満足度★★★
美しい舞台でした。が・・・
舞台装置や照明などはとても美しく、秀逸なシーンがいくつもありました。
しかし、シーン間の物語のスケール感などがうまくつながっていかず、作り手が意図したであろう物語のふくらみには至らなかったのではと・・・。
ネタバレBOX
いくつかの本当に美しいシーンがありました。
また、しっかりと密度を作り上げたシーンもありました。
たとえば審判の場面など、ぞくっとくるほどの力があって・・・。
しかしながら、それらのシーンに至る伏線がしっかり張れていないと言うか、必然に欠ける物語の流れが秀逸なシーンを支えきれていないように感じました。
ファンタジーの世界ですから、いろんな矛盾をつっこむのは野暮というものでしょうけれど、その世界を背負う主人公たちの想いを浮かび上がらせる裏づけが薄いのはちょっとつらい。
悠久の時間を背景に物語を見せるのですから、たとえば、主人公達の愛情にもっと細微な背景がないと、観ている方は物語の結末をを受け取るに十分なほどにのめりこんでゆけないかと。「二人は愛し合っていた」という「概念」やその姿はしっかりと作られているのですが、物語のスケールからするとそれだけでは弱い感じがするのです。
また、舞台に流れる時間を何億年という尺の中の「今」へと導くには、シーン間のつながりが脆弱であるようにも感じました。作り手の視野の大きさには魅力を感じるのですが、たとえばインナーチャイルドなどの舞台に見られるような観客の視座をぐぐっと引っ張り上げるような仕掛けの精緻さやダイナミズムが感じられず、料理番組でいうと、作り方を説明されて次のカットで完成品を見せられるような感じがして。
だから、音楽の使い方などにも、そこはかとなくあざとさを感じてしまうのだと思います。
役者達にはしっかりとした切れがありました。メリハリの利いたお芝居が随所にあって・・・。
また、幕や梯子の使い方などもとても秀逸だったと思います。
照明も、息を呑むほどに美しい部分が何箇所もありました。
でも、比喩や洒落としてではなく、「愛」と「人類の存亡」を天秤にかけた物語です。
さらなる密度を舞台に醸成するような仕組みがないと、この物語は作者が抱いたであろうとおりに観る側に膨らみきれないように思うのです。
PS:当日は特別ということで、momo椿のライブがありました。
アコーディオンの響き、すごく良い・・・。
端正な歌詞と
華やかさをもった2台のアコーディオンの音色の不思議な一体感。
聴き惚れてしまいました。
満足度★★★★
実直で見応えがある
美容業界の内側を知っているわけではないのですが
その業界の
「美」を作るというアーティストとしての側面と
ビジネスとしての泥臭さの両方が
丁寧に描かれていて
非常に興味深く観ることができました。
ネタバレBOX
個々の人物描写がすごくしっかりしていて
キャラクターの性格だけではなく
仕事のスタンスまでが次第にあからさまになっていきます。
それがすごく説得力をもっていて・・・。
仕事の仕組みを作る人とその中で動く人、
マネージメントとライン双方の思いが交差する
終盤に常ならぬほどの説得力を感じました。
プロダクトアウトということが
現実にはどういうことかを肌で感じることができて
感心してしまったり・・・。
(会社の若手社員研修にもつかえそうなほどの説得力)
一方で仕事の部分がきちんと見えるからこその
人間としての質感も
より実感をもって伝わってきます。
ひとりよがりからやってくる
嫉妬やあせり、いらだちを綺麗に整った笑顔とお世辞で隠す
「いとすさまじ」な感じが
なにげに常態化しているあたりが
観る側を釘付けにして・・・。
役者達がそれぞれのキャラクターを
ガッツリと背負って・・・。
そこから溢れる個性がすごくおもしろい。
笑えるというより興味をさそう面白さをかもし出していて。
古川氏脚本の切り口のするどさと、
役者の力みのなく深い表現がうまくかみ合って
実直で見応えのある作品に仕上がっていたと思います。
そうそう、私が観た回は、終幕前の津留崎さんが
見事に剣玉を成功させていらっしゃいました。
そこから、
さらに作品のニュアンスが広がったようにも思えて・・・。
すごっ!っと思うと同時に、
なにかとてもラッキーな気分になりました。
神っぽいものの恐ろしさ
舞台にのせられたのは
文学と神。
不気味さの丁寧な表現から、しっかりと人の脆さや内心の闇を俯瞰させる、秀作でありました。
ネタバレBOX
流行らないお蕎麦屋さんの兄弟が
現世利益の宗教にはまっていく姿と、
神を内心に宿らせた妹との
似て非なる心の移ろいを
ハセガワアユムは丁寧に描いていきます。
兄弟が宗教に取り込まれていく姿に
粟立つような不気味さがあって・・・。
自由を標榜し、蜜の味でたらしこんで
蟻地獄に惹きこんでいく
宗教の振りかざす正義に底知れぬ恐ろしさを感じて。
その一方で、
神を抱いた妹の内心に潜む
神への恭順とそれゆえの破壊への衝動も
浮き彫りにされていく。
小説を描く者の
内心と受け入れられる表現との折り合いの部分も
うまく取り入れられていて・・・。
信仰の内側にある無と有のそれぞれに翻弄されていく
人の姿に目を見開き
その概念をしたたかに具現化する
ハセガワアユムの手腕に息を呑んだことでした。
たっぷり観ました
ボリューム感いっぱい。
それでも量より質という感じがするのが凄いところかと・・・。
いくつもの心が浸潤されていくような時間に出会いました。
不可思議で説得力のある質感
どこか戯画的で、
でも、溢れてくるものと満たされないものが
ナチュラルに浮かび上がって、
さらにはぬくもりと膨らみが醸し出されていきます。
力まずに観ることができて
深くいろんなものがやってくる。
尺もちょうどよく・・・。
役者の力がしっかり生きた作品でもありました。
ネタバレBOX
舞台は結婚相談所、
冒頭のちょっとコミカルな感じで
すっと導かれて・・・。
人と人のつながりが可視できるこという虚構が
すごく自然に入ってきます。
結び付けられるだけの
表層的な男女の関係と、
ちょっと計り知れない心の内側。
そのさらに向こうに、
結びつける側の人々の情の厚さと薄さのようなものが
とてもクリアに伝わってくる。
それを教条的でなく
ウィットを持って観客に伝える手法もすごくよくて。
役者にもキャラクターの奥行きまでしっかりと
観客に届ける力がありました。
そうか、家族か・・・・!
じっくり作りこまれた柿ワールド。
これまでの作品に比べてスピード感は若干減じられている印象がありますが、その分重すぎず抜けのあるおどろおどろしさが醸成されていて・・・。
そこに暮らす家族の姿が浮き彫りになっていきます
役者の凛としたお芝居に目を見張り、魑魅魍魎が跋扈するような山村の空気を描写する力に瞠目し、いくつもの突き抜けたウィットに引き込まれ・・・。
あっという間の100分間でした。
ネタバレBOX
終演までは舞台に展開する表現たちの
切れと鮮やかさに目を奪われていましたが
トークショーを観ているうちに
中屋敷一流のデフォルメが次第に解かれて
作品の核にある家族という感覚からの
ある種の切なさに浸されていることに気が付きました。
因習や近すぎる人間関係などの肌触りを
今様の描写に染め替えていく
中屋敷作劇・演出の非凡さに瞠目。
河童に物語を語らせることや
主たる物語からの逸脱、
パロディ感に溢れた休憩などからも
作者の内心の移ろいが
細微に伝わってくるようで・・・。
お腹一杯楽しんで、
あとから霧が晴れるように見えてくる
作り手の内にある物語の原風景に
息を呑みました。
余談ですが、マリオ音のネタがたまらなくおかしくて・・・。
前述の数秒休憩などの仕組み系、
役者の表現、素の力技、
アドリブなども軽重とりまぜて、
いろいろとあとを引く部分が満載でした。
満足度★★★★
成り立って・・・、深い
劇場に入った瞬間には、
舞台装置を観て
演目を間違えたかと思ったほど。
しかし、終わってみれば
南河内漫才一座風の「S高原から」に、
しっかりと浸潤されておりました。
役者の力にもあらためて瞠目・・・。
ネタバレBOX
テイストは本当に関西・・・。
当然静かな演劇という雰囲気ではありません。
むしろXX新喜劇を観ているようにも思えて。
でも、それが表層だけの笑いに収束するような舞台には
終わらないのです。
サナトリウムの中のどこか麻痺したような時間の流れが、
透明感ではなくはっきりとした色を持って伝わってきます。
医者や看護士のええかげんな雰囲気に笑っているうちに
戯曲のコアの部分にしっかりと心を捕まれている。
時間の冗長でなく単調が伝わってきます。
静かに訪れる死を見つめる感覚の乖離に息を呑む。
役者達のお芝居がしっかりと作りこまれていて、
あまり静かとはいえない演劇の色に負けない
奥行きが生まれていくのがすごい・・・。
ただ、淡々と沈むように切ないのではなく、
笑って過ぎる時間にメリハリがあって
その上でせつないのです。
しっかりと戯曲の世界に浸潤されて
違和感がないのが違和感というか・・・。
なにかこのテイストにはまりこんでしまいました。
満足度★★★★
力に満ちた、けれんに魅せられて
がっつり作られた舞台上で、
標榜されたとおりの
SFホラーが展開されていきます。
お芝居にダレがなく
高い密度をもった舞台から目が離せない・・・。
観客を取り込む力に溢れた
エンターティメントでした。
ネタバレBOX
物語の骨組がしっかりと組まれていて
観る側がそのまま舞台の世界に持っていかれるような感じ。
いきなり舞台の上部からあらわれる登場人物たち、
その臨場感にまずやられた。
その後も観客をドキドキさせるような外連があり
観客に息をつかせぬ物語の見せ方があって
舞台に醸成された空気が
観客の好奇心というか探究心を
どんどん煽っていきます。
「それ」に侵された役者たちが作り出す
さまざまな違和感がすごくよくて、
救助にやってきた側の感覚と
観客に湧き上がる思いがしっかりとシンクロしていきます。
舞台装置も目を見開くほどにがっつり作られていて
役者の芝居が映える。
音響や照明にもしっかりと切れがありました。
「それ」から逃れる側の秀逸なお芝居が醸し出す恐怖や緊迫感が
もれなく観客に伝わってくるのです。
物語の根底となるロジックに説得力があるから
後半の舞台にがっつりとふくらみが生まれて・・・。
ほんと、見ごたえのある
エンターティメントでありました。
満足度★★★★
蒸留されたグロテスク感
タイトルよりあっさりした口当たりなのですが、
ぞくっとくるような感覚が内包されていて。
「グロテスク」という感覚が
いくつもの色に染まって
やってきました。
ネタバレBOX
表からみると
学習塾という
教育の場でのモラルハザードのお話。
とあるできごとで塾長が死んで
その場を支配していた「たてまえ」の鎖がほどけていきます。
距離感や価値観の相違からやってくる居心地のわるさを経て
建前を超えて垂れ流しになる先生や生徒の本音が
露骨に現出してくる。
そこに漂う人間臭さが、
先生や生徒、男女関係のモラルと入り混じって
漂ってきて・・・。
「グロテスク」というのは
人間が建前で隠しても漏れ出てくる
本性からやってくる
腐臭のようなものだと気づかされる。
淡々としたエピソードの積み上げから
舞台上に
言葉では言い表せないような
獣臭を伴う気配が現れて。
好奇心と嫌悪感と、
見る者自らの省みるような後ろめたさをブレンドしたような感覚に
とりこまれてしまいました。
満足度★★★★★
逃げ場がない豊かさ
そりゃ、野田演出の大竹しのぶさんですから・・・、
覚悟はしていました。
ロンドンバージョンも観ていたし。
にもかかわらず、予想をはるかに超えて伝わってくる情念に
もう、なすすべがありませんでした。
ロンドンバージョンよりも
言葉の制約がない分
その情念がまっすぐ舞台からやってくる・・・。
物語の構造に目を奪われ
舞台上でなされる表現の豊かさに目を見開き・・・・。
抜けるような青の透明感はロンドンバージョンが上だけれど
その情念の色は今回が勝っていたような。
ネタバレBOX
極刑の示唆や処刑のイメージが強めに描かれたのは
裁判員制度への意識があったのかもしれません。
自らが抱えきれないものが溢れた時
冷厳に罪としてそれを裁くことができるのか・・・
昨今の裁判事情を鑑み
考えてしまいました。
それにしても、物語の奥行きが本当に深い舞台です。
源氏物語の借景が見事に生きて
大竹しのぶ演じる女性の
うちから沸き立つような情念に
ぐっと心を奪われます。
主人公のなかにあるビビッドな想いと
表層の少し荒んだ彼女の実像の
それぞれに超越したリアリティがあって・・・。
不倫相手とのビビッドな日々が
浮き立つように鮮やかで濃密。
それゆえ修羅の目覚めに
必然が生まれて・・・、
しかも育つ・・・。
囃子方の音響が
観る者の感覚を有無を言わさずにこじ開けて・・・。
役者たちそれぞれにも
高い円熟と切れが同居していて、
演劇表現の頂を見る思いがしたことでした。
繊細で強い
PPTで柴幸男氏が触れていたように
お芝居としてはそれなりに難しさをもった前提・・・。
でも、物語から実直に湧き上がってくるものが
その難しさを凌駕して。
さらには役者にも、舞台を支え切るに余るほどの
しなやかさがあって。
繊細で透明感があって、
でもしっかりとしたモチーフをもった
北川演劇に浸潤されました。
お芝居に深く入り込むためには
早めの入場がお勧め。
ネタバレBOX
開場と同時に舞台ではお芝居が始まっています。
前方にいても、その内容はところどころしか聞こえないのですが
舞台の時間はしっかりと動いています。
そしてあわててやってきた最後の面接者の部分で
客電が消えて本編が始まる。
その時点で滑走を終えて
物語が飛び立つ感じ。
すっと主人公のキャラクターや
物語の設定が入ってくる・・・。
脚本が本当にしたたかで・・・。
タイムトラベルという題材はPPTで柴氏がおっしゃっていたように
矛盾が生じやすい、舞台としてはハードルの高い題材なのでしょうけれど
それを感じさせない流れにすっと乗せられて・・。
心やさしい物語では決してないのですが
人が生きるぬくもりが伝わってくる。
かつて強い偏見を持たれていた伝染病を借景にして、
当パンの言葉のとおり
人が切り捨てたものや選んだもの、
さらにはその選択の中で
生きていく姿が透明感をもって描かれていきます。
その姿に不要な甘さがないから、
でも、ビターであっても
人が持つ想いをゆがみなく表しているから
主人公が「古事不干渉」から解き放たれて、
自らが選択した世界で生きていくことや
主人公によって変わっていく周囲にあざとさがない。
舞台に溢れだしてくる「人が生きること」そのものや
切なさの先にあるものが
単なる諦観ではなく、
生きる意志との綾織であることの瑞々しさに
じわっと心が熱くなりました。
役者のお芝居にも
舞台を深くしても重くしないような
スムーズさと切れがあって、
北川ワールドをがっつりふくらませて。
よしんば、時間旅行というロジックが
構造的に矛盾を含有していたとしても
そのようなものは
舞台の秀逸な質感に埋もれてしまうのです。
満足度★★★★
きっちりとした味付け
知り合いの方から
情報をいただいて観劇。
良い意味での手作り感もあるのですが、
舞台の要がきっちりと抑えられていて
芝居のみならず歌にしても踊りにしても
味がしっかりと締まっている感じがすごくよい。
色合いの違う5短編の一つずつに
丁寧な味つけがなされていて
観ていて飽きませんでした。
ネタバレBOX
ふたくちめの「マッチ売りの少女たち」の出来が一番良かったかと思います。
火をつけるところにどきっとするような説得力がありました。
ラストが想像できても、そこに至るまでに絶妙な重さと明るさがあって。
ふわっと舞い上がってきちっと着地させてくれる感じ。
ひとくちめの「アジミ祭」には
転げていくようなグルーブ感があって。
ちょっぴり下世話だけれど
気持のよい笑いがやってまいりました。
そもそも、あの謝り方がずるい。
至芸というか、もうたまらなくよい。
みくちめとよんくちめにも
楽しはがあるのですが
脚本を超えるような広がりがなかったのが少し残念。
ごくちめ、
人生を俯瞰するような感じに
揺らぎがなく役者の実力が
しっかりと出ていたと思います。
歌もびっくりするほどのクオリディではないのですが
舞台になじむという点では極上。
たっぷりと観客をつかむだけの魅力があって。
ダンスも同じ。
きゅっと締まるところがしまっていて
小気味よい。
また観たいと思わせる力をもった舞台でありました。
それぞれの関係が背負う時間の表現
いくつかの関係が
それぞれに同じ概念で結ばれて・・・。
一つずつの関係の瑞々しさに惹きこまれて・・。
概念も実に小粋なやり方で観客に伝わってくるのです。
ネタバレBOX
PRIFIX3というイベントの中の一作といっても、
瑞々しさに溢れた完成度は
彼らの本公演のクオリティと遜色ありませんでした。
3組のカップルそれぞれに
背負っている時間があって
その現れ方がとても巧み・・・。
女友達の携帯メールでのコミュニケーションがとても秀逸
人妻と男の関係から浮かんでくる不思議な一線、
雨の音に耽美な生々しさがすっと色を失うような感じがすごくよい
どこか心がすれ違い始めたカップルの時間が
したたかに表現されて・・・。
それらを括る、冒頭の部分が、実にうまく機能していたと思います。
役者も抜群の出来で、非常に完成度の高い作品が現出しました。
よくここまで
しっかりとつきつめられた世界があって、
それに縛られない創意を感じて。
よくここまでと瞠目しました。
ネタバレBOX
少しずつゆがんだ舞台や
前方のネット。
冒頭の違和感が解けて
しだいに舞台上の意味が浮かぶにつれて
それらが主宰自ら演じる主人公の
内心やそれを包む皮膚の如く
生々しく感じられて。
他者への偏りに満ちた想いや
自らの記憶への嫌悪といらだち
さらには改竄。
なにかを消し去るシーンや
登場人物のマスクに加えて
取り散らかった舞台をかたずけるシーンにまで
心の揺らぎの、ぞくっとするようなリアルさを感じました。
役者たちが演じる内心のパートのような部分には
出現と継続、消滅のそれぞれに切れがあって。
追い込みきったあと
客席に向かってのラストシーンに
息を呑みました。
コマツ企画の底力をがっつりと感じる
作品でありました。
PS:
アフタートークは
本編のちょっとしたスピンアウトにも思えて・・・。
その前フリてきな
終演後の浦井MCも
すごく面白かったです。
泣ける場面も・・・。
物語的に
Le Decoにはすこしサイズが大きい感じ。
でも、女性たちのビビッドな感覚は
がっつり伝わってきました
ネタバレBOX
素材的には面白いものが
たくさん含まれているのだろうと思います。
ただ、それが十分に出切らないような
制約が目についたのも事実・・・。
二つの場所にまたがって表現されていくような部分が
暗転でつながれるなかで
散漫な印象になってしまう部分もあって。
とはいうものの、女優陣のそれぞれに
美しさの個性があって眼福だったし
女性たちの建前と
本音の気持の出し入れには
迫力がありました。
それぞれが抱えるものや
最終的に心がまとまる部分の心の動きは
もう少し時間をかけてみることができれば
さらなる奥の深さが生まれたような気がします
じわっとやってくるリアリティ
流れるようなスムーズさをもったお芝居なのに
劇場を出て駅まで歩く間に
じわっと重さがやってくる・・・。
黒白でドラスティックに物語が構成されるのでなく、
やわらかい狂気の度合のグラデーションに、
ぞくっとするような今が織り込まれていました
ネタバレBOX
グループカウンセリングが行われる病院が舞台
参加者と医師、看護士たち、
さらには病院の患者たちの姿から
心に抱えた闇と回復の姿が描かれていきます。
参加者たちから浮かび上がってくる
軽い性格障害から
対人障害やボーダーラインシンドロームの兆候、
さらに深い闇を奥底に抱える患者もいて。
役者たちの
心の闇におかされた姿の演じ方には
息を呑むほどのリアリティがあって・・・・。
そこから抜け出せるもの、
抜け出すことをせずにとどまるもの、
出口の手前で後戻りしてしまうもの・・・。
登場人物の変化の過程から浮かび上がる「人との関係性」に
作者の慧眼を通した冷徹な現実が縫いこまれて
観客をとりこんでいきます。
さらには、その闇が宿る先から
白衣組と患者の垣根が外れるところにも
じわっとやってくる生々しさがありました。
初日ということでもあるのでしょうか、
物語の前半のトーンと後半の質感に
若干のつながりの薄さを感じましたが
空間ゼリーの劇団員には
お芝居の奥行を作り出すに十分な密度があって・・・。
斎藤ナツ子が演じる女性から伝わる
心の動きの瑞々しさにやられて・・・。
阿部イズムの表す狂気など目を見張るばかり・・・。
客演陣も
ハロプロエッグの3人を含めて及第点、
彼女たちのお芝居には
さらに広がる余白のようなものを感じました。
人生の一番良い時の音楽が・・・
よしんばそれが男女ふたりであったとしても
そこにはいろんな流れがあるのだと思います。
その良い時に流れる音楽に
ちょっとやられました。
ネタバレBOX
正直なところ
舞台からやってきたものすべてを
理解したとは自分でも思えないのです。
それでも、闘って生を受けてから
やんちゃをして
苦しさや愛情が醸し出すぬくもりを理解して
やがて年老いて灰になっていくまでの
人の姿は理解できたような気がする・・・。
スーツケースから大きく成長したものも
暗示的でうまいと思ったのですが
なによりラジオから聞こえてくる
ラテンの甘くてペーソスのあるメロディーに
やられました。
やがて老い、灰になるまでのその間
音楽に乗って過ごす時間の輝きやいとしさと
その時間が過ぎていくことへの哀感が
すっと心を満たして・・・。
闇の中で、記憶もほとんど失われた中
風が吹くまでの間に通い合わせる想い達にも
心を奪われて・・・。
ふっと自分の人生を鳥瞰し、
その鏡を見ているような錯覚に陥ってしまいました。。
満足度★★★★
いっぱいの夏、山盛りのあひるなんちゃら
この素敵な箍の外し方、
大好きです。
あひるなんちゃら流の突き抜け方、
大満足でございました。
ネタバレBOX
素敵にゆるい感じの導入部分。
主人公のひとことから季節が続いてしまうという
ありえないような設定が、
その場の雰囲気の中で
ありになってしまうところに
あひるなんちゃらの底力があって。
場の雰囲気に
すごくゆるい感じがただよっていても、
個々のキャラクターはぶれなくタイトに描かれていて。
舞台は役者たちの貫く力を持ったお芝居から生まれる
隠し味のようなテンションに
しっかりと支えられているのです。
すてきに方向がずれたキャラクターのベクトルや
絶妙な間の外し方には
まったくあざとさを感じさせないほどの洗練があって
観客は受け身を封じられて
そのまま気持ちよく転がされてしまう・・・。
宿題をやり続けたり、映画を見続けたり
上映されない映画を作り続けたり・・
変化の兆しがあっても、
ちょっと残念な「し続ける」部分に吸収されていく。
その抜け出せなさから
淡いペーソスと不思議な居心地のよさがやってきて。
黒岩さんが舞台に居つづけで
そのことによって
あひる作品のエキスがさらに濃縮された感じ・・・。
あひるなんちゃらの世界にどっぷりと浸りこんでしまいました。
ますますあひる中毒が進行したような気がします。
満足度★★★★
時代の抜け殻をしなやかに
劇団初見。
物語の今に織り込まれた
時代の形骸がすごくナチュラルで
その変容のおもしろさだけで
十分に楽しめて・・・。
しかも、観終わって意外な感触が残って・・・。
しっかりと作品の展開に惹きこまれました。
ネタバレBOX
学生運動独特のにおいが
時代祭のように残されているなかで
今の描き方に歪みが感じられない・・・。
思想とかロジックの重さが
歯止めをすっとばすのではなく
もっと自然な思いが
カジュアルにさえ思える質感で
カレーパーティのスタートスイッチを押すところに
ぞくっときました。
世界で一番重いもの、
あるいは世界にとって一番重いものが
今にすっとマッチして・・・。
友寄総市浪の時代のすくいとり方に
瞠目しました。
役者も個性にあふれ
とても魅力的でありました。
満足度★★★★
長さの制約が良い方に
各劇団30分という制約が
良い方に機能していたように思います。
それぞれの劇団の個性が
がっつり抽出されていて・・・。
時間によって何かがそぎ落とされるのではなく
30分にこめられた密度から
常ならぬ突き抜け感が醸成されているのを感じました。
ネタバレBOX
・角角ストロガのフ
男性のコンプレックスを扱っているのに
女性的な閉塞感を感じてしまいました。
下世話な話の向こうに
心理的に抜け出すことができない色使いがあって。
じわっと残滓を感じつつ
面白かったです。
・犬と串
シュールな前提が至極まっとうに思える
まさかの展開力に瞠目。
芯がまっすぐに通った展開だから
そのまま持っていかれてしまう感じ。
まさかのグルーブ感というか・・・。
この感覚は癖になります。
初見なのですが、これまでの本公演を観ていなかったことが
すごくもったいなく感じました。
「elePHANTMoon」
それをあやす女性の
冒頭の違和感がしだいにほどけていく中
観る者が抱えきれないほどに溢れだす想いのもつれに
抗うこともできずにとりこまれて・・・。
息をつめて登場人物の想いに浸潤されつづけました。
物語の展開に
一瞬立ちすくむような感覚がやってきて
そこからさらに主人公のまっとうな狂気に引きずり込まれていく。
常ならぬ世界に呑みこんだ息がしばらく戻りませんでした。
***** +++++ *****
劇団ごとに
それぞれの色が本当に
しっかり出ていて
しかもカタログ的というかおつまみ感覚ではない
一皿の味わいがしっかりとあって。
べたな言い方ですが
とても楽しむことができました