りいちろの観てきた!クチコミ一覧

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だから、1周年なんだってばぁぁぁぁ!!!!汗

だから、1周年なんだってばぁぁぁぁ!!!!汗

38mmなぐりーず

王子小劇場(東京都)

2012/12/21 (金) ~ 2012/12/25 (火)公演終了

満足度★★★★

ただのアイドルにあらず
持ち歌倍増で、しかも一曲ごとに舞台に広がるニュアンスがあって。

歌うとか踊るというスキルを見せることから
表現することへの踏み込みがステージにあって。

ほんと、観ていてわくわくしました。

ネタバレBOX

初日を観ましたが、
公演期間中にさらに進化や新たな踏み出しがありそう。

単に女優たちがなすエンターティメントに留まらない
何かに育ちそうな気がしてならないです。

もう一回観たい。さらに突き抜けていたら、
★をもうひとつ・・。

テロルとそのほか

テロルとそのほか

工場の出口

アトリエ春風舎(東京都)

2012/12/01 (土) ~ 2012/12/07 (金)公演終了

満足度★★★★★

演劇という表現の立体感
プロセス共有チケットで観劇。描かれる今が戯曲の文字面から肌にやってくる感覚のさらに向こうに至るまでの道のりを体験させていただけたように思います。

作品自体の面白さや秀逸さに加えて、その立ち上がり広がっていく過程に、演劇という表現の立体感のようなものを感じました。

ネタバレBOX

「プロセス共有チケット」というのは稽古やゲネプロのすべて、加えて本番を1度拝見できるというチケット。
休日の昼に稽古を4時間ほど、
その後夜に通し稽古を1度、
本番を2度拝見しました。

演劇のWIPや公開稽古は何度か拝見したことはあるのですが、
戯曲を拝見させていただき、
それが演劇に立ち上がり進化していく姿を体験するのは初めて。
最初の稽古は、ざっと戯曲を読みながら
いくつかのシーンの稽古をひたすら眺める。
様々な試み、行きつ戻りつ
紙に記された世界の印象が
空間に立ち上がる空気の中で幾重にも塗り替わっていく。
役者たちからやってくる世界は
戯曲どおりの言葉で構築されているにもかかわらず、
言葉ではなく、一期一会という感じで空気を立ち上げ、
観る側に流し込んできます。
びっくりするほどぼんやりした印象になることもある一方で、
鮮やかな切れが現出してぐぐっと前のめりにさせられたり、
時には戯曲ではまったく気づきえなかった、
鮮烈なテイストに突然襲われることも。
地道でタフな作業だと思いつつ、観ていて全く飽きない。

二度目にお伺いしたのは夜の通し稽古でした。
当然に従前に観たシーンもあったのですが、
それらが作品に組み込まれると、
さらに新しい意味や意図を纏って伝わってくる。
戯曲もさらに何度か読ませていただいていたのですが、
そんなこと綺麗に意識から消え失せて、
場ごとに浮かび上がってくるものを追いかけ、揺さぶられ、
浸りこんでしまう。
シーン間の密度の差異が
作品の流れに馴染んでいない部分もあったものの、
個々のロールたちが背負うテーマにはエッジが生まれ
観る側に置かれて。
そして終わってみれば、
組み上がるシーンの向こうに
今という時代のベーストーンのようなものを感じる。

公演(本番)は二回観ました。
通し稽古で感じていたシーンの噛み合わせのノイズというかばらつきが
しなやかな繋がりのための絡みとなって
ひとつの作品の息遣いにまとめ上げられていて。
そして、その中だからこそ、
観る側を伝わり染めるモノローグに織り上げられたものがあって。
戯曲としては従前に読み、観たものと同じものだし、
個々のロールが背負うものの色が大きく変わったわけではないのですが、
そこには、本番の芝居の鼓動のようなものがあって、
その響きがあるからこそ
時代の質感に浸され伝わってくる感覚がある。

そして、最後に見た12月6日のソワレでは
その芝居の鼓動にさらなるニュアンスが生まれていました。
12月2日で垣間見えていた、
ロールたちが抱えているものの先にあるなにかが、
旨くいえないのですが、
今の時代の呼吸のように思える。
一人ずつのロールが抱くものや、
抱くものやその場にあることが、
理性を乗り越えて肌に伝わり残る。
だから、よしんばそれがテロとして熟し落ちても、
その踏み出しの感覚は、
違和感や拒絶を前提としての傍観ではなく、
理解の範疇での他者の姿としておかれるのです。

なんだろ、本番を観てたどり着き、
さらには、2回見ての気づきに
演劇というものだから表現しうる
その質感の幾重にも重なるリアリティを感じて。

別に本番だけを見ても、
しっかりと捉われる作品だとは思うのです。
加えて、観客が稽古から加わっていくということの
本来の目的には何一つ貢献できていなくて
申し訳なくも思ったりもして・・・。
でも、観客としては、稽古から拝見させていただき、
その数mm内側から作品を感じたからこそ訪れる感覚もあって、
よしんば、それとて演劇なるものの表層にすぎないとしても、
芝居をなすということで生み出される表現の
観客としての常ならぬ奥行きを垣間見る
とても貴重な経験となりました。
傭兵ども!砂漠を走れ! -サバンナ&オアシス-

傭兵ども!砂漠を走れ! -サバンナ&オアシス-

劇団6番シード

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2012/11/14 (水) ~ 2012/12/09 (日)公演終了

満足度★★★★

冗長さは感じないけれど
サバンナ編は見ることができずオアシス編だけなんとか。

ぐぐっと惹かれる瞬間もあり。
ひとつずつのシーンやパーツには
作りこみを感じつつ、
疾走間も確かにありつつ。

でも、物語に、いろいろに
膨らみきれない部分を感じたりもしました。

ネタバレBOX

オアシス編、女性だけの戦闘部隊・・・。
発想は面白いと思うし、そのアイデアをある程度生かす力も
舞台にはあって。
また、次第に視野がひらけ、何人かの兵士については
その背景に抱えるものも浮かんでくる。
戦闘シーンのテンションや、兵士たちのタフさ、
銃器をもっての男勝りの身のこなし、
さらにはシーンごとのミザンスの作り方や、
役者たちの感情の表し方などにも、
観る側を凌駕するだけの
力量を感じる。

ただ、観る側として、
シーンごとの色を受け取ることはできても、
あるいは物語の概要を掴むこともできても、
舞台が描こうとするそれ以上の流れや広がりを
十分に感じることができないのです。

新兵の専門分野や剣玉の材質など、
伏線もいろいろに回収されてはいるし、
少女との出会いから、その背景にあるものなども、
描きこまれてはいるのですが、
それらがエピソードの時系列での繋がりの範疇から
さらに広がっていかない。
ひとつのシーンから発展して次の展開に移るなかでの、
描きこみに、なにかが欠けていているような気がする。
いくつものシーンが魅力的ではあっても、
そこから彼女たちの世界に巻き込まれるような感じが
いまひとつやってこない。

舞台上の世界にのめりこめない要因のひとつには
登場人物達が場面ごとに対峙しているリスクの程度や方向が
よく見えないこともあって・・・。
明確になっていれば舞台の密度は
場ごとに安定して物語がもっとクリアになったかも。
兵糧責めにあって、
一袋の柿のたねを分け合う状況であったのが、
他の状況が変わらないのにも関わらず、
食料の調達(狩り)が始まったのにはかなり面喰らいましたが 、
それ以外の部分でも、
ひとつの場面というか局面が踏み出し、
次の場面が展開する必然が
かなり削ぎ落とされてしまっている感じもして。

まあ、シーンの個々からやって来るもの自体は
役者達ががっつり作りこんでいたし、
戦闘シーンなどの美術やSEも秀逸で
飽きることはなかったのですが、
でも、一人の命を思う気持ちや、
ラストシーンの実存感がより伝わってくるためには、
さらなる、戯曲としての細心さや緻密さが
必要などではと感じました。

ちなみに、もし、この作品がコメディであるというのなら、
加えて、さらにもう一段の
シーンのしたたかな繋がりが必要ではとも思ったり・・・。

役者や美術などは悪くなかったとはいえ、
舞台としては、アイデアが、
さらに進化する余白もたくさんあるようにも思えました。

朝にならない

朝にならない

チタキヨ

新宿歌舞伎町 ATTIC(東京都)

2012/11/23 (金) ~ 2012/11/25 (日)公演終了

満足度★★★★

ロールの描き込みのうまさ
三つのロールの力関係の変化が
無理なく流れていくのは、
その裏にキャラクターがかかえるものがしっかり描き込まれて
いるからなのだと思う。

女優たちの紡ぎ出す個性に惹かれて
そのひと時に嵌ってしまいました

ネタバレBOX

シーン0的な冒頭の
ちょっと常ならない女性の雰囲気がしたたか。
広めのバースペースでの芝居の
場の空気をすっと演劇の中に手繰りこみ、
それは、後半を際立たせる伏線にもなっていて。

3人の女性たちの異なる色が、
一人の男を軸に次第に別の色に解けていく。
そこには、互いが互いを剥ぎだしていく面白さがありつつ、
その姿にロジックが際立つのではなく、
役者たちが組み上げるキャラクターたちの
想いの揺らぎが色として豊かに広がっていく。

それぞれが抱える危うさや思い込みに、
表層の事実からもう一味奥まで
フォーカスが届いているのが良い。
役者たちのロールの作りこみに足腰があって、
思いが崩れていく姿に
観る側にしっかりとした質感が置かれて。

バーの雇われオーナーの自負が、
じわっと透けてくる感じも
タレントの目のやり場に困るような容姿に隠された
浪花節のような人生の俯瞰も、
婚約者を名乗る女性の
とどめることができずにしみだしてくるような狂気も
単に観る側の目を奪うだけではなく、
3すくみの場の揺らぎをそれぞれの色で照らし出していく。

表層の女性たちの風情で観る側を捉え、
物語の展開に表れる女性たちの想いのあからさまさに
ぐいぐいと引き込まれて。、
でも、その顛末に、それぞれの女性たちの
どこか行き場を失ったような今が醸し出す
ペーソスにひたされてしまう。

脂の乗り切った役者たちの
心情の現われ方やその色の変わり方が実にしなやかで、
物語の面白さに加えて
役者を観ることの楽しさもがっつり。

たまたま席が足元30cmをピンヒールが通過したり
役者たちの感情や色香が
まっすぐに伝わってくる場所であったりもして
ドキドキわくわくものだったのですが、
それとともに、
女性たちそれぞれの修羅場のあとの
ティーパーティ(?)に至った朝のけだるさにも
しっかり浸されて・・・。

作り手の腕と役者たちの力に
たっぷりと満たされてしまいました
明るい家族、楽しいプロレス!

明るい家族、楽しいプロレス!

小松台東

高田馬場ラビネスト(東京都)

2012/11/21 (水) ~ 2012/11/26 (月)公演終了

満足度★★★★

役者の圧倒的な描写力を映えさせるリング
古き良き時代(といってよいのかわからないけれど)の家族の話。
そこに編み上げられる時間のふくよかさと
役者たちの力が描き出す人物の実存感に
息を呑みました。

ネタバレBOX

食堂と居間の舞台、
テレビとビデオが下手におかれて・・。
そんなに貧しい感じもなく、
むしろどちらかといえば豊かな家庭なのだと思う。

物語としては、恣意的に複雑さを避け、
その家族と訪れる人々のその場での風景を
切り取って見せたような感じ。
でも、脚本の秀逸は、その風景のあるがごとくのままにして、
登場人物たちがの抱えるものや心情を描き出していきます。

そして、そこに置かれた役者たちの表現力に目を瞠る。

その家の姉弟たち、弟の小学生には
子供の放埓さと無垢さが絶妙な力加減で編み込まれていて。
役者から伝わってくるもののすべてが、
まるで魔法のように一人の少年のものとして
観る側に刻み込まれていく。
姉の中学生の不機嫌さもしかり、
思春期の自らがコントロールしえないような感覚が、
少女の微かな危うさをまじえて組み上がってくる。
母親の、母としての包容力と、
その年代の女性としての歳を重ねる心情には
観る側をふっと取り込むような奥行きがあり、
その友人の女性の、
子供を愛する心情も、そのキャラクターや
一人の女性の歩み続ける時間をしなやかに取り込んで
紡ぎ出されて。

姉が恋心を描く同級生には、
少しだけ姉からの見え方を意識したようなデフォルメがあって。
以前に観た非常に狭いスペースでのお芝居でも
想いの現し方に感心した役者さんですが、
今回のお芝居にも
デフォルメの切先から引きだされた思春期的な生々しさがありました。
喘息持ちの親戚のおにいさんの突っ張り方にも
可笑しさに加えて、ちゃんと裏側を垣間見せるニュアンスがあって。

父親には、男としてのカリスマ的な実存感があって。
親としてだけではなく、夫として、社長としての顔が
男としての生き様を編み上げて
その一つずつの態に華がある。
妻が離婚を踏みとどまる理がしっかりと作り上げられていて感心。
また、父の友人の醸し出す、
胡散臭さにも心を惹かれて・・・。

しかし、何よりも凄かったのはお爺さん、
これまでも、いろんな舞台で、
役者のお芝居の秀逸さは見知っていましたが、
今回の演技は更に突き抜けて藝術的ですらありました。
一瞬出落ちかと思わせるようなインパクトも下地に過ぎず、
そこに重ねていく老人の描写に息を呑む。
視線の動かし方で老いを表現しつつ時間を紡ぎ、
言葉の枯れを操って場の空気をすっと染める。
そこまでのリアリティに自転車の変速機ネタを
てんどんでのせていくのが、 もうたまらなくおかしくて。

役者たちの力が鮮やかに引きだされ、
解き放たれ、さらにそこから踏み込んで、
それが、ある時代の家庭の風景として
きちんと観る側に収まっていく。
そして、その場にあって、その時代の当たり前の時間を過ごす、
家族とそれを取り巻く人々の一人ずつが
とてもいとおしく思えてくるのです。

美術や照明なども、とてもオーソドックスでシンプルなのですが、
織り込まれたプロレスネタやひょうきん族の音声などが
場をその時代に染めてくれる。
また、シンプルであるがゆえに、作りこまれた役者たちの演技が
リングのプロレスラーの如く映えたりもして。

観終わって、良質の喜劇を観たような感触も残りつつ、
でも、少し時間が過ぎると、
それだけではない、
ゆっくりと降りてくるもう一段深い部分のペーソスがあって
深く染められてしまいました。
ご無沙汰してます。

ご無沙汰してます。

ホントに、月刊「根本宗子」

BAR 夢(東京都)

2012/11/10 (土) ~ 2012/12/02 (日)公演終了

満足度★★★★

テイストを作って・・・
やられました♪
コンセプトは当パンなどで読んでいたけれど、
テイストが降りてきた瞬間に、
体験しないとわからないような、
説明のできない面白さに満たされておりました。。


ネタバレBOX

あの、スペースに対面の客席・・・、
それだけでけっこうド肝を抜かれたのですが。

役者がしっかりとハマっているものなぁ。
普通の男女を演じる美男美女という、
ドラマの嘘が貫かれて
その展開が観る側をはこんでくれる。

作り手が、トーンの元ネタを
アイデアや構成力で役者達の魅力を歪めないように取り込んで。
編まれるもののひとつずつが悉く絶妙な厚みをもって面白い。
そもそも、
役者達があざといデフォルメでなく
素の美しさで、
観る側にとって馴染み深い世界の空気を剽窃(褒め言葉)し
コメディを紡ぐのが、目を瞠るほどに鮮やかに思えて。

前述の空間も、
奇を衒っているわけではなく、
作品を観る側に体現させるツールとしてうまく使われ、
音楽の使い方にも
作り手のセンスの冴えがあって。
演技の、客との距離に揺らぎひとつみせない精緻さと安定も凄い。
舞台には贅沢過ぎる洗練と切れがあり、
でもベタな部分が切り捨てられずに
あの、どこか懐かしい男女の世界として
観る側にちゃんとよみがえる。

なにか脳裏に染み付いているような感覚なのですが、
目の前にあからさまにドンっと表現されると、
今までには感じ得なかった新鮮さとベタさが混在して、
もう、めっちゃおもしろかったです。
地響き立てて嘘をつく

地響き立てて嘘をつく

ガレキの太鼓

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/11/14 (水) ~ 2012/11/21 (水)公演終了

満足度★★★★

互いを照らし出すふたつの流れ
二つの時間の刻みが舞台にあって、
それぞれの感触がしたたかに描かれ、
一方で他の時間を映えさせる力にもなっていて。

ベースのアイデアはむしろシンプルなもので、
だからこそ、その絡み方やそれぞれの世界に描き出されるものの
鮮やかさが際立っていて。

また、アイデアに寄りかかるだけではなく、
一つずつのシーンに、ベースの発想に負けない表現が
作りこまれているのも良い。

さらに言えば、
骨格をしっかりと持ちつつ、
様々な表現や発想を取り込む間口の広さを持った戯曲でもあり、
作り手の創意を描き込む新しいパレットが、
またひとつ生まれたような感じがしました。

ネタバレBOX

作品の企てを理解するまでに少し時間を要したのは事実。
でも、冒頭から、シーンに観る側を飽きさせない力があって。

命を授かり自意識が生まれる前までが原始時代。
幼年期から思春期、さらには青年期に至るまでの齢のひと刻みが、
歴史の1世紀と置き換えられて、歴史と成長の姿が、
ニュアンスを重ねられ、束ねられて
舞台を満たしていきます。

その仕掛けに気付いた時点から、
舞台で描かれるものに込められた
意味の重複が
わくわくするほどに面白く、
それが一つの年齢や時代にへ垂れることなく、
時代ごとにルーズに重なり膨らんでいく凄さに感嘆し
ぐいぐい惹かれていく。

小学生のころというか平安時代くらいまでは、
発想の面白さを喜んでいただけだったのが、
鎌倉・室町と進んでいくあたりから、
時代のとがり方と思春期の想いや内心のリンクが、
更に研がれて、
単に描き方のアイデアを見せるのではなく、
その半歩内側にある、
時代の進歩や内面の成長を
互いのニュアンスのなかに映し出す
広がりが生まれて。
舞台が進むごとに
舞台の世界も、観る側の視野もぐいぐい広がっていく。

なんというか、表層だけではなく、
その半歩内側のニュアンスも合わせ鏡となって、
だからこそ浮かび上がってくるものが
あるのですよ。
また、その仕掛けが最後まで
へたれたり、尻つぼみになったりせず、
むしろ、重なりのなかにさらに導かれた表現の
高揚感のようなものまでが供されて。

役者たちにも、場を立ち上げる瞬発力と
背負った場を二つの視座どちらにも晒して色を醸し出す
演技の幅があって。
役者がモザイクのように組み上げるこの国と人の歩みが
作り手の表現の手腕や遊び心とともに
不思議にリアルな質感へと変わっていく。
舞台が今に追いつくころには
二つの歩みのどちらの足跡の肌触りも
どこかユーモラスで、鮮やかで、
でも、観る側には二つの俯瞰がくっきりと残って。
さらには、その先のラストシーンにも
その先の未知の質感が織り込まれていて。

終演時には
作り手や演じ手の表現の切り開き方に深く心を奪われておりました。
なにか、ちょっと体験したことのない面白さでありつつ、
単なる発想の秀逸にとどまらないものもありつつ・・。
加えて、これが唯一の完成形ということには収まりきれない、
こののフォーマットのさらなる可能性も感じて。

帰り道、作品を思い返して、
なにか、もう一度わくわくしてしまいました。
高円寺純情商店街でロミジュリ

高円寺純情商店街でロミジュリ

踊れ場

シアターブラッツ(東京都)

2012/11/12 (月) ~ 2012/11/14 (水)公演終了

満足度★★★★

鮮やかな切先をもった今様Shakespeare
最初にちらしを観たときには、
どういうロミジュリになるのか想像もつかなかったけれど、
観終わって、そのキャスティングの必然をしっかりと受け取って。

またも、作り手の創意に取り込まれてしまいました。

ネタバレBOX

冒頭から、ヒロインが映える。
女優が男優の数に負けていない。
でも、だからといって、
男優たちが唯の引立て役に置かれているだけではなく、
人数をかけて
素舞台に舞台美術的な役割をこなす一方で
ロールを纏い、
鮮やかに、シェイクスピア戯曲の
トラディショナルなスピリットを紡ぎこみ、
今様に織り上げていく。
立ち上がりから圧倒され、
混沌とせずクリアに浮かび上がっていく物語の
シーンの一つずつにのめり込んでしまって。

あの有名なバルコニーシーンなども実に秀逸。
下世話で超今風でもあり滑稽で、
でもそこには、乙女心の動揺と、
商店街の娘の風情が鮮やかに縒り合されていて、
ビビッドでありつつ、
原典にも紡がれた深く心を掴まれるような
男女の想いの姿があって。
シーンが持つべきときめきと今を纏ったリアリティが
しなやかに一つの場面に織り上げられ
作り手の翻案の冴えと
それを支える役者達の演技にどっぷりと浸りこんでしまいました。

舞台からこぼれ出すような数の男優たちが、
誰一人として単なる賑やかしではなく、
演じる強い意志を漲らせてロールをガッツリ抱き
表現をなしていて、
そのテンションが舞台を支える力として機能していく。
だからこそ生きる主人公たちの秀逸なお芝居があって、
物語に厚みが形成され、
ロミジュリという戯曲に内包されている
普遍を今に今に映えさせていく。

ラストの突き抜けにも捉えられました。
シーンの重なりに
悲劇に収まらないものがしなやかに満ちて、
この作品の収束が観る側に積もったものと重なって
しなやかに、鮮やかに描き出されて。

初日ということで、
演技のクオリティについては
若干のバラツキを感じたりもしたのですが、
それとて、必ずしもネガティブな印象というわけではなく
この舞台がさらに進化していく予兆にも思えて。

ほんと、時間を忘れて楽しませていただきました。
『熱狂』・『あの記憶の記録』3月に完全再演致します!!詳しくは劇団ページをcheck!!

『熱狂』・『あの記憶の記録』3月に完全再演致します!!詳しくは劇団ページをcheck!!

劇団チョコレートケーキ

ギャラリーLE DECO(東京都)

2012/10/31 (水) ~ 2012/11/11 (日)公演終了

満足度★★★★

熱さを描く冷静さ
残念ながら「熱狂」だけしか観ることができませんでしたが、
あの会場に一つの時代の生々しい熱が現出したことにびっくり。

しかも、その背景には、タブーもイメージも乗り越えた
歴史の冷静な切り取りがあって。
シーンによってはライブ映像を観るような感覚すらあり、
違和感なく、時間を忘れて見入ってしまいました。

ネタバレBOX

演劇としての構造は、とてもシンプルで、
ある意味歴史をなぞったにすぎないとは思うのです。
でも、その作りは同時にとてもしたたかで、
物語の外枠を、ヒットラーの近くにあった一人の男の視座に固定して、
シーンにただ引き込まれることのないようにしたうえで、
幾つものシーンに圧倒的な強さを作ることで、
観る側にとって既知の歴史に新しい俯瞰を作り出していく。

断片を映画などでしか見たことがなかった
ナチスの熱狂の裏に潜む
ヒットラーやその側近たちの、
抱いたものや確執などを、
絶妙な立ち位置で見せる中で、
歴史に人間臭さを与え、その人間臭さゆえの危うさを感じさせ、
さらには、その熱狂の理も体感させる力が
舞台にはあって。
時として場面の熱が、作品自体のダイナミズムを
少々薄っぺらくしてしまう部分はあったのですが、
役者たちがなす演説は、大衆の陶酔を理解できるほどに圧倒的で、
狂言回し(ヒットラーの付き人)の進める時間の組み方もしなやか。

作り手の表現の意図に加えて、その剛腕と繊細さ、
そして役者たちの底力に取り込まれてしまいました。



完全版・人間失格

完全版・人間失格

DULL-COLORED POP

青山円形劇場(東京都)

2012/11/01 (木) ~ 2012/11/07 (水)公演終了

満足度★★★★★

生き物のような舞台
太宰治が描く世界を取り込んで、
でも、その物語を展開するだけの舞台ではありませんでした。

舞台自体が太宰の描く主人公を纏った生き物のように思えました。

ネタバレBOX

最初に女性版(11月4日)、中1日おいて男性版(11月6日)を。ちなみにWIP(男性版)も拝見していて。

冒頭の数シーンに、
役者が観る側を取り込む術があって・・・。
そこからの舞台の広がりが唐突に感じられず、
だからこそ、会場の空気の揺らぎにそのまま取り込まれる。

それでも、暫くは、舞台に語られる物語を追う意識があったのですが、
やがては、舞台の空気が一人の男の感覚に置き換わり、
そのなかに巻き込まれてしまったような気持ちになって。

舞台には何人かの役者が背負う一人の男のコアの部分と
彼に関わった人間たちが
描き分けられてもいるのですが、
それを第三者的に俯瞰するのではなく、
刹那ごとの男の心風景をもらったように感じ取っている・・・。

あとで思い返してみると、役者たちの秀逸な演技は
観る側に媚びることなく
豊かな創意とともにそれぞれのキャラクターや刹那を
紡ぎあげていて。
でも、この舞台にはそれを主人公の感覚として
観客に見せる力があって。
なんだろ、物語をもらって置き換えるひと手間を省いて
直接舞台に描かれる世界を受け取っている感じ。
切り取られていく時間が
しなやかに揺らぎ、ライブ感を醸し出し、
記憶の如くに
物語に積み上げられていくような・・・。
主人公を取り巻く女性たちも
デフォルメされているのに
形骸化されている感じがまったくなく
描かれた瞬間ごとがとてもビビットに思える。
台詞の遊び心や、音や光が、
舞台のリズムや鼓動を際立たせる。
舞台自体が呼吸する生き物のようにすら感じて・・・。

WIPで観たシーンも盛り込まれていましたが、
その時にあったシーンからやってくる強い印象が、
舞台に置かれるとテイストの一つとして
空気を支える存在になっていることにも目を瞠る。
この作品が、実は作りこまれたたくさんの立体的ニュアンスと印象の
コラージュ的な側面を持っていることにも思い当たって。
それらを束ねる作り手の手腕と
一つずつのパーツを編み上げていく役者たちの底力に思い当たり、
あらためて圧倒されたことでした。
また、その秀逸は、
円形の舞台の全方位に生まれるミザンスだからこそ
よりふくよかに映えるものであるようにも思え、
閉館が予定されているという
この劇場の魅力をを再確認したりも。

女性版と男性版では顛末が少し違っていました。
男性版では物語の流れが、
そのまま、踏み出して結末に至った感じ。
様々な色の表現の重なりに、
ふっとブランクのような白が生まれたようにも思えて、
一瞬息が止まる。
一方で女性版は描かれたものを
もう一層の外側をつくって納めて見せて。
そこに作者一流のウィットを織り込み
更なる俯瞰を組み上げる。
生き物のような舞台でも、バージョンごとに、
道程に微妙に異なる肌触りが作りこまれていて。
それぞれの世界を、躾け、手懐ける、
作り手の手腕にも舌を巻く。

男女版どちらも、観終わって、
やわらかな高揚があって、
舞台が与えてくれた達観や諦観も残り
でも、なによりも、ガッツリ消耗していることに気付いて。
観る側をして、自覚させることすらなく、
貪らせるように舞台に惹き込む、
この作品の力に改めて思い当たったことでした。
→POP→PUNK→ELECTRONICA→

→POP→PUNK→ELECTRONICA→

ぬいぐるみハンター

風みどり(東京都)

2012/10/27 (土) ~ 2012/10/31 (水)公演終了

満足度★★★★

狭い会場で、しっかりとお芝居
びっくりするほど小さな会場なのに、
不思議と狭さは感じなくて。

そこに紡がれる世界に
しっかりと捉えられてしまいました。

ネタバレBOX

会場も小さいといえば小さいのですが、
客席にしても、三和土のような舞台分にしても
それほど狭かったり窮屈な感じはしませんでした。

むしろ、一・二人芝居として、
観る側の視点を演者にくくりつけるのに
最適な広さにも思えて。

作品もその広さをうまく取り込んでいたように思う。

猪俣作品には、その年代の不器用さみたいなものが、
ピュアかつ滑稽に、そして観る側がうなずいてしまうような
行き場をどうしてよいか困るような恥ずかしさで
伝わってくる。
役者としての視線のとり方がとても旨く機能して、
その家の大きさや、風景が観る側にあるが如くにおかれて・・・。
落ちにあたる部分の、
笑っていいのかな・・・、
でも何か観につまされてしまう感が、
歪むことなくすっと観る側を捕まえてくれました。

竹田有希子一人芝居は、
その場所(要はコインランドリー)の女性の風情が
とても生々しく感じられて。
そのお芝居は、実はかなり精緻な密度を伴っていて、
女性の心を飾っていない部分みたいなものや、
どこか無防備な部分が
そのまま観る側に流し込まれてくるような感じがあって。

そりゃ、男ですから、女性の周期の感覚なんて
同感できるわけはないのですが、
でも、たとえば凄く近しい人のそういう
匂い(雰囲気というような意味)のようなものを
観る側の肌で感じさせるような力があって。
観る側が、この空間だから、
そのままに衒いもなく受け取らざるを得ないような
なにかに支配されつつ、
がっつりみてしまった。
それほど長い上演時間でもないにもかかわらず、
ひとつ間違えば理不尽以外の何者でもないような
女性の表層の想いと、
その内側にある、ピュアな心情の両方を
受け取ることができました。

二人芝居は、その誰かさんの存在感というか
強引さに圧倒される。
まあ、広い劇場でこれをやられたら、
観る側もしらけてしまう可能性もあるかとは思うのですが、
このスペースだと、というかだからこそ、
その強引な設定や押し切り感が、
観る側を妙に納得させてしまうのです。
で、一旦その視座で、台詞や二人の醸すミザンスを受け入れると、
これが本当に可笑しい。
その、不思議な筋の通り方にぐいぐいと押されていく。

物語としても貫かれていて。
ちゃんとボリューム感もあり、
キャラクターに、ありえない存在感まで感じて、
ほんとにおもしろかった。

観終わって、このスペースだからこそ
出来ることがあるのだなぁと実感。
(もう少し広くても大丈夫かもだけれど)

入場したときからは想像も出来ないほど、
豊かに満たされて、劇場(?)を出たことでした。
女子。

女子。

gojunko

RAFT(東京都)

2012/10/24 (水) ~ 2012/10/28 (日)公演終了

満足度★★★★

男性にとってNullな感覚も
7人の女優たちが描き出すものに、
観る側の想像のフィルターをすり抜けて
ダイレクトにやってくるものがあって・・・。

男性が抱きえないような感覚までが、
すっとおとずれ、淡々と深く焼き付いていく。

その語り口から描き出すものの
実存感に、違和感と不思議な同化を感じつつ
染められてしまいました。

ネタバレBOX

冒頭からしばらくは
その世界の構造がわからなくて、
ただ女優たちの会話や独白を追う。

言葉から浮かんでくるイメージがあって
でも、実は空気は少し違うことを語っていて、
それがほとんど断片的な
とてもルーズな脈絡で観る側に置かれていきます。
刹那の空気は、女性であれば共振する部分があるのかもしれないけれど、
男性にとってはそのパーツの欠損を感じるようなところもあって。

だから、その空気の感触だけであれば、
7人の女優のイメージを楽しみましたで
終わってしまったかもしれない。

でも、観る側に置かれた感覚は
その触感と異なる色を観る側に浮かび上がらせていく。
其々の物語はとても淡くて、
一方で輪廻の気配に次第につなぎとめられて、
気が付けば概念だけでは感じ得ない、
子宮があることを前提としてかたられるような
表層の表情や肌触りと異なる生々しさが
次第に個々の役者たちから透けて、場の空気として広がり
よしんばそれを持ちえないジェンダーまでも、
存在しないはずものからやってくるものの色の如くに、
染めていくのです。

塗り絵のちょっとはみ出したような感覚、
同性への愛情だったり、SM的なものも、
針で深く突かれたような印象も
滅失した大多数の日常も、
恋慕も、嫌悪も、安定も、孤独も・・・
いたずらにデフォルメされることなく、
美化されることも歪曲されることもなく、
生まれて死する周期の中で、
目に焼付いた風景のように
何度も浮かび上がる・・・。

役者たちの、
シーンごとの安定したテンションを支え続ける技量にも目を瞠りつつ、
終演後もひとつの感覚として包んでしまうことのできないような
その想いの質感に捉われ続けてしまいました。

高襟大運動会

高襟大運動会

高襟〜HAIKARA〜

Dance Studio UNO(東京都)

2012/10/20 (土) ~ 2012/10/28 (日)公演終了

満足度★★★★

遊び心もたっぷり。楽しい。
以前にD倉庫で公演を見て、
そのときからスペースを満たす
パフォーマンス力は承知していたのですが、
それよりずっと小さいスペースでの、
ベクトルの異なる楽しさを作り出す力にも
今回触れることができて。
女性の躍動感や艶を感じるパフォーマンスたちに満たされて。

行けないけれど、
この表現の底力で演じられる
お子様向けバージョンがどんな風なのか・・・。 
少々気になったことでした。

ネタバレBOX

一番圧巻だったのは
昭和のギャグたちがダンスのシークエンスへと取り込まれ、
重ねられ広がっていく部分。
まさか谷啓やビートたけし、桂文枝(三枝)やコント55号が
さらには赤塚不二夫までが
こんなに美しい身体表現に取り込まれるとは・・・。
最初は笑ってみていたのが、
途中からは前のめりになってひたすら見つめてしまいました。

その他、リレーにしても応援合戦にしても、
雰囲気をしたたかにかもし出し、
しかもダンスとしての態を失っていない。
よしんば綱引きであっても
国旗掲揚であっても、
見せるという部分でのふくよかさは
しっかりと担保されていて。

遊び心からの強かな刹那の作りこみに加えて
そこから身体表現の冴とともに踏み込んだ、
ダンサーとしての身体の切っ先にも
がっつりと囚われて。
フォーメーションのおもしろさや、体を張った表現・・・、
勝利の舞のソロとかも、見応えがあったなぁ・・・。

いろんな引き出しの表現の表面の面白さに加えて、
それらを支えるダンサー達の足腰というか、作り出す切先というか
底力にぐいぐいと惹きつけられました。

予約特典(?)のお弁当も、
ボリューム感がありつつ、
とても繊細な味付けで、さりげなくものすごく美味しい。
思わずうふっとなってしまうちょっとエロい見栄えや工夫にも、
味付けのデリカシーにも
企画倒れにならない女性のふくよかさを感じつつ、
あっという間に完食してしまいました。
気取ることなく親しみやすい味付けは、
なんだろ、毎日食べていても、またすぐに食べたくなるような・・。
お世辞抜きに
ほんと、おいしかったです。

ちなみに、この公演、お子様向けの回もあるみたいで
そちらはどんな内容になっているのかも
ちょっと気になったり。
変に気をつかうことなく、
少々エロを残してもかまわない気はするのですがw。
(その方が子供達にダンスの魅力が心に残ってくれるかも)

子供達がこのクオリティでのパフォーマンスを
とても近い距離で観る機会に恵まれるのはとても幸せなことだと思う。
高い品質の表現って、必ず記憶にとどまり
センスを育む肥やしになるのだろうし・・・。

観終わって、とても楽しくて、スカイツリーを眺めつつの帰り道、
そういうバージョンがあることは
とても素敵なことだと思ったりしたことでした。
『消費と暴力、そのあと』

『消費と暴力、そのあと』

COLLOL

LIFT(東京都)

2012/10/17 (水) ~ 2012/10/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

完成度に裏打ちされた一期一会の空間の呼吸
吹き抜けのある空間の上と下から
観劇をすることができて・・・。

最初に上から覗き込み、
その世界に圧倒的に浸りこんで
翌日急遽下から観劇。

座る場所によってそれぞれに見えるものが異なることにも
また、公演ごとに舞台上に育まれる色の
新しさにも驚嘆。

初日を観ることができなかったことや
楽日を観れないこと、
さらには全部の座席を体験できないことが
とても残念に思われました。

ネタバレBOX

会場に足を踏み入れると、
もうそこには世界があって。
1Fと地下を貫く大きな吹き抜けがある空間の
上と下に客席がしつらえられていて、
少し迷った末に、全体の見切れが一番少なそうな
座席に腰を下ろすと
忽ちに場の空気に取り込まれる。

作品が始まり
役者たちが描く刹那が
空間に置かれ重ねられていきます。
そのひとつずつは、
ふくよかで強いニュアンスを持ちつつ、
シンプルで、ピュアで、
色を滲ませることなく、その想いの肌触りとともにあって。
そして重なりは決してタイトではなく、
でも密度を失うほどにルーズに散ることもなく、
空間に繫がれ、満ちて、引いて、呼吸し、
愛憎の質感を剥ぎだし、昂ぶり、沈む。
役者達がその身体とともに描きだすものが、
生々しく美しくあからさまに、現れ、隠れ、
何度も揺らぎ解かれつつ、
やがて一人の女性の
質量から解き放たれたような想いに束ねられ、
さらに踏み出していく。

その心風景の息を呑むような解像度に圧倒され、
終演とともにゆっくりと霧散していく空間の残像に暫し呆然。
そして、ゆっくりと、でもとても強く、
1Fで得た女性の心風景を
もっと内側で眺めたいと思う・・・。

で、偶然時間がとれたので
翌日、地下の最前列の座席で観劇。
そこには、前日に焼き付けられたものとは異なる、
地に足のついた役者たちの身体の実存感がより強くあり、
置かれていく想いの移ろいも
身体からやってくる生々しさにより深く染められていく。
様々なフォーカスのなかに浮かぶもの、
いくつにも異なる鈍い痛みの感覚、
執着、足掻き、禍々しさの混濁、
前日の如くたゆたう想いの肌触りを感じつつも、
同じ高さで正面から見据える地下にある身体には、
上から降りてくる想いとは異なる
そのなかに生きる感覚のリアリティを伝える力があって。
上から見ていると、心風景の向こうにあった
一人の女性の生きる姿が、
下にいると、その位置関係が逆転して
一人の女性の、生々しく禍々しくさえある
生きる姿から、その内心を覗き見ているような風景に変わり、
その想いを抱く女性の、
強さも脆さも、美しさも醜さも、その呼吸の強さや深さまでもが
観る側にしなやかに残り、驚愕。

さらには、個々の役者が表すニュアンスの切先も
一晩でしなやかに変化していたように感じて。
それぞれの醸し出すものが、他の空気の色や質感と対応して
空間全体のなかに置かれていく感じ。
そこには、単にロールを語り演ずる力にとどまらに
舞台の時間を共有することの、
とてつもないふくよかさがあって、
ガッツリ巻き込まれてしまいました。

一番コアというか大外にあるものは、
ありがちな、ありふれた、男女の別れ話なのだけれど、
多分、何回観ても、
一期一会のごとく異なり、
飽くことなく惹きつけられ閉じ込められてしまうであろう
舞台でありました。
今、逃げる

今、逃げる

熱帯

サンモールスタジオ(東京都)

2012/10/05 (金) ~ 2012/10/14 (日)公演終了

満足度★★★★

気持ちはわかる・・・かな
前半のふっと糸の切れたような感じは、
まさかと思いながらも、勤め人に潜む想いを
揺すぶるようなところがあって・・・。

ロードムービーのようなテイストと箱庭的な世界の
どこか歪んだ縮尺のなかのお話でしたが
絵空事と無視できない、なにかがありました。

ネタバレBOX

まあ、「よく出来た物語」感はぬぐえないのですが、
でも、そうやって薄っぺらにされたところから
透けて見えるような日々の感覚があって。

道具立てのどこかチープな部分が
舞台の空気から力みを抜き去り
役者達たちにも、
その場の重さも軽さも自由に組み上げるような力がある。

こういう質感の作り方って
ちょっと斬新という感じではないのですが、
でも観る側になじみやすいというか・・・。
そのなかに表現の洗練もしたたかに織り込まれていて・・・。

観終わって、
なにかいろんなことを
ふんわかと考えてしまったりもしました。



ステップアップ

ステップアップ

シベリア少女鉄道

赤坂RED/THEATER(東京都)

2012/10/13 (土) ~ 2012/10/21 (日)公演終了

満足度★★★★

ステップアップしてました。
ステップアップすればするほどに・・・。
より面白さが増していくお芝居でした。

今回は従前の作品に比べてもわかりやすく思えた。
前回ともまた異なる肌触りで楽しむことができました。

ネタバレBOX

ステップアップの意味が理解できなかった前半には、
様々なトリガーで物語の意味を模索していたのが、
舞台のルールというか仕掛けが開示された刹那に、
役者達というかキャラクターたちが背負っているものが、
足掻き苦悶しながらクリアされていくのが
いちいちとんでもなくおもしろくて・・・。

広げられた風呂敷の畳み方とでもいうのでしょうか、
そのなりゆきが、
時には粋だったり鋭かったりもするのですが、
それ以上にベタだったりゆるかったり落ちなかったり後戻りをしたり、
こじつけたり、ずるかったり、
挙句の果てには力技よろしくなんでもありみたいな満艦飾のキャラクターが
登場したりと、
本当にしたたかに組み上げられて。
そのなかに、エヴァンゲリオンや20世紀少年など、
いろんな匂いやニュアンスが
撒き餌のように置かれては観る側をひきつけ、惑わせ、
重ね、或いは裏切っていく。

気がつけば作り手の企てと
語り口の緩急や崩れ方にがっつり閉じ込めてられて・・・。

とにもかくにも広げた風呂敷を畳み終えてた
ラストの見せ方も
作品の外側を
しなやかに描きだすようで、秀逸。

やられたぁと思いつつ
作り手の企てにどっぷりと浸りこみ
楽しませていただきました。



「梨の礫の梨」

「梨の礫の梨」

ライトアイ

「劇」小劇場(東京都)

2012/10/12 (金) ~ 2012/10/14 (日)公演終了

満足度★★★★★

作り手の企てにガッツリ
冒頭から、そのおもしろさにしっかりと捉えられて、
でも終わってみれば、
全く異なる色にも染められて・・・。

作劇の企てとそれを背負った二人の女優さんの実に丁寧なお芝居の
それぞれに脱帽。

見事でございました。

ネタバレBOX

終演後しばらくは、
酩酊していく女性の心風景に圧倒的にとらえられて・・・。
劇場の外でしばらくぼんやりしているうちに
作劇の仕掛けが蘇ってきて
そのしたたかさに舌を巻く。

フェアな展開なのですが、
冒頭にはその仕掛けに気付くことなく、
関西の二人のおばさんの、
滑稽な会話劇のような風情に取り込まれて・・・。
そのエピソード自体と演じ方に観る側をぐいっと惹き込む完成度があり、
物語のコアを観る側の視野から完全にそらしてしまう。

その覆いの取り去り方も
実にしたたかに作りこまれていて・・・。
一気に仕掛けを晒すのではなく、
会話の中に差し込まれた、
たとえば年齢を軸にした納得と違和感の揺さぶりの中で
観る側の思い込みをじわじわと瓦解させていく感じ。
その全容が浮かび上がった時、
あっ、やられたとおもい、ぞくっとくる。

でも、その鮮やかなトリックが、
この作品にとってはベースに過ぎない。
そこから、酩酊していく女性の心風景が細微に広がり、
その風貌から心風景にいたるまでの
息を呑むようなリアリティが生まれ、
女性に心に移ろう恨みと恋慕と諦観とそれでも歩み続ける強さが
観る側を深く捉えていく。

二人の女優たちの紡ぎ出す刹那が、
とても丁寧で、
でもその中に果敢に挑むようなせめぎあいや踏み出しがあって。
だから、よしんば、高級なお酒に手が出なかろうが、
千手観音が浮かんでこようが、
女性が抱き続ける想いの密度が
ダレたり撓んだりすることなく
凛として鮮やかに観る側を染めていく。

おもろうて、すこし切なくて、悲しくて。
ラストシーンが冒頭の所作の記憶につながると、
さらにホテル清掃の関西のおばちゃんの
日々の俯瞰が生まれて、
さらに浸潤される。

落語には大ネタと呼ばれるものがあって、
聴く方はお気楽極楽で楽しんでいても
それを演じる噺家は
様々な色を組み上げる技量が求められるらしい・・・。
この作品にもそれと同じような側面を感じて。
戯曲の秀逸さに加えて、
演じあげた二人の役者の底力と豊かなお芝居の引き出しに
舌を巻いたことでした。

本当は、もう一度観たかったのですけれどねぇ。
骨組みがわかってさらにやってくる面白さもあるように思えて。
とても気が早い話ではありますが、
ユニットのレパートリーとして、首都圏でも
是非に再演して頂きたいなぁとおもったりも。

音楽劇「ファンファーレ」

音楽劇「ファンファーレ」

音楽劇「ファンファーレ」

シアタートラム(東京都)

2012/09/28 (金) ~ 2012/10/14 (日)公演終了

満足度★★★★

「良い」音楽劇
随所に作り手の創意も感じるし、キャストたちはしっかりと歌えてもいるし、踊れてもいる。

音楽劇というかオフの「良い」ミュージカルを観ている感じ。
それなりにわくわくもしたし、満たされた。

でも、そのうえで更なる満ち方が欲しくなりました。

ネタバレBOX

自由席、整理番号もなく、列を作って並んで開場を待ちます。
この舞台には、なにかそれがとても似合っているような気がする。

場内に入るとネオンのファンファーレの文字が目を引く。
深紅の幕と板張りの床。

登場人物たちが劇場のあちらこちらからあふれ出してくるような
冒頭のシーンから楽しいし、
観ていてあっという間に舞台のペースに乗せられる。
パーツの積み重ねのように作られていく音楽。
すっとバラけキレとともに観る側の目を奪い
不思議に場を形成してくダンス、
そこには、たくさんの、
観る側を素敵に裏切りつつ物語の骨組みにつなぎとめていく
たっぷりの創意があって。

演者たちにも、一歩観る側の期待の先を行く
パフォーマンスの力があって。
音楽劇としての基礎である歌に、常ならぬクオリティがあるし、
ダンスにしても、振付の洒脱な発想の具現からさらに踏み出した
身体表現のクリアでふくよかな広がりを感じる。
また、楽器の使い方にも、観る側を微笑ませるようなウイットがあって。

観ていて、とても楽しいし、
そのなかに浮かび上がる、
絵本のような世界に込められた
人が生きることの質感にも柔らかく染められて。
ぞくっとくるような精度を手作り感に織り込んで、
観る側を包み込むような時間を織り上げていく。
ほんの少しだけダルに、
作り物の質感をそのままにやってくる生きる事の実感は
どこか行き場がなくて切なくて、
その猥雑な世界に対する諦観と達観の狭間に、
観る側を素一と置いていくような・・・。

あとに、単なる楽しさだけではないたゆたう何かが観る側に残る、
余韻を持った音楽劇だとは思うのです。

ただ、なんだろ、観終わって
満たされた中に、
どこか淡白な感じというか、物足りなさが残ったのも事実。
この舞台はとても良いものにはなっているのだろうけれど、
凄い舞台にはなりそこなっているようにも思えて。

ダンスも音楽も物語も、それぞれに旨く調和してみる側を
誘い込んでいくのですが、
でもその調和の内側ですべてが描かれているような感じもあって。
物語の骨組の内側は色とりどりに
色とウィットに満ちた描かれているのですが、
舞台のさまざまな要素がくみ上がった時、
物語にしても、歌にしても、ダンスにしても、
いろんな遊び心にしても、
それぞれの小奇麗さのなかで足踏みをしているようにも思えて。
もっと踏み出し観る側を圧倒していく力が
作品をバランスの内に置くリードに繫がれているように感じたりも。

観る側を包み込むような調和は間違いなくあって、
それは「良い」舞台のひとつの完成形ではあるのだろうけれど、
でも、その完成形は、
この作り手や演じ手に対して、
その創意や能力の片鱗を観た観客が
さらに期待するような 観る側を凌駕し震えさせるようなような刹那を持った、
「凄い」舞台への出発点に過ぎないようにも思えるのです。
鳥山ふさ子とベネディクトたち

鳥山ふさ子とベネディクトたち

ナカゴー

Brick-one(東京都)

2012/09/30 (日) ~ 2012/09/30 (日)公演終了

満足度★★★★

台風ぐらいではびくともしない面白さ
凄かったなぁ・・・。

やりたい部分だけを骨格をボンと置くように
観る側に印象付けた前半の短編もインパクトがありましたが、
圧巻は後半の濃いなかでの揺らぎやグラデーション。

台風が迫る中での公演でしたが、
そんなこと頭からすっ飛んで・・・。
がっつりと見させていただきました。

ネタバレBOX

前半の短編は、
ちょっと良い子は見ちゃ駄目的な印象もあるのですが、
それよりも、「愛する人の死」が導いた
登場人物のふわっとした強い狂気に息を呑む。

3人芝居の二人の踏み出し方が堂々とあからさまで、
そこに絡む鳥山さんの距離感と踏み越える感じが
いろんな意味で絶妙・・・。

ある意味構造はとてもシンプルなのなのですが、
それだけに剥ぎだされてくる想いのずれが、
あまりにも露骨で、だからこそ観る側を引かせながら、引き込んで行く。
笑えなかったですが、じゃあつまらなかったかというと
ちゃんと最後までその顛末を見せきる力が役者達にあって。
まあ、衝撃的でした。

後半の作品は役者達のパワーが
さらに持久力をもってみる側を巻き込んでいきます。
超人というところからして、
物語の構造を薄っぺらくするのに十分なのですが、
そのうすっぺらさを逆手にとるように、
役者達のかぶき方やパワーの掛け方が際立っていく。
最初は大丈夫かなと思う物語の構造が、
役者達の力技で見事にその姿を反転させ
立体感をかもし出し、観る側をその狂気に引き込んで行く。

舞台を狂気に埋め尽くさず、
ロールをちゃんとおいて、
狂気をノイズに埋もれさせることなく、
場の膨らみとともに見せるところも旨いなぁとおもう・・・。

終わってみれば、キャラクターのひとつずつも
役者のひとりひとりも
実に魅力的。

見終わってかなりばてたのですが、
そこまでに観客を集中させる力を持った舞台でありました。
ナイゲン【本ページは2012年版です。ご注意下さい】

ナイゲン【本ページは2012年版です。ご注意下さい】

Aga-risk Entertainment

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2012/09/22 (土) ~ 2012/09/30 (日)公演終了

設定に伏線を幾重にも折り重ねて
勢いがあってぐいぐい引っ張るなかに
作り手の繊細でしたたかな削減の冴えがあって。

前半はシーンの印象を笑っていて
それがけっこうおなか一杯になった中盤以降が
とんでもなくおもしろくて・・・。

やられました。

ネタバレBOX

設定の妙があって、

このページのQRコードです。

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