満足度★★★
ショートコント8編
まず始めにスタッフワークが悪い。箱の中には女性スタッフ2人が居たが、殆ど立ちんぼ。観客への誘導もあまりしてない。発する言葉は「前の方が空いてます。」と蚊のなくような声で、覇気がない。スタッフも劇団同様、「だるい」のだろうか?して肝心のコントは面白いのと全く面白くないのとの差が極端すぎる。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
面白かったタイトルは「さよなら七曜」「花火に邪魔されて」「座敷わらしの宿」「狂言バンジージャンプ」。
中でも最高傑作が「狂言バンジージャンプ」だ。最初に現代劇で芝居をしてから、狂言の芝居をするのだけれど、云わば現代劇は狂言へのナビゲーターみたいな役割をしていて、狂言バージョンが始ると、ああ、あれはこの為の解説版だったのね?なんつって実に解りやすいのだ。そう考えると、大河内作のコントがワタクシの肌に合ってた。ということになるのだが、終わってみればやはり大河内の本は好みなのだった。
キャストは中野和哉と大竹加那子のキャラクターがひじょうに良かった。そんなだから二人の出演した「座敷わらしの宿」は大いに観客を沸かせて魅せた。それでも、まだまだ発展途上国なコントでこれからを期待したい。
満足度★★★★
不条理劇の醍醐味
本来なら「受付」という機能は外部と内部とを繋ぐ橋渡しの役割だ。なのに、ここでの「受付」はその機能をはたさず男の要請を無視してひとりの意思を持った女性として自立してしまう。受動的な立場を捨てて次々と要求を出してしまう。その境界はあっちの世界とこっちの世界にも属さないニュートラルな位置にあって、尚且つ「受付」の先には末恐ろしい世界が手をこまねいて待っている情景が可笑しかった。
シュールで滑稽でブラックコメディな世界。
以下はねたばれBOXにて。。
ネタバレBOX
男はヨシダ神経クリニックにヨシダ先生の診察を求めて来る。受付の女は男の話を聞かずに机のうえの筆立てをどこに置くかで迷っていた。その筆立ての場所を考えながらも、女は男の家庭環境を聞き出す。男には妻と4人の子がいると知った女は「そんなに子供を生んで世界の食糧不足をどう思っているのか」、と咎める。
元々、神経を病んでる男は気丈に言い返すという行為が出来ない。そこに付け込むように受付の女は次々と、パレスチナ難民援助協会への寄付金やら、アイバンクに角膜を寄付する件やら、献体を扱う白菊会やら、安楽死協会やらの福祉団体を次々に紹介されて入会を勧める。男は当初は嫌がって断るも、女の善意という大義名分のもとに、言い負かされ身ぐるみはがされてしまう。
そんな受付の対応に、いつになったらヨシダ先生に診察してもらえるのか不安になり「受付」奥の診察室に行ってみるとそこには何もなかった。男はやっと自分が騙されていたことに気づくが、女は尚も言い放つ。「ここのビルには37の受付にそれぞれ一人ずつ女の子が座っていて貴方を待っていた。貴方はもうここにしか貴方の希望はないんです。」
終盤、ヨシダ先生が手前の部屋から入ってきて、「しかし暇だなー、どうしてここには患者が来ないんだ?」すると女は言う。「宣伝や広告は出しました。そのうち患者は来ますから気長に待っていてください。」
そう・・・、患者の殆どはここを経てビルの中にある寄付から安楽死までのフルコースに導かれてしまう手はずだ。
二人芝居だからこそ面白い。人間の弱みに付け込んだ不条理劇だが、コントのような会話は実に楽しかった。さらに女は、各階の受付の女がみんな独身だと打ち明ける事によって、男が彼女らに興味を持つはずだと思い込み、男を曖昧にさせてはぐらかせ明確に拒否できないようにさせてしまう。それが男をのっぴきならないところへ引き入れてしまう結果となるのだが、そのやりとりが恐ろしくも可笑しいのだった。
満足度★★★★
確かな演技力と温かい物語
下町の人情ゲキ。ちょっとSFも混ぜながら、味のある素敵な物語でした。たぶん大衆向きなので、どなたにも受け入れられはず。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
定食屋『ましも食堂』の店長・真下賢太郎は頭を抱えていた。スカイツリーの完成によって立ち退きを迫られていたからだ。その上、最近妻との関係もギクシャクしている。このままでは離婚になりかねない。このことを見越したように 21年前に亡くなったはずの兄が戻ってきた。しかし兄はアンドロイドだったのだ。
かつて兄が亡くなった折に父は秋葉製作所の千代さんに依頼して亡き慎太郎とまったく瓜二つのアンドロイドの製造を依頼し甦らせたのだった。その後、フーテンの寅さんのように居なくなってひょっこり戻ってきたという設定だ。このアンドロイドこと慎太郎はロボットだけに携帯電話のように充電式なのが可笑しい。
やがて『ましも食堂』の家族の問題をこの慎太郎が少しずつ修正しながら解決していく。という筋。この感覚もどことなく寅さんモードだ。笑) 店主の賢太郎は自分自身を追いつめてしまう性格だが、その賢太郎をサポートするかのように慎太郎があくまでも緩くノー天気に対応するさまは観ていて穏やかな風景で癒される。
個々のキャラクターの立ち上がりもインパクトに富んで観ていて楽しかった。コメディの中にも下町の人情が絡んだドラマのような舞台だった。観て損はないと思う。やっぱ、慎太郎のキャラクターが素敵だ。
セット、導入音楽、演技力ともに○
満足度★★★
ユルユルコメディ
全体的に肩の力を抜いて足を組んじゃったり投げ出したりしながら、ゆるゆると観られる舞台。小難しい設定なんか露ほどもなくて、「ああ、こういう世界ね。」なんつって観てるワタクシも緩くなる。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
序盤、筋肉バカみたいにやたらマッチョなロミオが登場する。この登場の仕方でまずヤラレル。笑
小劇団の役者らの「ロミオとジュリエット」の練習風景から。そんな折、役者バカの二ノ宮は突然死んでしまう。そこに天使が登場し、最後の望みを言えという。彼の最後の望みとは中世ヨーロッパに行ってシェイクスピアに会うこと。
その願いを聞き入れた天使は早速、バカと一緒にイタリアのベローナ、「ロミオとジュリエット」の地に飛んでいく。そこでは物語とまったく違った情景があった。太鼓腹のおっさんロミオとギャルジュリエット。笑
バカはそこで物語の歴史的背景を矯正しようとするも、歴史は少しずつ誤った方向に流れていってしまう。歴史を重んじるか、現実の「ロミオとジュリエット」を受け入れるかで悩みながらも二ノ宮は自らがナビゲーターとなってシェイクスピアに物語を書かせようとするも、肝心のシェイクスピアはノー天気なおっさんでこれまた小説家の素質もないという、どこまでもコメディな物語。
マッチョロミオとおっさんロミオの登場には大笑いしたが、中盤はだらけた感は否めない。もっとコミカルにセリフで笑わせる場面も欲しかった。それでも楽しかった。二人のロミオのキャラクターは実にいい。。笑
満足度★★★
お祭りのようなパフォーマンス
この劇団ってファンタジーとアクションと殺陣とダンスとギャグがウリみたいなものだから、大方の予想はついていたけれど、コメディでは意外にスベッテタ。笑)・・・・、まあそれでもそうそうたる出演者を観に来られた観客が多かったのでしょうか?ワタクシは片桐はづきしか知りませんが・・。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
闘争を続ける黒の町と白の町。しかし、ロミジュリじゃあないけれど、一人の黒の住民と白の住民が恋に落ちて、タブーとされていた黒と白のハーフを生んでしまう。しかし、二人はこの掟破りを理由に殺されてしまうも生き残った二人の子・クレイメは心ある夫婦に引き取られ育てられたのだった。
序盤、これらの複線を撒きながら最下層、富裕層を巻き込んで蔓延する差別を失くすために立ち上がる面々を軸にパフォーマンスショー的に見せる。ショーとして観るなら楽しめる。しかし、演技力やストレートプレイを追求するなら、物足りない舞台だった。
むしろ、終盤に訪れる電車のシーン以降が素晴らしい。と感じた。それでも片桐はづきを久しぶりに見て懐かしかった。笑
満足度★★
あまりにもつまらない芝居でした
旗揚げなのでこんなこと書くのはどうか・・?とも思ったけれど途中、退席される観客もいました。そのくらいだらだらなエンゲキ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
「一軒家で暮らす“ぐだぐだ”な共同生活」と説明にあるとおり、本がぐだぐだ。キャストがどうのこうのではなく、あまりにも脚本が雑で終盤近くまで、まったくもって、何のうねりもない。観劇すれば解るが、途中で退席したいほどだった。
それでも後半にすこ~しだけ、夢や希望への意気込みやら、やりたいことをやったほうがいい。みたいな展開にはなったけれど、そこにたどり着くまでの情景がだらだらと長い。で、飽きる。以上。
満足度★★★★★
角田ルミのエロリズムワールド
少子化が進み、政府が出した女性の奴隷制度。その結果、精液がどんな価値観をもたらすことになったかが今回の昇天、いあ、違う。焦点。笑)・・・
以前も「角角ストロガのフ 」の公演を観た時、脚本家は男性だとばかり思ってた。だってその表現方法といい、モロシモネタといいアニメ的だったから。そのアニメも少年ジャンプではなく、ヤングジャンプのノリ。女性ながらあっぱれ!の粋。
・・・・まず、この舞台は感覚で観たほうがいい。だから結果がどうだとか、リアルの勝負だとか、そういう一般常識の世界ではない。それを度外視したファンキーで破壊力のある芝居だ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
国家繁栄法で打ち出した策は女性に子供を生ませること。つまり子供を生むための機械だ。その為には優良な精子が必要だ。更に障害者優遇制度の為、障害者の精子にはポイントが付き、高額で売買される。ここに目をつけた業者は国の施策に乗っかって障害者の精子を取るために女性の奴隷にランクと番号をふり口や手を使って男性の精液を取る手伝いをさせる。
物語は3人のセックスボランティアとして監禁された3人の女性(奴隷ハウス)、1028号・3333号・2573号。彼女らと精子を管理する精子バンクの職員ら、そこで働くドクターとその家族。牛乳売り。ひよこ屋。これらの描写を舞台の右、左、中央、後方で同時に動かす。だから観ているワタクシの目はあっちにキョロキョロ、こっちにキョロキョロ、セックスのシーンではしばし、凝視なんかしちゃって、ハアハアしながら留まることを知らない。笑
挙句、障害者の精子が高額で取引されるのを知ったひよこ屋は障害者のふりして奴隷を強姦しちゃうのだから、本人は「ヤリ得」なんてニヤつく。そうして妊娠する奴隷。お腹に子がいるとお腹が空くがまともな食事を貰えない2573号は1028号の善意で彼女の両腕を食べる。その代償にすくすくと育つ胎児。
一方で知的障害の子を抱えたドクターの家族では妻がかまってもらえないストレスに苦しみ、自ら奴隷に志願する。そしてセックスし放題になり、挙句、子供の知的障害が快方に向かうと今度は教育ママに変貌するという、人間が持ち合わせている底のない欲望をも描写し、また一方で施設での人事配属でも足の引っ張り合いを描写する。
人間の心理とセックスと人間関係は一心同体のように常に隣りあわせでいつ自分が転落するかなんてわからない。だから、ぐるぐる巡る人事や支配されるもの、支配する者の情景が絶妙で軽快だった。
好みは割れるかもしれない。だけれどこの物語は実在するものではないし、所詮、芝居は嘘話だ。その嘘話で観客を楽しませる、という面においては成功だったように思う。演出もキャストらも○、強いて言うならオスカープロの森山が自意識過剰な演技力だった。鈴木ハルニは流石の演技力。未だに「劇団コーヒー牛乳改めゲキバカ」との添付があったが、ゲキバカの浸透力がないなら元に戻せば?笑
世界観はヤンジャン!笑
満足度★★★
ちゃんと見てるよ。
佐々木拓也(パセリス)の役者っぷりを見たかった公演。
いあいあ、中々、演技派でした。
序盤、ばらまいた伏線を終盤にきっちり納める手法なので、序盤の描写はぼやーっとして観てはいられない。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ちっさい頃から内気な波男は学校でも苛められっ子で言いたいことの半分も言えない子だった。そんな波男は母子家庭で育ったが、その母も亡くなって、今は独りぼっち。そのうえ、余命半年とガンの宣告を受けた。なんだか、ぼんやりとして広場の椅子に腰かけてパンなんかかじっていたら、幼馴染の凛子に出会う。
これがきっかけとなって波男は自らの空想の世界に迷い込む。そこでは幼い時代の波男ら家族の風景が見えた。まだ若い母、生まれてこなかった妹と弟。それらは波男がもっとも欲していた家族の風景だ。そして母親が営んでいたペンションでの泊まり客の情景などが飛び込んでくる。
しかし、それらは波男が望んだ架空の世界だから、それぞれの登場人物のポジションが波男の感情によって変化してしまう。まるで時空がいびつに歪んで、ぐにゃりと変形し、加速し、また正常な形に戻るような空間の流れだ。その時空軸を支配するように、ソラという「ケケケケケケケ・・。」と奇妙な声を発する架空の人物が、たぶん、童話などで良く登場する生きてる人間を見守る神の存在だ。こういった物語に登場する神ことソラは大抵、何らかの楽器を持っていることがお決まりのパターンだが、今回もカリンパを独特のリズムで奏でる。そして、「ケケケケケケ…。」と発する。
独りぼっちの波男は自らの孤独を打ち消すように、ペンションでの賑やかな光景を想像し、また母親のように自信もペンションの経営をしたかった希望を夢想する。しかし、空想の中の母親は、「お前は独りじゃないよ。ちゃーんとみずきとひろし(生まれなかった兄弟)が見てるんだからね、いつも見守ってるんだから、強くならなきゃダメだよ。」と励ます。
こうして序盤に撒いた伏線に戻って波男は広場の椅子でぼんやりとしている。そこに先ほど、通りかかった人々の光景も現われるが、今の波男は以前の波男とは違う。他者を受け入れず、自分の枠の中で閉じこもって生きていた波男は少しずつ、外に向かって心を開放してゆく。それは大きく広がる空のようだ。空いっぱいに広がる青は波男の記憶とともに、かつて母親と見た空を、星を、天の川を思い出す。そうしてこうして今年も天の川を見る。天の川は自分と自分を見守るモノを繋ぐ煌めく星の川だ。
ナンセンスな笑いもあり、ホロリ・・とさせられる場面もあり、楽しかった。しかし中盤の人間関係のぐるぐる変化する展開が解りづらかったように思う。きっともっとシンプルにドカン!と響く描写のほうが良かったかもしれない。だから、初心者向けではないと思う。
満足度★★★
摂りつかれる
鉄平が中学生の頃に経験した苦くて淡い思い出と現在の鉄平の心境を、小さなバーでミステリアスな出来事として起こした物語。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
中学生の鉄平は幼馴染の真夏との淡い恋心を同級生に冷やかされて真夏に心にもないことを言ってしまう。その後、真夏は交通事故にあって他界してしまい、大人になった今も、鉄平は真夏に謝れなかったことを悔いていた。真夏との夏の思い出。当たり前のように一緒にいたあの頃。どんなに悔いてもあの夏は戻ってこない・・。そんな鉄平の心の闇に取り込むように、真夏の死霊が鉄平を惑わし霊界へ連れて行こうとする。
この状況を仕組んだのがバーを経営するセシルママだった。ママは鉄骨に潰されて事故死していたが、あまりにも無念な思いから成仏出来ないで居た。そんなママをたぶらかすように死神が魂の取引を持ちかける。それはママの命を救う代わりに5つの魂を霊界に差し出さなければいけない。という条件だった。魂の横流しだ。
その条件の取引に応じたママは真夏を利用して鉄平の魂を奪おうと企む。しかしこの異変に気づいた鉄平らの友人が未然に防ぎ鉄平の魂を無事に取り戻すという筋。
中盤あたりから急に怨霊騒ぎになり、あれれ?と思う。ファンタジーだとばかり思っていたからだ。ミステリーに行くまでの展開も遅いと感じた。個人的にはミステリーもホラーも怨霊も嫌いではない。しかし、どちらを主軸にするのかの判断が弱いと思う。怨霊の登場シーンではもっとそれなりの音楽導入と照明が必要な気もするし、霊話ならもっと、とことん突き抜けてしまったほうが後味が悪くないとも考える。つまり淡い恋と怨霊のどちらに重きを打ち出すかによってもっとホラーに、もっと恋愛にとインパクトの見せようがあるだろうとも思うのだ。
あくまでも素人の意見だが、芝居の数を観てる分だけ、最近は総合的なエンゲキにも煩くなった。笑
言いたいことや想いはきちんと伝えよう。たぶん、これは誰でも解ってるのだと思う。解っちゃいるけど・・、という輩が殆どなのだ、とも思う。笑
満足度★★★★★
なんすか、この可笑しさ!
コメディそのもの。ちっさい頃に読んだ「白雪姫」のイメージとまったく違う。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語の筋はほとんど同じ。ただ、最後の継母が死ぬ場面だけが、ちと違う。童話の中の継母は焼かれた熱い鉄の靴を履いて踊りくるって死ぬという場面が、ここでは白雪姫が王子様と結婚したと聞いた継母はショック死してしまう。笑
更に、7人の小人を一人のキャストが腕や足にお面を付けて腹話術のように表現するし、主役級の白雪姫は同情するに値しないキャラクターなのだ。だから、ここでの白雪姫は、しょもない奴というか、痛い奴というか、童話に登場するような儚さやエレガントさは微塵もない。まあ、儚さという言葉自体が幻想なのだけれど・・。笑
白雪姫が育っていく過程で使われる少女人形、あれ欲しいなぁ。セットの小人のお家も可愛らしかったし、家来は「不思議の国のアリス」に登場するような世界観のキャラクターでこの物語の中に観客を引き込む力は強かった。また2つの女王のキャラクターは見もの。
笑えて楽しい舞台だった。大人も子供にもイケル。もう一回観たいと思う面白さ。
満足度★★★★
やるじゃん!
主軸は盲目の女・四季を守るドクターこと拓海と四季の恋人・周のそれぞれの愛を描写した作品。4つのオムニバスのように見えるが実はそうではない。4篇は全てが四季の世界と繋がっている。だから、その構成の仕方は四季が見える世界と四季に見せない世界を巧みに表現した舞台だ。その狭間で揺れ動く四季が見たい真実(現実)は見方によっては美しい。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
四季に現実の汚い世界を見せたくないと考えたドクターはシェルターの中で独自の美しい世界を作り上げてしまう。四季に見せたくないものの全てを排除し、美しい映像だけを見せたいと考え、この世は美しいもので満たされていると、目が見えるようになった四季に映像を見せる。
その映像の世界が「美しい世界」だ。しかし一方でウィルスで創作された偽りの世界が「オンリーミー」「消えたい二人」「違う視界」だ。ここでの「消えたい二人」がものすっごくいい。とにかく笑った!笑った!コメディとしてのセンスが抜群でこれだけで一本の作品だったなら、完全無欠の5点満点だったはずだ。
「美しい世界」がドクターが操る幻の世界なら、残りの3篇は本間らが実在する真実の世界だ。この世界は人間が居る限り醜いとの持論をぶちかまし四季に本当の世界を見せないドクターと、真実の世界はこうだ!と過激なほど主張する本間らの戦いの中で、四季は「シェルターの外に出てみたい。本当の世界を見て傷つくとは限らない。もしかしたら、私が見える世界は美しいかもしれない。」とセリフる。
愛する余りに囲ってしまう愛。しかしそれは自意識にすぎない。真実はこの目で見て決めるもの。
タイトルの「あなたのひとみにうつらない」の意味を4篇で抽出し更に煮出し濾過したような作品だった。その構成レベルは絶妙だと思う。
今回の井出役の三輪友実と成田役の池田靖浩のキャラクターが素敵すぎる。相変わらず、銀石の斉藤マッチュが魅せる。全体を通して楽しい舞台だった。好みの作品。
満足度★★★★★
応援歌を奏でるプロ集団!
オープニングにヤラレル。ナラクからせりあがってくる20人の高校生。この登場の仕方がまるで暗闇から少しずつ浮き出でる勇者のようだ。目に入った完璧なるその画はきっとこの先記憶に残ると思う。そして椅子を巧みに使っての角度90度ずつ移動する彼らの情景の見せ方。素晴らしい演出だと思う。野木萌葱という女性、天才じゃないかと感心してしまう。当日のパンフレットには「太宰治を読んで『こいつぁ、相当、優しい、男だぞ』と思った。」とある。で、「ああ、そうか、男はみんな、どこかしら太宰治なのだな、」とも感じるのだ。そう感じる野木も相当優しい女だな。とワタクシは思うのだ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
森に囲まれた木造校舎の中の男子高校生20人。そこにはイジメもありそれぞれのポジションもあり、誰かと繋がっていたいという切なる想いもあり、自分を見てほしいという自意識もある。思春期という、大人と子供の狭間でモガク18歳の旬を描いた物語。
ソイツを苛めることで優しく出来るという他者との繋がりを求める酒巻、気を遣われながら苛められてると察している十枝。仲間から下に見られてると更に下を見つけねえとやってけねー。というポジションを気にする輩。時には死にたいと思ったり、家族が今里の家に借金をする光景を同級生の今里に見られて毒舌を吐く高井。だけれど20人は夏の川に泳ぐ河童のように無邪気に無心に悪戯に戯れる。悪戯に興じる彼らはただただ、我侭で強情で傲慢な子供に過ぎなかった。
しかし、一つの事件、高井が同級生の財布を盗んだことをきっかけに、ゆうやが森に入ってしまう。つまり自殺だ。ゆうやは高井をかばっての言動と、誰からも見られていないという鬱の心から森に入ったが、最後に今里と話した後に森に入ったことから、今里の心にゆうやを助けられなかったことへの後悔と闇が蔓延ることになる。19人は個々の手に懐中電灯を光らせ、闇が続く森に入りゆうやを捜索するも、ゆうやは見付からなかった。
このことが19人のそれぞれの心に巣食い、時々尖ったナイフでちょんちょんと突かれるように思い起こされ癒されることはなかった。やがて・・・、36歳になったそれぞれは弁護士やら、医者やら、刑事やら、数学者やら、役者やら・・・とそれぞれのポジションで活躍するも、大人の世界はそんなに甘くないことをも表現し、そのことがこちらの心にもズシン!!と重くのしかかり、「そうそう、現実ってのは綱渡りのようなもんだ・・。」なんて共感しつつ、彼らは未だにゆうやの闇を拭い去ることは出来なかった。
だからこそ、彼らは同級生を思いやり相当に優しく接する。そうしなければ、いつ、自分も彼らも上流の方にある心というダムが決壊して濁流と化すかが解らない、自信がない状況なのだ。彼らの血はそういった闇の想いと共に、三本締めで自分自身にも皆にも「ガンバロー」と励ます。このシーンと死んだはずのゆうやが登場する場面や、18年前の彼らと現在の彼らを交差させながらの演出は錆びた鉄の匂いが感じられるような懐かしい演出だった。
最後にゆうやが今里に向かって話す場面「俺はもう祈ることしか出来ない。堂々と幸福を求めて欲しい。この先この国には俺たちの黄金時代など、ないかもしれない。だけどきっと勝てる、確信してる。俺たちが駄目になる理由なんて何もない。それまで悠然と力を磨いておけばいい。だからさよなら。命あらばまた他日。元気でいこう。元気で行こう。絶望するな。では失敬。」
こうして今里は苦しみの淵から解放される。
ここでの20人は全員が太宰だった。死んだものも生き残ったものにも、そしてこれを観たものへの応援歌だった舞台。
明日に希望を持ち、もうちょっと頑張ってみるか、と思える舞台だった。素晴らしい!
三本締めの最初に、何で「よーお!」って言うか知ってる?
あれ「祝おう」っていう言葉から来てるんだってさ。
そうして植村の音頭でクラス全員による三本締めで幕が閉じる。
元気で行こう。絶望するな。では失敬。
満足度★★★★
巨人が憂うもの
劇場に入るとそこは既にファンタジーの世界。「不思議の国のアリス」に登場するようなキャラクターが観客の座席まで誘導したり、キャラクター同士の会話でもって、既に観客を劇中に引きずり込む演出は流石。更に舞台は「巨人の国」のなんだかエロちっくなセット(ニョロニョロ)といい、舞台の手前に設置された生演奏スペースが目に飛び込んできた時にはワクワクしちゃった!
スペシャルライブはアコーディオンユニットの「momo椿*(ももつばき)」の会。
天使のような澄んだ声で歌う物語歌は叙情的であまりにも美しかった。
相変わらず、衣装がファッションショーのさま。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
フリーターのヤスシは、日々の生き方をいい加減に暮らし、ある時はネットで自らの歌を金の目的の為にサイトに登録していたり、詐欺まがいの行動をしたり、家賃を滞納したりしていたが、それらの事に対して、まったく罪の意識なんてなかった。
ある日チャイナガールのジョカと出会い、一目惚れするも、ジョカはかつて住んでいた街を巨人の涎で溶かされてしまった被害者だった。そんなことも知らずにヤスシは大家の外野が持参した肉じゃがを食べてしまう。この肉じゃがこそが、巨人族からの罠で、ヤスシはクロノの陰謀に加担する形になってしまう。人々をコントロールし溶かしてしまおうとするクロノらはヤスシの歌で巨人を復活させ、沢山の涎を採取し、人々を溶かそうと企む。
一方、大家の外野は、遥か昔に神に逆らい、地獄に幽閉されたはずの巨人族・クロトの母親だった。巨人族の因習をも含め「夢のヨダレ」を街に垂らし人々を溶かそうとしているという恐ろしい陰謀の為に外野が歌うシーンと、外野にコントロールされているヤスシが外野の模写をして歌う場面の情景は独特の臨場感があり、おとぎの世界さながら、魅せる。そして酔わせる。
しかし、なかば正気を失ってクルクルと彷徨い、狂いそうになった磁場をジョカの正義が軌道に戻すというお話し。終盤の大家のセリフ、「巨人が地上に出てきてくれればいい。人間は殺し合いをしながらこの世に害をもたらす。だから罪深い人間を溶かして殺してしまおうと思った。そして鏡で未来を覗いてみたかっただけ・・。」が心に沁みる。
人々が生きるということに対して、「もっと真摯に見つめ合うよ。」というような作品だったような気がする。伊藤の作品を観る醍醐味は、劇中使われるセリフの美しさにあると思う。今回は音楽劇ということだったが、その素晴らしい音楽に消されてセリフが聞こえなかった部分がひじょうに惜しい。更に架空の巨人像があまりにも幼稚だったのが、この芝居の妖しさを割り引いてしまったようにも思う。要するに影だけでも充分に想像できる範囲内だったように思うのだ。
優しい巨人たちのお話。
満足度★★★
落ち着くところに落ち着く
オープニングのダンスと導入音楽が素敵だった。幕引き前のダンスは滑稽ながら、バランスの悪い霜月こと島根のダンスには顎が外れるかと思うほど笑った!
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ホームレスを潜入取材するという使命のジャーナリストは潜入したものの、ホームレスにも色々な事情があることが解る。ホームレスたちと関わることで本来の人間としての行き方をも見つめなおすジャーナリストと、ホームレスの中にも、利害関係が生まれ、慈善者だと思っていた炊き出しの男が実は偽善者だったとあぶりだした作品。
終盤のダンス大会に出場することで、日々死んだように暮らしてたホームレスらが活き活きとする場面はベタ中のベタなシーンだけれど、そこそこ笑いも随所に見せて全体的にはコメディだったような気がする。それぞれのキャラクターの立ち上がりは面白かったものの、長すぎると感じた。
そこそこ笑える展開と島田の薄気味悪いチアが見もの。ここでの見ものとは動物園のパンダみたいなミセモノのこと。笑
満足度★★★★
アドリブ満載!
三宅が発するアドリブで出演者の面々がドギマギする仕草が可笑しい。今回は水野真紀がイジラレテ下を向いてる姿が実に愛らしかった。真紀ちゃんっていいよねー。料理はプロ級だし。欠点なんてなさそう。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
イワシ信仰のカルト教団に入っている水島(水野真紀)は、冴えない遺伝子を持ち会社でも浮きまくっている春風の遺伝子欲しさに、彼をたらし込んで教団に誘い入れようとするも、公安の潜入捜査によって阻止されマインドコントロールから放たれる。という筋。
ここでの教祖役が三宅。公安らの面々が公務員というぬるい環境を甘んじて受けてる、いわば公務員の代表のような人材。笑
一種の社会風刺をしながらも笑いという絶対の中で公務員に対してのきついマグナムをかましていた。笑
序盤から終盤までの笑わせかたは 絶妙で、その笑も大衆を意識したコメディだから、年齢を問わない笑い。流石に プロを感じた舞台だった。
中盤、渡辺と東のお歌が導入されるが、はっきりいって聞きたくない歌声だ。実に下手なのだ。心底から下手なのだ。むしろ、春風亭昇太の歌が良かった。照れながら一生懸命に歌う姿に感動して手から血が出るほど拍手しちゃったわさ。
大衆的コメディ。
満足度★★★★
ちぐはぐさがおもろい!
案外、大衆向き。劇中のセリフのほとんどが英語。しかも中学英語レベルなものだから、誰にでも解る。日本人って中学、高校、大学と英語を勉強してる割には、すらすらと話せる人って少ないでしょ?そこいくと、中国・韓国の俳優たち、ってか韓国人って英語は普通に話せるのだから、アジア諸国からしたら、日本人って不思議なんだろうな・・とも思う。
たしかに異文化コミュニケーションなんだけれど、日本人が発する日本英語とのかみ合わなさが、憎らしくも可笑しい。。コメディ。60分勝負!
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
場面はシチミの留守にシチミが管理するハウスでの~びのびとパーティーやろうぜ!なんて企んで友人を勝手に呼んでしまう。さあ、今からパーティーだーーー!!なんてパッションかましてノリノリなシチュエーションなはずだけれど、一人の中国人女性が「アンネの日記」なんか読んじゃってソファーでくつろいじゃってる。日本人なら、ここで空気を察知して部外者はコソコソと社交辞令なんかをのべながら、部屋の隅っこのほうから立ち去るのだけれど外人はそうはいかない。
ここで日本人勢は「プリーズ!」なんていいながら、体の仕草は「出て行って」なんて表現してるのだけれど、外人には日本人のそんな感情は通じない。「私のことは気にしないで」と言いながら居座るガイジン。日本人勢と外人勢の英語が勘違いを極める。笑
こんなチグハグな状況が延々と続く中、ヤクザの姐さんみたいなシチミが突如、帰宅しちゃったからさあ、大変!慌てる留守番組み。聞けば飛行機がフライトできなかったから帰宅したとのこと。
シチミの知らない人たちを隠すわ、見付かるわで、シチミがそのド迫力でもって「とっとと家へ帰りなさい。」とシンプルな英語でもって言い放つのだけれど、ユリカがパスポートを3つも持ってナニ人にも成りすませる厚顔には、もう笑うほかない。やれやれなコメディ。
どうやら全員が幽霊だったらしい。
満足度★★★★
初見の劇団だったけれど
とんでもなくふざけた劇団だな、って思った!(^0^)
その世界観はアニメ的。だからワタクシ好みの作品だったけれど、笑いのスパイスはどちらかというと、わははははwwww---という笑いではなく、思わずブハァアーー・・っと噴き出してしまうような笑い。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
本宮が経営する治療院「夢工船」は本宮が開発したという、体にゴムチューブを巻いて病気を治すという。のっけから手や身体にチューブを巻いて登場した本宮は少女漫画に登場するような芸術風のソース顔のおっさん。かと思えば、そのあとに上等のフロックコートに山高帽子、ステッキ姿で忽然と現われた慇懃な紳士風の兼良。そして忘れてはならないのが、佳代ことオバQみたいな種族の雑種。笑)
もうこれだけのキャラクターを確認しただけで、ワタクシの脳みその中にあると思われる磁場が完全に狂いだして、クルクル、クルクル・・と右に左に回転しながら、時には一回転も二回転もしながら、めくるめく回ってしまったわけさ。
その後に登場するキャラクターらも、殆どがアニメ風で、ゴムを巻いたりアイロンを背中に押されたりしながら、治療というよりも、虐待みたいな風情になっちゃってるのだから、いやはや、まさに脳内磁場は樹海レベル。
更に宇佐美が登場すると、本来なら本宮の弟子になるはずの宇佐美が、その強引なまでの話術と独特の教祖のようなしゃべり口調で他を制するというか、圧倒されて、本宮が完全に狂いだして自ら弟子になってしまうという、ヘンテコで可笑しな芝居だった。
でもって観ているワタクシたちは、あれよあれよと言ううちに、「オバQ」を観てたんだか、「パタリロ」を観てたんだか、はたまた、「お蝶夫人」を観てたんだか、解らなくなって、「え?ここはどこ?」なんて気が付くと、シシ神さまの森に迷い込んで、この空間からは脱出できない。なんて世界に連れていかれちゃう訳よね。
夢のような世界。
夢だけど、夢じゃなかったぁ。笑
満足度★★★★
コメディでしょ、ねえ、そうでしょ。
って言いたくなるほど、面白い!個々のキャラクターらの癖というか、相手をなぶったり、ボケかましちゃったりとコメディにも色々あるけれど、ダークコメディみたいなナリ。
舞台のセットにも工夫があって、違う場所で起こってる場面を襖からの出入りで見せる。実に楽しい舞台だった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
犯人の元カノを、きちゃない昭和初期風のアパートで張り込む刑事らの物語。ここで登場する刑事らの癖のある人間像が愉快千万!アクションもないし、大げさな笑の渦もないが、ほとんど会話だけで成り立ってしまうようなコミカルさ。刑事らは大真面目に会話してるのだけれど、一つ一つのセリフが絶妙に面白いんだよねー。
見返りを求めるジュニア刑事の十勝とその上司・澤木との人間関係にも笑えたし、大村とその上司との関係の描写も見事だった。場面はアパートの中の刑事らの情景と県警での情景、十勝が助けなかった被害者とそこに勤める「亀の恩返し」風な女子との絡みを織り交ぜながら、押入れの襖を一つのコマの違う場面の入り口にして展開させていた。上手い!と思う。
終盤、十勝が駅構内で助けなかった事案について上司から「警官にむいてないんじゃないか?」と休暇をだされてしまうシーンがあるが、これを被害者のせいと責任転嫁し、己の非を認めたくない十勝は被害者に会いに行った場面で幕を引くが、この部分の後の展開を想像すると、本当に恐ろしいと思った。
以前、観た公演「空気正常」でも鉱山の穴をキーワードにして穴の外と中を巧みに表現していたが、板垣はこういった展開の仕方は群を抜いてると思う。脚本も面白いが、その巧みな演出にはいつ見ても、ニヤリ!としてしまうのだ。
満足度★★★
ちっさなバーでの大きなお話
下町っぽい裏路地の一角にあるビルの地下に「風紋」という、ちっさなバーがある。ここを舞台としての公演だったが、キャストらの演技があまりにも近くで観すぎたせいか、アラも目立った公演だった。
本はとてもいい。。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
不在の父親の代わりに留守を守ってバーを営業する娘・てい。ていの父親の借金の返済をせまる暴力団ら。バーの客と思っていた輩が内閣調査室の人間だったり、ソ連のKGBだったり、はたまた、CIAだったりと、暗躍する男たちが、このバーに集ってくる。ただの事件とは大きくかけ離れたこれらの状況の粗筋は、ていの父親・海野博士が研究していたものにあった。それは、世界沈没説。
北村そうの「最後の寂しい猫」じゃあないけれど、雨は40日40夜降り続け、この先も40月40年降り続け、やがて世界は沈没し海の底に沈むムー大陸のようになってしまう。迫りくる人類の危機に怯えながら、海野博士はこのバーを「ノアの箱舟」として潜水艦を秘密裏に作っていたのだった。名前はヤマト。
これらを知っていたていは、父親の死後、海底人間として生きられる薬を父親から授かり、更にこの潜水艦の乗組員である限定4人とともに生きる。という世にも恐ろしく壮大なお話。
ファンタジーのようなアングラのような寺山修司の本に似た情景だった。基本的にこういった物語は好きだ。今回は実験公演とのことだったが、キャストらの実力をもうちょっとレベルUPして欲しいところ。役者の演技に差がありすぎるのだ。吉本(暴力団)を演じた岡崎の、あのツラがまえで普通の職は無理だろうな・・。と、同情してしまったほどのヤクザ顔。(笑)
満足度★★★★
寒い国から来た魔女とは、
アネットのことだったのね?アネットこと、ミケは・・、っつーても猫じゃあないです。しかし、どちらかというと猫科でしょうな~。笑
エキゾチックな顔立ちと華やかさがある。そして彼女のダンスシーンはまるで外国映画を見てるような美しいシーンだった。
こういったダンスなら、舞踊の関して無知なワタクシだって素晴らしい!!と絶賛出来る。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
国どおしの争いの中、生まれたばかりの世継ぎの王子を守るために日本の深い森の中の別荘・泉子邸に逃げてきた大尉ら。その王子をこの別荘で守りながら育む親代わりの人たち。序盤、戦闘服をまとった二人が赤子を抱えてこの別荘に逃げてきたシーンから始まる。この二人がアネットとカラスだ。実は二人は敵国同士の将校だったが、王子を一目見た敵陣のアネットはこの王子を守るために祖国を裏切ってしまう。
やがて・・、殿下と、殿下の身代わりとして育てられた岳人は大きくなって無二の親友となるも、祖国の迎えが来て帰ってしまうまでの物語。合間に殿下の命を狙って送りこまれた刺客らとの格闘シーンもあって舞台をあきさせることなく魅せる。
導入音楽、衣装、舞台装置などファンタジーの世界にどっぷり漬かれるに十分な舞台だった。更に王子と岳人の別れのシーンやアネットと岳人の別れのシーンは泣けた。守るもの。守られるもの。守っていたとばかり思っていたが実は守られていたこと。そんな人間たちの深い愛情に支えられて、すくすくと育った王子を生涯をかけて守り通す将校ら。桜の花に似たアーモンドの花が転々と散り張った深い森は異国の人たちを守るにふさわしいおとぎ話だったと思う。
主役であるミケには、もうちょっと演技力が欲しいところ。また禅一こと山崎のセリフが棒読みの箇所があったものの、個々のキャラクターは濃すぎるほどのインパクトがあって、とっても楽しめた。そうして、今回、演技力に於いても、格闘シーンに於いても、そのたたずまいでカラスこと杉山が魅せた。ひじょうに素晴らしい役者だと思う。
次回の公演も是非観に行きたいと切に思う。