立体文学 サビガリ天使 〜太宰治短編集〜
ストーリーテラーズ
西荻窪・信愛書店(東京都)
2018/07/27 (金) ~ 2018/07/29 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2016/07/27 (水) 19:30
価格2,500円
犬と「私」の関係を描いた随筆あるいは私小説的な「畜犬談」と婦人誌に掲載された「貨幣」というライトでユーモラスな2編を柱として「俗天使」からの抜粋による書簡(?)つなぐ構成によって太宰を「自陣に引き寄せた」印象。
いつもの単音鉄琴(?)を使うのはもちろんのこと、全観客に小道具を持たせ、ある場面で劇中のあるものを演じさせるというテを太宰作品でも使うたぁ恐れ入りやした(笑)
甘い丘
えにし
ザ・ポケット(東京都)
2018/07/04 (水) ~ 2018/07/08 (日)公演終了
満足度★★★★
地方の小規模な工場に新たに採用された2人のワケアリ女性……から始まる物語。
9年前にKAKUTAの再演版を観ているが、その記憶がかなり薄れていたこともあってか、えにしの作品になっていたな、と思った。
そしてKAKUTA版の半分程度しか幅がないステージに組まれたいかにも小規模工場、な装置は閉塞感を感じさせ、そこもKAKUTA版とは異なり別の味わいを生み出していたな、とも。
君の言った”またね”を僕は1年待っている
感情7号線
APOCシアター(東京都)
2018/06/30 (土) ~ 2018/07/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/07/06 (金) 19:30
価格3,200円
【後攻:Aチーム】
1度観て全体像を把握した後なので脳内のタイムスケールに演じられている場をはめ込んで理解を深める。また、名作オマージュの3人が思った以上に原典通りで頬が緩む。さらに全体的な印象としてAは初々しくBは落ち着いている、みたいな。
あとから伺ったところによると、演者の平均年齢はBの方が高いそうで、この象はアタリだったなと。
また、高校時代の甘酸っぱい恋愛の「あったあった」や「あんなことがあったら良かったのに」な感覚が呼び起こされるのが劇団ペリカンの前回公演「マナミの正解」と通ずるような気もした。
君の言った”またね”を僕は1年待っている
感情7号線
APOCシアター(東京都)
2018/06/30 (土) ~ 2018/07/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/07/06 (金) 14:30
価格3,200円
【先攻:Bチーム】
高校での出逢いに始まる恋愛における「もしもあの時」、銀河鉄道の夜、七夕の三題噺、的な。
複数の会話を同時進行させキーとなる単語や台詞が一致する「シンクロ会話」の技法と「アレ」の合わせ技や物語構造、某名作(好きなんだ、これが)オマージュ、サラッと流すあの曲・その曲、装置とラストのシカケなどあれこれツボを突かれた。
何度も壊れる赤い橋
The Stone Age ブライアント
小劇場 楽園(東京都)
2018/07/19 (木) ~ 2018/07/22 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/19 (木) 19:00
価格3,500円
え、そういうモノを出しますか!?な意外性もあるホロ苦気味ファンタジー。「少し不思議」系とも言えるか。
X-QUESTで橋本亜紀さんをよく拝見している身として、突飛な役どころが何の不思議も抵抗もなく受け入れられたし。(笑)
青色文庫 ー其四、恋文小夜曲ー
青☆組
ゆうど(東京都)
2018/07/13 (金) ~ 2018/07/19 (木)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/07/17 (火) 19:30
価格2,500円
第一部は文豪たちの恋文、第二部は青☆組の過去作品(+書下ろし)の一部抜粋の読み聞かせ(?)という構成。事前に「第一部は文字情報として書かれた文章なのですっと入って来ない」という感想を目にして臨んだが、覚悟したほどではなく胸を撫で下ろす。(笑)
とはいえこの「耳から入る言葉/目から入る言葉」という発想は眼からウロコが落ち、この日のマチネにも意識したし、今後の観劇の際にちょくちょく考えそう。
第二部の過去作品からの断片はよく覚えていたものはもちろん、記憶が薄れていたものも観ているうちに「そう言えばそうだった」などと思い出し、懐かしく感じた。
また、第一部は生徒たちに文豪の恋文を紹介するという設定になっており、教師役の福寿奈央さんのリアクションを観るのもまた楽しかった。
城
劇団普通
新宿眼科画廊(東京都)
2018/07/13 (金) ~ 2018/07/17 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/17 (火) 14:30
価格2,400円
冒頭の夫婦の会話はあまり抑揚がなく単なる言葉のやりとりのように無機質的だし、次いで登場した主人公の雪が深く外が暗いことを語る台詞(と照明効果)や「家族ゲーム」のように横一列に並んでの会話からは閉塞的な印象を受ける。
さらに物語は不条理っぽくもあり、「カフカフカカイ」(回文に非ず)な感じ?(笑)
前回は演技エリアを縦長に使い食事の場面で1人が次第に遠ざかることで疎外感を、そして今回は横長に使ってディスコミュニケーション(的なもの?)を視覚的に表現するとは、この会場の特質を活用しているなぁ、と感心。
なお台詞が時折「耳に優しくない」のは「活字で目から入る情報」として書かれた文だからではないか?と思ったのはツイッターで目にした他の芝居(←偶然にもこの後に観る予定だった)の感想の影響。
平成三十年のシェイクスピア
コンプソンズ
王子小劇場(東京都)
2018/07/18 (水) ~ 2018/07/22 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/18 (水) 19:00
価格2,500円
小劇場・芸能界ネタから時事・政治系ネタまで幅広く新旧(世代的に何故ご存知?なマニアックなものも含む)取り混ぜて面白可笑しくパロディ仕立てにしているが風刺・揶揄まで昇華されず単なるおふざけにとどまっている(※)のが残念。しかも予期した以上にシェイクスピアネタが希薄だし。その意味ではカンバンに偽りがあるのでは?(笑)
※ スタイルに通ずるものがある笑の内閣は切れ味抜群の刀で世相を一刀両断、な感覚だが、対してこちらは木刀でボコボコ殴るだけ、みたいな(いや、そもそもの狙いに違いがあろうから較べるのは無意味だが)
とは言え、ただ、あは、あは、あははと気軽に笑って観る分には十二分に楽しい。女優陣も魅力的だし。
そう言えば当日パンフレットには出演者名だけで配役を記さないのはネタバレ回避として理解できる……どころか当然のこととして評価するが、終演後に配役表を配布して頂ければありがたい。
目当ての某女優さん以外に気になった方が複数いらしたのに名前を知るすべがない……。
なお、電車の遅延に起因して開演を遅らせたとカーテンコールで明かしたが、そういうことなら定刻にアナウンスすべきではないか?
開演前に一切告知なく6分も押して開演するのは時間にルーズなダメ団体と誤解されかねない。
この点(と配役表の終演後配布)については今後の改善を望む。
死にたい夜の外伝
劇団献身
OFF OFFシアター(東京都)
2018/07/11 (水) ~ 2018/07/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/07/18 (水) 14:00
価格2,700円
ふとしたキッカケでハガキ職人となった青年が10年間投稿し続けた番組の最終回に合わせて開催したカラオケルームでのオフ会の席で起こるあれやこれや……。
かつてのオフ猿(爆)として郷愁もあるが、それ以上に人物設定とその描写・表現が巧く、「それはどうよ?」と思ってしまうような言動でも「あ、でもこの人ならそうする/そう言うだろうな」な説得力があって共感・共鳴する。
選曲も微妙なツボを突いてきてニクいが、あそこでのアノ曲は反則では?(笑)
歌と言えば、女優お二方の歌唱力もお見事♪
あと、ホロ苦さのある落としどころも良かった。
『コントロール・アン・ア・アン・アン・コントロール』『ギャル』『猫の呪い』『朝子さんと夕子さん』
遠吠え
SCOOL(東京都)
2018/07/13 (金) ~ 2018/07/16 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/15 (日) 13:00
価格2,000円
味わいの異なる4編、いずれも起承転結の承に入り「そっち?」と思わせたあたりでスパッと(時には台詞の途中で)切るなんて「そんな殺生な!」。(笑)
特に2編目「ギャル」の絵に描いたような典型的なギャルがたまに妙に良識的な発言をするギャップの可笑しさと3編目「猫の呪い」の物語が思わぬ方向に向かった(=道を曲がって別な景色が一瞬見えた、的な)まさにそこで切れる意地悪さ(爆)が印象的。
か・ら・だ♡ (再演)
劇団おねがいシスターズ
北池袋 新生館シアター(東京都)
2018/07/12 (木) ~ 2018/07/15 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/14 (土) 18:00
価格2,800円
単に時系列的にもリレー形式でつながるというだけでなくエピローグにもシカケ(?)がある3編オムニバス。 初演と較べて藤吉主宰が背後霊的に憑依している(爆)ような演者がいなかったのは残念?(笑) いや、それはそれでイイことなのだけれども。
一方、初演時同様二役の演じ分けが見事で「え、あの人があの役も演じていたの!?」状態。
個人的には1編目クライマックスの電車内の場面が好き。それまで見ず知らずだった人々がちょっとしたきっかけで互いを気遣うってイイよね。涙を拭っているお客さんもいらしたような……
真夜中のフォークロア
UNITレンカノ
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2018/07/11 (水) ~ 2018/07/15 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/11 (水) 19:00
価格3,000円
11年前の初演時に劇中に出てきた「惚れ薬」から「夏の夜の夢」か、と察し帰ってWikipediaで調べてあれこれ納得したことを今でも覚えている。
その後、今まで何種類も「夏の夜の夢」を観て熟知して改めて観るとまさしく「ハイパー夏の夜の夢」、「媚薬」を使う回数が増えてその分混迷も増すシカケにニヤニヤしたり、ほぼ原典そのままの部分があって納得したり。
また、当時はまだあまり話題になっていなかったことも取り上げられており、今の方が世相に合っているように思う。(先見の明がありすぎ?(笑))
『東京酒徒』
大かはづ師匠
エリア543(東京都)
2018/07/11 (水) ~ 2018/07/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/07/13 (金) 19:30
価格2,500円
人的交流とかからすれば大いに納得ながら、一方しか知らずに観に来たら戸惑うんじゃね?(笑)な作風の違いがある「両A面シングル」的公演。(笑)
大かはづ師匠「東京酒徒」とかけまして
松屋のカレギュウ、あるいはすき家のうな牛とときます
そのココロは
「え、それとそれをいっぺんに味わえるとはなんておトク……でも中には別々の方がイイやとおっしゃる方もいるでしょう」
……みたいな?
しかし考えてみるとこのカップリングって昔の名画座の2本立てに似ていて、こういうことがなければ知らなかったものを観るキッカケにもなるのではないか? 15 Minute Made や新宿コントレックスのように4つや6つの団体の「対バン」企画や黄金のコメディフェスティバルのように内容に共通性のある2団体カップリングではなく、本作のように水と油な作風の2団体カップリングももっとあってイイんじゃね?と思ったのだった。
ま、昔の二本立て名画座ファン的な発想だけれども。(イマのシネコン派にはワカらないかも?)
トイレの花子さんの帰宅
やまだのむら
イズモギャラリー(東京都)
2018/07/07 (土) ~ 2018/07/11 (水)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/10 (火) 14:00
価格2,000円
ヴィジュアルが衝撃的ながら妙に説得力のある花子さん(芝居のウソ、もとい芝居のマジックにも程がある!(笑))、厚かましさと可愛さが同居したポジティブなストーカー、その2人に翻弄される小劇場役者というキャラ設定・配役とストーリー展開の強力タッグが鮮やか。軽い小劇場系芝居弄りにもニヤニヤ。
しかし考えてみると映画やドラマで描かれる場合、サスペンスやホラーであることが大半なためにひたすら不気味だったりアブなかったりするストーカーをこんなにも可愛らしく(?)描いたものというのは珍しいのでは?(もちろん実際につきまとわれたら迷惑この上ないが)
アルペンループ
LIVEDOG
小劇場B1(東京都)
2018/07/11 (水) ~ 2018/07/16 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/07/12 (木) 14:00
価格4,000円
地獄体験ツアーが呼びもののテーマパークに集まった面々とパークの創設者と……。
中盤までは地獄に関する心理学的・哲学的考察、な感覚でその発想に舌を巻くが、終盤での地獄の意義/役割・成立過程や罪と罰の相当性などの言及は圧巻。
また、終盤である人物が述べる自分の罪を正当化する理屈に納得してしまいそうになるのは「暗黒面に堕ちる」のに近い感覚?でスリリング。
なお、終演後、初演時に白井肉丸さんが演じた役を伺い大いに納得(笑)
悪役たちの反省会
tea for two
小劇場B1(東京都)
2018/07/04 (水) ~ 2018/07/08 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/04 (水) 19:30
価格3,300円
古今東西の様々な「悪役」8人(組)が自分のしたことに関する「反省」をプレゼンテーションするショウの体。名前程度しか知らなかった人物について知ることができた他に割と知っていたつもりの人物についても背景など新たな情報を得たりいろいろと勉強になる(?)。
そうして、どう落とすのかと思いながら観ていたら「そう来たか!」という予想外な落とし方で頬が緩む。
また、プレゼンテーションに使われる資料画像の中には司会者に急かされて早送りされるものもあり、これがまたチラリと見えた範囲内では面白そうで何らかの形で公開されないものか?と思ったり。(真顔)
第十七夜『銀河鉄道の夜 -露-』
有末剛 緊縛夜話
ザムザ阿佐谷(東京都)
2018/07/07 (土) ~ 2018/07/09 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/08 (日) 19:00
価格3,000円
銀河鉄道の夜パートと宮沢賢治の評伝的パートが併走し、やがて……な構造は演劇比率が高く、演劇と緊縛が拮抗していた(私見)前年4月の「盲獣 -あなたの世間に唾を吐く-」とかなり印象を異にするが賢治好きな身としてこれはこれで満足。(しかし3日間で「星めぐりの歌」が流れる芝居を複数観るとは……)
また、全ステージシャフルキャスト、存じているお二方のホジションで選んだこの回、たぶん個人的にはベスト。(他の役を想像したりしながら観ていたりも(笑))
出演者の大半が女優で、しかも粒揃いなことに月蝕歌劇団を連想したりも。
あと、ピアノ、キーボード、大正琴の生演奏による音楽やライブペインティングも良かった。
熊ん子リバーバンク
桃尻犬
OFF OFFシアター(東京都)
2018/07/06 (金) ~ 2018/07/08 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/07 (土) 19:30
価格2,800円
ルームシェアしている3人の男女のトラブルにその中の1人の元カレやら赤の他人(!)やらも絡んで……な物語。
会話の妙で終始クスクス、ニヤニヤな上に夏らしい「アレ」など複数の要素を練り込んでコンパクトにまとめて上出来。また、2場で語られる「怪談」はその後の展開を暗示しているようでもある。
会話の妙をベースに「んな、アホな!(笑)」なナンセンスさも加えて笑いを取るというのは考えようによっては落語に通ずるのではないか? ヤるなぁ。
海越えの花たち
てがみ座
紀伊國屋ホール(東京都)
2018/06/20 (水) ~ 2018/06/26 (火)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/06/20 (水) 19:00
座席L列6番
価格4,000円
戦時中に韓国に嫁ぎ終戦後20年も彼の地に留まらざるを得なかった4人の女性を中心に描いた物語。
ナザレ園のことを知らなかった身としては今まで考えたこともなかった題材で、なるほどそういうこともあったのだな、と改めて「学ぶ」感覚。
そうして、史実をもとに「あんなことを二度と起こしてはならない」と警鐘を鳴らすのは井上ひさし作品や劇団チョコレートケーキの作品と通ずるものがありつつ、やはり独自な部分があるように思える。
ただ、場転後しばらく会話を注意深く聞いていないと前の場から流れた年月がワカらないのがややストレス。
例えばこまつ座のように明転前に字幕で次の場の時を知らせていただければ「前の場から○年経ったのか」と知った上で観ることができて内容に集中できるのに。
再演があるようならこの点も考慮していただきたく。
ところでツイッターなどで目にしただけで3件、冒頭で亡くなった人物を勘違いしていたとの感想があったが、直感的に正解を察していたのは幸いだったのか?
また、「戦争がもたらした悲劇」には戦争が直接引き起こしたものと、それまでは潜在していたが戦争によって顕在化したものが原因となったものの二種類があるのではないか、そして本作は後者による部分が大きいのではないか?などとも考えた。
ホテル・ミラクル6
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2018/07/05 (木) ~ 2018/07/10 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/07/05 (木) 20:00
価格2,500円
後半2作(島田作品、フジタ作品)は捏ね過ぎ、引っ張り過ぎな感が無きにしも非ず(とは言えラストーンの照明は白眉)だが、シリーズでは異色と言える1編目(岩井作品)のラブホ女子会でのシリアス&シビアーな性愛ネタ、小西節全開で進行しつつコミカルから小さな奇蹟へと変貌する2編目が好み。
で、漂う「終末感」は何なんだろう?なんだかシリーズ最終回(しばらく経ってのシーズン2の予感もある)的な感覚。