満足度★★★★★
うわぁあ・・・!!!
圧倒的に面白かったです。
ここまで貫いてくれるだけで大満足だし、櫻井演劇独特の余韻もしっかりと残って・・・。
その余りある可笑しさと、それを支える太くて繊細な想いたちに
すっかり魅了されてしまいました。
ネタバレBOX
3組の男女の会話劇なのですが、
個々のキャラクターが強烈。
女優陣ひとりずつでも
醸し出されるキャラクターには十分凄まじい印象があるのに、
それが個々に観る側の枠を踏み越えて
面倒くさかったり跳んでいたり捻じ曲がっていたりするから
観る側は、もう、良い意味で休む暇がない・・・。
冷静に考えると男性陣も個性が強いキャラクターなのですが
そんなもの、消し飛んでしまうほど。
でも、女性たちもただ節操なく暴れているわけではなく、
きちんとありふれた感情のデフォルメであるところが
この作品の秀逸なところ。
よしんば狂気を漂わせるような雰囲気が醸しだされていても、
そこからあふれ出てくるのは狂気ではなく
恐ろしく切ない男女の愛情の交わりだったり
すれ違いだったりするのです。
きまぐれで甘え上手だったり、
自らを壊してしまうほどに相手への想いが深かったり
一度捻じ曲げないと自分の気持ちが出せないほどに臆病でシャイだったり・・・。
でも、そのあたりをためらいなくぶつけられる男というのも
ある意味冥利に尽きるわけで、
受け止める愛情の奥行きがそこにはあって。
3組のカップルが成立する理が
しっかりと伝わってくる。
キャラクターたちへのデフォルメを支える足腰が
役者達にあるからこそ成り立つ世界なのだろうし、
そのデフォルメの見応えには
ひたすら瞠目するばかりなのですが、
その突き抜け感にとどまらず
それぞれの個性が内包するピュアさが
すっと浮かぶ刹那もとても魅力的。
台詞にまで至らなくとも
舞台を捌ける近藤・川嶋(中川)のカップルがすっと手をつなぐあたりなど
観ていてうるっとくる。
散々笑った後に、
櫻井演劇のエッセンスをしっかりと感じて。
腹筋を痛めてしまうほどの笑いの深さと突き抜け感に翻弄され
でも、舞台上の男と女の想いをしっかりとかかえて
劇場をあとにしたことでした。
=== ===
キャストが変わるということで
公演を前後半、2回見たのですが、
役者それぞれのトーンがしっかりと機能していて、
優劣ではなく広がりとしてその違いを味わうことができました。
ちなみに2度目は大楽だったのですが、
それもあってか
近藤さんのお芝居の切れは
手練の男優たちで固めたシーンの土台を
崩壊寸前にまで追いこむような力にまで昇華していて。
すでにその力量を見せつけられていたにも関わらず、
ふたたび愕然。
笑いながら、一方でその魅力にぞくっときてしまいました。
◎◎☆◎◎◎△△△☆
満足度★★★★
いくえにも、幾重にも・・・
おかしさが重ねられて・・・。
個人的に、ど真ん中ストライクでおもしろかったです。
ワンアイデアのシーンで
観る側を軽くあしらうように引き込んでおきて、
終ってみればフルコースがデザート・チーズつきで供されたような・・・。
特に後半、そこまでで良い加減に満腹させられたところに
「声の出演」の方で別腹までが満たされたような感じで・・・。
もう、がっつりとはまりました。
ネタバレBOX
いろんなものの掛かり方や
切り替え方がぞくっとくるほどに秀逸。
冒頭の物語はしっかりした演劇風に始まるのですが、
そこに「何が出るかな・・・」と有名バラエティの
別のニュアンスが混じりこんで
音楽とともに、しっかりと番組イメージが転写された
切れのよいコントになって。
そこからシーンごとにタイトルが投影されて
コント集のように舞台が演じられていくのかと思いきや・・・。
ナレーションによって後半には
さらにテレビ的なドキュメンタリーテイストが重ねられて。
シーンの一つずつがその場のアイデアに流されるのではなく、
「コントを演じる劇団の公演風景とその裏側」の
良質なテレビドキュメンタリーというベースに
導かれ貫かれていく。
舞台に様々に広がる混乱の描写が
作り手というか舞台上のカオスにならず、
底力と広がりを持ったクリアでダイレクトなおかしさとして
観る側にやってくるのです。
後半、視野が開けていく感じが
曇ることなくクリアに押し寄せてくるから
コンテンツを消化していく観る側にも
よしんばけっこうな消耗や満腹感もあったとしても、
さらに作り手がさらにもう一歩踏み込んでくる感じが
もう楽しくてしょうがない。
それにしても、あのナレーションはずるいです(誉め言葉)。
また、たて横に満たされていく言葉たちのグルーブ感などにも瞠目。
ここまでにお店を広げておいて
冒頭の伏線できっちり物語を制御し落しきる凄さ。
見る方の嗜好に振られるというか
人によってかなり好みの差が出るお芝居ではあると思うのですが
個人的には、がっつりとおいしく
いただくことができました。
満足度★★★★
シーンの強さに惹かれる
シンプルなのにぐいグイと惹きつけられる
不思議な強さが舞台にあって・・・。
ベタであっても観客を引かせるのではなく
前のめりにさせるような
舞台の密度やシーンのつながりの洗練に
魅了されました。
ネタバレBOX
物語自体に驚くような斬新さがあるわけでもなく、
心に染み入るようなものがあるわけでもない・・・。
でも、舞台上の一瞬ずつに観る側を惹きつける力があって、
まるでポップコーンやえびせんを手から離せなくなるように
見続けてしまう・・・。
チープな感触のシーンであっても
舞台上のテンションやパワーがしっかりと作られていて。
シーンを構成する台詞の間や、緩急なども
物語に迎合することなく、
舞台の空気がくっきりと密度を保たれている。
シーンのつなぎも物語を切るのではなく
むしろ流れを勢いづかせる仕組みになっていて。
作り手がしなやかに観客を攻め続け
客席をダレさせないのです。
役者たちのお芝居にも
強弱の弱の部分をあいまいにせず
強の部分を強さで塗り込めないしたたかさがあって。
気がつけば、観る側が、
物語に織り込まれた
核心の部分を
笑いや薄っぺらさに流されることなく
しっかりと受け取っている・・・。
多分いろんな洗練の積み重ねだとも思うのです。
たとえばキャラクターたちの力関係や
序列の変化の語られ方に飛躍や無理がないし、
主人公の「やらされ感」や
悪の集団の女性を追いかけるしつこさ、
さらには女性たちのデフォルメされた想いなども
手を抜くことなく豊かに作りこまれ演じられていて。
ひとつずつのシーンが
よしんば薄っぺらい内容であっても
物語の構成上しっかりと生きていて、
無駄がない。
もっといえば衣裳のメリハリから
音楽、照明、美術・・・、
さらには舞台の外側にある
受付などのスタッフワークにいたるまで
必要なものが十分にそこにあって
余るものがなく機能している感じ。
なにか魔法にかけられたような感じもするのですが、
観終わって、
クリアな充足感がちゃんと残る。
べたな言い方なのですが、
余計な不純物がなく
凄く面白かったと思う。
これから12ヶ月連続公演なのだそうですが
時間を都合してでも
お付き合いしたくなるような魅力を感じる
舞台でありました。
満足度★★★★
全体を染めるのではなく個々を描き出す
決して軽いテーマではないのですが、
そのテーマに引きづられない、
解像度の高いお芝居を観たとき特有の
何かがすっと通ったような感覚が残りました。
ネタバレBOX
多分地場中堅の建設業者。
設計畑から営業に配属になった男の死、
弁護士を介して遺族と会社側での話し合いを軸に
彼のいた会社や家庭の姿が浮かび上がってきます。
社内の一色ではない雰囲気、モラルハザードが常態化した営業の手法、
さらには男の家庭の事情・・・。
それらが実直に舞台に積み上げられていく。
それまでの技術と向き合う仕事から
談合や賄賂といった現場の泥臭さに突然直面させられた男の当惑。
嫉妬やセクハラ、さらにはパワハラといった職場の濁りの質感、
さらには家庭を背負うことの重さや
彼が家庭に求めたものまでが
男を追い詰めていきます。
舞台上にあるものに、
社会風刺的な意図や批判が含まれていたり
思想的なエッセンスが混じり込んでいたなら
もっとずっと重いお芝居になっていたと思う。
しかし、
作り手はその状況にバイアスをかけたり
舞台嬢の空気に色を加えることなく
キャラクター一人ずつを
丹念に描いてゆきます。
会社の上司・同僚や妻にとどまらず、
派遣社員、業者や贈賄先、
さらには妻の弁護士やそのアシスタントにも
それぞれが抱える背景が作り込まれ
舞台上で解からて浮かび上がってくる。
観る側に、様々な共感の断片が積み上がり
その重なりの厚みやボリューム感のなかで
一人の死のリアリティが形成されていくのです。
彼の死を取り巻くものに
ステレオタイプな概念や視点の重しがついていないから、
観ていて不思議に風通しがよく
善悪や正誤の恣意に染まらない。
事実の織り目のようなものがくっきりと感じられて、
だから、彼の死が何かに括られることなく残るのです。
そこにはいたずらに観る側の視野を圧迫しない
表現のしなやかさと説得力があって。
もちろんこれが成り立つのは、
個々の人物のそれぞれの刹那を描き切ることができる
役者たちの力があってのことなのだと思う。
でも、加えて、それらをぶれることなく
ある種のこだわりを持って組み上げていった作り手の力量にも
深く瞠目したことでした。
まあ、ラストの部分には
もう少し作り手の想いが乗っていても悪くなかったかもしれません。
というか、若干のバイアスをかけることで
伝わる部分がさらに鮮やかになったかなとも感じた。
とはいうものの、観終って
ひとつのことに思いをはせるのではなく
様々なベクトルの想いがゆっくりとよぎって。
主人公にとどまらず
登場人物たちひとりずつの生きざまに
心囚われておりました。
劇団のこの数作で感じていた
密度を作り上げる力の卓越に
さらなる武器がそなわったように思えたことでした。
満足度★★★★
物語が生かす役者たち
観ていて、がっつりと楽しいし、
劇団の志も伝わってきて。
十分凄いうえに
さらにはもっと満ちる余白も感じて、
おすすめ。
ネタバレBOX
ある種のグルーブ感が舞台に醸成されて、
ドンドンと惹きこまれます。
役者たちの演技に
とにかく時間を忘れて観てしまう楽しさがあって。
なにか役者が物語を紡ぐというより
物語が役者を生かすために紡がれているようにすら感じる。
そこまでに至るからこそ、
この舞台の大外の枠組みが
ラストの秀逸からがっつりと伝わってきて。
単なるにぎやかし集団ではない
この劇団の志や本質が
しっかりと伝わってきたことでした。
満足度★★★★★
二日にわたって観たくなる秀逸さ
心の隙間がすっと満たされて
ほんの少し歩み始めるようなひとときに
がっつりと掴まれました。
戯曲に、観る側として
役者のお芝居をしっかりと受け入れ得る奥行きがあって、
幾重にも取り込まれてしまいました。
で、一部役者が変わることにも魅力を感じて
2日・3日両日とも観てしまいました。
ネタバレBOX
冒頭、
どこかステレオタイプな
新婚とも思えるような夫婦の会話がくっきりと演じられて。
シンプルにまっすぐ物語に取り込まれる。
縁薄く過ごしてきた女性を取り込む
中近東の見知らぬ王国への
嫁入りの誘い・・・。
嘘に巧みに編み込まれたリアリティが
女性の心の隙間にすっと入り込み、
膨らみ満ちていく。
男の手練と女の当惑が
すっと噛み合うところで一気に引き込まれました。
ほんの少しの踏み出しの刹那に
彼女の歩みがそれまでの実直さから乖離していきます。
騙されたというより
満ちるものに誘い込まれていく感覚が
しなやかに観る側に伝わってくる。
女は揺らぐし、疑う。
でも背を向けるのではなく、
むしろその手の中の刹那を手放そうとせず
守ろうとする彼女に
不思議な実存感が生まれて・・・。
男の言葉にうなずく女に対する
観る側の違和感までが
どこか滅失していくのです。
その男に過去に騙された女性が現れて
見透かしたような口調で
女の歩む先を浮かび上がらせるシーンも秀逸。
2日・3日と異なる役者で演じられましたが
同じ立ち位置に置かれたキャラクターから
異なるニュアンスが滲み出しておりました。
でも、それぞれに、
現実を突きつけるに留まらず
抜けられない女との対比のような達観が
それぞれのキャラクターの色でかもし出されていて。
天明留理子のお芝居からの対比として
結婚による女性としてのプライドの充足のようなニュアンスが浮かび
藤堂貴子のお芝居からの対比では
結婚によって担保される愛情の行き先のようなものが
感じられて・・・。
その違いに驚く。
朴訥とつぶやくように歌われる
「月の砂漠」から伝わってくる
素にされた業のようなもの。一人の女性が抱くコアの重さ・・・。
何度も立ち位置を変えて挿入される
ステレオタイプでどこか実態を喪失し形骸化した
冒頭からの家庭のシーンがボディブローのように効いて
観る側までが彼女自身の世界感に閉じ込められて。
今回は仕事は相応に出来るであろう銀行の女子社員という設定でしたが
初演の主人公の設定は異なったものであったといいます。
この戯曲、物語の芯にある女性に編み込まれた普遍性をいろんなバリエーションで演じることができるしなやかさを秘めていて。
でも、一方でその芯から浮かび上がる女性像は、役者たちの力量で大きく異なってくる気もして・・・。
観終わって、思い返し、さらには戯曲を読んで、
かめばかむほど、秀逸な舞台だと感じたことでした。
☆☆☆◎◎○○☆☆
満足度★★★★
適度で絶妙なメリハリ
今年はゆるさのなかに
きゅっと締まった歯ごたえを感じる会でした。
ところどころに
すっと目や耳を奪うクオリティが含まれていて
とても楽しむことができました。
ネタバレBOX
シリアスすぎるとお正月の香りが飛んでしまうし
でも、グタグタするには役者がよすぎる・・・。
そんななかで今年は、
役者たちの個性をうまく生かした
メリハリが効いた出し物でした。
物語のコントラストを作ったり
数で圧倒したり
要所にきちんと奥行きを持ったお芝居を配したり・・・。
プーチンズやポリスキルなどのパフォーマンスにも
ぞくっとくるような手作りのクオリティの高さがあって・・・。
新年の初観劇にうまく味付けられた
初春のいごこちのよい催しでありました。
満足度★★★★
芯を崩さず広く見せる
コメディ的な色をもって語られる
キャラクターたちゆっくりとした変遷が
不思議な実在感を醸ししていて・・・。
いろんなデフォルメの塩梅が
とてもしたたか。
安定感のなかに広く伝わってくるものがありました
ネタバレBOX
時代の置き方がよく工夫されていて
特に中盤以降、
平板に物語を流していては現れないものが
すっと立ち上がってくる感じがありました。
時代をつなぐ糸のかけ方が
それぞれのシーンの色を消すことなく
しかもキーになる部分はしっかりと固めてあって・・・。
だから時の流れの中で
後悔を感じる部分やその受け入れ方、
さらには時間の変遷とともに変化していくものと
そのままに居座ろうとするものが
とてもしなやかに浮かび上がってくる。
時間が前後する物語の構成なのですが
それぞれシーンの雰囲気の明確さが
観る側にとっての風通しの良さになっていて
様々なウィットや
ちょっとしたバイアスのかけ方が
物語を歪めることなく
観る側に物語の一歩奥までも照らしてくれる。
主人公をタイムトラベルさせる感じに
派手さや嘘っぽさがなく
記憶と現実の端境あたりの感覚で
行われるあたりも上手いなぁと思うのです。
役者たちから伝わってくるものも、
個々にきちんと色があって、
それらがカオスのようなシーンになっても
絶妙にばらつかず混じり合わない。
キャラクターたちの座標のようなものが
上手く作られていて、
舞台全体に奥行きと見晴らしのよさを
一度に醸し出していく。
さくさくと観て、面白かったと思い
気がつけば母娘を中心とした時間の肌合いが
残ってくれている・・・。
派手さはないのですが、
なにげに箸が美味しいご飯を
味わいをあれこれ楽しみながら心地よく完食した感じ。
楽しめたし、
心に残るものもしっかりとありました。
☆☆◎☆△△◎
満足度★★★★
素敵な力技
尺の長さはあまり感じませんでした。
饒舌な語り口が貫かれているから
観客がちゃんとついていける・・・。
いろんな意味で裏側がしっかりとしている作品だと感じました。
ネタバレBOX
舞台装置に愕然・・・。
最初何が起こったのかと思いました。
でも、この舞台装置がすごいのは
単に外連をしているのではなく、
そのあざといまでの動きで
物語を内にたたえるために必要な大きさを
確保していること。
それは、尺の長さにしても同じこと。
物語の現れ方を作るに必要十分な時間が
そこにはあって・・・。
ドロドロ感と醒めた感覚が
しっかりと織りあげられていく。
長くてもスカスカした感じがない。
キャラクターたちの個性も
語られるのではなく
しだいにあるがごとく伝わってくる。
その満ち方があるから
物語の奇天烈な部分が浮かない。
うるさいことを言えば物語の構成にも粗さがあるし
舞台装置も確信犯的に舞台裏を垣間見せたりする。
でも、それらが舞台を荒ませたり冷え込ませたりせず、
それどころか、作り手はその質感を逆手にとって
物語をすっと踏み越え
コアにある登場人物たちの
色を際立たせているようにも思える。
梅舟、堀越が演じる兄妹の秀逸は言うに及ばず
劇団員たちや客演陣それぞれが
舞台上にべたつかず深い印象を作りだしていて・・・。
それが、舞台に不思議になじむ。
終わってからやってくる
時間をしなやかな重みに変えるような
高揚をもった感触に瞠目。
この劇団の突き抜け方が
しっかりと生きた
劇団総力戦の大力作に
圧倒されてしまいました。
満足度★★★★
洒脱で、しかも豊か
7人の作家たちの世界が
一つの料理としてしなやかに取り込まれて。
洗練を感じる舞台から
豊かな言葉たちが光や音、そして仕草にのせられて
観る側の感覚にそのまま伝わってくるのが圧巻。
とても洒脱で満ちた時間に
浸ることができました。
ネタバレBOX
冒頭から、
舞台の息使いに観る側の呼吸がシンクロするようなところがあって。
気がつけば舞台のリズムに
落としこまれている。
7人の作家達の創作が
完成したものというようは
まるで素材のように料理され
観る側に運ばれてきます。
言葉たちが文字として受け渡されるのではなく
パフォーマーたちの動きや
照明の色調、様々な音・、
それらが重ねられ舞台自体の色合いとともに
ダイレクトに観る側の内に入り込んでくる。
その感じがとても心地よい。
舞台上の感覚がそのまま置かれて
舞台そのものに浸潤されていく感じ。
そこには物語があって・・・。
心地よい切れとウィットを内包し
時にはしなやかにデフォルメされ
紡がれていくストーリーたち。
あるいはひと時に込められたニュアンスの描写があって・・・。
言葉の長さ、重なり、ずれ、繰り返し・・・。
動きからあふれるイメージ、刹那の感触、
動作が言葉を生かし、つなげ、
言葉が動作にさらなる意味を作りだす。
次第に世界が現れていくような高揚感。
それらが舞台のトーンとなり
舞台全体としてのテイストに重ねられ
7つの創作は小皿ではなく、あたかも一皿の料理のように
供されていくのです。
味わいは色とともにそれぞれであっても
観る側とまったくの別世界ではなく
観る側が感じているような範疇に
重なりあっていて・・・。
でも、醸し出される世界は
ベタな言い方だけれど、とてもお洒落な感じがする。
昔の言葉から芽吹く時の広がりが
今に満ちてきて心を奪われたり。
日常のひと時が日々のルーティンを作り
やがて季節となり一年の巡りへと導かれたり。
ことばや動作のシークエンスに
観る側のなにかが解き放たれ
共振をして、
なにかを解放していく。
初日ということもあってか
パフォーマンスとして、
昇華していく余地もいくつか感じました。
すべてとはいわないけれど、
たとえば観る側にとって要になるような部分のユニゾンは
もう一歩緻密に作られた方がよいだろうし
言葉の重なりがさらになるリハリへとつながる場面では
もっと精緻に演じられればとは思う。
でも、そんなことがほとんど気にならないほど
引き込まれる。
しなやかで本当に強いつながれ感が生まれて、
観終わっても、しばらく
その時間に浸っていたい気分・・・。
光の色にも語る力があって。
舞台の白を存分に生きる。
音楽が観る側の想いの手をとり
しなやかにそれぞれのシーンの雰囲気に導いていく。
最後までひたすら見続けて・・・。
振り返れば
この作品の虜になっておりました。
満足度★★★★
まどろみの感覚
積み重ねられていく夢たちの
外側に浮かび上がるものが
次第に実在感とともに伝わってきました。
淡くてクリアな「おやすみなさい」の時間を
舞台と共有できたように思います。
ネタバレBOX
客入れ時にはすでにひとりの役者が床に座っていて
パソコンに向かい合っている
そこに3人の役者たちがランダムに現れて・・・。
開演前のその時間は
特に非凡なものではないのだけれど
作品としては意外に効いてくる。
マイムで眠りの準備をして・・・
やがて夢のサマリーのような文章が
一つずつスクリーンに投影されていきます。
観る側も最初のうちは
スクリーンに投影された
夢のコンテンツを追いかける。
がっつり夢という感じではなく、
夢と現の狭間に浮かび上がる
コントロールを失った
記憶と想像のカクテルのようなプロットたち。
その、すっと現実から解き放たれたような微妙な歪みに
淡い眠りの中での夢としての質感が醸し出されていきます。
そのうちに、3人の役者の間での
表現の微妙な差異が、
さらにはスクリーン上の物語から
どこか乖離したような舞台上の雰囲気を生み出していく。
やがて物語から離脱する仕草が現れて
制御をなくした想像と気分が
眠りの波打ち際にたたずむような時間を
織りあげていく。
パソコンの横に置かれた薬瓶、
ほぼうつむいたままの役者の仕草。
その後ろ姿に漂うどこか醒めた雰囲気に
まどろみを行き来するような
感覚が降りてきて・・・。
よしんばそれらが曖昧なものであっても
舞台上の空気が
単に物語を追う感覚の外側にまで広がっているから
後半の気分の不安定な揺れも
さらに薬をのんでやがて眠りに落ちていく感覚も
すっと観る側に入り込んでくるのです。
作品として、
シーンがつながっていくスムーズさやメリハリには
若干欠ける部分があるのかなぁとは思う。
前半部分のあいまいさ、
たとえば夢のプロットに縫い込まれたものや
役者が担うロールなどは
もう少しクリアにされても良い気がするし、
音楽の使い方なども、
もっと繊細であってよいとは思います。
しかし、そうであっても
終盤の眠りに落ちていく感覚などには
ぞくっとくるような秀逸さがあって・・・。
もっと豊かに伝わってくる余白はあるのでしょうけれど
作り手の才の萌芽をしっかりと感じることができる
舞台でありました。
◎△★○○△◎●
期待させてくれる・・・
書込みが遅くなりましたが、
WIPを拝見させていただきました。
いろんな表現に目を奪われ、
一気に観てしまいました。
ネタバレBOX
よしんば素舞台というか稽古場でのお芝居であっても
個々のシーンには
力感やグルーブ感もあって
時間を忘れて、観入ってしまいました。
うまくいえないのですが
物語や設定の「骨」にあたる部分に
「柿喰う客」の表現力との絡みのよさを感じた。
なんというか、
紡がれた物語自体よりも
その物語を踏み台にして醸し出されるであろうものに
たくさんの余白、あるいは可能性があるように思えて・・・。
公演まで時間が充分にある段階ですし
物語の繋がりは担保されていても
シーンの重なりから生まれる空気や密度のつながりは
きっとこれからなのだと思います。
そうは言っても、WIPの時点でも
ぞくっとくるような「柿芝居」の語り口には
満ちるにとどまらず
溢れ出すような感覚もあって。
さらには、役者達の地力を改めて見せつけられたこともあって
本番に対する期待ががっつりと膨らんだことでした。
満足度★★★★
言葉で伝わってくるもの・肌合いで伝わってくるもの
イスラム的モラルや価値観が
語られる言葉だけはなく
役者たちが築き上げる
個々のニュアンスの色で伝わってきて・・・。
感情の起点は言葉で表されても
感情そのものを共振させるのは
あくまでの役者たちの演ずる力。
リーディング的な表現の力と
演劇的な空気の表現で
しっかりと浮かび上がってくるものがありました。
ネタバレBOX
冒頭のおしゃべりに近いスピードと勢いには
リーディングというよりは
すでに舞台でのお芝居に近い感覚があって。
さらに読み進められていく
観る側と異なる文化のなかでの
恋愛感情の高揚も
平凡さに塗り込められ隠された内面の奥行きたちも
身体的不自由さのなかでの鬱積やあこがれも
異教に導かれていく心的風景の描写も
それぞれにしなやかに制御された
言葉たちで伝えられながら
言葉に流されない想いを舞台に醸し出していく。
観る側も、与えられた言葉を咀嚼して
異文化の価値観をみつめるだけではなく
むしろ、読みあげられる言葉たちを
追い越していくような空気の流れにこそ
前のめりになって取り込まれていくのです。
それは速度だったり
しっかりと作られた空気の軽重だったり
時には役者たちの表情だったり
リーディングを一歩踏み出したような
間だったり・・・。
言葉からやってくる異文化や
倫理観の違いを呑みこんでしまうような
女性たちの普遍的な感情が
役者たちの手練から鮮やかに伝えられていきます。
未熟で抑制できない想いも
あるいは深い思慮が編み込まれた想いも
ひとつずつが貫くようにしっかりと演じられ
よしんばそれが
異教徒には共感しにくい宗教的倫理や文化に染められていても
感覚として
あるがごとく観る側に入り込んでくる。
舞台上に醸し出される密度には
息を呑むような力があり
違和感と共感、それぞれが互いを織り込むように肌合いを作り
観る側に包み込んでいく。
役者たちにも言葉を伝えるなかで
言葉に流されないだけの
底力のようなものがあって・・・。
いろんな印象が綾織りのように浮かび上がってくる
秀逸な舞台でありました。
満足度★★★★
単なるショーケースではなく
個々の作品がたっぷりと面白くて。
劇団のショーケース的な部分も
失われているわけではないのですが
それよりも、6つのテイストをもった
15分の世界自体が本当に魅力的。
エンタティメントとしても
一つのメソッドが確立した感があって・・・。
観ていて、時間があっという間でした。
ネタバレBOX
各劇団とも15分の表現にとまどいがなく、むしろ短篇の利点を生かした作品が次々にやってくる感じ。
・少年社中
キャラクターの設定などや時間設定など、どこか薄っぺらくあざとい感じもするのですが、それを引っ張りきってしまう底力がありました。
濃い感じはしないのですが強い。
物語としての筋の通し方にも手練を感じて
15分とは思えないボリューム感がありました。
・ぬいぐるみハンター
前回の本公演を観たときにも圧倒的だったのですが、
そのエキスがこの掌編にも
たっぷりと盛り込まれておりました。
枠の外し方という別のベクトルの差し込み方に
観る側の想像を乗り越えたり塗り重ねていくような
面白さがあって。
しかもそれが
霧散しないで蓄積されていく感じに
あれよあれよと引き込まれていく。
細かい仕込みがてんこ盛り。
その繰り出し方もしたたかで
なおかつ緩急自在。
突っ張る部分と外す部分のバランスが抜群によい。
これはもう
次回の本公演が楽しみになりました。
・トリコ劇場
冒頭の雰囲気はちょっと色の濃い家庭内愛憎劇なのですが、
そこから意外な感覚が生み出されていきます。
戯曲のしたたかさが、きちんと観る側の視点をコントロールしていく。
男や3人の姉妹に視線を惹きつけておいて
その先をさらっと現出させる・・・。
3人の女性たちそれぞれが
すっと母親の一部に集約されていく態には
ぞくっときました
その夫婦間の愛情の浮かび方も本当に秀逸。
ラストシーンが持つ
深さや厚み、
そのふくよかさに作り手の力量を感じました。
===intermission===
・世田谷シルク
一つずつのシーンが丁寧に作られ、
しかもビビットで創意にあふれていました。
表現のひとつずつに目を引くような力があり
それらがなによりもわくわくするほどに楽しい。
刹那ごとに惹かれるのは
役者たちの演技がもつ切れであったり
一歩観る側を凌駕したような
舞台上の空気やセンスであったりもするのですが、
夢と現の端境の作り方や
女子学生のヌードのスケッチというベースが
場ごとのしなやかな枠となって
その楽しさが拡散せず、
舞台上でさらに醸成されていく。
この質感だいすきです。
よしんば短編であっても、
むしろ短編であるからこその
ぞくっとくるような魅力にしっかりと浸されて。
ほんと、いろんな意味で楽しかったです。
・田上パル
ある意味ワンアイデアなのですが、
貫き通す力にしっかりと裏打ちされていて
観る方が飽きずにもっていかれました。
なんというか
舞台上に迷いがないのがよい。
多少ラフな部分を感じないわけでもないのですが、
舞台上のコアにある掟がしっかりしているから
観る側がとまどわないし迷わない。
むしろ、そのラフさが
舞台上の嘘に観る側を導く味のようなものになっていて。
この作品、45分バージョンで演じられるということですが
どんな展開になるのか・・、
実際に伺うかどうかは別としても
ちょっと心惹かれてしまいました。
・Mrs.fictions
キャラクターたちに厚みがあるとか深さがあるとか
そういう印象があまりないのに
なにか観ていくうちに
それぞれの味わいのようなものが
じわっとやってきます。
どこかデフォルメされた
コミカルでうすっぺらい会話から
それぞれの時間、そして二人の時間の重なりが
ホログラムのように浮かんでくる。
深く浸潤されるというわけでもないのですが、
気がつけばどこかがほかっと暖かくなるような
感覚が生まれていて。
そういう染められ方をしているから
最後のワンシーンが・・・沁みる。
彼らの人生の刹那を垣間見て
ふっとその後ろ姿に目がいくような感じ。
どこかシニカルでさらっとした洗練があって、
心に残りました。
*** *** ***
観終わって結構な充実感・・・。
エレベータを待つ間には
また来たいとの声も漏れ聞こえてきて・・
この企画、本当に良い形で定着したなと思います。
ほんと、来年の展開への期待が膨らんだことでした。
満足度★★★★
「異常ナシ」 鮮やかさと細やかさと・・・
ある種の輝きと高揚感が残る作品でした。
いまさらながらに
この劇団の魅力を感じることができる作品だったと思います。
アリ・ナシ両方の作品を観終わって、
なにか満ちるものがあって。
解散公演を観るのって
基本的にはあまり好きではないのですが、
今回は観にいってよかったと思います。
ネタバレBOX
入場すると暗い・・・。
そこからドラマが始まっているように感じられる。
開演時間が迫ると客入れと舞台上の動きがかさなって・・・。
とりちらかった舞台、
その場所に一様でない個性をもったキャラクターが現れます。
ファンキーな人物や冷静な人物、
さらには観る側にとってキャラクターが掴めない人物や、
彼らにとっての支柱となるような
世界観を持つ人物も・・。
一見デフォルメされたような人物たちの描写が
次第に観る側に馴染んでいくのは
役者たちの芯に熱量があってぶれないから。
彼らがそれぞれに抱く想いや価値観が
したたかに、そして鮮やかに伝わってくる。
彼らが弄ぶ
世界を滅ぼす力を持ったスイッチを吸引力にして
物語が回っていきます。
冒頭では観る側として
どこか被害者的な感覚があったのが
気が付けば舞台の空気に絡め取られるように
彼ら側に視座が取り込まれいて・・・。
すると、驚くほどくっきりと
個々や彼ら全体の想いが伝わってくるのです。
それぞれの距離感なども
ステレオタイプではなく
互いを照らすように細やかに組み上げられていて。
そこに入り込む外務省の役人(?)や
彼らの枠組みとなり安全弁となる
シャーマンの女性の存在などが
自らのキャラクターや想いにとどまらず
メンバーたちの立ち位置を際立たせていく。
終わってみれば
独立を願う彼らの感覚と
よりどころとなるスイッチの存在が
ひとつの集団のコアを満たすものの
輝きのように思えて。
ただ能天気な突き抜け感があるわけではない。
希望を超える閉塞もしっかりと舞台上には醸されていて。
でも、その中でも、
なにかを凌駕する輝きにこそ
強く惹かれてしまう。
終演後も舞台に醸された高揚に
しっかりと捉えられておりました。
========
それほど昔からを観ていたわけではないのですが
ここしばらくは、何かに強く引き付けられて
足を運んだ劇団の最後の公演・・・。
惜しいなぁとは思う。
でも、この解散公演で、何かが満ちたようにも
感じるのです。
アリ・ナシの両公演を観終わって、
惜しいと思う気持ちが消えたわけではないのですが、
それを凌駕するように
今回のお芝居たち、さらにはこれまでに観た劇団のお芝居を
作り上げ演じきった側と
取り込まれた観る側に重なる時間こそが
とても深く愛しく感じられて・・・。
説明できるような因果も脈絡もないのですが、
にもかかわらずそう感じさせるだけのなにか・・・。
うまくいえないのですが
そういう内外をしっかり持った公演だったと思う。
解散公演というものを観るのって
実はあまり好きではないのですけれどね、
今回の解散公演は観てよかったと思います。
満足度★★★★
あとを引く切り口
二つの作品とも
間違いなく浮かんでくるものがあって、
飽きることなく観てしまいました。
良い意味での抜けの悪さがあって
観る側に残る・・・。
ちょっと不思議な質感のお芝居たちでした。
ネタバレBOX
「谷間!やわらかい!お願い!触らせて!」
三女のお友達の印象が強烈で、
その色に目を奪われてしまうのですが、
実はインパクトで勝負しているわけでないことがわかってくる後半には
お友達に加えて
姉妹たちそれぞれの一歩内側の表情が伝わってきました。
表向きとは少しニュアンスの違う
内向きの個性や関係性もすこし篭ったようなヴィヴィッドさで
伝わってきて・・・。
ちょっと前のめりになって見入ってしまいました。
「2010年家族の旅」
家族のもつれる姿は
どこかこっぱずかしく奇異な感じはするのですが、
だけどその裏側にあるそれぞれの家族に対する距離感には
ぞくっとするようなリアリティが織り込まれていました。
家族に対する温度差や理想、
さらにはロールへの意識などが
ある種の粘度をもった感覚として伝わってくる。
終盤、家族のうちから外へと視点が置き換わるところも
スパっときるのではなくじわっと効いてくるような
なにか癖になりそうな
感覚がありました。
2作とも、隠れた比重の高さみたいなものが作品にあって、
良い意味で時間が長く感じられて・・・。
それぞれにもうすこし削ぎ落とすべき
バリのようなものもあったのですが、
それを補うほどに、
個性をもった
あとに絵面が残るお芝居たちでありました。
☆☆★○○○△
満足度★★★★
手作り感の圧倒
初日を拝見。
初演も観ているのですが
「リライト」は看板でも誇張でもなく
良い意味で
似て非なる作品。
でも、方向転換とかそういう感じではなく
作品のコアにあるものが大きく間口を広げて
豊かに表現されていくような感覚がありました。
ネタバレBOX
自分が持ち合わせているものや
自分が求めるもの、
あるいは捨て去りたいもの・・・・。
そして、どこまでを自分と認識するかの、
線引きの感覚。
初演時は、それらが社会的な線引きや国家の概念に
重ね合わされていた記憶があるのですが、
今回はキャラクターたちそのものの感覚を
紡ぎ合わせることによって
それぞれののボーダーに対しての感覚が
しなやかに表現されていました。
その中に
初演時に戯曲が内包していた作品のコアの部分が
失なわれることなく「リライト」されていて・・・。
それを成り立たせるための
皮膚感覚に近い空気、
細かい粒子に昇華したような感覚が
役者たちによって醸し出され
観る側に浸透していきます。
どこか手造り感をもった質感が
観客を包み込むように舞台に引き入れてくれる。
役者たちの表情や台詞が
そのまま入り込み
キャラクターの
感覚や温度として観る側に重なっていく。
初演時にはひりひりとした物語の展開の中で浮かび上がっていた
個々のキャラクターの感覚や既存のフレームへの喪失感が、
ベクトルを翻して・・・。
役者たちの身体から伝わってくるものが
観る側に感覚として置かれ、
それらはやがて組みあがり
物語として観る側の内に形成されていくのです
そこにはいままでの北京蝶々には
ないテイストが残りました。
でも、彼らがこれまでのものを捨てたという感じはまったくなく
表現の間口がぞくっとくるほど大きく広がったように思えた。
これまで内側に隠されていた
彼らの力たちのいくつかが
今回の演出家によって解放されたような感じ。
作家にしても役者にしても
鎖が一本はずれて、
解放された力からやってくる広がりと豊かさが
舞台上からしっかりと感じられました。
単に舞台の前面にとどまらない、
全体で作られていく空気に息を呑む。
背景側のお芝居にも心を染められて・・・。
物語が満ちたあとの、
エンディングにつながるところに
若干の空気の段差を感じたものの
帰り道、置かれた感覚が消失することはありませんでした。
間違いなく新しい力を得たであろう北京蝶々、
次にはまた異なった演出家による舞台が予定されているとのこと、
本当に楽しみになりました。
満足度★★★★
「異常あり」個々の作品にとどまらない・・・
短編集とのことで、個々の作品の味わいに浸るとともに、
セットのつながりや作品の並べ方からの
連作(ではないけれど)的な構成にも
引き込まれました。
常ならぬ踏み出しの感覚に浸潤されました。
ネタバレBOX
・「さっき終わったはずの世界」
この作品は15MINUTES MADEでも見ました。そのときにはもっと行き場のなさやシニカルな感じがあったのですが、今回はメリハリの強いポップなテイストに仕上げられておりました。
カップルの見事な下世話さと宇宙人自身の内外の落差が相乗効果をもってで物語の輝度を作り上げていく。
コミカルさが薄っぺらにならず、舞台の枠の中で温度があがっていく感じが見る側をひきつけていきます。
その勢いが、パンチラインとしての暗転に小気味よい力を与えておりました。
・テンパってる奴
はじめてみるお芝居。物語の仕組みとしてはありがちだけれど、中盤までは視座の作り方もきちんとしていてきちんと見る側を引っ張っていってくれます。でも、そこから演技の崩しみたいなものがちょこちょこ入ってきて、戯曲の構成ではなく、舞台上の危うさのようなものでニュアンスが伝わってきます。
危うさに前のめりになり、疾走感にぞくぞくする。演じることと演じられることのハザマあたりで舞台が構成されて、その不安定さが舞台の色に不思議なグルーブ感すらかもし出す。
ちょっと常ならぬ感覚がとても魅力的でした。
・三鷹の男
この作品は別の集団の公演で見たことがあります。そのときには地図が浮かぶような演出でした。
前の作品から片づけられることなく
とり散らかった舞台で語られる、男自身のその心情は
あからさまで、直情的で
ゆらぎ、どこかあやふやで・・・
間違いだらけで
どこかピュア。
荒廃のにおいと男の存在感に
さらに散らかされていく舞台。
目を離すことができませんでした。
・三鷹の女
舞台はもはや劇場の素明かりそのままとなり
まるで戦いのあとのような景色のなかで
女性のモノローグが始まります。
新しい生活に踏み出すことを語る演じ手に
終焉の色がただよう舞台。
そこには舞台の体はなく、
素語りでキャラクターの心情などがつづられていくだけ。
三方の客席に礼をして去っていくその姿は
演劇と現実のどちら側に置かれているのか
もはや区別すらつかず・・・。
ただその姿を見送ってしまいました。
********
単純に4つの作品が並んでいるというだけではない
上演時間をとおしての高揚と崩れの流れがとてもしたたか。
作品たちの外側に
もうひとつの作品が綴られていくような感触もあって、そのことが
個々の作品の色をより強調していくようで。
役者や作家に加えて
演出家の非凡な力をあらためて感じました
満足度★★★★
淡々と残る
全体の構図が現れてくるなかで
想いの移り変わりが伝わってきます。
その深さや速度の違いが織りなす
空気の重なり、そして密度が
淡々と、でも観る側に根を張るようにしっかりと
心に残りました
ネタバレBOX
暖かさと明るさをもった会場、
二つの机を中心にシーンが重なっていきます。
飲み物をふるまわれた開演前の場内の雰囲気をそのままに
すっと会話に入り込む冒頭、
会場の温度をそのまま地色にして
キャラクターたちの空気が伝わってきます。
しっかりと成立していながら
ナチュラルに端折られているような会話たち、
そこから重なっていくシーンにも恣意的な説明は感じられず
会話に込められたニュアンスから広がっていく
キャラクターたちの内と外。
それが2つのテーブルと
さらには
そのまわりに居続ける
役者たちの
時間のなかで
互いに絡まり解けていく。
物語の全体が
輪郭を語られることではなく
濃淡の重なりのなかで浮かび上がっていきます。
物語のプロットが現れる歩みに合わせて
個々のシーンごとの肌触りが強く残る。
ふいに現れる心の色の生々しさ。
繋がるもの、
交わらないもの、
留まるもの、
溢れるもの・・・。
重いわけでも
鮮やかなデフォルメがあるわけでもない。
会場の明るい照明の下での
どこか下世話な部分すらある
会話劇。
でも、舞台上の解像度に
絡め取られるように見続けてしまいます。
気がつけば
感覚たちに込められた
テイストたちが幾重にもかさなっていて・・・。
線描では描ききれないようななにかが
存在感を持って観る側に置かれていくのです。
観終わって
衝撃的とか圧倒されたとかいう感覚はありませんでした。
でも、だからといって
そのままにすっと席を立てませんでした。
拍手をして、
物語の外側に出ても、
何かが共振している感じがする。
淡々と残りむしろゆっくりと広がっていくような感覚に
再び心を奪われてしまいました。
☆☆◎○◇◇○
満足度★★★★★
舞台に挑まれるような感じすら・・
物語の構造に観る側が挑まれるような感じすらあって。
ぐいぐいと押し広げられていく世界の構造に目を瞠り
手練の役者達が作り上げる舞台上の骨組、閉塞感、
さらには疾走感に圧倒されて・・。
時間を忘れ、ひたすら取り込まれ・・・。
しなやかに回収された物語の終わりにもがっつりと浸されました。
ネタバレBOX
初日観劇。
観る側を物語に閉じ込めるための
しなやかな導入部にすっと乗せられて
そのまま、舞台の世界に吸い込まれます。
プロジェクトの世界の構造やルールが
観る側にも体感的に明らかになっていく・・・。
舞台と両側の客席の空気が一体化して
空間全体が舞台に置かれた(!)世界に重なっていきます。
時間の刻まれ方の透明さをもった感触がすごくよい。
役者達がそれぞれに舞台に投影する
キャラクターたちの姿が
高い解像度に支えられて本当に豊か。
組み込まれた社会の摂理が
さらに深くその世界のリアリティを作り上げていく。
舞台上で編み上げらた世界に
そこまでの強度があるから
次第に机上の世界から垣間見えてくる
外側の世界も観る側に違和感なく伝わってくる。
ぞくっとくるほど淡々と組み込まれていく事実。
そのたびにしなやかに変化していく
眼前の舞台の密度や色に
観る側までがぐいぐいと追い込まれていく感じ。
漫然と観て理解するには
半歩ほど複雑すぎる物語の展開が
観る側をのめりこませ
目を見開かせる力に変わっていくのです。
なんというか
舞台に挑まれているような感じすらして・・・。
前のめりになって、
息をつめて。
ト書きのごとく事実を告げる
アシスタントのアナウンスの耳触りのよく無感情なトーンが
さらに強く観る側を物語に押し込んでいきます。
なにせ舞台空間と客席のボーダーすらあいまいなルデコ5F・・・、
キャラクターたちの感情や息遣いまでも
役者から直撃で
圧倒的な力感とともに
観る側を取り込んでいく。
やがて、走り抜けて、
全てが観る側に開示されて・・・。
物語は冒頭のシーンに結ばれて終幕します。
精神的な疾走感がほどけて、息をついて。
舞台のコンテンツそのままに、
徹夜して一冊の本を読み終えたような
高揚と充足感に満たされて・・・。
初日でもあり
舞台上に微妙なぎくしゃくがなかったわけではないのですが、
そんなことも全く気にならないほどに
舞台の勢いとその裏側に作りこまれた
演技たちの密度に捉えられて・・・。
前作を見ていなくても十分楽しめるとは思うのですが、
前作とのつながりは両方の作品に
さらなるふくらみを与えてくれたようにも思う。
この公演、できればもう一度観たいのですけれどねぇ・・・。
座るところによって見えるものがかなり違う気がしたり。
一度で食べ尽くせないような深さを感じたりもして。
いずれにしても、時間の感覚を忘れて
のめりこめる舞台・・・。
本当に面白かったです。
☆☆☆◎◎◎□△△▲