もっと超越した所へ。
月刊「根本宗子」
ザ・スズナリ(東京都)
2015/05/09 (土) ~ 2015/05/17 (日)公演終了
満足度★★★★
真価を問われるのは次回作
4つの部屋での4組の男女を併行して見せることで描くのは「ダメ男見本市」?(笑)
4人のうちの1人は比較的まともかと思っていると実は一番残酷だったりもして「ホントにどうしようもない奴等だな」と客観視していると時々流れ弾が…(爆)
で、彼らの隠された繋がりなども明かしつつ一件落着かと思わせてからが今回のミソでありこのタイトルの所以。
飛び道具的な、あるいは反則に近い(笑)テを使っての落としどころは鮮やかと言おうか何と言おうか…あ、アレだ、「アッパレ」だ。
そんなこんなで知っている範囲内の根本宗子作品中最高傑作であることについて異論はないが、絶讚の声があまりに多いことには疑問を抱かざるを得ない。
従来と一線を画しはしたが、1度しか使えない切り札的な手法によるものであり、むしろ本作を経ての次回作で真価が問われるのではあるまいか?
明治悪党奇譚
(有)オフィス パラノイア
「劇」小劇場(東京都)
2015/05/01 (金) ~ 2015/05/06 (水)公演終了
満足度★★★★
骨太さ健在
三人吉三を明治初頭に翻案。
文字通りの「親の因果が子に報い」など、ベタなまでの関係性が縺れ絡まる様は韓流ドラマのルーツか?(笑)
登場人物がことごとく悪党なのにどこか憎めず同情すらしてしまうのは運命に抗えずそんな因果に絡めとられて行くことへの憐れみか?
そうして迎える終盤は「滅びの美学」的なものが漂い、ラストには某ギャング映画も連想。
設定を明治初頭にしたのは、時代の流れに押し潰される人々、な効果も狙ったか?とも思ったり。
NICE EIJI
丸福ボンバーズ
APOCシアター(東京都)
2015/05/08 (金) ~ 2015/05/17 (日)公演終了
満足度★★★★★
こんな良作が2000円均一だなんて!
父・英治の介護に疲れた真紀はふとしたことから小学生時代を思い出し…な物語。
何人かの個性的な人々が出入りしていた回想部分と問題が少しずつ見えてくる現在部分を対比して見せる構成が巧み。
そして楽しかった過去に対して今は…と思わせて(他人事ではないとも思わせる)からの逆転ホームラン的な結末が鮮やか。福島三郎、やはりイイわ!
しかもこんな良作が2000円均一だなんて!
『冒した者』/『ウィンドミル・ベイビー』
アマヤドリ
スタジオ空洞(東京都)
2015/05/07 (木) ~ 2015/05/10 (日)公演終了
満足度★★★★
ウィンドミル・ベイビー
かつて働いていた牧場を訪れたアボリジニの老女が語る回顧譚。
可愛らしいお婆ちゃんからエラそうな雇い主、さらには犬までという中村早香嬢の演じ分けが愉しい。
そして冒頭こそ広田さんがご覧になったという大方斐紗子さん版を想像するも、進むに従って「これを、大方さんが…どう演じたの?」になるほど個性が出ていたように思われる。
ところで彼女の訪問の目的は鎮魂? また、「ジャガイモ」とは彼女たち地震のこと?
あと、線香花火の「玉」が落ちるようなあの終わり方もイイな。
すべての犬は天国へ行く
ぬいぐるみハンター
王子小劇場(東京都)
2015/04/29 (水) ~ 2015/05/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
長さを感じずあれこれ堪能
殺し合いにより男がいなくなった町の日常(?)。
それでも男を待ち続ける日々に「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」を連想するもケラさんの「西部劇でゴドーをやってみたかった」とのコメントを後から目にして大いに納得。
ケラさんと言えば「自作はあて書きなどもあり他者が上演しにくい(大意)」とのコメントを観劇前に目にしていたが、役と演者がまるであて書きのようにしっくり馴染んでいることにビックリしつつ感心。
配役については事後にナイロン100℃のオリジナル版(未見)を調べ、確かにあの役はあの人だ、と納得したり(エルザとかクレメンタインとか)、タイプは違うがどちらも納得できたり(エリセンダ、カミーラなど)面白さ倍増。
また、久しくナイロン100℃の公演を観ていなかったので、微妙に食い違う会話のオカしさやナンセンスなギャグに「そうそう、これこれ」と懐かしさを感じたり。
さらに、実はあの全員も既に死んでいて、あの日々を永遠に繰り返す一種の地獄なのではないかとも思ったり…。
なんだかんだでいろいろ愉しかったなぁ。
銀河旋律
風鈴堂
シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)
2015/05/01 (金) ~ 2015/05/03 (日)公演終了
満足度★★★★
鬼に金棒状態?
キャラメルボックスが上り調子だった頃(←)の時間ものファンタジーの傑作である脚本に、オオツ、サルマルを筆頭にキャラクター造りがしっかりできた演技が加わって「鬼に金棒」?(個人の感想です)
なお、この場合、どちらが鬼でどちらが金棒かは問わないものとする。(爆)
それにしてもあの頃のキャラメルは…いや、何でもないです。
舞首ー三つ巴の里ー
鬼の居ぬ間に
シアター711(東京都)
2015/05/06 (水) ~ 2015/05/10 (日)公演終了
満足度★★★★
和製「セブン」?
金田一耕助が呼ばれて訪れるような地方の村で起こる惨劇…。
人の「業」がねっとり(べっとり?(笑))と渦巻いて各人物はそれらに抗えず押し流されて行くが如し。
当日パンフレットに記載され、劇中でも語られる仏教の「三毒(貪・瞋・癡)」がモチーフとして活かされているあたりは和製「セブン」か?
あるいは昭和50年代の松竹映画?
ラストシーンも衝撃的だったなぁ。
眼浸
激団リジョロ
ザムザ阿佐谷(東京都)
2015/04/24 (金) ~ 2015/04/27 (月)公演終了
満足度★★★★
罪を犯す男の脳内?
罪を犯した男の見る幻影…と言おうか、罪を犯すに至る脳内を見せる、な感じ?
幻想とワカる部分もあるが、そうでない部分もあり、しかもそれが前後で相反したりするので観ている側として迷宮に足を踏み入れて抜け出られなくなったような感覚に囚われる。
また、はっきり幻想とワカる部分も主人公と血縁者が反映されているのが巧み。
さらにかなりリアルに1Kのアパートを再現した装置と終盤での仕掛けも見ものだった。
夜が明けたとしても…
リブレセン 劇団離風霊船
ザ・スズナリ(東京都)
2015/04/23 (木) ~ 2015/04/29 (水)公演終了
満足度★★★★
やはり離風霊船らしい芝居
さびれた商店街の再生プロジェクトをめぐる物語。
前半は穏やかな展開…と言うより「今回のテーマはそれ?ちょっとユルくないか?」な印象ながらプロジェクトリーダーが登場してからは離風霊船の真骨頂、キュッと締まり「今はソレだよね」に変貌、キナ臭くなりつつある今の日本への風刺と皮肉に加えて警鐘まで鳴らすという…。
さらにそれをマイルドに一件落着かに見せておいて更にひとひねりして余韻の残る結末にしたのはさすが。
屋台崩しや突如出現するお花畑などはなかったけれど、やはり離風霊船らしい芝居だったな。
無常ホテル
劇26.25団
サラヴァ東京(東京都)
2015/04/17 (金) ~ 2015/04/19 (日)公演終了
満足度★★★★
客船内のバーラウンジにいるような錯覚にとらわれる
動くホテルとも呼ばれる豪華客船での日本一周クルーズの客・関係者たちが織り成す物語。
冒頭、乗務員に扮した劇団員全員によるタップに始まり生歌なども挟みつつ進行するので会場のツクリや雰囲気も相俟って、自分も客船内のバーラウンジにいるような錯覚にとらわれる。
そうして、序盤にあった思わせぶりな台詞をすっかり忘れた頃に訪れる意外な結末。
ここで「そう言えば最初の方にあった台詞はこのことか!」と思わせるのが上手いんだよなぁ。
愛し平成、また昇る
第27班
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2015/04/29 (水) ~ 2015/05/06 (水)公演終了
満足度★★★★
全体が満遍なく良いが…
全世界的に起こった特殊な状況下で戸惑いながらも自分の行くべき道を模索する人々を描いた群像劇。
普通は主人公だけとか、せいぜいバス1台の乗客とか学校の1クラス程度の人数に起こる事態を全世界的な規模にしたのが着想の妙。
が、様々な対応が同時併行的に進行するのが諸刃の剣?
誤解を恐れずに言えばメリハリに欠け、どこが良かったか問われると答えに窮するが、換言すれば全体が満遍なく良い(恋人のどこが好きか問われて「全部」と答える語彙不足の輩みたいだ(爆))…な感じ。
なので155分の長尺が中だるみしたりダレたりしない…どころか長さをあまり感じないのはある意味不思議(笑)。
欲を言えばどこか軸になるものが欲しかったか?
なお、全体の雰囲気は2013年12月上演の初長編「(morning sun...)」に通ずるような。
また、「特殊な状況」の設定に2人のSF作家を、途中で語られる一部の人物の設定に映画化もされた小説を連想。
独りぼっちのブルース・レッドフィールド
ポップンマッシュルームチキン野郎
シアターサンモール(東京都)
2015/02/22 (日) ~ 2015/03/01 (日)公演終了
満足度★★★★
テーマを浮上させる終盤の衝撃たるや!
老いたガンマンとヘンな仲間たちの愉快な旅…。
お得意のナンセンス・ギャグ(今回は下ネタは控え目)に大笑いしてすっかり忘れた冒頭で張られた伏線を回収してテーマを浮上させる終盤の衝撃たるや!
おバカな笑いをちりばめつつ、実はきちんとしたテーマが潜んでいるというのはいつものことながら、今回はのテーマは「人を殺す“罪”の重さ」ということで、よりシリアス。
あと、銃撃戦の表現が愉しかった♪
立体文学 「十二歳~おれはねこだぜ~」
ストーリーテラーズ
竹林閣(東京都)
2015/02/20 (金) ~ 2015/02/22 (日)公演終了
満足度★★★★
シンプルになった分、想像力をより刺激される
佐野洋子の随筆数編と絵本用の物語1編で構成した60分。
従来よりも小道具などがシンプルになった分、想像力をより刺激される感じ。
パックマンのような形状のモノの切り欠き部の向きを変えたり組み合わせたりでいろんなものを表現するアイデアも良かった。
30光年先のガールズエンド
The end of company ジエン社
早稲田小劇場どらま館(東京都)
2015/04/08 (水) ~ 2015/04/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
ワカり易いカタチで歳月を感じさせる
貸しスタジオでの待ち時間にライターの取材を受けるガールズバンドのメンバーと、その12年後にスタジオを訪れた彼女たち…。
今まで観てきた中では最もワカり易いのは本介さん曰く「前作の反動」(笑)。
とはいえお得意の同時多発会話も使いながら写実的な装置の中で描かれるのは「歳月」?
12年後の自分をライターから問われた彼女たちは「想像できない」と答え、30歳になった彼女たちは当時の自分の記憶が曖昧…。
そこに横たわる12年の歳月に何だか胸がきゅん。
10年後などを想像できない若者、というのは割とありがちながら、同じ人物が過去を振り返った時に…という対比にしたのが鮮やか。
うーん、好きだな、この作品。
いつになったら
劇団Peek-a-Boo
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2015/02/19 (木) ~ 2015/02/23 (月)公演終了
満足度★★★★
SFサスペンスかと思わせておいての…
崩壊寸前の5人家族の引きこもりの次男が53年後の日本の危機をめぐっての騒動に巻き込まれ…な物語。
珍しくも某映画を想起させる時間ものSFサスペンスかと思わせておいての終盤の「仮にやる気のなさがJの仕業によるものだったとしても、自分の力で立ち上がりたい」という台詞はいかにもここらしいもので「あ、やっぱり!」(笑)
弁天劇場のジュリエットたち
劇団オグオブ
キーノートシアター(東京都)
2015/04/24 (金) ~ 2015/04/26 (日)公演終了
満足度★★★★★
再演を熱望、続編も可能では?
200年の歴史がある江ノ島弁天劇場の閉館公演出演者募集に集まったのは舞台経験のない者ばかりで…な物語。
大好きな「ダメな面々がコトを為し遂げる」タイプな上に、シニカルなものを含む演劇界ネタもあり、2時間余の上演時間も長く感じず。
演出家(役&現実の作演)の語る演劇論的なものや演技に対する姿勢、主宰(役)の語る人気役者を起用した商業演劇と小劇場の実態(?)などが興味深く、終盤で演じられる劇中劇の演出も新旧の要素を取り混ぜていて面白いんだよなぁ。
で、結末も巧くまとめてあるけれど、やりようによっては続編もできそうだな、と微かに期待。
谷間にカンパイ!
劇団ズッキュン娘
シアター風姿花伝(東京都)
2015/04/22 (水) ~ 2015/04/27 (月)公演終了
満足度★★★★
キャラメルボックスにおける「TRUTH」的な作品
カメラマンと婚約し、グラビアアイドルから女優への転進を図るモモコに試練が…な物語。
恋愛要素が減りビター系に変貌、さらに従来は「ライバル」や「意地の悪い人」にとどまっていたのが「悪役」と言える人物を登場させるなど新境地開拓?
よって、ストーリー、人物像とも類型的な部分が無きにしも非ずではあるが、お得意のダンスやお約束の(?)主宰の“アレ”などで差別化して95分弱にまとめたのは巧み。
また、モモコを想う姉の気持ちと終盤でのモモコの決断がイイ。
特に終盤でのモモコの「赦し」に関する部分は、少し前に観た芝居から考えたことと一致して、共感と言おうか「やはりそうだよね」と言おうか。
で、次回公演は恋愛ものの傑作である「2番目でもいいの」の再演とか。藤吉主宰、策士でもある。
『蝶ゲンボウ』(チョウゲンボウ)
ひげ太夫
テアトルBONBON(東京都)
2015/03/24 (火) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
神話・伝説色が濃くなってステキ
毎度お馴染み東洋風の架空の国の時代不明(というより「不問」?)の英雄譚だが、従来のマンガチックな絵本的世界よりも「ある設定」において民間伝承あるいは神話・伝説色が濃くなったのが今回の個人的ツボにして白眉。
もちろん、「喋る流れ星」「打たせ湯」「食パン」「某キャラクターの顔」などの表現系小ネタにもツボを突かれまくり。
サヨナラワーク
劇団エリザベス
スタジオネリム(東京都)
2015/04/18 (土) ~ 2015/04/26 (日)公演終了
満足度★★★★★
エリザベスど真ん中
心に傷を負った成美は友人の住む女性専用のシェアハウスに入居するが…な物語。
美人系にカワイイ系、それにメガネっ娘まで取り揃えられた女優たちがそれぞれ相応しい人物を演じ、途中からミステリアスな展開になるのはいかにもエリザベス。
その真相は好きなパターンの1つだったので薄々勘付いていたものの、別の好きなパターンかと思ったりもしてあれこれ楽しむ。
また、新宿眼科画廊での再演やラストシーンで「あれ」を見せる「劇場版」なども勝手に夢想。後者はアイドル起用か?(笑)
ゲバゲバッ!
昭和芸能舎
笹塚ファクトリー(東京都)
2015/04/14 (火) ~ 2015/04/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
羽原流“昭和庶民伝”
昭和45年、新宿のキャバレー・ゲバゲバに訳ありらしき新人ホステスが入ったことから起こる出来事。
当時すでに物心が付いていたので客入れBGMの歌謡ポップスに始まり劇中の世相・流行語・流行り歌なども懐かしい…と言うか「あれはその頃だったか」的な。
そして物語は基本的にはコメディながら、戦争の傷痕や高度成長の歪みが見え隠れし、それらを背景にした人物像には哀感も漂う。そんなあたりは「羽原流“昭和庶民伝”」なオモムキ。
そうして迎えるクライマックス、新人ホステスの隠していたことが明らかになってからは圧巻。
“ある差別”にしても「自分の正義」を振りかざす報道にしても不思議と今と通ずるようで、半世紀近く経っているのに進歩しないというのは痛烈な皮肉。
そんなことを経ての締めくくりは羽原作品らしいあたたかさ・やさしさで軟着陸。
井上ひさしの「きらめく星座」や「闇に咲く花」に一脈通ずる感もあって、良かったぁ。
ところで終盤で流れるロックバージョンの山谷ブルースはダウン・タウン・ブギウギ・バンド?