喜劇王暗殺
トツゲキ倶楽部
d-倉庫(東京都)
2014/12/03 (水) ~ 2014/12/07 (日)公演終了
満足度★★★★
心温まるファンタジー+α
ありふれた表現になってしまうが「心温まるファンタジー」。
当世の大スタア(と言おうか世界の喜劇王と言おうか)がお忍びで来訪することで嬉しさに舞い上がる“庶民”の気持ちがガンガン伝わってくるし、カタコトながら次第に触れ合いが深まってゆく様子も良いし…で、漠然とした幸福感に包まれる。
そんな中に(多少類型的ではあれ)「戦争がもたらす哀しみ」をさらりと織り込むところは井上ひさし作品を連想。
また、ちゅうサンさんのマイムは「反則ワザ」的にステキ。(冒頭のパフォーマンスも、後半で皆がわいわい騒いでいるバックで身振り手振りをしているのも)
下衆な回遊魚
はぶ談戯
劇場MOMO(東京都)
2014/12/02 (火) ~ 2014/12/07 (日)公演終了
満足度★★★★
一粒で二度おいしいツクリ
60年代の日活の歌謡映画路線のようなヴィジュアルで昭和の松竹映画的な「ネオ・人情噺」を語る前半と、キレイゴトを排し人の弱さを描いてペーソスが漂う後半の二段構えで「一粒で二度おいしい」。
前半のクライマックスと全体の幕切れで味わいが異なるが、それぞれにステキ。
ヒトヒトヒト
キリンバズウカ
武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)
2014/11/23 (日) ~ 2014/11/30 (日)公演終了
満足度★★★★
ありがちなコミュニティ崩壊劇と思いきや
シェアハウスに住人の兄が転がり込んだことで起こる波紋。
円滑だった住人たちの関係が徐々に揺らいで行くさまは、不安定なタワー型のものに順に物をのせてゆくゲームの如し。
「そこまで行くの!?」な展開の後、時を遡り「種明かし」よろしくその前に見せたいくつかの場面を別の視点で見せるアイデアが面白く、最後に残された「再生の兆し」が優しい。
ミラージュ・イン・スチームパンク
X-QUEST
王子小劇場(東京都)
2014/11/27 (木) ~ 2014/12/08 (月)公演終了
満足度★★★★★
もはや「新・様式美」
冒頭の「空中戦」を筆頭とした流れるような動きが美しい、本気の擬闘で躍動する肉体が美しい、どことなく野田を思わせる台詞の響きが美しい、物語全体の構成が美しい…もはや「新・様式美」では?
夜行万葉録・辰
Jungle Bell Theater
ART SPOT LADO(東京都)
2014/11/22 (土) ~ 2014/11/30 (日)公演終了
満足度★★★★
充実の75分
民俗学ネタの新シリーズ、今回はコメディ編、怪談編、感動編という構成の妙に加えて連作3話を貫くパートを通じて語る内容も深いという充実の75分。
いやぁ、堪能しましたぁ。
「人形」の使い方と言うか表現と言うか、それも良かった。
【全ステージ終了しました。ご観劇頂いた皆様ありがとうございました。】わるぐち全集
なかないで、毒きのこちゃん
@Fizz(東京都)
2014/11/22 (土) ~ 2014/11/24 (月)公演終了
満足度★★★★
陰湿になりかねないネタを笑いに昇華
古着屋の雇われ店長と店員が愚痴ったり陰口を言ったりの序盤は「ハロー!新宿ちゃん」の1編目を想起させるが、空気を読まない歳嵩の新人バイトの登場により新展開。
ともすれば陰湿なイジメ、イビりになりかねないところを飛び道具的に(笑)極端な人物(新人バイトとその交際相手)を配することで笑いに昇華させるのが巧妙。
.01秒を歩くスイミーの祭典
第27班
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2014/11/19 (水) ~ 2014/11/24 (月)公演終了
満足度★★★
個々のパーツは良いが全体としては不完全燃焼、改訂版を望む
東京オリンピックと学生志願兵と…。
題材の選定とそれに対する考察・主張、1本通った縦軸(と言うより「繋ぎとなるパーツ」?)の周囲に複数の流れを配する構造、見せ方の工夫、仕掛けた罠、共通の「モノ」をキッカケに一気にたたみかけるクライマックス、ブラックユーモアに切なさや虚しさを加えた幕切れなど、個々に見る分にはそれぞれ良いのだが全体として組み上がったものは掛け違いやら不協和音やらが感じられて「不発感」あるいは「不完全燃焼感」があるのが何とも惜しい。
思うに要素を盛り込み過ぎたのではあるまいか?
その結果、併走する複数の流れの接点がなかなか見えず「長すぎる導火線」状態に陥ってしまったのではないかと。
もう少し絞り込んでスリム化した改訂版を観てみたいモンだ。
事前にベタ褒めと批判的な評をそれぞれ目にしていたが、観ながら批判側の言わんとしていたことがよくワカったりもして…。
Rumbling March
Performing unit colors7~C7
サブテレニアン(東京都)
2014/08/06 (水) ~ 2014/08/10 (日)公演終了
満足度★★★
様々なスタイル8編の短編集
ダンス寄りの身体パフォーマンスも含む前半5編は短め、後半3編は長めという構成の短編オムニバス。
前半は一部投げっ放しあるいは素材そのままなものがあった感無きにしも非ずだが、後半はいずれも好み。
ただ、ビターエンドが多く、欲を言えばビター1、ハッピー2くらいにして欲しかった。
言の葉の散りぬるを
wordleafproject
高田馬場ラビネスト(東京都)
2014/11/21 (金) ~ 2014/11/24 (月)公演終了
満足度★★★★
瑕もあるが基本は珠の伝奇的世界
“言霊遣い”や“人ならぬ者”がいる架空世界の伝奇的物語。
細部(特に人死に関連)に杜撰な感が無きにしも非ずではあるが、世界観は好きだし終盤のどんでん返しの連続など総じてよくできている。
「言霊を遣う力」を、もっと一般的な力(能力とか権力とか)の比喩として観るとまた面白い。
また、ある場面でのS.E.の使い方や、撃つ直前までフレームに指を添わせてトリガーに指をかけない演技もイイ。
空は青くて
ソラトビヨリst.
王子小劇場(東京都)
2014/11/20 (木) ~ 2014/11/24 (月)公演終了
満足度★★★★
イマに対する皮肉・警鐘に満ちたダークな未来図
80年代後半あたりのアメリカ映画(?)にあったようなダークな未来図。
没個性をよしとする画一化教育や、(一部の)感情の喪失、「死」に関する感覚の麻痺などイマの世相・風潮に対する皮肉や警鐘を盛り込み、ビターな仕上がりに。
前半はピリリと辛口だったり多少の苦味が感じられたりな部分があるも基本的にはコミカルで口当たりが良いが次第にビターテイストに転じ、結末もかなりビターながら娯楽性を損なわない(私見)のは巧み。
Three Piece Moratorium
劇団→ヤコウバス
百想(re:tail別館)(東京都)
2014/11/11 (火) ~ 2014/11/16 (日)公演終了
満足度★★★★
「もう1本のヤコウバス」を通して描くヤコウバス自身
「もしもあの時…」な仮想現実を通して描くヤコウバスの過去と現在(と近未来展望?)。
「3人いてこそのヤコウバス」な部分と劇中劇として見せる仕上がった芝居のダイジェストからのオチが特に巧い。
気がつけば、みんな、尾崎
ローカルトークス
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2014/11/12 (水) ~ 2014/11/16 (日)公演終了
満足度★★★★
独特なオトナのコメディ
営業研修でいびられまくりの主人公が尾崎豊の幻影に導かれ…な物語。
ほろ苦いサラリーマンものの味わいもありつつ、ブッ跳んだ部分や飛び道具的な役者を使った笑いもふんだんで、独特なオトナのコメディ、な印象。
考えるに、ある程度の人生経験を積まないとこういう作品は書けないんじゃなかろうか?
具体的にどこが、とかではなく、漠然としたモノなのだけれど。
あと、タイトルまんまの場面もワロタ。
とけない鎖
劇26.25団
OFF OFFシアター(東京都)
2014/11/19 (水) ~ 2014/11/23 (日)公演終了
満足度★★★★
題材に対する視点と演劇表現の妙
実在の事件を元にしながらも事件そのものは背景程度にとどめ、事件の周辺とそれを題材とした小説が文学賞を受章したことで起こる波紋、主人公の母に対する想いなどを描くという視点がイイ。
また、「房子/ななし」と「萌子」の舞台上での「役割分担」も面白い。
ぜんぶのあさとよるを
Pityman
pit北/区域(東京都)
2014/11/19 (水) ~ 2014/11/24 (月)公演終了
満足度★★★★
演劇表現は不思議の連続
かつて仲の良かった女性2人の今(と昔)。
不連続なシーンの積み重ねにつきまとまりに欠けるような気で観ているも最終場の2人によって彼女たちの軌跡を見ていたように思われてくるのが不思議。
また、現実では同じ舞台面ながら、白い円の部分がちゃんと遥か離れた海外に見える(そこ以外も照明などによって複数の場に思われる)のも不思議。
演劇表現って不思議の連続だね。
新しい自分のつくりかた【ご来場誠にありがとうございました!】
ラフメーカー
新宿眼科画廊(東京都)
2014/11/07 (金) ~ 2014/11/12 (水)公演終了
満足度★★★★
「女ともだち」三題
3編の異なるタイプの「女ともだち」の物語。合コンにかける女性たちをコミカルに描いたかと思えば進学で上京した少女と田舎に残った友人を描き、ラストは時間差で鎌倉観光をする2人と1人(途中で読めてしまうけれど好きなタイプ)…という趣向。
あて書きとのことで、演者と役の適合ぶりたるや!
あと、白ベースの装置に画像を映写して場を示すのも〇。
りんごりらっぱんつ at 浮間ベース
浮間ベースプロジェクト
浮間ベース(東京都)
2014/11/06 (木) ~ 2014/11/16 (日)公演終了
満足度★★★★
原作に新たな別の魅力を附加した大胆なアレンジ
劇団競泳水着の2010年作品を、あの場を活かして上演すべく三部形式にした他、口上・ストーリーテリング担当を加えるなど大胆にアレンジ。いわば弦楽四重奏曲のオーケストラ編曲的な?。
原作に新たな別の魅力を附加したといったところか。
オリジナル版のキャスト等を思い出したり、ある部分にその後の作品のモチーフ的なものを見出だしたりしながら「あの装置」の使い方を堪能。
マチネ観劇後に青山Pからウワサの「夜の演出」内容を伺ったが、昼は昼で素朴な仕上がりになっていたのではないかと思う。
特にベンチに座った母娘の影が長く伸びているのは美しかったなぁ。
それに夜は寒そうだしね。(笑)
ただ、終演後にでも配役表の配布があればありがたかったな。
Lucifer
Ammo
d-倉庫(東京都)
2014/10/31 (金) ~ 2014/11/03 (月)公演終了
満足度★★★★
国家分裂がもたらすものをワカり易く描いて鮮やか
多民族国家の分裂が一般市民にもたらすものを解りやすく提示して見事。
日本人記者の目を通して描いたことも解りやすさの一因か。
また、終盤のある人物(…だけではなく恐らく他の人物たちも)の「他民族を嫌う」気持ちが本質的には理解できず、単一民族国家(←厳密にはアイヌ、琉球など少数民族もいるが「多民族国家」の対語として使用)である日本に生まれたことを幸いに思ったりも。
そこから最近のヘイトスピーチなどにも想いが及び、一部の日本人にはその傾向が出始めているのかとも思いつつ、それでも島国で良かった、なんてことにも気付く。
TEAM JAPAN SPEC.時代の作風に通ずるAmmo、Minami Produceと二本の柱として、今後も活動を続けていただきたい。
「空想、甚だ濃いめのブルー」「赤い下着、覗くその向こう側、赤の歪み」
キ上の空論
新宿眼科画廊(東京都)
2014/11/07 (金) ~ 2014/11/19 (水)公演終了
満足度★★★★
空想、甚だ濃いめのブルー
こちらの方がシンプル(と言っても一般的な芝居と較べれば遥かにトリッキー)な分、力強いと言うかそういう印象。
恋愛(純愛)を描いて繊細な赤、友情を描いて力強い青といったところか。
主人公2人が最初に出逢うシーンで「この2人の友情の話だったな」と概要を思い出してホロリ、途中のある場面でクライマックスを思い出して眼が潤みそうに…。
「空想、甚だ濃いめのブルー」「赤い下着、覗くその向こう側、赤の歪み」
キ上の空論
新宿眼科画廊(東京都)
2014/11/07 (金) ~ 2014/11/19 (水)公演終了
満足度★★★★
赤い下着、覗くその向こう側、赤の歪み
初演時はその実験的な構造ゆえに探り探りだった上に終盤のヒロイン2人の衝撃的な言動に「印象を奪われた」が、今回は概要がワカっている分、他の人物たちの心情などの細やかなところにも気付くことができてあれこれ心に沁みる。
正義の味方
劇団三日月湊
王子小劇場(東京都)
2014/11/13 (木) ~ 2014/11/16 (日)公演終了
満足度★★★★
アングラど真ん中♪
哲学的にもとれる抽象的な言い回しだったり詩的で美しかったりする台詞、わざとらしい(←貶す意図は毛頭ない)メイク、コロで移動・回転を容易ならしめ、どんでんまでありウェザリングを施した装置(電柱もあったな)など、アングラ芝居の良い部分を抽出したような味わいがタマらん!