなか波乱の人生だったようで、
著作にもその経験がいくらか反映されている。
本作では、
幼少期、青年期、晩年病の床に伏している場面を
中心に描いている。
夏目漱石が寂しい人だった、というより
寂しくならざるを得なかったようにも感じられた。
精神に支障をきたし、妻に暴力を振るう。
それも過去、幼少期に養子に出された先での
養父からの躾もあるような。
"則天去私"にしても、
彼が望もうとした精神であって
どうしても手にできなかったもののように思えた。
本当に誠実で真面目な人であったのだろう。
終盤の場面、
門下生A(これはおそらく芥川龍之介)と亡くなった漱石の霊の
会話のシーンが好きだった。
皮肉にも死んだ後の漱石が生きている時よりも
一番心に残る台詞を言っているなという印象だった。
あと本作で特徴的に思えたのは、
ねこ達が登場するが、なんか空気が変わらず、
寂しいままだなというところ。
観劇前のイメージで、
ねこが出てくるとしたら、ねこ達の魅力によって
違った味が出たりするのかな等と想像しており、
そこが覆された。
決して悪い意味ではなく、
人間として"ねこ"という存在に対するイメージと
やや異なる実像を見せてもらえた気がした。
(冒頭、鳴き声だけでやり取りを続ける場面や
人間の葬式に対する感想などから)
舞台美術の使い方、
襖や障子を動かして場面を変えていくのが面白かった。
こういった上手、下手の横の動きが色々あったので、
立端も十分にある劇場だから、
縦にもっと見栄えのする表現とかがあるとさらに面白いかな。
満足度★★★★★
誰が悲しみを理解できるのか。
派手さがないのに、ここまで引き込まれる芝居はあまりなく、個人的には圧巻だった。
ネタバレBOX
<あらすじ>
杉浦寛治(でんでん)が経営する雪深い山荘。
2年前、麓で起きた土砂災害で長女・一葉を失い、
今は次女・梢(生越千晴)と
一葉の恋人だった新山忠男(古山憲太郎)と暮らしていた。
そして梢が家を出て行く前日、
お別れ会の準備のため、山荘の荷運びしている
阿部友之(津村知与支)と陽菜(伊東沙保)夫婦が出入りする中、
一葉を偲ぶため、新山の大学時代の山岳会仲間が山荘にやってくる。
作りこまれた山小屋の客間の美術が良い。
コの字型で三方向に客席が構えられ、客席からの距離が遠くない。
一番遠い正面の後方から俯瞰するように観ていたが、
それでも遜色なく楽しめた。
個人的に何度か東京芸術劇場のシアターイースト、ウエストを訪れた中で、
通路を潰してできた桟敷席に当日券のお客さん達が
目一杯埋まるのはワクワクした。
自然な現代口語形式の会話劇で同時に会話が発生したり、
ぼそっとしゃべる声や小さな音が多少聞きづらいこともあったが、
それで面白さ、魅力を損なうことなく集中して観た。
大事が起こる派手さはなくシンプルながら、とても見応えがあった。
全編を通じて笑ってしまう場面があるのも、飽きない。
でんでん演じる寛治の掴みどころのない飄々とした様など
挙げたらキリがない。
他では例えば妻にDVをしていた友之が
ある場面では最も的を得た台詞を言ったりする。
問題によって各登場人物の立ち位置が切り替わるのが、
ごく自然でそれが面白さを引き立てる。
・なぜ新山は一葉の実家にいるのか。
・なぜ梢は山を下りるのか。etc.
そういった疑問、登場人物各々が抱える問題や秘密が
新山と陽菜の不倫を友之が暴露することで、
数珠繋ぎに発覚していき関係が崩れていく。
張りつめたサスペンス的要素よりも、
それこそ前置きのない暴露などによって
じわっとありふれた空気がいつの間にか変わる様に見入っていた。
作・演出の蓬莱竜太さんの
「亡くなった方を大事に扱わなければいけない、
そういった命のタブーに挑んだ」という旨の内容が
当日パンフレットに書いてあった。
このタイトルにある「悲しみ」とは
「亡くなった者を悼むこと」だろう。
だがそれが消えたり、無くなったりするのは、
ある意味では自然なことだと思う。
忘れてしまうことは悲しいが、
悲しみにいつまでも囚われているのもどうなのか。
これは新山以外の人間、
劇を観ている観客も含め一般的に持っている感情だろう。
ただ今作でいう「悲しみ」は、
一方では、新山の今の安穏とした生活を保障するもので、
無くなるとその生活は破綻してしまう。
他方では、あくまで徹底的に優柔不断でダメ男の新山が、
それでも一葉を好きだったという気持ちを
忘れずに悼むことも含まれているように思えた。
だが彼が徹底的にダメであるが故に、
不器用に言い表せない(一葉が好きであるという)感情は、
誰にも理解されず、否定されてしまう。
人は情けないが、情けないままでいれないのも
事実というのが残酷に伝わってくる。
そんな新山ですら、その存在が
寛治にとって実は支えになっていたことが分かるラストは
心に残った。
満足度★★★★★
彼らの行く先には何があるのか。
なんか楽しかった。笑った。よく笑ったな。
ネタバレBOX
30代の三兄弟のはなし。
一番上の兄弟にお金をせびるマイペースな兄貴(泉政宏)。
やりたいことをやっているが優柔不断な次男タクミ(横手慎太郎)。
堅実で真面目な三男ジュン(中田麦平)。
タクミと8年付き合った元カノ、ミナ(名嘉友美)。
家族の墓参りの帰り道、各々言いたいことがある三兄弟が・・・。
もう30過ぎてちょうど自分にとっても年代がど真ん中だった。
ああいった兄弟というか、先輩後輩や友人でも
色々共感できる関係性でなんだかんだ持ちつ持たれつなのが良い。
彼らの行く末は暗にシンクロ少女という劇団の行く末なのか。
そう思わされる台詞のやり取りが自然で面白い。
自分にも重なるから、
悲哀とか鬱屈とか絶望とまではいかないけれど、
マイナスなものも感じられそうなはずなのに、
この作品を観ていると
なんか別にそんなに暗いわけでもないなと思えたり。
満足度★★★★★
自ら鬼となったことに気付けた者は何かを救うのか。
これはキムラさんにしか描けない物語だと思った。
ネタバレBOX
キムラ真さんの出身地、宮城県亘理郡亘理町荒浜を舞台にした作品。
「3.11」、東日本大震災に真っ向から挑んでいた。
私は東京都在住、実家が神奈川の首都圏、
震災については当事者ではない。
母方の祖父母が宮城の内陸出身。
震災の1年後に南三陸に行った事がある。
・・・と書いたけれど、結局そんなパーソナリティは一切関係ない。
この物語を観るのは誰が観たって良い。関係あろうが、なかろうが。
震災当事者についての表現は
取材などに基づいているのだろう、純粋に直球。
おそらくテレビとか開けたメディアにはあまり広く伝えられない。
それぐらい本当の暗い部分とかも直接踏み込んで描かれている。
実際に訪れたキムラさんだからこその作品だと思える。
鬼という存在が登場する童話が出てきて、
レッテルを貼る、恐れの対象が状況によって移り変わる。
人は楽をしたがる、求める欲求があるから、
その場の状況により、流されるし、視点も変わる。
主人公の父、克己が鬼となる選択をしたこと。
周りの鬼になっていることに気付かない者たちにも
良し悪しでは判別できないものがある。
どの登場人物に対しても感情が移入でき、
それでいて現実の親子、家族の話とお伽話が
無理なく共鳴しているのが、味わい深く良い。
おぼんろの末原拓馬さんは
お伽話的な要素を加えるのに十二分に魅力を放つなと感じた。
彼自身が創る劇団の作品がファンタジックである故かもだが、
ナイスコンプレックスの座組みでよりリアルというか、
胸に気持ちよいくらいストンと感情や思いが落ちてきた。
本当にどのキャストも誰一人例外なく素晴らしく世界を作っていた。
海の荒れによって環境が一変してしまったものの、
最後は海に帰るという結び方も心に残る。
このカンパニー全員によって
生み出された素晴らしい世界に感謝したい。
満足度★★★★
狂乱フリーク
初めて観るユニットでした。
知り合いの方、他の公演で拝見した方が何人がご出演されていた。
ネタバレBOX
テーマとして感じたのは、
「何かから逃げる、追う、追われる」「沈む」「本当の自分」etc.
まだ他にも色々言葉にして表すのが難しいテーマがあるだろう。
そのため難しい作品かなと思ったが、
役者がそれぞれ登場人物の個性がきっちり描き分けていて、
一言では言い表せない世界を作り上げていた。
シンプルだけど推理的要素もあって楽しめた。
主人公の辻(岡慎一郎)と中学時代のクラスメイトが中心になっているが、
彼ら以外も話を広げられそうな魅力を持った登場人物がいた。
例えば事件の陰湿さ、凄惨さを望むいずみ(キジマチカ)とか。
もしかしたらそこを同じ尺の中でさらに深みとして出せたら、
良い意味で「気味の悪い、得体の知れない」感じになっていたのかも。
辻の先輩ミヤマ(佐藤匡)と
中学時代のクラスメイト黒澤(フジタタイセイ)が見応えあった。
黒澤の気味悪さとミヤマの飄々としながら押さえる所は
しっかりしているのが良かった。
女優では、ミヤマの助手(ニシハラフミコ)、マリ(日野柚莉)、
リリカ(森かなみ)が気になった。
あと舞台美術がシンプルで好きだった。
ラストに出てきた小道具で
様々なものがくっついた被り物に何か意味があるのか、知りたかった。
満足度★★★★
情熱に回帰
先日、公演を打った仲間が数名出演されており、観に行った。
ネタバレBOX
始まり方が好きで、映像を舞台に起こしたような感じにも思えた。
劇中劇、回想など、各シーンごと描き方が色々変わったりして興味深かった。
女優というか俳優業をやる悲哀と厳しさが
色んなシーンの端々から読み取れた。
助監督のキャラが良かった。
パッションを連呼する女性監督に
もう少し突き抜けたうざったさが欲しかった。
プロデューサーにもう少し嫌らしさとエロさも。
途中に流れる曲が世代的&個人的にも、どストライクだった。
B'zのあの曲で相撲を取るとか。
今作をもって作演出の方は演劇を辞められると、
アフタートークで言っておられていて、
個別の事情については全く存じ上げないが、
またやりたくなったら、やるのも一興ではないかなと思った。
満足度★★★
全てが初めて。
劇団も作品も初見。
ネタバレBOX
オープニングのシーンから、
終始、身体を使い倒す俳優と
彼らを的確に見せる演出が凄いなと思いました。
身一つだけでこれだけ様々なことを見せることができるんだなと。
シェイクスピアの『テンペスト』自体も初見で、
これまで多く舞台や映画化もされ、
「復讐」や「許し」が一般的に知られたテーマのようだが、
今作は「許されない」ことを想起して稽古されたと、
当日パンフレットに書かれていた。
ただ、どういったところが「許されない」のか理解するのが難しかった。
満足度★★★★★
やっとの思いで
念願が早くも叶い、観る事ができた。以下、ネタバレBOXにて。
ネタバレBOX
実在の海賊、"ブラックサム"ベラミーこと
サミュエル・ベラミーを主人公に
彼が海賊となって自由を得るための
短い冒険を描いたファンタジー活劇。
・・・を、一人で演じるという。
語り手(終盤にある登場人物であることが判明)や
主役から各登場人物まで目まぐるしく演じ分けて
本当に凄かった。久々に鳥肌が立った。
登場人物のほとんどが男で、
実在の大海賊、黒ひげことエドワード・ティーチなど
男の中でもアクの強い男を演じるのには苦労があっただろうが、
それほど違和感なく自然に観てた。
特に主役のベラミー、ベラミーと馴染みの少年アジク、
数少ない女性何人かは
他との違いが鮮明でかつ見応えあり、魅力的だった。
ラストの会戦は、あの『レ・ミゼラブル』のバリケードでの戦いを
彷彿とさせるような激しさ、もの哀しいイメージが思い浮かんだ。
その辺りで出てくるファンタジックな内容も
荒唐無稽な感じはせず、自然と物語世界に溶け込んでいた。
途中に劇から離れない形でアイスブレイクする場面もあり、
ある意味画期的だった。
下手したらそれまでの流れを白けさせる可能性もあったが、
そんなことは全くなかった。
役者の負担を考えたら、心情的に気に留めない感じだった。
ただ一つ、他の方の感想を観て同じ感じていて、
語り手があまり説明的に情報を伝えすぎない方が良いのではと感じた。
人物や物事の説明にも枕詞が多い部分もあったので、
そこをもっと組み替えていけると良いのかなと。
しかしそんな点も心情的に気持ちがこもっており、
いくつものシーンに魅せられていて
とても良い演劇体験だった!
満足度★★★★
『だいなし』/『本日昔噺』
1/8(木)19:00~『だいなし』
1/11(日)19:30~『本日昔話』を観ました。
ネタバレBOX
『だいなし』
劇団ウミダが旗揚げされるまでの過程における、
海田さん自身を中心に描いたドキュメンタリー的な作品。
というか、要は作品が書けなかったことをネタにしている。
海田さんの脳内と実際の稽古場を切り替えながら、
役者たちがそれぞれ海田さんの思いを代弁しつつ、
一方で海田さんを責めて苦しめる立場を演じ分ける。
演劇を創る側の内部の話であり、
見方を変えて広義に「目標までに物事を達成させる大変さ」を
示している、とも言えるかもしれない。
が、場合によっては内輪ネタで終わることもあり、
そこを好ましく思う、思わないで受け入れられるかが分かれてくる。
自分の立場では、
演劇を創る側にもなった経験もあり、それを理解しているため、
観た回の観客の中では、かなり感情移入してたという自負がある。
これによく似た作品を過去に観た事があるのも影響している。
役者が芸達者で豪華なメンバーなので、
どんな作品でもある一定のレベル以上のものを観せてくれるだろうし、
それだけに求められるレベルも高くなるから、
劇作家、演出家にかかるプレッシャーが高いのは必然。
そこで「どう葛藤を観せるか」であり、
例えば「潔く勢いで持っていかせるか」、
または「変わった視点を用いるか」などあるだろうが、
作家の脳内を見せる以外のそれが無かった。
演出は良かったと思うので、
下地の作品がもう少し練りあげられればという印象。
場面によっては間延びしているところもあり、
願わくばもう少し尺を絞って一気に観せてほしかった。
『本日昔噺』
時代劇調で歌、踊り、殺陣ありのエンタメ劇。
アイドルネタをパロってサンプリングし、
色々詰め込んで豪華さがどーんとくる幕の内弁当のような、
まだ終わってなかったおせち料理のような。
マリー・インタアネット(鳴海由莉さん)を頂点とする
竜宮の国の者たちと、他の国の余所者たちとの抗争を軸としている。
終始キャラを突き通す前田前次郎(野口オリジナルさん)を中心に、
林虎之助(港谷順さん)、ヨタ(悠茉さん)が
敵味方で異なる魅力をもって、前田前次郎と対を成していた。
この4人は特に目立ってて魅力的だった。
あと浦島ビデオ(川上憲心さん)と
一気に口上をまくし立てる風の噂(前園あかりさん)も楽しかった。
台詞回しも良くて各キャラクターとも魅力的で、
思わず笑ってしまったところもあったが、
少し冗長に感じられる部分もあり、
もっとテンポの緩急の付け具合がバランス良くなると更にいいなと。
一番ラストの終わり方は好きだった。
満足度★★★★
別れてもなお、
この時期に観ると、ふいに・・・。
ネタバレBOX
思い返すような。
寒い冬に観るとなんとも言えないこの感じ。
個人的には劇団競泳水着で過去に観て好きな
「すべての夜は朝へと向かう」に
舞台セットの作りが似ており、
時系列ごとに10年おきの過去、現在、未来を描く。
再々演ということで
私は初見ですが10年前の初演から、
公衆電話が真新しいものとなり、
携帯電話が見慣れたものになったのが
大きな違いだろう。
公衆電話も10円玉も上手く活かされているなと思った。
自分が好きになった方だと
どうしても相手の立場の方が優位になって
悪く言えば相手に翻弄されてしまいがちなのかもしれない。
必ずしもそうとは限らないけど。
そういった報われきれない思いが絡まってる感じはあった。
キャラクターとしては、
福永朱梨さん演じる女子高生の無垢だけど、妖しい感じが良い。
一途に婚約者を思う松下仁さんに迫るところが印象的(笑)
亀田梨紗さんの凛としている表と裏のギャップが良かった。
篠原彩さんはキュートでしたが、もう少し深く描いてほしかったな。
武子太郎さんは良い立ち位置でコメディパートを担っており面白かった。
村上誠基さんの抑えた演技と相楽樹さんの夫婦が新鮮。
CAの須田彩花さんと教授の松木大輔さんは良い存在感だが、
違うかき乱し方をしてほしかった。
すがやかずみさんのはかなげなところ、
対照的に奔放な女性を演じた谷田部美咲さんも素敵だった。
満足度★★★
古きヒーロー
こういった作品はあまり観たことがなかったので、ある意味新鮮だった。
ネタバレBOX
かつて正義の味方(だった?)に憧れていた男の
自分自身の存在への問いが、
虚実入り混じる感じで描かれたものなのかなと。
自分探しのようにも思われ、そこはむしろ現在にも当てはまるようで、
ただ全体の雰囲気は昭和のレトロさといった様子だった。
新劇のような、それに王子小劇場が地下にあることで
アングラっぽい雰囲気もあり、
さながら芝居小屋のようだった。
圧倒的な強度が必要とされる芝居だと思うので、
ものすごく濃い芝居がかった芝居が要求されるものだと感じた。
人や舞台装置の動きが忙しなくて見所はあるが、
主人公の男にもう少し芝居がかった強度と抑揚があると良いなと思った。
それでいうと女を演じた鳴海由莉さんは世界観に沿っていて
入り込んでいる立場として観れたので、
あのくらいキャラが立っているといいのではと思った。
物語自体を楽しむ類の作品でないにしても、
もう少し引きつける何かが欲しかった。
満足度★★★★★
東京公演の最初
初めて観たカオスな40分。
ネタバレBOX
これまで気になっていたがついに観た。
どんなだか得体の知れない緊張感あったけど、
興奮した。
情報が過多過ぎて、
前方の舞台や両サイドを色々見渡していると、
水が飛んできた(笑)
まかれた制汗スプレーの複数混ざった匂い、
紙吹雪をはじめ色んな小道具も飛んでくるわ、
豆腐は塊のまま頭を直撃。
かつおぶしもまかれていたり、
風船とかそして客席の間をキャストが行き交い、
観客に話しかけたり。
ずっとカオスかというとそうでなく、
ちゃんと構成されていて全体を通して
抑揚がついているなと思った。
まさかここでもレ・ミゼラブルの「民衆の歌」を聞けるとは。
戦メリのところは印象的だったな。
最後のヲタ芸のところは盛り上がる!
満足度★★★★★
未知へと遭遇する過程で
しっかりSFであり、人間というか生命のドラマでした。
舞台美術がまず圧倒的。
世界観に入るには、これ以上のものはないと思う。
ネタバレBOX
手塚治虫の『火の鳥 未来編』を思い出す。
後半、主人公ミシマがたった一人になっても生き続ける場面。
藤子・F・不二雄の短編でも、
遠い宇宙の彼方へたった一人行く話とかあったけど、
ずっと一人、孤独でいることへの得体の知れない不安を感じた。
必ずどこかに誰かがいる場所にいた経験しかないから、
ある意味、究極の環境ではないのかなと。
それを受けて、
かつては仲の良い友人でありながら、
この「マンダラ号」に乗ってからは
あまり上手くいかなかったアラノ、パンドラとのそれぞれの関係も
コールドスリープで生き永らえた二人とミシマが再会し、
別れがくるところはぐっときた。
冒頭の旅立ちから、テロ(宇宙船内における革命)が起きて、
その次の世代では下層(奴隷)階級の子孫が中心となるが、
自由と平等を標榜するも生活や言語は退廃し、享楽的になる。
ゆるやかな統制が必要か、と言わせるのは皮肉めいている。
この場面では映画『26世紀青年』が思い浮かんだ。
こちらは500年先の未来の地球をバカバカしく描いたコメディだけど
下らなすぎるのにだんだん笑えなくなるというすごい作品。
それにも通じるような気がした。
A→Bの順で両方を観て、
見た順番も関係するのだろうけど、
1度目は衝撃が強く、2度目でより深く世界観を理解した。
ミシマとヨニ・ニャンニャンにスポットが当たって
過去のミシマと、かつて付き合っていたエスに
切り替わるところは印象的で好きなシーン。
佐藤拓之さんに圧倒された。
Aでは主人公の友人アラノ、Bでは主人公ミシマ、
対象的な役柄を見事に演じ分けられていて魅入った。
Bバージョンの鵜沼ユカさんのヨニ・ニャンニャンは
変化に富んでいて魅力的だった。
山田宏平さんの存在感と凄さ、
山森信太郎さんの安定感はさすが。
鳴海由莉さん、愛らしい。
松本みゆきさんは前に見た日本のラジオの時とはうって変わって
大人の女性の魅力を感じた。
満足度★★★★★
非常の階段
すでに2回観たけれど、鳥肌が立つ。終盤に押し寄せる波が凄い。ラストの群舞もさすがです。欲を言えばもっと観たかったかなとも思う。家族については緩やかな崩壊とまでは言わないけれど、瓦解というか別離なのかも。時が経てば、状況が変われば、離れなきゃいけないことがある。詐欺という行為にしても違う側面から描き、思想についても押し付けがましくなく、ヒリヒリと伝わってくる。照明の具合がとても良い。もっと演出の意図を知りたい部分があるけれど、これは好きな作品です。
満足度★★★
もっと引きつける何か。
チケットプレゼントにて鑑賞させていただきました。
ネタバレBOX
ある町で電器屋を営むエッジ兄弟。
幼い頃に両親を亡くし、二人で支えあって生きてきた。
無愛想な職人気質で腕の良い修理担当の兄ケイ(泉政宏)と
社交的で店の経営をしていく弟ユウキ(山本恵太郎)。
ユウキは昔からの友人ダニー(深井敬哲)とともに無事大学に合格、
そこで将来の結婚相手カレン(宍泥美)と出会う。
町にある拘置所の職員ジョージ(蓮根わたる)と
新人職員のリー(井上ほたてひも)は
ハナ(三澤さき)の営む近くのバーに通っていた。
その頃、ハナは雨の日に店の前にいた捨て子のスズ(篠原彩)を見つける。
時が経ち、公務員となり選挙出馬を目指すダニーが
店の経営が思わしくなく悩んでいたユウキにある話を持ちかける。
それは拘置所で新しく導入される死刑執行の道具、
「電気椅子」の整備の仕事だった・・・。
(※以下、まとまりのない文章で申し訳ありません。)
アラバマ州で使われる電気椅子のニックネームが
「イエローママ」と言うらしい。
そうすると、そのあたりをモデルにしているのかな。
終盤に「温泉」というワードが出てくるのが違和感だった。
人物の名前等から欧米的な世界を想起していたので。
劇中の台詞にも出てくる「幸せの総量」とか、
電気椅子にちなんだ「人生は椅子取りゲーム」だというのは
まぁ理解できる。
良いことの後には悪いことがある。逆も然り。
幸運と不運は表裏一体、
誰かが幸運なら、別の誰かが不運になっている。
物語としても全体的に淡々と進んでいき、
劇中の時間も急に進んだりするものの、
展開に置いていかれるということはなかった。
ただ物語や登場人物に感情移入する前に
次へ展開していくように思えたので、
もう少し引き付ける何かが欲しかったと思った。
ケイが電気椅子にこだわる(魅せられる)様子、
スズが電気椅子の廃止運動にのめり込んでいく様子、等々。
誰かが幸運なら、別の誰かは不運であるというテーマなら
そうなってしまう「もどかしさ」をもっと感じたかった。
ラストもおそらく作家の挨拶文にあった、
「幸せが具体的にどんなものかわからないけれど、
とにかく幸せになりたい」というのを
表していたように感じ取れたので、
もっと各キャラクターに入り込めれば尚良かったな、と。
この群像劇の中ではジョージが良かった。
友人のケイ、部下のリー、通っているバーのハナらと繋がっており、
時に悩む者の背中を押したり、話を聞いたり
物語をも繋ぐ役目になっていた。
加えて一番まともで現実的に共感しやすい存在なので、
欲を言えば彼がもっと現実的な厳しさを明確に伝えれば
更に印象が深くなるんじゃないかと思った。
全体の空気感とか舞台美術とか好みだったので、
また次回を楽しみにしたいと思います。
満足度★★★★★
20回やる
この企画の勢いからして素晴らしく、演劇関係なく人としてこの気概を見習う方が良いなと思った。
ネタバレBOX
等身大の彼女から語られる一遍のおはなしといった印象。
最初は緩やかに詩的な童話っぽいイメージ。
途中、たまねぎを用いて話を展開させる場面は面白く良かった!
太宰治の短編を参考として用いているが、
もう少しシンプルな話に持っていくとさらに良いなと感じた。
ただ彼女は今、真っ白い画用紙。
演劇か映像か、日本全国、世界中に飛び出す彼女のこれからが楽しみ!
満足度★★★★
見方によって
2人の対照的なデリヘル嬢の対話劇。
ネタバレBOX
夫に内緒で借金を抱えた人妻、つばき(落合咲野香)。
風俗の経験豊富で旧知のパートナーが立ち上げた店で
業界に戻った、せりな(片岡ちひろ)。
互いの立場が、状況の変化と相まって変わっていく。
それを何気ない台詞のやり取りで見せてて良かった。
つばきがタブーである本番について
「みんなやってて私だけなぜダメなのか」と言う台詞があったが、
物事の当事者になると生じる疑問が、
第三者から見ると違和感を覚えることもある。
風俗という世界にもルールがあり、そこに不条理もある。
あまり良く知らないので詳しく言及できないけれど、
それをどう理解しながら対応するか。
自分はその世界で何をしたいのか。
どう自分を変えていくのか。
デリヘルという世界から考えさせられた。
会場の立地が雰囲気抜群で、
特に夜の回は作品の世界観を現実でも堪能できる(笑)
満足度★★★★
価値の置き方
3時間もの長編舞台は初めてではないが、
海外の古典だし、どんなものかと思っていた。
全三幕、一幕後に中入り。
特に中入り後の二幕、三幕は緊迫感があり、
時間があっという間で見応えがあった。
ネタバレBOX
南部のアラバマ州バーデンで
南北戦争後に財を成したハバード家。
一代で今の地位を築くも、強引なやり口で
街中から敬遠されている父、マーカス(鈴木浩司)。
戦争後から心を病みつつ、
黒人への教育を夢見る信心深い母、ラヴィニア(ヒザイミズキ)。
父の右腕として会社を支えつつも、
野望を秘めた野心家の長男、ベンジャミン(菅野貴夫)。
黒人を襲って逮捕されかけたり、
売春婦に熱を上げたりと思慮の浅い次男、オスカー(松井美宣)。
父から溺愛されていることを利用しつつ、
没落一家の将校との結婚を夢見る長女、レジーナ(直江里美)。
彼らと関わる人々との駆け引きを描く。
各々が自分の野望を叶えたいがために
相手を巧みに利用しながら、出し抜こうとする。
そんな様子だから決して誰もが相容れることはなく、
好意を寄せる相手にも思いは伝わらず、
すれ違っている様が何とも無常。
「人は自分が信じたいと思うものを信じる」
この台詞が表している世界観は
今の世にも通じることだろう。
だけど時代も違えば、国も状況も違うので、
現代とのリンクはあまりないと感じだ。
戯曲としては平田オリザ先生のように言うなら、
母のラヴィニアという内部の存在が
冒頭からの大半を「厄介者」で誰もが関わりたがらない、
外部の存在のような扱いを受けているのに、
終盤でマーカスの過去の罪を暴く証人であり、
証拠も握っていると発覚すると、
とたんに誰もが重要視して、
すり寄る内部の存在に変わるのが面白い。
母のラヴィニアの価値の置き方。
妻として母としてぞんざいに扱った者ほど、
変わった後の価値の反転が大きい。
人や物事を一方からしか見ないために、
他に持っていたり、普段隠れて見えない価値、魅力に
気付かない虚しさを感じさせられた。
役者としては、
捉えようのない母、ラヴィニアを演じたヒザイミズキ、
情けない次男オスカーを演じた松井美宣、
オスカーが恋する売春婦ローレットを演じた長瀬みなみが印象的。