満足度★★★★
「現実逃避のための革命ごっこ」
冒頭の風景が面白い。物語は作家が描くモデルの女を主人公にした小説。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
キャンパスに絵を描くみたいにモデルを眼の前に立てて書く作家。しかし、作家が手にする鉛筆は絵を描くことはない。あくまでもモデルを座らせ彼女を見つめながら妄想を膨らませて小説を描くという絵図。この出だしはナンセンスだけれど愉快で楽しい。
物語は作家がこうして描く小説の中身を描いたものだ。その世界観は「革命」。60年代に疫病のように流行った「学生運動」の様子をハマカワの部屋で「特別召集議会」なる、そのつもりを9人のキャラクターが演じる。登場する言葉は「革命」にお決まりの、誠実で豊かな実りある社会を構築するべく命を投げ出しても意思統一を計り自己批判もしながら、手段と目的が入れ替わらないように連帯責任で遂行すること。
なんつってどこまでが本質でどこまでが本質でないのか曖昧ながら、いざ、爆弾を仕掛ける話になると逃げ腰になる彼等。笑) それでも議会に定番の「意義アリ」「意義ナシ」を連呼させ、やっぱり、そのつもりだ。笑) しかし、その心は現実逃避だ。
そんなぬるい内ゲバ的な集団の中にはやはりお決まりの、裏切り者や飛びすぎて行き過ぎてしまう輩が出てくる。そんな飛びすぎた一人、ハマカワは非現実な行動に走り出し、弱体化した国家権力に対抗するためプラスチック爆弾を仕掛けてしまう。「消滅することで存在意義を主張する」という。そんな突飛な行動に驚くリーダー。そんなつもりはなかったからだ。しかし爆弾は仕掛けられた後だった。
こんな小説を描き終えた作家は「この世で一番重いものは何だと思う?」とモデルに問い、おちゃらけて「反重力エンピツ」を手のひらで遊ばせていたが、真実は「期待」という最も重いものだった。そう、期待も掛けられすぎると重いが、全く期待されなくなっても、それは悲しい。。
キャラクターの個々のカラーが抜群。特に藤尾姦太郎の演技が絶妙。細かな表情で心理状態を読み込み、魅せた。相変わらず秀逸だったが、2年くらい前からこういった「革命」ものは舞台でも流行りだ。だからネタとしては古いかもしれない。やはり今年ではなく去年観ていたら斬新だったかもしれない。
満足度★★★
殺陣とエンターテイメントショー
なぜか関東よりも関西で絶大な人気を誇るAND ENDLESS。独自の世界観が関西ウケするのだろうか・・。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
猫ナビならぬ化け猫が物語の進行役を担う。
主軸は五右衛門なのだが、どちらかというと化け猫が主人公だ。秀吉の天下取りと五右衛門の生き様を絡めて描写した物語だったが、芝居の半分は殺陣と化す。化け猫が秀吉を助けながら進む物語はエンターテイメントショーとみたほうが正解だろうと思う。
時代劇というよりは、いつものように、お遊び部分も取り入れアニメネタも絡めながら、シンキングタイム~~なんつってギャグかましてたけれど、今回のギャグはすべりまくって外は暑さ真っ盛りなのに、会場はさぶかった!笑
それでもキャストらが魅せる個々の濃いキャラクターたちは観ていて楽しく、特に秀吉演じる窪寺昭はかなり目立った存在だった。殺陣の度に刀が風切る効果音が大げさなほど場内に響き渡っていたが、これぞまさしくAND ENDLESSの世界観だ。何も考えずに楽しめるショーだ。
満足度★★★
二重構造の脇が出すぎ
「私のSM」ってタイトルどおり、劇中でSMっぽいシーンは確かにあった。苦笑!) ただ、惜しむらくはこれだけ多い小劇団の公演のなか、少しでも他と比較して突出した何か、ベタにならないように・・と脚本家は考えたらしく、脇が出すぎて本来の主軸が薄れてしまったという裏目に。若い劇団には良くあることだと思うが、出来上がった本を更にこねくり回して物語を解り辛くしてしまうということがある。書き手は1~2ヶ月もの間、その本に付き合い練りこんで暗記するほど充分に熟知しているが、一方で観客は観劇した90分、あるいは120分で理解しなければならない。イワユル120分1本勝負だ。これ以上これ以下はない。だから、評価の高い、そして観客から支持される劇団の公演の殆どが解りやすくベタで感動的なものが多い。欲をいえば、ワタクシのように劇団の関係者でもない一般の観客が半年後も観に来てくれるような芝居を提供して欲しいと強く願う。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
高校生の頃の恋愛から始まり、勘違いから殺人事件に巻き込まれてしまった綾を守るために事件を背負い込む恋人の真吾。しかし綾と真吾は別れることになり、綾は星と結婚することになる。だが、綾の姉・礼子を犯して死に至らせたのは真吾と明智だった。
この事件を解明すべく明智探偵事務所に入り込み探る山田きのこ。きのこは綾と真吾がまだお互いに相思相愛でいることを察して真吾の部屋に綾を仕向けるも、真吾は12年前のあの事件から時間軸が止まったままだった。ゆえに真吾には綾が見えない。一方で真吾は幽霊の礼子がそこに存在してるかのように振舞う。つまり、二人の間には違った時が流れていたのだった。
物語はこのサスペンスを主軸に回すが、舞台の右側では縄跳びをしたり、コンチとめぐみの恋愛バナをしたりと緩く笑わせるシーンはあるものの、構成の練りが甘いせいか、あってもなくてもいいような場面の連続。むしろ、しっかりと主軸一本で勝負したほうが解り易かったと思う。
終盤の二面での表現は右側で行われている「101回目のポロポーズ」があまりにも出すぎてしまった為、左側で綾が真吾や礼子の思い出を破壊して封印した場面を見失う。という結果に。この左の綾の破壊のシーンがこの物語の極めつけだったはずだ。惜しい。それでも全体的に緩く可笑しい場面はあり楽しめた。
相変わらず手塚けだまのコミカルなセリフがインパクトがあって素晴らしい。彼女の独特の雰囲気は既に確立しているようで役によってぶれることはない。注目の女優だと評価したい。
満足度★★★
パンを与えた民衆
おフランスでは、パンがなければお菓子を食べればいいじゃないの。なんて言葉が歴史に残る中、本能中枢劇団では、フライヤーを通して観客に「パン持参」とお願いするなど世の中は混沌としておりますが・・・、
主宰 西島明曰く。「ぼくはただ、秩序だった物語には観客としても飽きているので、シーンを「物語ること」に代わる「部分」や「カケラ」のように並べ、わからなくても眠くならない舞台を作りたいと思ったのです。
そのためには、マンジュウをわきの下で暖める女や、氷をつめたランドセルに顔をつけて涼む男などを登場させ、舞台と客席が体臭や体温のイメージを互いの中枢神経を通して共有する必要がある、と本能的に思っています。」とのこと。
確かに物語りはカケラのようなコントもの。そのコントはコメディか?と問われたら失笑してしまいそうな、まんま苦笑!とか、失笑!の世界観。観客の感性で好みが割れる芝居だと思う。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
緩くてバカバカしいコントの連打。その打撃は馬鹿笑いとは程遠いゴロ球。そんなだから、ストローの袋を吹いて飛ばしたり、テディベアだと言って、北海道の木彫りの熊を重鎮を抱きかかえるように登場させたりと、ナンセンスな笑い。殆どが何の根拠もないような短編の集りだから、万人受けはしない。だから、これを観て心が震えるような感動とか、落涙とか、そういった物語から受ける感銘は何もない。
ワタクシ自身はこれだけの芝居の本数を観ているが、秩序だった物語を観客としては全く飽きていない。そんなだから、わからなくても眠くならない舞台を観たいとはあまり考えていない。観客に解るように眠くならない舞台を作って初めてプロの作り手だと認識するし、そうあらねば自己満足で終わってしまうからだ。
究極、作り手は観客を喜ばせ満足させてナンボの世界だと常日頃から思っている一人だし、また、観客あっての劇団だと思う。この劇団の表現方法はコントとして、「まあ、ちょっと観てやるか。」くらいの生ぬるいナンセンスコメディだから、これを観て失笑しユル楽しい世界には違いないが、それだけだ。。
で、当のパンは何に使ったかだが、舞台でちょっと一回だけ使用した程度で、残ったパンはたぶん、スタッフと役者らが喰らうはずだ。これこそが本能中枢劇団の喜びではないか。パンがなければ・・・なんて不景気はどこ吹く風なのだ。笑
満足度★★★★★
あとから生まれてくる人たちに
このタイトルの意味どおり、信仰戦争に巻き込まれた人々がこの戦乱の時代を生き延びていくためにどんな風に生きたか、どんなことを強いられ、どのような知恵をもたなければ生きられなかったかを、戦争に生きる庶民の姿をとおしてブレヒトの時代精神が持つ希求の貴さを問いながら訴えた物語。
確かに、中学生・高校生にも観て欲しい作品でした。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
戦乱の中、肝っ玉おっ母は3人の子を連れて小さなホロ車を引きポーランド、チェコ、バイエルン、イタリアなどを転々としながら行商をしてその命を繋いでいた。この戦乱の世を生き抜くためには人間は肝っ玉を持たなければ生きていけない。」そう3人の子供たちにも教え諭し、「体だけは大事にしろ」と口を酸っぱくして言ってきたはずなのに、息子のアイリフとスイスチーズは半ば兵士に騙されて軍に希望入隊してしまう。
やがて、戦乱の世はそれぞれの兵士たちにも災難が降りかかる。良かれと思って行動した結果が思わぬ方向に誤解を受け、酷いことに二人の息子は虐殺されてしまう。その間、息子を助ける為におっ母は賄賂を画策するも、その駆け引きに手間取って最愛の息子が殺されてしまうシーンはあまりにも残酷な場面だが、戦争というバケモノは人間の理性も崩すものなのだろう。200グルデンの駆け引きの為に失った命。この間、何度もキャストが歌うシーンがあったがイヴェットはもっと練習したほうがいいと思う。歌唱力がないのだ。
そんな最中、娘のカトリンだけはおっ母の言いつけどおり、おっ母の行商を手伝っていた。カトリンは言葉を発することが出来ない障害を持っていた為、後に男から襲われ暴力を受けてキズモノになってしまう、更に抵抗した時に額に受けた深い傷が残ってしまうのだった。おっ母は娘をみて、慰めるもこれはもう嫁にやることは出来ないだろうと覚悟を決め、更に行商に励み、戦争を見込んで仕入れに没頭するのであった。
一方でおっ母の留守中のカトリンは3人の敵の兵士が街をうろついている様子を味方の軍に知らせるべく城壁に登り太鼓を叩いて知らせるのだが、このシーンはあまりにも壮絶で美しく感動する情景だ。敵の兵士が「叩くな、降りろ、撃つぞ!」との脅しにも負けず、自らの命を犠牲にして、とうとう街を救ってしまった英雄だった。
こうして肝っ玉おっ母は一人ぼっちになってしまったが、それでも命ある限り生きなければならない。重いホロ車を引きながら身を粉にして行商する姿は天から舞い落ちる雪のなか、マッチ売りの少女を連想させるが、泡のような雪と対比してその足取りは果てしなく重いのであった。
終盤にキャストらが歌う「あとから生まれてくる人たちに」を合唱する情景でヤラレル。この劇団の「戦争で犠牲になる庶民の姿を見せよう」と後世に訴える姿勢を汲み取ってワタクシは沸々と落涙し、感動するのだ。
満足度★★★★★
労働という生きがい
とかく雇用というものは相反することが多い。雇う側と雇われる側には交わることのない主張があるからだ。この物語は働く意欲のある障害者の立場に立って会社側が視点を変えたことで成功した事例だ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語の前半は説明どおり。一人の教師の熱意によって蒲田理化学工業の専務・大森は障害者の吉岡を職業体験、つまり実習として無給で働いてもらうことに同意するも、まだ迷っていた。法の下の平等は理解しているつもりだが、本当に商品が作れるのか?国が作った受け皿がある以上、福祉作業所で働いたほうがいいのではないか?などだ。
一方で吉岡は久我と原田のサポートによって楽しそうに働いていた。その働きは実に生真面目で労働を生きがいとしているようだった。特に久我は自分の妻が熊本出身であったことから生まれてくる子供が水俣病なのではないかと懸念していたのもあって、他人事ではなく親身にサポートしていたのだった。そして久我は吉岡を従業員として雇用してくれるように大森にかけあい、こんなに楽しそうに働く吉岡を障害者というだけで社会から隔離していいのか・・、と交渉する。
その熱意にほだされた大森は吉岡を雇ったものの、ある日、久我と原田の留守に吉岡の働きぶりを確認してあまりにも仕事の能率が悪いことを目の当たりにするのだった。ここで大森はひどく落胆し吉岡を雇ったことを後悔するも吉岡の色に対する識別からヒントを得て吉岡に合わせた視点で取り組んで成功する。
こうして蒲田理化学工業は次の年も障害者を受け入れ急成長するのである。
この物語に登場する住職に吐かせるセリフが素敵だ。
「人間の究極の幸せは働くこと。生きることで必要なものは、4つある。それは
①愛されること。
②人に褒められること。
③人の役にたつこと。
④人に必要とされること。
①は両親から得られるけれど、あとの三つは働くことを通じて得られるものだ。この職場には人間の幸せが詰まっている。
ああ、やっぱ労働はいいなー。そういえば、働いてる人ってキラキラしてるよね?ガンバって働いて稼いでエンゲキ観よう!そう思わせてくれるお芝居だった。途中、何度もウルウル(;;)して観てた。キャストらの演技力は勿論のこと、本が素敵だ。
そう、ワタクシ達は素晴らしい芝居を観て、明日も頑張ろうって気持ちになれる。ワタクシにとってエンゲキは必要不可欠な生きがいだ。
満足度★★★★★
ベタで解りやすく楽しい!!
実際、労働派遣業の現場の経験者という作家が描いた本だけあってリアル感むきだしの物語。登場人物のキャラクターが実に可笑しい。どうしたってあんな輩、採用しないでしょ!って人物もすんなり採用されちゃう、云わばボランティア満天マウンテンのグッドウィル王子支店長。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
王子支店内勤の社員・支店長こと福居、同じく内勤のバイト・早稲田出身の堀野、同じく内勤の赤一点・奥村が仕事する王子支店では派遣員として登録している現場外勤の5人が居た。彼らはガテン系、元引きこもり、家出組など雑多な人間の集合体のようなものだ。笑
単純だけれど、いかにも使いにくそうな彼らを福居がことごとく上手く捌いていくさまがお見事。言い方次第というけれど、確かにそうだ!笑
彼らの中には夢や希望を抱き、その実現の為に空いてる時間を有効に使おうと派遣に登録する者、はたまた、何になりたいかが解らずとりあえず登録している者。様々だ。だけれど彼らは時としてふと振り返り、自分の人生をどう思うか?なんて不安にもなる。将来の希望が見えないからだ。そんな不安定な感情と能天気な感情を入り混ぜながら派遣に携わった彼等が働き、会社が無くなるまでを再現したような物語だった。
コメディと捕らえていいと思う。そのくらい可笑しくて楽しい人間模様。キャストらの演技力はどなたもしっかりしていて、きっかり魅せる。お勧め。
満足度★★★
喜劇バージョンを観た。
「夏の夜の夢」原作戯曲をそのまま上演した「喜劇版」。この戯曲は知らない方はいないと思うので筋は割愛。そして今回で活動休止するというヤマト。主宰の渡辺は「天幕旅団」というユニットを新たに旗揚げし、12月に公演予定とのこと。
ですから、今回が見納めかもしれない。。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
コミカルでテンポの良いセリフが続く中、ワタクシの観た回はキャストの噛みが目立った。そりゃあそうだよなー、セリフは早口、しかも長い。普段、ゆっくり静かに話すワタクシなどはそのテンポに耳が慣れるまで数分はかかる。笑
今回はバルーンタイプのスモッグにワイヤーを入れた可愛いらしい衣装で妖精らしさを演出し、全体的にファンタジーさを醸し出していた。早口セリフの中にコミカルなジョークをかんなり沢山、挿入してあったが、何故か観客は笑っていない。たぶん、聞き逃したか笑いのテンポがずれてしまって笑えないのかも知れない。その繰り返し。
つまり、よくよく耳をかっぽじって前日にはふわふわの耳かきでもって手入れをし、たまには夜のネオンがキラメク「耳かきサロン」なんかへ通ってくっきりきっちり垢を落とすのもヨシ。更に欲をいうならヤマト見納めのため身も心も清らかなる聖水でもって洗い流し、霊験あらたかな気持ちで粛々と拝見するもヨシ。
満足度★★★★
本音で戦う
もっとコメディ色が強くてはちゃめちゃな舞台かと思っていたが違った。一般人には裁判所なんてとんと縁がないが、わりに取材に基づいた構成だったと思う。
トラブルを抱えて裁判所にやってくる人たちのキャラクターもメリハリがあって面白かったし今時のツイッターでのつぶやき相手を200人の友人と思い込む軽薄さも露呈させながらコミカルに描写していた。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
正義の味方をきどって弁護士になったものの現状のどうでもいいような争いを目のあたりにし夢と希望と理想は現実とは違う、なんて落胆した新米弁護士は、先輩弁護士によって真の弁護士とはなにか?を教えられ成長する弁護士の物語。
愛しながらもお互いの思い込みによって離婚を決意し慰謝料を請求する妻。ホストに入れあげた客がホストに騙された金額を損害賠償請求する女。弁当に竹輪が入ってなかったとこれまた訴訟するクレーマー。対人関係が苦手でネットに逃げ込んだ男がMIXIやツイッターで会話が弾み結婚を決意したものの破棄されたと訴訟するネット男。
それぞれのキャラクターが集って訴訟する事件に重大な事件はない。本音で話し合えばむしろ殆どが近所で解決しそうな問題だ。これらを題材にホストに騙されたという西田華子がどこにでも首を突っ込んでは、相手の気持ちもお構いなしに聞きだすさまはおばちゃんさながらの風景で可笑しかった。彼女のキャラクターがあってこそのコミカルさが突出した場面だ。笑
終盤、まとまる人間関係はまとまり、あるいは訴訟を取り下げ、一方でやり直す夫婦もあったが、7年前に執行医のミスで妻を失った男の裁判で執行医に「慰謝料を払え」と判決を出した裁判官が人の一生を左右してしまう判決に「誤りがあったのではないか?」と苦悩していた様子も織り交ぜて、コメディだけではない内面の深さも加味されていた。
この事件がきっかけで医者を辞めて楽に生きられるネットに逃げたのが野沢だった。しかし、いざという時に誰も見方になってくれないツイッターの200人の友人もどきの態度に目が覚めて今度こそは生身のよりよい人間関係を築こうと思うのだった。
全体的に大爆笑のシーンはない。ないがそれぞれの人生をコミカルに描写していた。観客を「傍聴席」として巻き込んでの公演は実に楽しかった。全体的に上手くマトマッテたような気がする。
満足度★★★★
クサイシーンはあったものの
全員に配布するパンフレットがとにかく豪華。公演の際に1000~1500円で販売してるようなパンフレットだった。キャストらのそれぞれの舞台出演の履歴が紹介されていたが、ワタクシが4公演以上観てるキャストは二宮さよこと斎藤佑介だった。
どのキャストも素晴らしい演技をしていたが、その中で冴えわたっていたのが宮川三郎役の山下平裕だ。彼は「かいぶつのこども」の時よりも秀逸な演技力を見せていた。
ちなみに実際の過去の映像を流すシーンは見ごたえがあったが、近日撮った映像はあまりにもお粗末な出来。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
時代の波とはいえ不条理と過酷な時代の為に犠牲になった特攻隊員らの物語。
場所は知覧。軍の食堂として認可された冨屋食堂のおかみ・トメは明日の命も保障されていない特攻隊員らを我が子のように可愛がり隊員らにとって母代りになっていた。冨屋食堂には毎日のように隊員らが集まりここを癒しとしていたが、彼らの中にはお国の為に命を捧げるという使命になんら疑問を持たない輩とそうでない輩がいた。
集団心理というのは少し間違えると思わぬ方向に流れていくのが世の常だが、同じ釜の飯を食い同じように汗を流した体験は一体感、連帯感の醸成には効果的なのだと思う。ひとを高揚させ感激させ、情動的にさせる。その場の誰かの指示や命令に反射するように従うようになってしまうし、成らざるを得ない世の中だった。
国が軍が国民をコントロールしてしまったように特攻隊員らも「大切な人を守るため、この美しい日本が永遠に続いて欲しいから、自分の身を犠牲にする」という想いの中、一方で「特攻という愚策をもってしなければこの戦争に勝てないということなのか・・。」と疑問視する滝本。
そんな中、特攻団長は「最近悪天候を理由に飛び立っても戻ってくる輩がいるがそれは断じて許さない。例え天候不良でも戻ってくるな。もののふの魂を見せろ。日本男児の心意気を見せろ。」と視界が見えなくても戻ってくるな、犬死にをしろ!と命令する。
そうして、続々と特攻隊員らが飛び立つ時期が確定していく。やがて遂に宮川も明日、飛び立つという。「未来の日本人は俺たちのことを忘れないでいてくれる。おばさん、自分は蛍になって必ずここに帰ってきます。」と言い残し、約束通りに蛍となって食堂にやってくる。というお話。
物語自体は素晴らしいのだが、部分的な映像や、終盤の蛍のシーンがクサイ。もっと違った演出方法はなかったのだろうか?それでもこういった作品はずっと公演し続けて欲しい題材だ。
満足度★★★★★
寂しいうさぎ
序盤のコミカルな滑り出しからコメディか?なんて思ったのも束の間、終盤では人間の弱さを露呈した人間模様の芝居だった。どのキャラクターも死にたいなんて心の中で叫び声をあげながらも絡まった糸を解せないさまは哀れで悲しい。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
トイレというよりも便所といったほうがお似合いの場所でふんばる義弟。どうやら慢性の便秘でイキバルあまり血も出ちゃうような画。笑) その光景の中、彼の父は友人の葬式で、家出した妻が友人の家族のように振舞い喪服姿で接客している様子を見て、改めて妻の不貞を確信しショックを受け「もう潮時だ!」なんて言って自殺する。しかし死に切れない。死体のように吊る下がった物体は便所の中で生きている。笑
一方で映画監督を夢見る夫は家庭を顧みず、いわば夫の家族の生活を支えるためにカラオケ・スナックで働くその妻。母が家出してしまってから引きこもりになってしまい母の面影を追いながらも義姉に横恋慕する義弟。
家族は父が死んだと思い込み死体のそばで何事もなかったかのように暮らし続けるが、これらの情景はそれぞれが抱えた闇から逃れるための現実逃避だ。弟と妻が関係して出来た子を養子に出した過去、家庭を顧みない夫に孤独を感じ、その穴埋めに奔放にセックスする妻。妻の不貞を知りながら見ないふりをする夫。
誰もが悲しく切ない。やがて・・苦しくて仕方がない心のうちを妻は夫に吐き出すも、まともに相手にしない夫の前で鋏で腹を刺す妻。バラバラになった家族はついぞ結びつかないまま、弟はつぶやくのだった。「ああ、母がいたあの頃は良かったな。初めて食べた蟹カマが旨かった。」幸せだったあの頃の残像を懐かしんで幕は引かれる。
序盤から終盤近くまで殆どコミカルに引っ張る。字幕と役者の表情を確認しながらの目線はあっちこっちと忙しいものの、とにかく面白い。終盤になってこの物語の悲哀を一気に見せ付ける演出は素晴らしかった。どのキャラクターも寂しいあまり現実を見ない。そのほうが楽だからだ。今を生きてる現実に自信がないさまは人間の根底に潜む弱さだろうか・・。
満足度★★★★★
めちゃんこおもろい!
露天のシーンから。。
もう始まりから笑える。初見だったけれど、こんなにもオモチロ可笑しい劇団だったんだね。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
油川温泉・清風館にやってきた青田ファミリー、つまりヤクザ屋さんは組の金を持ち逃げされてすっからかんになってしまった。なんとも情けないヤクザ屋だった。笑
だから旅館で散々豪遊したものの、220万円の支払いが出来ない。そこで清風館主催の芝居が劇団の都合で開催出来なくなってしまった代わりに青田ファミリーにやらせようと清風館の番頭は考えた。これなら既に完売してしまったチケット代を払戻さなくて済むからだった。
青田らは泣く泣く引き受けるも「清水次郎長」の公演と聞いて俄然張り切りだす。しかし、青田組の親分の演技がかなりマズイ。そこで学生の頃、演劇部だったサダ吉を演出させることになるも、親分子分の師弟関係が邪魔して親分に演技指導が出来ないサダ吉。しかし、親分の娘に中に入ってもらいキャストとしてではなく「たちまわり指導」として本領を発揮して欲しいと娘に言わせる。しぶしぶ納得した親分と子分らの練習風景がとにかく可笑しい。
そして・・ついに本番の日。セリフの合間に本音のツブヤキが入り、この部分も実に可笑しい。ヤクザの弱音みたいな情景も映し出され切るわ切られないわで、バカバカしいほどはちゃめちゃなのだ。
そんな中、どーにかこーにか無事に公演は終わったものの、サダ吉の学生の頃の演劇部の連中が観に来ていたことを知った青田組は「お前には帰るべき場所があるだろ。」とサダ吉をカタギに戻そうと一世一代の大芝居を打つ。という筋。
ここの劇団の笑がワタクシ好みだった。物語の筋立てもとにかく緩くて可笑しい。でもって終盤に一人の男の恋の成就のためカタギに戻させる展開も粋ではないか。サダ吉が物語り全体のナビ役としてストーリーを回すのも実に解り易く大衆向けだと思う。
満足度★★★★
思い出という宝物
登場するキャストの人数と物語が吉祥寺シアターでは広すぎたように思う。舞台に空間が目立った為だろうか、美術そのものにも何となく、あっさりしていたように思う。これで舞台のキャパが狭ければ霞がかったさまや、雲の演出をドライアイスか霧で演出できたはずだ。惜しい。べク・ソヌの演技力は際立っていた。更にイワナガ役の龍田和美が飛ぶシーンは周りの風のささやきも聞こえてきそうなほどの演技で美しかった。鷹かと感じたほど。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
世界を見守る神々と人間のお話。ある日イワナガは一人の人間の赤ちゃんを拾う。「人間を飼っていると変になる」という理由から神が人間を育てることは禁じられていたが、さだまさし似の裁判長の「経過を報告するなら宜しい。」との判断で飼うことになる。これがミカだ。
ミカはすくすくと育ちながらもいつしか母と自分の違いに気づいていく。いつまでも年をとらない若々しい神々。一方で確実に年齢を重ねていき死を迎えるミカ。つまり神時間と人間時間の経過の差には大きな隔たりがあり、神は20年前のことを「さっき」といい、ミカは「ずっと昔」という。
そんな中、神々は人間が眠るという行為を羨ましく思う。神は眠る必要がないからだ。「神が人間を飼うと人間になりたくなる」という感情も露呈させながらミカを媒体に人間の一生を淡々と綴っていく。この演出は意外に説得力のある場面だと思う。人の一生はなんて短くて儚いものだ、という戒めにもなり、自分の人生を改めて見つめるきっかけになるからだ。人生が何年あるかは人それぞれだが、人によって生きられる長さが違うということはこの世の大きな不条理だ。
だからワタクシ達はいつも自分自身が好きでいられるように生きなければならないのだ、とも思う。
こうしてミカは99歳で静かに眠るように人生を全うしたのだが、ミカにとって神々に育てられたという現実はきっと不幸だったに違いない。ミカが神々に残してやったものは、思い出という宝物だ。
序盤、撒かれた伏線をきっちりと終盤で回収し美しいながらも道徳的な物語だったと思う。観終わった後に色々考えさせられた舞台。ちゃんと生きてるか?と問われたら、解らない。。
満足度★★★★
ゆる楽しい!!!
どうでもいいような館長・加藤の挨拶から始る。「夏休み演劇フェスティバル」の一発目。要は助成金で成り立ってるわけだ。パンフレットには今後の演劇の予定が載っていて観たい公演もあった。
で、サーカス。まだ夏休みになってないという事もあって、大人達の連れも多い。ソレもそのはず、みんな童心に返って表情がキラキラしちゃってる。笑)
舞台は全員が特徴のあるピエロ達のパフォーマンスだったが、実に愉快だった。
会場も巻き込んで観客を楽しませようとする姿勢は流石!
何も考えず愉快で楽しいひと時だった。
満足度★★★★★
永遠のライバル
今年の女子バージョンが実にいい。幼馴染だった二人が大人になるまでの描写を一つの物語として展開させるが、二人の過去にあった出来事を回想するシーンも狭間に入れて楽しくて面白い。だけれどお笑いだけじゃあない!物語はワタクシ達観客が「そういえば・・あるある!」なんて納得させられるところ、本も構成も今年はやヴぁいくらい上出来だった。
お勧めの舞台。
以下はねたばれBOXにて。。
ネタバレBOX
リカコとユカリは幼稚園からの同級生。現在は32歳になったが、同じように独身だった。彼女らは仲悪いどころかお互いがお互いを「大嫌い!」だった。理由は幼稚園の頃に遡る。二人は仲良しだったがとある事件をきっかけにお互いの家族をも巻き込んだ仲たがいをしてしまう。ここで登場する二人の母親の見栄の張り合いがイッチャッテル!笑。 しかも、二人の赤ちゃんの情景も緩くて楽しい。。
そんなリカコとユカリはなぜか、大人になっても腐れ縁のごとく似たような状況で隣に引っ越してくる。ここまでの物語は殆どアニメのような展開でとにかく笑う、笑う、笑う。。
やがて二人は自分達の幼い頃を振り返って、お互いを嫌いになった原因は相手ではなく自分にあるとやっと気づく。更に幼かったあの頃に自らの記憶を捻じ曲げるような誤解があったことも気づく。
こうして彼女らは幼かったあの頃の他愛もない遊びのなかで仲良く無邪気に過ごしていたことを思い出す。そして今やっとあの頃と同じように元の仲良しに戻れるのだった。
笑いあり、ホロリ・・・あり、郷愁あり~ので美味しい観劇だった。だからただの笑ではない。お笑い上等!の世界。
満足度★★★★
「ねこになった漱石」の続編
物語は漱石がロンドンで神経衰弱になった場面から。
芝居が始まるまでいつものようにキャストらがパンフを売ったり、観客と会話しながら会場を温めておく。その姿勢は長い間、変らず素晴らしい。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
「坊ちゃん」を読んだことのある方が観れば、「ああ、そうそう、あのシーン」なんつって思い出し、なんとなく懐かしいような雰囲気にさせられる。漱石の小説を脚本化し舞台化したものは数多いが、中でも「坊ちゃん」と「吾輩は猫である」はミュージカルが良く似合うと、ワタクシは個人的に思っている。
今回も音楽劇に相応しい題材で、ピアノ演奏が序盤から終盤までコミカルにテンポ良く入り、楽しい舞台だった。女性の意識変革の激しい時代の情景や正岡子規、菅野すがこ、石川啄木などのエピソードを絡め、ほぼ本の内容を忠実に再現したような格好だったが、夏目らがベースボールで遊ぶシーンは夏休みがずっと終わらないことを願う少年らの風景を空想して、微笑ましかった。
更に舞台のバックを開放すると公園の樹木やその後ろに控えたビルの隙間が夏の夜空に浮かび上がり、これまた美しい光景だった。そんな風景をさえぎるように菅野がママ母から受けた心の傷がその後の菅野の生き方に大きく影響した行は「100年後にまた会おう!」と散った菅野の愛おしく切ない瞬間だった。
小説の中の「坊っちゃん」は権力に負けたが、ここでの菅野は権力に屈せず命を投げ出した場面はむしろ、漱石が主役ではなく菅野が主役だった。
全体的に見ごたえはあったが、もうすこ~し上演時間を削れる場面もあったと思うがいかがでしょうか?
満足度★★★
ふりまわされる
実母に。笑)
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
曽我久仁子の追悼式に集った子供たちと知り合いら。彼らは曽我が死んでいないことを田所に知らされる。その田所は「今回、皆様に集って頂いたのは曽我の資産30億を生前贈与したいとの意向を受けて誓約書に皆様のサインが欲しい。」とのことだった。
しかし、曽我と実況中継している田所の通信で南フランス在住の曽我が死んでしまったかのような会話が成り立ってしまう。ここでの田所のフランス語の会話があまりにも雑。更に世界共通の英語も話せないようだった。これって痛い・・。そして数分後、今度は先ほどの通信は間違いで曽我は生きているという。しかし当の曽我は資産30億をある事業の制作費に回すので財産分与の話はなかったことにしてくれというのだ。天国から地獄に落とされる瞬間だ。笑
つまり久仁子という彼らの実母は自由奔放な女で相当な事業家だが、子供たちや夫や周りの人たちを振り回す性癖があるようだった。その度に彼らは被害を被ってきたがやはり実の母は憎めない。そんな一見、どーしようもない母親はとあるコミュニティのサイトで渡が撮るビデオをピエールというHNでしっかり見ていた。という筋。なんだかんだいって母親は彼らより一枚も二枚も上手だった。
ちょっと感じたことをかきこ。本の作りが少々、雑なような気がする。30億が手に入ることを知った彼らの感情の描写が薄い。逆に30億が手に入らないと知ったどん底の表情も。人間て、なかったものがあると錯覚し、頂けると思っていた資産が貰えない、と知ったときの落胆ったら、あんなもんじゃないと思う。もっと物語りに突飛な展開があっても良かったように思う。そしてナビ役の田所役・松本の演技があまりにも不自然だ。ここでは田所が重要な役割を果たしているのにだ。ちょっと残念。一方で釜風味、ロザンヌの中世の貴婦人のような衣装は良かった。今回の出演者の中で彼が一番愛くるしいのは一体どうしたことか?!笑
満足度★★★★
ドンキホーテを彷彿とさせる
戦争は終わってるのに、桜木の中では終わってない軍人魂と他の日本人らの物語。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
南太平洋の小島スタボラでは戦闘を知らずに緩やかに暮らしていた日本人達がいた。ある日、彼らは終戦を知り日本を目指して船出する。しかし船は太平洋の真ん中をグルグル、グルグル回っているだけで一向に日本を目指している気配がない。そんな中、軍人だった船長の桜木だけが日本に帰らず船ごと太平洋の真ん中で散らせようとしていた。
日本に居た頃の桜木は優秀な軍人で、語学が堪能だった事が仇となってスパイ容疑をかけられていた。後に容疑は晴れたが、軍隊に戻れなくなった彼はスタボラ島に配属されたのだった。そんな経緯もあって軍で培った軍人魂は未だ抜けることなく桜木の中で培養されていた。マインドコントロールされた精神から「日本が負けるはずはない。そんなことがあって良い筈がない。この船こそが日本だ。共にいざ、潔く散ろうじゃないか、国の為に死ぬのが誇りだ。」などとのたまう。
挙句、現地人のハイマと迫田を自分の意のままにコントロールし配下に置いてしまう。小さな軍隊の出来上がりだ。笑
そして眼の前に見えた孤島を敵と間違えて機関銃を連発させる。前の時代の幻想にへばりついて己を見失い、真実を見ようとしないさまは、まるでドンキホーテのようだった。
このように日本に帰還するまでの情景を、今は日本で緩やかに暮らす桜木が息子の嫁を相手に昔話として聞かせる。セットは中央に置かれたマットのみ。なのに太平洋の大海原を危なげに泳ぐ船の画や孤島スタボラの情景が見事に想像できるのはキャストらの演技力と脚本力、照明の技に尽きる。
劇中、ウケ狙いでアドリブの小ネタを披露していたが、見事にスベッテいた。苦笑!
現代の家族構成、マサオ(実息子)との確執も織り込みながら、息子の嫁と桜木の会話が微笑ましい。
相変わらず菅野の演技力に唸る。そしてエリ演じる木下裕子の凛とした静けさの中に潜めく気丈さは「日本の女」の代名詞のようだった。キャストの中にはセリフ噛みが目立った輩もいたが、それをカバーするキャストらの全体的な演技力が勝ったチームだった。
満足度★★
ワタクシには合わない
今回、この舞台を観てはっきり確信してしまった結果に。なんだか書き辛くてUPがこんなに遅くなってしまったが、とにかく笑えなかった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
正直申し上げてコメディとしては弱すぎる内容。個々のキャラクター立ては、まあ、それなりだが、キャストらの吐くセリフがとことん笑えない。
申し訳ないけれどネタがあまりにも古臭い。
脚本家の田中は若いのに何故こんなに古臭いコメディしか作れないのだろうか・・・?と疑問にさえ思った次第。物語は喫茶店での従業員のレンアイ話。キャストらは一生懸命それなりに演じるのだが、会場はしーーーん。一部の関係者の仲間みたいな輩が笑ってる程度だった。
満足度★★★★
Aバージョンを観た
当日配られるパンフレットは見逃さず読んだ方が良い。「3億円事件」の容疑者を追いながら、剃神というデカの人生を描写した作品だった。とにかく丹念に練り込まれた本が素晴らしい。これに加味して個々のキャスト陣のキャラクターの立ち上がりや演技力、アクションは見事だった。
オープニングからの勢いは留まる事を知らず、舞台セット、音楽、照明、伏線の回収などプロとしての職人技に圧巻された。しかしだ・・、惜しむらくは、これだけの事件性と演技力があったなら何もおちゃらけたコメディな部分は必要なかったような気がする。あくまでもストレートプレイに徹して、その実力を誇張してほしかったのだ。むしろストレートプレイのほうがこの場合、馴染む。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
東芝府中工場のボーナス約3億円を積んだ現金輸送車が、偽白バイ隊員によって強奪された事件。しかし犯人の逮捕には至らなかったものの、名刑事・平岡八兵衛は捜査の指揮をとりながら犯人に目星をつけていた。「あいつが犯人だ。必ずボロを出す。とことんまで食らいつけ!」と剃神に指示を出す。
結果、剃神は四六時中、タクシー運転手の草野に貼りつき監視し張り込む。云わば草野のストーカーと化した剃神の視線に怯え、また多数の人々から嫌がらせを受け精神的に追い詰められた草野は自宅から一歩も出られなくなってしまい鬱となる。
そんな中、いつも視線の先にあった草野の娘と剃神は自然な形で恋愛感情が芽生えてくるのだった。しかし二人の感情にはいつも不安が付きまとう。容疑者の娘・草野小夜と刑事。彼らの恋は不安定な心とお互いの環境が障害となって常にぶれていたのだった。
二人の恋に亀裂を入れるように草野の妻が他界してしまう。これを機に草野本人は剃神を呼び出して「ずっと見張ってても何も出てこないよ。俺は犯人じゃない。疲れた、何の為に生きて来たのか、人生の意味が解らない。君にプレゼントをあげるよ、時間という名のね。小夜は妻の連れ子だ。犯人は小夜の実父だよ。」と言ってその場で自害してしまう。
父が残した小夜宛ての遺書によって小夜と剃神の愛は完全に破壊され剃神は小夜によって民事裁判にかけられる。草野の自殺関与への容疑だ。この時に剃神の過去や剃神の行動も暴かれるのだった。
一方で剃神と城山は幼馴染だったが、革命家だった剃神の父は機動隊員だった城山の父に闘争の最中、殺されてしまう。働き手を失った剃神家は一気に貧しくなり、そして剃神は城山の父親に金の無心をするようになってしまう。これが起因となって城山の父は廃人同様となってしまう。
こうした因縁の中でも常に城山は剃神を慕い、剃神を目標として生きて来て、そして自らも刑事になる。終盤、因縁の二人が和解するシーンは序盤に撒かれた伏線を美しくも見事に回収し、その毅然とした情景は男同士の哲学を見せられたような気がした。更に剃神の裁判が無罪になると、小夜の剃神への押さえてた感情や蟠りも一気に氷解し水が溢れるように素直に愛を確信できるようになる。
草野を追ってた長年の空白を平岡が退職した今、剃神は自分の人生の空虚と捉えていたが、小夜との愛に置き換え小夜と共に生きる決意をする。
あまりにも本が素敵だったので作家に会ってきたが、「君が暴力団として出演されたほうが迫力あるんじゃないの?」と告白しそうになった面構えでびびった!笑
「天は二物を与えず。」
納得した瞬間だった。あまりにも神の言葉が的を得ていた。素敵すぎる!笑
草野を演じた五十嵐康陽の演技力は見もの。