沈没のしらぬゐ【池袋演劇祭にて豊島区町会連合会会長賞受賞!!有難う御座いました!!】 公演情報 蜂寅企画「沈没のしらぬゐ【池袋演劇祭にて豊島区町会連合会会長賞受賞!!有難う御座いました!!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    解ききる力
    江戸の風情をそこはかとなく取り込みながら、
    怪談の態で紡がれる物語。
    一つずつの因果が語られる中で
    観る側には恐ろしさより、
    秀逸な悲劇の構造が残って・・・。

    舞台の世界から抜けられなくなりました。

    ネタバレBOX

    物語の外側が観る側に形作られていく前半は、
    夏の江戸の風情や、
    人形の外連が観る側を舞台に引き留めて・・・。
    役者たちが織り上げる雰囲気に
    川風が流れていきそうな感じすらして・・・。

    その舟が三途の川の上流に入ると
    時間の舫いがすっとほどけ、
    顛末とそこにそれぞれが背負う因果が
    ひとりずつ、そしてそれぞれの物語としてほどけていく。
    歌舞伎のような
    大上段での「しかとご覧あれ」みたいな大仰さがないので
    最初は謎解きという印象はあまりなく、
    とてもしなやかに江戸の市井の時間の中に
    重なりあった記憶がひとつずつ、観る側に置かれていく感じ。
    それが次第に冥府との端境を流される舟に乗せられた
    想いのリアリティを順番に剥ぎだしていく。

    役者たちの個性も
    時代の規律にしっかりと染められつつ
    とてもナチュラルに伝わってきて。
    端々に江戸の暮らしの匂いを漂わせつつ、
    ロールが抱く想いのコアを
    観る側の感覚に違和感なく描き出す。
    なんというか、それぞれのお芝居に戯曲との相性の良さがあって
    時代劇というジャンルにどっぷりであるにも関わらず
    観る側にその刹那のキャラクターを
    しなやかに流し込む力を感じたりも。

    で、物語は、狂言回しの人形遣いと
    揺らぎ進む舟のきしみに促された
    いくつもの一人語りの態であけすけに放たれた思いとその重なりに
    綺麗に内までバレきって、
    一人の女性の死を介しての
    絡まる想いは切なく幾重にもほどけ、
    それぞれの糸に正されて観る側に置かれて・・・。
    登場人物それぞれが背負ったものとの足掻きの先に
    一本の首つり組みひもから引き出された
    悲劇の構造が鮮やかに浮かび上がって。

    まあ、しいて言えば、
    初日ということでしょうか冒頭の部分の密度に
    すこしルーズな部分を感じもったいなくも思ったのですが、
    終わってみれば、
    時代劇というキャンバスに書き込まれた
    人が持つ想いのありようそれぞれに
    しっかりとらえられておりました。

    ほんと、面白かったです。


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    2012/09/08 08:49

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