りいちろの観てきた!クチコミ一覧

241-260件 / 1006件中
ビート・ジェネレーション

ビート・ジェネレーション

東葛スポーツ

Vacant(東京都)

2012/09/22 (土) ~ 2012/09/23 (日)公演終了

満足度★★★★

切れ味も味付けも
知り合いから前回公演の評判を聞いて
観ることができなかったのが凄く悔しかったので、
今回は劇団名だけで意気込んで予約。

とはいくものの、まったく予備知識なく観劇・・・。
チラシも見ていない上に当日パンフレットもなく。
出演者も知らなければ、どんな舞台化の想像もつかず。

でもそんなこと関係なく作り手のセンスと
それを舞台にぶち込む役者達の力に目を瞠って・・・。

ほんと、実におもしろかったです。

ネタバレBOX

最初は、馬鹿に面白くて、
でも刹那の表現から伝わってくるものを
ただ愛でているだけでした。

でも、次第にそれらの表現のコアになっているものが
見えてくると俄然おもしろくて、たまらなくなった。
ある意味尖っちゃいるのですが、
でも決して難解ではない。

終演後には、私を含めて、
元ねたを知らなかったり忘れてしまった
良い子のためのネタバラシ的なものまで
用意されていて。

次がいつで、どんな公演になるかは存じませんが、
(終わってみれば今回もどこかゲリラ的な部分を感じる公演で、
一週前の本番の評判を聞いていたり、
翌週観にいく予定のお芝居に出るはずの役者さんが
平気で出演してた。)
次の公演があれば、万障繰り合わせて観にいくと思います。
喫茶室あかねにて。

喫茶室あかねにて。

ホントに、月刊「根本宗子」

BAR 夢(東京都)

2012/09/16 (日) ~ 2012/10/21 (日)公演終了

満足度★★★★

初日B 熱演!
四人の役者がそれぞれの色をいっぱいに出して、
倍の大きさの空間でも溢れるようなお芝居をしていただいて・・。

あれやこれやの突き抜けに力技も加わってどんどん引っ張られていきました。

ネタバレBOX

シチュエーション的には8月のお芝居の枠組みが生かされていて、
でも知らなくてもしっかりと楽しめるように作りこまれておりました。

一人ずつのキャラクターが
役者の演技の色を引き出すがごとくに
描かれていて、
それぞれのロールのベクトルの突き出た感じが
他のベクトルと重なって際立っていく感じに
どんどん惹き込まれる。

その店のウェイトレスの投げやりな感じが場の空気を導く中
喫茶店に集う小劇場役者の内幕ものの態で
思い込みの激しい感じや、
シニカルな感じ、
さらには女性的なずるさが
ぎゅっと絞り出されて
決して広くはない会場に満ちていく。

後半、3人のベクトルがそろったあたりの同床異夢感には
自虐的に描かれる劇団の内幕にかこつけた
巻き込むようなおかしさがあって。
それが、三人の重なりに浮かぶ劇団主宰の風情までも
しなやかに描き出して、
さらに笑いを引き出していく。
ここに、役者たちの勢いが乗って
そのテイストへの更なる巻き込み感が生まれて・・・。

初日ということもあってか、
後半は役者全員にきっちりギアがはいって
パワー全開で観る側を突き崩していく。
ただ、ちょっと惜しいのは、
そのパワーがあまりにも溢れすぎて
パンチラインが観る側に十分に効き広がる前に
勢い余って
次の波がそのおかしさまでも洗い流してしまうような部分もあって。
観る側が仕込まれたものを味わいきる前に
わんこそばのごとく次のものがやってきて・・みたいな。
もうちょいと、一つずつの仕掛けをあざとく押し込む
ずるさがあってもよいかもとは感じました。

まあ、これまでにご出演の他の芝居を観ても
半端なくしたたかな役者さんたちなので、
上演を重ねるごとに
互いが互いを引き出すための緩急は間違いなく進化するはず。
逆にこのパワーを直撃で受け取ることでの迫力も
当然にあるわけで、
そういう意味ではレアなものを観ることができたのかもしれません。
それでなくとも、
これだけの実力を持った役者をこの距離で観ることができるのは
本当に眼福なわけで・・・。

これ、もう一つのバージョンだとどうなるのだろう。、
(少し時間をおいて見に行く予定)
ものすごく楽しみになりました。




クライシス百万馬力

クライシス百万馬力

ホチキス

シアタートラム(東京都)

2012/09/13 (木) ~ 2012/09/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

堪能しました
これまでにも面白い舞台をたくさん見ている劇団ですから、それなりの期待をもって観にはいったのですが、そんなもので賄えるような面白さとは桁がちがっていて。

思い切り満ちた舞台を堪能しました。

ネタバレBOX

大きなトラムの舞台ですが、
ひとりずつの役者達がしっかりと舞台に立って、
その広さに負けていない。

ひとりのシーンでも、ふたりであっても、
30人が舞台一度に舞台を埋めても、
役者達それぞれのそのロールへの張りのようなものが、
常に観る側を捉えていて。
初日ということで、特に前半は、間のとり方とか台詞の流れとかも
やや迷いや澱みがあったりもしたのですが、
キャラクターを背負う凛とした気概のようなものが
役者達にしっかりと内包されていて。
それが、ひとつずつのシーンを
物語の色として組み込み
さらなる半歩を生み出して観客を舞台に惹きつけていく
力となっていく。

ひねりもちゃんとあり、
どこか素敵な薄っぺらさも作りこまれ、
滞らず、一方で観る側を置き去りにしない展開にしっかりと引っ張られる。、
登場人物それぞれの個性が
また様々に楽しいのですよ。
笑いどころも満載で、
でも、場当たり的な設定ではなく、
いろんなベクトルの貫きがあって、
観る側がちゃんとその色に乗っていける。
二人の兄弟、女組長、キャバクラとホストクラブの男と女、
そして診療所と警察と、
ちょっと60年代の日本映画の猥雑が、
やがてどこかSFちっくな物語のアクションやかぶきと
絶妙に重なり合って・・・・。

さらにはアンサンブル的なロールの役者達にも
抜群のクオリティがありました。
群集的なミザンスを作りながら、
ひとりずつがちゃんと歌えるし
しっかりと歌えるし、踊れるし、演じられるし、
とにかく、その場に精度と切れ味をもったニュアンスを作れる。
On B’wayの舞台などでは、
それこそ演劇学校であれば先生クラスの人たちが
比較的小さな役であっても舞台をしっかりと支えているという話を
聞いたことがあるのですが
この舞台でも力のある役者が舞台を満たし
作品の厚みを強かに支える。
で、物語を動かす役者達がそれに負けずにさらに引き立って。

終盤、劇中劇での、
超有名戯曲&ミュージカルのパロディなど
そんじょそこらの紛い物と一線を画す見応えがありました。
場に観る側を満たす切れと、
本家との強かな重なりと遊び心が
紡がれ織り上がり、温度をつくりグルーブ感を醸し、
観る側を満たしていく。
ジェット団とシャーク団よろしく
場に鮮やかやな対比を作る男達と女達が
舞台の広さや高さをいっぱいに使い、
その場のロミオとジュリエットを、
ちゃんとこの物語的な主人公に押し上げていく。

それは、そのまま、終盤の舞台の役者が作り上げる世界の
スピード感や熱へとつながって。
最後の舞台装置のけれんも、しっかりと生きて・・。
もうこうなると、舞台初日で前半が少々硬かろうが、
暗転がちょいとごそごそしていようが関係ない。

たっぷりと満たされて、本当に心地よくダブルコールをさせていただいて。
芝居というよりは、すごく良質なミュージカルコメディを観たような
高揚にたっぷりと浸されてしまいました。
クリスタル イヴ 東京公演

クリスタル イヴ 東京公演

劇団PEOPLE PURPLE

SPACE107(東京都)

2012/09/06 (木) ~ 2012/09/09 (日)公演終了

満足度★★★★

物語る足腰と創意
ファンタジーをしっかりとしたスケール感で
まっすぐに描き切っていました。

シーンの一つずつ、
そしてシーンの重なりのなかに
鮮やかなメリハリを作り出し、
その展開や大ネタ小ネタで
舞台に、観る側をして物語を追わせるに十分な力を与えておりました。

ネタバレBOX

作り手に、物語を語ることへの
ぞくっとくるような才を感じる。
シーンの一つずつに表すものが明確で、
そのなかには、関西の劇団の良さである
笑わせてなんぼみたいな部分が、
絶妙に織り込まれていて、
全体を物語の枠で硬直させることなく、
でもすっきりと観る側にストーリーの展開が置かれていく。

役者たちの演技が本当にくっきりとしていて、
明確にキャラクターたちの姿や組み上げるストーリーを
観る側に伝えてくれるので、
「時間」やミュータントの能力ににかかわる
少々ややこしい部分も全く負荷にならず、
ウィットや下世話さを楽しみつつ、
語られていくものを受け取ることができ、
冗長な感じに陥ることなく
物語の基礎部分が紡がれて。
尖ったり斬新さで観る側の
テンションをコントロールしたり、
観る側を展開から置きざりにすることなく、
一方で退屈させることもなく、
伏線もしっかりと張り込んで
未来世界が積み上がっていくのです。

そして、後半の畳み掛けるような展開も圧巻。
照明効果やキャラクターたちのテンションにぐいぐいと引かれる。
前半に重ねられたものが
一気に切っ先を持って世界を広げていく感じには
ドライブがぐいっとかかったようなスピード感と高揚があって・・・。
物語が隠していた爪をあらわにした感じ。
そこには、想いや謎解きの妙味もあり、
しかも現われた顛末の見晴らしは
さらに何度も翻り観る側をのめり込ませていく。
仕組みで作られた世界の広がりを、
役者たちがロールの色を貫きつつ
しなやかに支え続けて。

実をいうと、
とてもオーソドックスなテイストのファンタジーにも
思えるのです。
際立った斬新さを感じるような部分はあまりない。
でも、決して陳腐さを感じることはなく、
むしろ、オーソドックスであることで、
観る側が受け取ることのできる創意があり、
深く物語に浸しこむ強さが生まれているようにも感じて。
物語全体を語る上でのメリハリの作り方や
役者たちのロールのベタにならない明確さ、
さらなる半歩がしっかりとある顛末と
抜きんでたものが、観客の馴染みやすい口当たりの中に
したたかに内包され、
作品としての間口の広さや伝導率の高さが
しっかりと担保されていて。

こういうオーソドックスさが醸し出す安定のなかに
古臭さやちゃちさやあざとさを感じさせることなく
スケール感や洗練とともに作り上げられた作品って
ありそうで案外少ないような気がする。

ふくよかな広がりと切っ先をもった
エンターティメントとして
時間を忘れて楽しむことができました。




ユリコレクション【ご来場誠にありがとうございました!】

ユリコレクション【ご来場誠にありがとうございました!】

ラフメーカー

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2012/09/04 (火) ~ 2012/09/10 (月)公演終了

満足度★★★★

演技とあかりが織り上げる時間の立体感
冒頭から、照明の美しさに惹かれ、
紡がれやがて浮かび上がる
主人公たちの姿に一つの色で心を奪われて・・・。

その繋がれたものの肌触りに
惚れてしまいました。

ネタバレBOX

冒頭からしばらくは、
ちょっととまどう。
説明的なことはあまりなく、
その刹那の印象を置いたまま、
シーンが次へと歩みを進めて・・・、
ふっと観る側の立ち位置に迷う。

でも、そのシーンに編み込まれたものが、
少しずつ繋がっていくにつれて、
次第に抱いているものが形になってきて、
やがて、母と娘のそれぞれの時間に編み上がっていくと、
冒頭のとりあえず受け取っていたものも
しっかりと世界の広がりとなって、観る側を物語に浸していきます。

母親の時間と娘の時間、
二つの時が撚られて進んで行く舞台、
次第に枠組みが明らかになり、
登場人物たちのロールが浮かび上がってくると、
それまであいまいだったものが
物語の歩みの中で、
後ろ側の広がりのように観る側を包み込んでいく。

シームレスに織り上げられていく母と子のシーンたち、
主人公のカメラと服と想いの色、そして才能。
時の移ろいを表す役者たちの身体、
それらが記憶と現在の質感を
内心の景色のごとく一つの舞台に織り上げていく。

容姿などで一人の人物の時間の経過を表現することは
ある意味、それほど難しいことではないのかもしれません。
でも、この舞台の役者たちは
外見的なものをさして変化させることなく、
その刹那の表現に込めたロールが抱くものや醸し出される想いの色で
二つの時間を切り分けていく。
主人公もやり方は同じ、
妊娠の表現にしても安易に体型を物理的に変化させることなく、
しなやかに子供を授かり、その時間を過ごした母の姿を
紡ぎあげて見せる。
観る側は、舞台の時間たちに乖離がなく
物語の枠組の中の二つの時間の重ね合わせではない、
流れる一つの時間の前と後ろの感覚に
浸されてしまう。

場の転換に不要な区切り感を与えることなく、
シーンをつないでいく舞台美術、
そして、照明も息を呑むほどに美しく、
かつキャラクター達の姿や想いをしっかりと映えさせる
圧倒的な力があって。
ただ、役者を照らすのではなく、
明かりもまた語り、ロールたちの想いに
さらなる陰影を作り出していて。

観終わって、主人公(達)の姿が、
今であっても、その時間であっても
とてもビビットで魅力にあふれ、
ありていに言えばちょいと惚れてしまったり。
他の人物たちにも、概念としてではなく、
存在としてのリアリティがとても自然に心に残って。

物語のくみ方などには、
ほんの少し不要なもたつきを感じさせる部分はあったものの、
終わってみれば、
夏にもかかわらず、降る雪の肌触りまでも舞台と共有しておりました。

秀作だと思います。
沈没のしらぬゐ【池袋演劇祭にて豊島区町会連合会会長賞受賞!!有難う御座いました!!】

沈没のしらぬゐ【池袋演劇祭にて豊島区町会連合会会長賞受賞!!有難う御座いました!!】

蜂寅企画

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2012/09/05 (水) ~ 2012/09/09 (日)公演終了

満足度★★★★

解ききる力
江戸の風情をそこはかとなく取り込みながら、
怪談の態で紡がれる物語。
一つずつの因果が語られる中で
観る側には恐ろしさより、
秀逸な悲劇の構造が残って・・・。

舞台の世界から抜けられなくなりました。

ネタバレBOX

物語の外側が観る側に形作られていく前半は、
夏の江戸の風情や、
人形の外連が観る側を舞台に引き留めて・・・。
役者たちが織り上げる雰囲気に
川風が流れていきそうな感じすらして・・・。

その舟が三途の川の上流に入ると
時間の舫いがすっとほどけ、
顛末とそこにそれぞれが背負う因果が
ひとりずつ、そしてそれぞれの物語としてほどけていく。
歌舞伎のような
大上段での「しかとご覧あれ」みたいな大仰さがないので
最初は謎解きという印象はあまりなく、
とてもしなやかに江戸の市井の時間の中に
重なりあった記憶がひとつずつ、観る側に置かれていく感じ。
それが次第に冥府との端境を流される舟に乗せられた
想いのリアリティを順番に剥ぎだしていく。

役者たちの個性も
時代の規律にしっかりと染められつつ
とてもナチュラルに伝わってきて。
端々に江戸の暮らしの匂いを漂わせつつ、
ロールが抱く想いのコアを
観る側の感覚に違和感なく描き出す。
なんというか、それぞれのお芝居に戯曲との相性の良さがあって
時代劇というジャンルにどっぷりであるにも関わらず
観る側にその刹那のキャラクターを
しなやかに流し込む力を感じたりも。

で、物語は、狂言回しの人形遣いと
揺らぎ進む舟のきしみに促された
いくつもの一人語りの態であけすけに放たれた思いとその重なりに
綺麗に内までバレきって、
一人の女性の死を介しての
絡まる想いは切なく幾重にもほどけ、
それぞれの糸に正されて観る側に置かれて・・・。
登場人物それぞれが背負ったものとの足掻きの先に
一本の首つり組みひもから引き出された
悲劇の構造が鮮やかに浮かび上がって。

まあ、しいて言えば、
初日ということでしょうか冒頭の部分の密度に
すこしルーズな部分を感じもったいなくも思ったのですが、
終わってみれば、
時代劇というキャンバスに書き込まれた
人が持つ想いのありようそれぞれに
しっかりとらえられておりました。

ほんと、面白かったです。


SUMMERTIME

SUMMERTIME

TOKYO PLAYERS COLLECTION

LIFT(東京都)

2012/08/30 (木) ~ 2012/09/02 (日)公演終了

満足度★★★★

季節のはだざわりが導く俯瞰
残暑、少々蒸した夜に初日を拝見、

役者たちが紡ぎあげるロールが
それぞれの季節の肌触りを醸し出して。

その先には、女性たちのナチュラルな歩みへの俯瞰がありました。

ネタバレBOX

会場の早稲田 LIFTはとても面白い空間で、
吹き抜け(たぶん工場か倉庫の名残り)があって
1Fにあたる上部の音(声)がBFの空間に
とてもきれいに重なる。

その広がりには
絶妙に時間を湛える力があって
四人の女優が演じる二人の女性の二つの時間の物語が、
豊かにくみ上がっていきます。

幼いころの記憶、そして大人の女性の抱くもの、
それらがあからさまに舞台に広がるのではなく
エピソードとして観る側におかれ、
二つの時間の緩やかなつながりに導かれるように
ゆっくりとほどけていく。

過去の一つずつのエピソードのコンテンツが、
ナチュラルで、どこにもありそうで、
でも、しっかりと心に残るような夏の風情に磨き上げられていて。
夏休みのゆったりした時間に織り込まれた
風呂上がりの心地良さ、西瓜、かき氷、魚つり、花火の想いで、
それらがキャラクターの時間のなかに
差し込まれるたびに
役者たちのしなやかに季節を纏う演技のふくよかさが、
シーンにとても自然な夏の終わりの肌触りを与えて。

その時代と
ふたりの女性の歩んだ時間と
再び束ねられた今が
記憶の質感とともに観る側を染め、想いを映し広がっていく。

ほんの少し苦く、
重さにならないほどに淡く、
でも深く満ちて、
気がつけば、キャラクターとともにその時間を抱いている・・。

上演時間も、会場や作品のテイストにフィットしていたように思います。
何気ない照明のメリハリや音の響きのコントロールも秀逸、
役者それぞれの描き出す色に加えて
上野作劇の冴えをたっぷりと感じることができる
秀作でありました。


世界の果て

世界の果て

unks

ギャラリーLE DECO(東京都)

2012/08/28 (火) ~ 2012/09/02 (日)公演終了

満足度★★★★

空間を創出する「あれ」の力
昔、授業で使っていたあれが大活躍でした。

原作は未読なので、
その作品がどこまで舞台の空間とつながっているかは
わからないのですが・・・。

その空間に築かれたイメージは
圧巻でした。、

ネタバレBOX

OHP(オーバーヘットプロジェクター)、
齢がばれるかもですが学校では授業などで時々使われていて、
休み時間などにはいろいろと遊んで先生に怒られたりもしていた
定規とか、教室に置いてあったの水槽とか乗せたりして・・・。

その遊び心が、極めてクリエーティブな
創作の手段として舞台に生かされる。

正直なところ、物語自体がわかりやすいものとは思わなかったし
不条理というか織り上がるなかでの歪みに圧迫されたり
針が飛んだように塗り替わるシーンのつながりもあって。
にも関わらず、OHPを中心とした場の作り方や
役者たちの身体が作り出す
場ごとの印象がとてもクリアで、
観る側を捕まえつづけるに十分な
創意の連鎖があって、
よしんば個々のシーンのつながりを見失っても
舞台から目を離すことができない。

そうして、積み重なったシーンが投げっぱなしにならず
ループして作品に厚みが生まれ、
その厚みがさらに踏み出して観る側を凌駕していく。
中盤の時間が巻き戻ったような感覚が導く高揚や、
終盤の闇への落下感、
気が付けば
生きることと死のボーダーが浮かび上がり、
自分の立ち位置が滅失していて・・・。

その感覚をOHPの作り出す空間が引き出し、
揺らし、映えさせる。
ナイロン100℃が使うような
映像と演技の重なりに
さらに、役者のオペレーションによる
手作りの生々しさが加わって、
精緻なだけにとどまらない、息遣いのようなものが
舞台に織り込まれて・・・。
これ凄い。

たぶん作品の100%の理解には至っていないと思うのですが、
観客として、ずっとテンションを持って
想像力のリードを解き放ち、
空間の色に染まることができました
【全日程終了!ありがとうございました】小田急VSプレデター(東京)

【全日程終了!ありがとうございました】小田急VSプレデター(東京)

劇団東京ペンギン

明石スタジオ(東京都)

2012/08/23 (木) ~ 2012/08/26 (日)公演終了

満足度★★★★

表現の引き出しの多彩さ
物語は比較的単純な骨格でしたが、
そこに盛られたニュアンスがなかなかに多彩で、
おいしいフルーツパフェをいただいているような気分でした。

ネタバレBOX

全体で見ると
アイデアがびっくりするほど斬新だとか、
物語の展開が著しく派手というようなことはない。
むしろ、どこかステレオタイプな部分をもった
舞台ではあるのです。

でも、飽きない。
ひとつずつのシーンの作りこみが
しっかりとなされていて、
なおかつ観る側をいたずらに窒息させない
表現の冴えや遊び心がたんとあって。

標準語と関西弁(とてもネイティブ)の使い分けから
狂言のような表現、
売店のおばちゃんの意外な使い方をはじめとする、
何気に色がしっかりと作られたキャラクターたちの個性・・・。
昇降する電車が醸し出す、
絶妙にチープな感覚が流れずに物語のイメージを支えたり
一方でプラレールを使って遊んでみたり、
いろんな印象のなかに
メインディッシュのプレデターの質感が
観る側に組み上げられていく。

こう、なんだろ、ノックアウトパンチではなく
たくさんのボディブローでじわじわやられていくような
気が付けばはまっていたような感じがあって
で、終わってみれば、確かな「面白かった」という充実感が残る。

どこにでもありそうで、でもあまり体験したことのない
不思議な満足感が終演後に降りてきたことでした
師匠の部屋(上演終了しました。ご来場、誠にありがとうございました。)

師匠の部屋(上演終了しました。ご来場、誠にありがとうございました。)

アリー・エンターテイメント

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2012/08/15 (水) ~ 2012/08/20 (月)公演終了

満足度★★★★

ろりえ
落語の風情など突き抜けて、
女性の想いがあからさまに深くやってきて。

じわっと深く心的「エロさ」が降りてきました。

ネタバレBOX

最初は突飛な印象すらあった物語の枠組み、
でも、次第にそれが、表現されていくものへの
したたかな仕掛けであることに気付く。

4人がそれぞれに演じるロールが
きちんと色を持っていて、
物語というよりは、その物語に収束する
心情の肌触りに強く惹かれいくのです。

男優たちはどちらかというと
舞台の骨を作りこむ役回りなのですが、
単に物語の進行を語るのではなく、
場ごとに女性たちの想いを引き出す安定と献身があって。

女優たちそれぞれの心情が
じわじわと沁みだしてくる。
直情的にやってくるのではなく、
時に炙り出されるように、
あるいは深いところから導き出されるように
観る側に伝わってくる感じがあって、
その重なりが、キャラクターの艶として
あるいは業として観る側を染めていく。
ボーダーのない層が次第にはがれて
女性のうちにあるものが
それぞれの役者の醸すトーンの奥に
息遣いを晒し観る側に伝わってくるというか、
キャラクターたちの内側の
無意識までが透かされていくような感触が生まれていく。

ろりえの二人の女優たちには、
これまでの劇団公演でも、客演時でも使わなかった
新たな引き出しを持っての表現があって。
派手さはないのですが、
観る側を解き放たない深さというか余韻があって。
それらはさらっと透明感を持って
劣情が昇華滅失したその先にあるようなエロさすら感じられたりも。

役者に秀逸に加えて、
その感覚を導き出した作・出の手腕にも感心しました。
進化とみなしていいでしょう

進化とみなしていいでしょう

クロムモリブデン

赤坂RED/THEATER(東京都)

2012/07/28 (土) ~ 2012/08/14 (火)公演終了

満足度★★★★★

混沌に作品を沈めない表現の洗練
初日と大楽という、ちょっと偏った観劇にはなってしまいましたが、
どちらの舞台も圧倒的でした。

明確で奥行きと踏み出しをもった作り手の表現と、力むことなく厚く、それを支える役者たちの力量に舌を巻きました

ネタバレBOX

プロットはそんなに複雑なものではないのですが、
そこに織り込まれたニュアンスの重なり方に
互いに互いを引き立て、
あるいは埋もれさせ、
閉塞させていくような要素があって。

少年の紡ぐ物語の態、
その物語が歩み始める中で
次第に少年のまわりの様々なものの質感が
表れ始める。

警察のロジックが、その言葉づかいでエッジを醸しつつ
鮮やかに切り出されたり、
文学の芸術性と、表現で世界を変える力と
大衆への煽動や迎合の肌触りが
したたかに透かし出されたり、
心理カウンセラーが患者から導き出すものや
制御するものから、さらに制御しえないものまでが浮かび上がったり。
クレインの壺の表と裏を行き来するように
エピソードたちが互いを裏打ちするなかで
物語は広がり、重なりあい、交じり合って、
でも混濁することなく、それぞれのエピソードの閉塞や
その中でのキャラクターたちのあがきを浮かび上がらせていく。

時事ネタというわけでもないのだろうけれど、
フィーチャーされたあの宗教団体の逃亡犯が
少年に導かれた文学表現のなかで色を変えていく姿に
なにかスイッチが入ったような心持ちになって、
そうすると、舞台上に表される表現の一切れずつが
観る側にいくつものニュアンスを貫き始める。

そこには、かつてのような、
たとえば「世間」といった価値観の醸成はなく、
それぞれの広がりが、交わり、時には絡まり織り上り
互いにどこかどんつきに向かって歩いていくような
感覚があって。
その肌触りに違和感がなく、
物語というか劇場の外側の「今」にしなやかに重なり息を呑む。

終盤、キャラクターたちがかぶった
獣の仮面の容姿や表情の、
それぞれが自らを貫くごとに生まれた
澱の重なりのようなものの醜悪さと観る側を浸潤していく力に驚愕。
そして、その仮面を脱ぎ捨て自らの表情を取り戻す
それぞれの晴れやかな表情に、
作り手が描こうとした「進化」の質感を
焼き付けられるように感じて。

初日を観て、舞台に巻き込まれていく中で、
自らのリアルな時間が身を委ねている感覚に
新たな俯瞰が生まれて衝撃を受けたのですが、
楽日には、さらにそこから無意識に踏み出している
自らの感覚への気づきがあって。
終盤、張りぼてっぽい獣の仮面が舞台の世界に置かれ、
さらには外される。
作品をすべて凝縮したようなその表現の洗練に
目を見張り肌が粟立ったことでした。
師匠の部屋(上演終了しました。ご来場、誠にありがとうございました。)

師匠の部屋(上演終了しました。ご来場、誠にありがとうございました。)

アリー・エンターテイメント

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2012/08/15 (水) ~ 2012/08/20 (月)公演終了

満足度★★★★

水素74%
落語である必然性はないとはいえ、
落語というお題がついているからこそ、
導かれ笑える部分があって。

知らず知らずのうちに、作品に惹きこまれ見入ってしまいました。

ネタバレBOX

登場人物の関係が、奇を衒ったものでないにもかかわらず、
じわじわと三すくみになっていくなかでの空気の変化が
絶妙によくて。

枠の部分とそれぞれのロールの引力が
少しずつ互いと重なりながら、
浮かび上がってくる。
役者たちが、半歩ずつ踏み出しながら
その空気をエスカレートさせていく。

3人の役者たちそれぞれの味わいが見事に抽出されていて
見ごたえがありました。
アフタートークにもあったように、折原アキラの身体が
ずるいくらいに舞台を滑稽にしていく。
はみ出すわけではなく、その場の密度を高めて滑稽なのです。
また、浅野千鶴の、どこかあざとくて悪~い微笑み(超褒め言葉)も絶品。
それが、靴の鮮やかな色や衣装とと妙に重なって
キャラクターの世界を暴き出していく。
近藤強の、表層のタフさとふっと垣間見せる脆弱さも絶品。

派手さもないし、
落語自体なんぞおくびにも出さないのですが、
その世界を何気に連想させつつ
だんだんに惹きこんで抜けなくしてしまうような
作品の力に掴まれてしまいました。
師匠の部屋(上演終了しました。ご来場、誠にありがとうございました。)

師匠の部屋(上演終了しました。ご来場、誠にありがとうございました。)

アリー・エンターテイメント

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2012/08/15 (水) ~ 2012/08/20 (月)公演終了

満足度★★★★★

Mrs.ficitions
落語というお題を、取り込むどころか、そこをゲートウェイにして、とんでもないウィットを持った世界が展開していく・・・。

やられました!

ネタバレBOX

物語のベースの発想がものすごくて、しかも、そのものすごさがそのまま貫かれてしまう展開がさらにすごい。悶絶しました。
「地獄八景亡者戯」のフォーマットが出てきたときにはにやにやしているくらいだったのですが、そこから出てくるわ、出てくるわ、落語の七変化。
「らくだ」や「死神」の切り取り方も鮮やかだし、
落語で語られるアニメも絶品。
パンクロックのコンサートに語られ始める「芝浜」にはもう大爆笑。

でも、そのアイデアにとどまらない、
会話や物語のくみ上げが
実にしっかりとしていて。
衣装にしても、容姿の作りこみにしても
メダルを落語家の階級にたとえたり、
パンク姿で料理や生け花を習わせてみたりと
舞台上にあることがいちいち面白く、
そこに織り込まれた落語だからこその奥行きも生まれていて。

役者たちも本当にしなやかに切れていて、
要所要所の噺では、
上下もしっかりと作られ、語り口もよく
劇中劇ならぬ劇中噺として
十二分な見ごたえがあって。

観終わって、その総合力に圧倒されてしばし呆然。

これ、かなりすごい。傑作だと思います。



ラクト

ラクト

ブルーノプロデュース

東中野レンタルスペース(東京都)

2012/08/09 (木) ~ 2012/08/15 (水)公演終了

満足度★★★★

枠が滅失して
一応、お芝居を見に行くという意識とともに会場に入ったのですが、
その足掛かりが持てない中で
空気が流れて、惹きこまれていく。

舞台と客席の端境を失った中で、
くみ上がっていく虚実に
立ち位置を見いだせないままに、
でも、通常の演劇のフォーマットでは感じ得ないものが
流れ込んできて、
深く揺さぶられてしまいました。

ネタバレBOX

演者との距離の近さということでいえば、
昨今のお芝居には同様のものがけっこうある。
カフェ公演などだと、本当に近い位置に
物語が展開していく。
でも、この公演には、
物理的な距離による空間の一体感に加えて
物語としての枠が滅失していて。
明らかに舞台上の3人を観ているのですが、
それらを受け止めて対峙するための
物語としての骨組みや端境が降りてこない。
枠がないので、
空気は移ろい、色は日和見のごとく変化して
観る側もあるがごとくに流されていく。

でも、それが少しもバラけて感じられないのですよ。
演じる側に場にあるに足りる強さがあって
互いが互いの引力に委ねつつ
自らのロールを剥ぎだし空気を作り重ねていく。
その一瞬ごとが、息をのむほどにビビッドで
重なりが混濁せずエッジを持ち、
観る側を虚実の端境に置き、
刹那達の細微な揺らぎに染めてしまうのです。
高揚に背景がなくても、そこに理が生まれ
沈黙に言葉がなくても、醸される空気が観る側の心を揺らしていく。
語ること、次第に溢れていくもの、そしてそれを受け取る姿、
そこには枠に頼ることなく、
役者たちの作る求心力で
観る側を場に繋ぎ、見つめ続けさせる強さがあって。
役者たちが自らを置くその空気に
同じようにその空気に身をゆだねてしまう。

突然、場の出来事を嘘と言う。
わかっていて、なのに驚き、
そのことで、振り子のようによどみから抜けて
更に世界に閉じ込められてしまう。
そして、終演後には、
それが川に投げられた救命浮輪のように感じられました。
もし、その浮輪につかまることがなければ
終演後にも、
虚実の端境から抜け出せなかったかもしれない。

役者たちそれぞれの想いに染まりつつ、
時間の概念すら失い、、
やがて、唐突に役者たちが退出し、
流れがあっけなくその部屋を離れ、
終演となります。
一呼吸おいて、突然まわり始めたシーリングファンに
押し出されるように我に返る。

観終わって、これが何かと問われるならば、、
純然たる演劇なのだと思うのです。
でも、残る感覚というか、
記憶としておかれる場所が
常とは明らかに違っていて。
もっといえば、
残っているものは記憶とは別の、
感情側に差し込まれた何かのような気がして。

自らが持った感覚が、
演じた役者たちの印象とともに、
終演後もずっと消えることがありませんでした。

荒野1/7【全日程終了・ご来場いただきました皆様ありがとうございました!】

荒野1/7【全日程終了・ご来場いただきました皆様ありがとうございました!】

鵺的(ぬえてき)

ギャラリーLE DECO(東京都)

2012/08/07 (火) ~ 2012/08/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

個々が突き刺すものと、その重なりが引き込むもの
舞台上に束ねられ散逸していくキャラクターたちそれぞれのベクトルに目を奪われつつ、それぞれが歩んだ時間に染められていても抜けきることのない、血の肌触りに強くとらえられました。

ネタバレBOX

初日を観ました。

予想外の場内のレイアウトに少し戸惑う。
早めに入場できたのでとりあえず中央付近の席にすわる。
なんというか、舞台と思われるスペースには
どこかぶっきらぼうで、
そのくせ開演前から観る側を引き寄せる雰囲気があって、
座席に腰を下ろしたとたんに観る側にある種のテンションが生まれて。
そして、音楽が舞台上に近づき、
最初の人物が現れ、物語に切り取られた時間が
動き始めます。

終演時には中盤からのシーンに圧倒され
印象が埋もれてはしまうのですが、
登場人物たちが揃うまでの場の組み上げが
実にしたたかで・・。
一人が二人となりさらに加わっていくたびに
細微に空気の色が変わり
人物やその場のディテールを追わせる力が舞台に生まれていく。
そして一人を残して舞台が満ちるころには、
観る側は彼らの関係とそれぞれが抱くもの、
そして彼らがここに集った理由を彼ら自身とともに
知ることになって。

ひたすら正面を向くキャラクターたちは
それぞれの風貌や想いや、
その境地にまでいたる彼らが過ごした時間や感覚の切っ先を
観る側に突出し刺し貫いていきます。
キャラクターどおしにとって相容れることのない軌跡を
観る側は立ち向かうようにすべて受け取って・・・。
その重なりに、彼らがそれぞれを貫けば貫くほど浮かび上がる
原点の質感が広がっていくのです。
そして、枠組が露わになるなかで
最後の登場人物が現れ、
彼らが切っ先の後ろに抱く同じ時間を
同じであり異なるその立ち位置から
さらに揺さぶりあからさまにして。

彼らの実存感の先にいくつもの視点から描き出れていく
父母の姿が概念でなくその時間を生きる男女となり
兄弟の時間が歪みの中に瑞々しさをもって観る側を取り込んでいく。
再び集った彼らの決断の向こうに
その事件から背負ったものだけにとどまらない
彼らが生を受け、その場にあり、更に歩み今を過ごすことの質感が生まれ、
それぞれの距離に至る彼らに流れる同じ血の逃れえない感触に
強く深くとらえられて・・・。

気が付けば、
目の当たりにした荒野の風景の先に描き出される、
作り手の世界に首までどっぷり浸され、
彼らが、さらには自らも含め人が、
その血を内包して歩み続けることの、
逃げ場のない、冷めることのない温度を持った禍々しさに
立ちすくんでしまっておりました。

Nobody is Perfect

Nobody is Perfect

劇団ガバメンツ

APOCシアター(東京都)

2012/08/03 (金) ~ 2012/08/05 (日)公演終了

満足度★★★★

メリハリの鮮やかさ
前半の部分と後半部分の裏表の作り方が、
ひとつずつきっちり作りこまれていて。

メインディッシュの如く飾られた
完全犯罪を絶妙にそぎ落とし、
その先にある女性の心情を浮かび上がらせる
作り手の語り口にしっかりと取り込まれました。

ネタバレBOX

場内にはいると、
舞台上のテーブルの上におかれた
「T」の文字がまず目に入る
さらには、舞台奥の棚には、
たくさんのアルファベットのパネルが
飾られていて・・・。
舞台で起こることの
虚構の匂いに浸されながら開演を待ちます。

前半に織り上げられる映画部分の質感が、
とてもしなやかな薄っぺらさで作り上げられていて、
物語の恣意的な薄さや荒さが、
観る側に物語のベースをくっきりとわかりやすく
置いていく。
そのことがきっちりとバネになって
後半に大きなふくらみが生み出されていく。

骨組みのリプライズの中に
前半を彩ったさまざまなトリガーが
鮮やかにトーンを変え、
同じニュアンスに別のテイストを立ち上げ映える。
その見せ方にも、完全な対称形を作るのではなく
前半の洒脱さと後半のベタな雰囲気の要所を際立たせるような
絶妙な枠組みや流れの作り方と重ね方があって。

役者たちにも、
舞台の密度を一瞬に立ち上げげコントロールする切れと足腰があって、
変化していく舞台のなかで
物語の要素をにじませることなく、
刹那の色を変えシーンに質感を作り
前半・後半それぞれの流れを織り上げていく。

まあ、落語でいうと「青菜」のような構造を持った作品で、
後半の下世話さが
前段の仕込みを受け取り
ある種のグルーブ感に変わっていった時点で
作り手や演じての勝ちなのでしょうけれど
この舞台の枠組みの作り方やさまざまな隠し味は、
その先に、ある種のペーソスまでを生み出す領域にまで
作品を導いていて。
物語のラストの抜け方が
外枠に綺麗に重ねあわされて鮮やか。

映画からの借景や
棚に残っていく文字のような全体を貫くものから、
犬と猫の使い分けなどの裏表の作り方や、
さまざまに埋め込まれた小さな仕掛けにも
心惹かれて。

ちゃんと、その奥行きが観る側の記憶に残る
秀逸なエンターティメントを楽しむことができました。




国民の生活

国民の生活

ミナモザ

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2012/08/01 (水) ~ 2012/08/06 (月)公演終了

満足度★★★★

しっかりした骨格に支えられて
4つの短編それぞれに
物語がしっかりと組み上げられる一方、
舞台にはつねに中間色が醸され、
単純に仕組みを描くだけではない
作り手の創意が伝わってきました。

ネタバレBOX

初日を拝見。

3方を客席に囲まれた舞台、
主宰の家財道具の一部が並べられて、
演劇と現実のボーダーがあいまいにされて・・・。

その中に置かれた4つの物語に浮かび上がる風景には
どこか「今」のカタログ的な風合いがあって、
でも、それぞれの物語に足を踏み入れるとは
その表見からはうかがい知れない奥行きが用意されていて。



営業の勧誘に躊躇して、さらに躊躇して、
でもいったん縛めが緩むと
疑似FXにのめり込みコントロールを失っていくサラリーマンの姿、

一夜の出来事の対価にお金を渡す男と、
それを受け取らない女。
女がしなやかに組み上げるロジックに目を瞠っているつもりが
そこに男の価値観や抱くものがさらに鮮やかに浮かび上がってくる。

自称詩人と同棲する女
その滑稽さを現実が次第に侵食していくなかで、
社会的なセーフティネットやモラルにまで話が至り、
でも、その先には、それらでは満ちることのない
遍てきな女性の内心が削ぎ出され舞台に漂う。

その女性と、
隣り合ってデモの始まりを待つもう一人の女性。
それぞれのライフスタイルは違うけれど、
そこには共通する領域が生まれ、
でもそれは、デモ本来のベクトルとは
異なる肌触りを持ったもので・・・。

あからさまに一つずつの物語のテーマを
しっかりと伝える力が舞台にはあって、
でも、描かれるのは、そのテーマの内側にありながら
テーマとどこか乖離した現実であったり空気感であったりする。

そこに、本当の意味での現実を見据えそぎ出す
作り手の力をしっかりと感じることができました。

社会派というレッテルをもらうことが多い作り手ですが、
そこには社会の枠ではなく、
その中の人を描き出す力があって。
重なった作品から浮かび上がってくる作り手のスタンスや
質感をとても豊かに感じたことでした。



MY SWEET BOOTLEG(ご来場ありがとうございました!御感想お待ちしています!次回は10月上旬、同劇場にて)

MY SWEET BOOTLEG(ご来場ありがとうございました!御感想お待ちしています!次回は10月上旬、同劇場にて)

MU

BAR COREDO(東京都)

2012/07/23 (月) ~ 2012/07/31 (火)公演終了

満足度★★★★

わかりやすくしっかり
場ごとに意図やニュアンスがしっかり切り分けられていて、
すっと物語がはいってくるし、
しっかりとした踏み込みや質量もあって。
開演前にとなりのバーで呑んだカクテルもおいしく、
心地よく深く、舞台を楽しむことができました。

ネタバレBOX

対面の客席なのですが、
開演すると舞台にしっかりとした空気が作られて、
向こう側をまったく意識せず物語を追って行ける。

場所の設定をほとんど動かすことをせず、
人を動かして、さらに空間の色を役者たちがすっと塗り替えて
物語を紡いでいきます。

シーンの内側に役者たちが織り上げる
ニュアンスがとてもはっきりしているのが良い。
それが観る側に足跡を刻み、
物語の成行きをクッキリとした質感と共に追わせる。
一つ間違えばあざとく感じるような役者たちの演技も、
その場には実にしっかりと馴染み、
だからこそコミックの本家側ととそれを剽窃し展開する側の関係、
さらには、それぞれに関わるものの強さや危うさが、
場に重すぎず軽すぎない、
貫きと変化の感触を織り上げいく。

舞台の上手側と下手側の空気の密度が
場ごとに異なることも、
一つずつの刹那に変化やエッジを与えていて、
気が付けば、しっかりと舞台の肌触りの変化に取り込まれていて。
極端に重厚だったり軽質だったりはしないのですが、
刹那の可笑しさと、滲みだしてくるものが
個々のキャラクターたちの色にさらなる深みを与えて。

公演がさらに重なれば、
舞台の内にある空気が
もっと研がれ、
一つの刹那にもう一段の切っ先が生まれるような感じもあって。
会社帰りなどに
好適なエンターティメントだと思います。

ともだちのそうしき

ともだちのそうしき

RONNIE ROCKET

大吉カフェ(東京都)

2012/07/14 (土) ~ 2012/07/16 (月)公演終了

満足度★★★★

2バージョンを拝見
今年3度目のともだちのそうしき。

観れば観るほどおもしろいものなぁ・・・。
今回は時間の都合で2バージョンしか見ることができませんでしたが、
両バージョンとも今までとはまた異なる味わいがあって、
がっつりと引き込まれて。

この作品、9バージョン全部見ても飽きることはなかったと思います。


ネタバレBOX

7月14日の14時の回および15日20時の回を観ました。

・7月14日14時の回
 ザネリ/渡辺詩子

ザネリは初参戦、一方渡辺詩子は今年だけでも3回目、vs村井美樹/vs菊川朝子を観ています。ただ、今回はこれまでと反対のロールでの演技。

冒頭、トーンの微妙なかみ合わなさを感じて。
場の密度は立ち上がっているのですが
二人の空気が微妙に混ざり合っていかない。
でも、そのことが、見知らぬ二人が出会い
亡くなった友人を語り合っていくという展開に
ステレオタイプにならない質感と
厚みを与えていきます。

ザネリの醸しだすテンションが、
キャラクターに対する記憶を
すっと浮かび上がらせ、
一方で渡辺詩子の言葉は
観る側に同じ人物の異なる側面を積み上げていく。

物語を知っていても、
観る側をちょっとどきどきさせるような
役者達の単純に迎合しないキャラクターの作りこみが
二人の空気からそれぞれに解ける友人の姿の
どこか歪な部分(ほめ言葉)に
リアリティをすっと編み上げて。

見終わって、ある種の疾走感と
しっかりと役者達に引っ張られ続けた充実感のようなものを
感じることができました。

・7月15日 20時の回
 百花亜希/中谷真由美

この二人は前回と同じ組み合わせの同じロール。
だからというわけでもないのだろうけれど、
攻めてたなぁ、二人とも。
導入部からキャラクターの作りこみに迷いがなく、
そのキャラクターを纏って、
物語の枠は守りつつも
律儀に縛られることなく
どこかヒリヒリするようなテンションとともに
空気を醸成していく。

ロールが、個々のキャラクターへの
しなやかかデフォルメとともに紡ぎだされ、
観る側に挑むようなチャレンジングなメリハリとともに
台詞の行間すら越えて編み上げられていきます。
二人の役者と観る側のせめぎあいの中から
その刹那に誘い込み、嵌りこませ、のめりこませるような
質感を生み出していく。
単にラフに自由に演じているわけではない。
戯曲自体はきっと、
恐ろしく周到に読み込まれていて、
だからこそ、遊ぶことが出来る境地があって。
時には所作をそろえてipadをスクロールさせて
シーンを勧めるなどという
小洒落た仕掛けも編みこんで・・・。
でも、一方で、空間の作りこみに観る側を引き込んでも
守りに入らず、
むしろ作りこんだ世界を足場にして、
物語に繋がれた舫の長さぎりぎりまで
演じることを遊んでいく。
時として、地語りの部分の入り込む隙すら奪ってしまうような
そのかぶき方や、戯曲からのぎりぎりの踏み出しが、
観る側にある種のグルーブ感すら与えていくのです。

なんだろ、ずっとわくわく観て、
とても新鮮な感覚で
物語を追いかけていた。

べたな言い方ですが本当におもしろかったです。








涼~すずみ~水

涼~すずみ~水

BoroBon企画

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2012/07/15 (日) ~ 2012/07/19 (木)公演終了

満足度★★★★

場を豊かに変えるお芝居の力量
場内に入ると、少々ラフな感じで舞台が組まれていて、
椅子の並べ方などもどこか手作り感があって。

でも、供されるものは実にしっかりと作りこまれていて。
そもそも、ワンドリンク付ということで開演前に注文したカシスオレンジは
暑さも時間もすっと霧散するような絶品だったし、
舞台はその味に負けないほどにきっちり作りこまれていて・・・。

見終わって、
なにか、とても贅沢をさせていただいた気分になりました。

ネタバレBOX

*あやめ十八番(堀越チーム)/「Love potion #9」

男を問い詰める女性の姿と
主宰の語りでまずは観る側を舞台に引き込んで、
一枚の消費者金融のカードをキーにして、
物語を組み上げていく。

二人の女優がロールをきっちりと務め上げる。
コアの物語の中心として
キャラクターが
清純に、あるいは艶かしく、さらにはとり憑かれたように描かれ、
外側として、顛末の視点となり、常に舞台にあって
枠組みを制御し、展開を束ね、場面の表情を背負い、
空気を束ねて観る側に物語の質感とともに流し込んで。

男優達もキャラクターの立ち位置がくっきりとわかるお芝居。
チャラさにしても、普通さにしても、意思の強さにしても、
ストレートプレイとはちょっと異なる語り口で
物語の骨組みを組み上げて。

音楽のクオリティも担保されており、
昭和っぽい曲のメッセージ性が物語のニュアンスをしっかり繋いで。
また、このフォーマットの中で、
主宰のパフォーマンスもしなやかに生きる。

見ていて表現が古風で新しく多彩なのですよ。
今風の愛情の描き方などにも、
べたさと洗練があり、
荒事とは少々違うのでしょうが
スリッパで頭を引っぱたくような誇張に始まって、
常磐津や浄瑠璃のごとく
うん十年前の流行り歌風の曲で物語を進めるのも
薬を飲んだ態のお芝居にしても、
ストレートプレイでは描き得ない、
歌舞伎的なスピリットや表現の自由さが縫込まれていて。
別に隈取をしているわけでも
見栄を切るわけでも、六方を踏むわけでもないのですが、
こういう表現の多彩さに、
物語を処する伝統芸のノウハウが裏打ちされている気がして。

時間を忘れて見入ってしまいました。

*BoroBon (水下チーム)/「阿房列車」

名前だけは聞いたことがある戯曲だったのですが、
実際の上演を観たのはこれが初めて。

役者にゆだねる部分の多い一方で
いろんな仕掛けに満ちた戯曲だと思う。
舞台の空気にしても、夫婦の距離にしても、
間にしても、
観る側が前のめりになることなく
そのままに染められてしまう。

戯曲に仕組まれた緊張と弛緩と
役者たちが織り上げる舞台の密度が
絶妙にリンクして、
ちょっとした不条理や
記憶のあいまいさまでが、すっと実感に置き換わる。
冒頭のクイズや
アイスクリームを売る女性の歩く方向などが生み出すズレから
やわらかく足元が揺らぎ、
車内で過ごす時間がすぅっとぼやける。

ちょっと不思議な感覚、
実をいうと、中盤あたりで
舞台の時間にとりこまれるような感じで
やわらかい睡魔が降りてくるような気配を感じたのですが
台詞のひとつずつが意識から消えずに
クリアに積もっていたりも。
なんだろ、ふっと舞台の空気の恣意な弛緩に引き入れられて
しまったのかもしれません。

観終わって、二つの作品が
それぞれの印象を重ねあうこと合うことなく
でも、ひとつの公演として、互いをふくよかに映えさせて。

中篇ふたつをたっぷりと楽しませていただきました。

このページのQRコードです。

拡大