.01秒を歩くスイミーの祭典
第27班
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2014/11/19 (水) ~ 2014/11/24 (月)公演終了
満足度★★★
個々のパーツは良いが全体としては不完全燃焼、改訂版を望む
東京オリンピックと学生志願兵と…。
題材の選定とそれに対する考察・主張、1本通った縦軸(と言うより「繋ぎとなるパーツ」?)の周囲に複数の流れを配する構造、見せ方の工夫、仕掛けた罠、共通の「モノ」をキッカケに一気にたたみかけるクライマックス、ブラックユーモアに切なさや虚しさを加えた幕切れなど、個々に見る分にはそれぞれ良いのだが全体として組み上がったものは掛け違いやら不協和音やらが感じられて「不発感」あるいは「不完全燃焼感」があるのが何とも惜しい。
思うに要素を盛り込み過ぎたのではあるまいか?
その結果、併走する複数の流れの接点がなかなか見えず「長すぎる導火線」状態に陥ってしまったのではないかと。
もう少し絞り込んでスリム化した改訂版を観てみたいモンだ。
事前にベタ褒めと批判的な評をそれぞれ目にしていたが、観ながら批判側の言わんとしていたことがよくワカったりもして…。
Rumbling March
Performing unit colors7~C7
サブテレニアン(東京都)
2014/08/06 (水) ~ 2014/08/10 (日)公演終了
満足度★★★
様々なスタイル8編の短編集
ダンス寄りの身体パフォーマンスも含む前半5編は短め、後半3編は長めという構成の短編オムニバス。
前半は一部投げっ放しあるいは素材そのままなものがあった感無きにしも非ずだが、後半はいずれも好み。
ただ、ビターエンドが多く、欲を言えばビター1、ハッピー2くらいにして欲しかった。
言の葉の散りぬるを
wordleafproject
高田馬場ラビネスト(東京都)
2014/11/21 (金) ~ 2014/11/24 (月)公演終了
満足度★★★★
瑕もあるが基本は珠の伝奇的世界
“言霊遣い”や“人ならぬ者”がいる架空世界の伝奇的物語。
細部(特に人死に関連)に杜撰な感が無きにしも非ずではあるが、世界観は好きだし終盤のどんでん返しの連続など総じてよくできている。
「言霊を遣う力」を、もっと一般的な力(能力とか権力とか)の比喩として観るとまた面白い。
また、ある場面でのS.E.の使い方や、撃つ直前までフレームに指を添わせてトリガーに指をかけない演技もイイ。
空は青くて
ソラトビヨリst.
王子小劇場(東京都)
2014/11/20 (木) ~ 2014/11/24 (月)公演終了
満足度★★★★
イマに対する皮肉・警鐘に満ちたダークな未来図
80年代後半あたりのアメリカ映画(?)にあったようなダークな未来図。
没個性をよしとする画一化教育や、(一部の)感情の喪失、「死」に関する感覚の麻痺などイマの世相・風潮に対する皮肉や警鐘を盛り込み、ビターな仕上がりに。
前半はピリリと辛口だったり多少の苦味が感じられたりな部分があるも基本的にはコミカルで口当たりが良いが次第にビターテイストに転じ、結末もかなりビターながら娯楽性を損なわない(私見)のは巧み。
Three Piece Moratorium
劇団→ヤコウバス
百想(re:tail別館)(東京都)
2014/11/11 (火) ~ 2014/11/16 (日)公演終了
満足度★★★★
「もう1本のヤコウバス」を通して描くヤコウバス自身
「もしもあの時…」な仮想現実を通して描くヤコウバスの過去と現在(と近未来展望?)。
「3人いてこそのヤコウバス」な部分と劇中劇として見せる仕上がった芝居のダイジェストからのオチが特に巧い。
気がつけば、みんな、尾崎
ローカルトークス
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2014/11/12 (水) ~ 2014/11/16 (日)公演終了
満足度★★★★
独特なオトナのコメディ
営業研修でいびられまくりの主人公が尾崎豊の幻影に導かれ…な物語。
ほろ苦いサラリーマンものの味わいもありつつ、ブッ跳んだ部分や飛び道具的な役者を使った笑いもふんだんで、独特なオトナのコメディ、な印象。
考えるに、ある程度の人生経験を積まないとこういう作品は書けないんじゃなかろうか?
具体的にどこが、とかではなく、漠然としたモノなのだけれど。
あと、タイトルまんまの場面もワロタ。
とけない鎖
劇26.25団
OFF OFFシアター(東京都)
2014/11/19 (水) ~ 2014/11/23 (日)公演終了
満足度★★★★
題材に対する視点と演劇表現の妙
実在の事件を元にしながらも事件そのものは背景程度にとどめ、事件の周辺とそれを題材とした小説が文学賞を受章したことで起こる波紋、主人公の母に対する想いなどを描くという視点がイイ。
また、「房子/ななし」と「萌子」の舞台上での「役割分担」も面白い。
ぜんぶのあさとよるを
Pityman
pit北/区域(東京都)
2014/11/19 (水) ~ 2014/11/24 (月)公演終了
満足度★★★★
演劇表現は不思議の連続
かつて仲の良かった女性2人の今(と昔)。
不連続なシーンの積み重ねにつきまとまりに欠けるような気で観ているも最終場の2人によって彼女たちの軌跡を見ていたように思われてくるのが不思議。
また、現実では同じ舞台面ながら、白い円の部分がちゃんと遥か離れた海外に見える(そこ以外も照明などによって複数の場に思われる)のも不思議。
演劇表現って不思議の連続だね。
新しい自分のつくりかた【ご来場誠にありがとうございました!】
ラフメーカー
新宿眼科画廊(東京都)
2014/11/07 (金) ~ 2014/11/12 (水)公演終了
満足度★★★★
「女ともだち」三題
3編の異なるタイプの「女ともだち」の物語。合コンにかける女性たちをコミカルに描いたかと思えば進学で上京した少女と田舎に残った友人を描き、ラストは時間差で鎌倉観光をする2人と1人(途中で読めてしまうけれど好きなタイプ)…という趣向。
あて書きとのことで、演者と役の適合ぶりたるや!
あと、白ベースの装置に画像を映写して場を示すのも〇。
りんごりらっぱんつ at 浮間ベース
浮間ベースプロジェクト
浮間ベース(東京都)
2014/11/06 (木) ~ 2014/11/16 (日)公演終了
満足度★★★★
原作に新たな別の魅力を附加した大胆なアレンジ
劇団競泳水着の2010年作品を、あの場を活かして上演すべく三部形式にした他、口上・ストーリーテリング担当を加えるなど大胆にアレンジ。いわば弦楽四重奏曲のオーケストラ編曲的な?。
原作に新たな別の魅力を附加したといったところか。
オリジナル版のキャスト等を思い出したり、ある部分にその後の作品のモチーフ的なものを見出だしたりしながら「あの装置」の使い方を堪能。
マチネ観劇後に青山Pからウワサの「夜の演出」内容を伺ったが、昼は昼で素朴な仕上がりになっていたのではないかと思う。
特にベンチに座った母娘の影が長く伸びているのは美しかったなぁ。
それに夜は寒そうだしね。(笑)
ただ、終演後にでも配役表の配布があればありがたかったな。
Lucifer
Ammo
d-倉庫(東京都)
2014/10/31 (金) ~ 2014/11/03 (月)公演終了
満足度★★★★
国家分裂がもたらすものをワカり易く描いて鮮やか
多民族国家の分裂が一般市民にもたらすものを解りやすく提示して見事。
日本人記者の目を通して描いたことも解りやすさの一因か。
また、終盤のある人物(…だけではなく恐らく他の人物たちも)の「他民族を嫌う」気持ちが本質的には理解できず、単一民族国家(←厳密にはアイヌ、琉球など少数民族もいるが「多民族国家」の対語として使用)である日本に生まれたことを幸いに思ったりも。
そこから最近のヘイトスピーチなどにも想いが及び、一部の日本人にはその傾向が出始めているのかとも思いつつ、それでも島国で良かった、なんてことにも気付く。
TEAM JAPAN SPEC.時代の作風に通ずるAmmo、Minami Produceと二本の柱として、今後も活動を続けていただきたい。
「空想、甚だ濃いめのブルー」「赤い下着、覗くその向こう側、赤の歪み」
キ上の空論
新宿眼科画廊(東京都)
2014/11/07 (金) ~ 2014/11/19 (水)公演終了
満足度★★★★
空想、甚だ濃いめのブルー
こちらの方がシンプル(と言っても一般的な芝居と較べれば遥かにトリッキー)な分、力強いと言うかそういう印象。
恋愛(純愛)を描いて繊細な赤、友情を描いて力強い青といったところか。
主人公2人が最初に出逢うシーンで「この2人の友情の話だったな」と概要を思い出してホロリ、途中のある場面でクライマックスを思い出して眼が潤みそうに…。
「空想、甚だ濃いめのブルー」「赤い下着、覗くその向こう側、赤の歪み」
キ上の空論
新宿眼科画廊(東京都)
2014/11/07 (金) ~ 2014/11/19 (水)公演終了
満足度★★★★
赤い下着、覗くその向こう側、赤の歪み
初演時はその実験的な構造ゆえに探り探りだった上に終盤のヒロイン2人の衝撃的な言動に「印象を奪われた」が、今回は概要がワカっている分、他の人物たちの心情などの細やかなところにも気付くことができてあれこれ心に沁みる。
正義の味方
劇団三日月湊
王子小劇場(東京都)
2014/11/13 (木) ~ 2014/11/16 (日)公演終了
満足度★★★★
アングラど真ん中♪
哲学的にもとれる抽象的な言い回しだったり詩的で美しかったりする台詞、わざとらしい(←貶す意図は毛頭ない)メイク、コロで移動・回転を容易ならしめ、どんでんまでありウェザリングを施した装置(電柱もあったな)など、アングラ芝居の良い部分を抽出したような味わいがタマらん!
そのときのはなし
おちないリンゴ
小劇場 楽園(東京都)
2014/11/12 (水) ~ 2014/11/16 (日)公演終了
満足度★★★★
前菜、メインディッシュ2皿、デザートという構成
長さから言って前菜、メインディッシュ2皿、デザートという構成の4編、それぞれ特色があって面白い。
「アップルパイな人々」(作・黒川陽子)
兄と妹が互いの口調の真似をしているうちに…な状況から不思議な世界にという発想がイイ。
ちょっとした言い間違い(?)的な言葉遊びも相俟って頬が緩みっ放し。
「女2」(作・坂本鈴)
同人として小説も書く主人公の現実と妄想。オトメの身勝手な想い(?)とシームレスながら場の転移がちゃんとワカる演出が◎。
「POSHLOST」(作・モスクワカヌ)
ゲームのシナリオライターがゲーム内で自身を再発見する入れ子構造(←現実まで含む)と楽曲が好み。
「やぎさんと永遠」(作・オノマリコ)
まど・みちおを取り上げるところがリコさんっぽい?(笑)
さらにそれから「永遠」に関する考察に展開させるのがイイ。
背もたれが高く控えた役者を隠すことができる椅子と小道具を収納したテーブル(?)だけの装置もステキ。←劇団四季「ジーザス・クライスト・スーパースター(ジャポネスクver.)」の大八車を連想
ただ、見かけは同じなのでテーブルの位置を間違えたら大変だろうなぁ…。
メイツ! -ブラウン管の向こうへ-
劇団6番シード
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2014/10/29 (水) ~ 2014/11/09 (日)公演終了
満足度★★★★
BLUEメイツver.
“あの”スクールメイツや昭和50年代のスタア歌手を元ネタにした人物たちが織り成す昭和歌謡青春ミュージカルコメディ。
個性的過ぎる(笑)人物や大仰で劇的な展開は大映テレビのドラマを想起させる。
が、一瞬の矢口史靖風(私見)を経ての終盤は感動要素も加えて往年の(少女隊やセイントフォーとかの)アイドル映画(それもお正月映画として公開されたもの)的なノリに。
思えばそれも劇中設定とそう変わらない頃のものではないか。
設定の79年には十分物心がついていた身として、当時のものを模したオリジナル楽曲はもちろん、台詞の端に出てくる当時の流行り言葉などもワカって、もう頬が弛みっ放し。
どさくさに紛れてイマのものが少々入っていたりするのもコメディとしてアリでまた楽しからずや。
いやぁ、愉快愉快♪
棚からハムレット
CAPTAIN CHIMPANZEE
ザ・ポケット(東京都)
2014/11/05 (水) ~ 2014/11/09 (日)公演終了
満足度★★
今回はいろいろ残念
原典の基本設定(のいくつか)を現代の小劇場界に置き換えての物語はここの得意とするところでいつもながら巧み。
がしかし、今回は最後に主人公に言わせる台詞ありきで作られたようで、そのために主人公の人物像が、そして延いては物語自体が不安定になってしまった憾みあり。(詳細はネタバレBOXにて)
が、1シーンで見せた擬闘と使い方によっていくつかの場所をそれらしく見せる装置は良かった。
オレンジジュースに罪はない
3つの劇団が同じタイトルで作品を作ってみました公演実行委員会
テルプシコール(TERPSICHORE)(東京都)
2014/11/07 (金) ~ 2014/11/09 (日)公演終了
満足度★★★★
各団体の個性・アプローチが如実に出た好企画
2団体を観たことがあるのも手伝って各団体それぞれの個性とアプローチの違いが如実に出た感じで面白い、好企画。
【バカバッドギター】
冒頭のタイトルの「ボキャブラ天国」的な地口が巧み(こういうの好き)でトップバッターに最適。
本編も個性がよく出たものだったが、タイトルを噺の枕的にしか使わなかったのがちょっと残念。
【劇団皇帝ケチャップ】
受け答えが微妙にズレたりするのではなく、ごく普通のものでありながらも笑いを誘う会話のセンスは特筆もので、客席の笑いも一番多かったような。
ただ、タイトルが今一つ前面に出ていなかったのが惜しい。
【サラリーマンチュウニ】
団体初見。団体名から察するに会社ものが得意?
既視感のあるストーリーではあったがタイトルの押し出し方・練り込み方は一番明確だったのではないか?
企画の言い出しっぺだけに巧妙?(笑)
柚木朋子の結婚
studio salt
鎌倉/古民家スタジオ・イシワタリ(神奈川県)
2014/10/11 (土) ~ 2014/11/16 (日)公演終了
満足度★★★
内容と会場が合致し過ぎ
柚木家の長女・朋子が知的障害者と結婚すると言い出すが既婚の弟・妹は反対し…な物語。
会場である古民家の雰囲気と相俟って極めて日本的な印象、それも、外国人にはワカらないのではないか?というレベル。
あれこれ語り過ぎず、「そこはお客さんが自ら悟ってね」な脚本も日本的なのかしら?
で、細やかな家族の機微が浮き上がって来るものの、会場にハマり過ぎて逆に演劇公演らしからぬ「ナニカ」まで漂ってしまったような…。
あの脚本は、あの会場に合わせて書かれたものだそうだ。
なのであまりに「調い過ぎた」のではなかろうか。
乱暴な物言いをすれば、そういうのは映画の領域であって、芝居でやると邪道、みたいな。
思えば、σ(^-^)が今までに観た古民家で上演された芝居はチェーホフ作品、岸田國士作品、落語(を芝居にしたもの)など、どこかに「作り物」感と言うか、その場所にそぐわない要素があったのだ。
鳥公園の「おばあちゃん家のニワオハカ」にしても非現実的な要素があったのだ。
しかし本作は場所にしても時代にしても諸設定にしても、会場にあまりに合致「し過ぎて」、却って演劇らしさが薄れてしまった、みたいな…。
芝居自体は悪くなかったし、満足の行くものではあったのだけれど、どこかひっかかるモノがあったのは否めない。
色のない虹
ポムカンパニー
シアター711(東京都)
2014/10/30 (木) ~ 2014/11/03 (月)公演終了
満足度★★★★
深読みしながら楽しむ
画家生命の危機に瀕した若い女流画家と彼女をとりまく人々の物語。
他者の画才にたじろぐ者、他人は他人、自分は自分と割り切る者や画家を志しながら諦めた者など、松木主宰の演劇に対する想いや経験の隠喩と深読みしながら観てあれこれ得心。
こんな風に真偽のほどはともかく、勝手に深読み(時に誤読)できる芝居って面白いんだよな。
ま、某作曲家に着想を得たのでは?というのは誤読だったが…(笑)。
あと、カンバスのフレームあるいは額縁をモチーフとした舞台美術もステキ。