満足度★★★★★
羽原流“昭和庶民伝”
昭和45年、新宿のキャバレー・ゲバゲバに訳ありらしき新人ホステスが入ったことから起こる出来事。
当時すでに物心が付いていたので客入れBGMの歌謡ポップスに始まり劇中の世相・流行語・流行り歌なども懐かしい…と言うか「あれはその頃だったか」的な。
そして物語は基本的にはコメディながら、戦争の傷痕や高度成長の歪みが見え隠れし、それらを背景にした人物像には哀感も漂う。そんなあたりは「羽原流“昭和庶民伝”」なオモムキ。
そうして迎えるクライマックス、新人ホステスの隠していたことが明らかになってからは圧巻。
“ある差別”にしても「自分の正義」を振りかざす報道にしても不思議と今と通ずるようで、半世紀近く経っているのに進歩しないというのは痛烈な皮肉。
そんなことを経ての締めくくりは羽原作品らしいあたたかさ・やさしさで軟着陸。
井上ひさしの「きらめく星座」や「闇に咲く花」に一脈通ずる感もあって、良かったぁ。
ところで終盤で流れるロックバージョンの山谷ブルースはダウン・タウン・ブギウギ・バンド?