ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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超想戦隊ジャスティンファイブVS破壊王デストンキング~煌めく流星~

超想戦隊ジャスティンファイブVS破壊王デストンキング~煌めく流星~

〒機巧ぽすと〒 (からくりぽすと)

ART THEATER かもめ座(東京都)

2014/11/27 (木) ~ 2014/11/30 (日)公演終了

満足度★★★

善悪神学論争と人
 正義などと矢鱈にノタマウ のは、子供を除けば、政治屋、アメリカの政治屋・プロパガンディスト、こういう輩に踊らされるアホ、そしてそれで金儲けをする連中と相場が決まっている。機巧ポストが、今回挑んだのは、こんなジャンルである。えっ!! という声を発したファンも多かろう。そこは、何である。
 ちゃんと、神学的テーゼが提起されている。即ち、正義=善であるならば、それは、如何様に証明されうるのか? についてである。結論から言えば、悪無しに善は善足り得るのか? という疑問でもある。
 今作では、人間を介して、混沌を見せ、混沌の中で喘ぐ者として悪を呈示しているようにも見える。そして、それは、人間的な悪であって、デモーニッシュな悪ではない。この辺りに今作の面白みがあろう。但し、これらに対して有効な物差しを持っている訳ではない点が、判断保留の原因だと考えられる。
 因みにギリシャの知は、カオスを整除してクロノスが王に就き、クロノスを倒してゼウスが頂点に立ったが、ギリシャの神々は、浮気もすれば、嫉妬もし、その性格は、人間の映し鏡と捉える方が良いと考えられるから、こちらも、人間とそれを越える者とのいわばキメラなのだが、カオスに対して整除するものとしてのクロノスが介在している点、定規を持っていると言い得るようには思う。

翡翠の抄

翡翠の抄

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2014/11/26 (水) ~ 2014/11/30 (日)公演終了

満足度★★★★

其々のドラマを深く作り込んでおかないと 仇討への必然性が伝わらない
保元・平治の乱から壇ノ浦、更に衣川の戦いで義経が頼朝の襲撃に遭って自害する辺り迄の歴史を踏まえ、源平各々の魂魄が、現代の人間に憑依して仇を討つ為に闘う、というストーリーなのだが、仇討ちという発想は現代では死んでしまった概念なので、仇打ちせねば気が済まない、当時の人々の怨みつらみを更に深く描かなければ、どうもしっくりこない。三話位に分けて、上演しても良いのではなかろうか? 上演時間総体は、4時間半から6時間位を見当に。
 いつも通り、役者の力は非常に高く、丁寧に演じているのだが、シナリオが余りに性急と感じた。惜しい。

ハミダスダス!

ハミダスダス!

stick out

劇場MOMO(東京都)

2014/11/26 (水) ~ 2014/11/30 (日)公演終了

満足度★★★

まだ表層的
 ミヒャエル・エンデのMomoをベースにしてはいるが、原作をなぞってもしょうがないので、無論、オリジナル台本である。時間泥棒が登場する点が共通で、後は、モモの子孫になっていたり、人々に溶け込む力を持っている点等で似通った点があるだけである。
 構成は2本立て。1本目は、若者から、大人への責任追及。どうして、こんな世界にしたのか? である。核汚染を中核とする環境汚染、戦争・紛争、差別・被差別、苛め、虐待、不信、モンスターペアレンツ等々。答えを見出す方途の一つとして、MOMO的な世界を呈示する2本目が作られている。未来とは、何もかも未知数の世界だ、という定義が、我らの救いになるか否か。それは、我らの手の内に未来を取り戻せるか否かに掛かっており、それは、時間を我らが支配するのか、それとも、時間泥棒によって奪われるという比喩で表されているように、我らが時間に支配されるのか? との問いでもあるだろう。
 今作で感心したのは、照明が実に効果的に使用されていることである。照明担当の腕、センスを高く評価したい。
 ところで、ホントの解決策を見出す為には、一人一人が、自分の人生をキチンと背負うことから始めなければなるまい。

怪盗先生、教壇に立つ。

怪盗先生、教壇に立つ。

劇団だるま座

アトリエだるま座(東京都)

2014/11/26 (水) ~ 2014/12/03 (水)公演終了

満足度★★★★★

Aチームを拝見

 いつもながら、実に丁寧な作り。良く練られたシナリオに、ベテラン勢の達者な芸、滲む人生経験の豊かさに対し、主要な役どころを演じる若手は、キャラをキチンと立てて過不足のない華を咲かせている。この辺りがだるま座の強みだろう。
 壮大な、発想を日常的な学校という場に落とし込む手腕や、隋所に擽りを入れて、笑わせながらぐいぐい引っ張りつつ、人生の苦さ、傷み、悩みを織り交ぜ、最後には、キチンとほのかな希望を見せる。作劇のバランスは、王道である。上演中なので、詳しい筋は述べないが、秀作。

全段通しリーディング 仮名手本忠臣蔵

全段通しリーディング 仮名手本忠臣蔵

遊戯空間

浅草木馬亭(東京都)

2014/11/26 (水) ~ 2014/11/27 (木)公演終了

満足度★★★★★

「仮名手本忠臣蔵」べし観る
演劇に携わって本物を目指すなら、必見の舞台である。上演は、本日11月27日、13時からと18時からの2回を残すのみ。足を運んで損は無い。
 大序の兜改めから討ち入りの十一段目までの一挙上演である。テキストは、浄瑠璃原文から構成し、主要登場人物は割愛していない。一方、今作は、文楽・歌舞伎の所作、節回しはなく衣裳は簡略化され、舞台美術も無い。但し、現在では上演されることの殆ど無いサブストリームをも全段通しで観ることによって、何故、忠臣蔵が、国民的戯曲になっているのかが、良く理解できる。

ネタバレBOX


 メインストリームは今更言うには及ぶまい。その深さを味わって貰えば良い。因みに、古典には、縁の薄い人々にもぜひ、観て貰いたい作品である。何故なら、まつろわぬ姿勢が、人気作品となった原点にあると考えられるからである。
 由良助は、無論、大石 内蔵助、高 師直は、吉良 上野介である。即ち、吉良という体制側権力者に対する異議申し立てが、今作の本流であるが、その首謀者の名に、由比 小雪の苗字から一字採られているのも意味深なら、楯突いた当の相手、吉良の首を獲った点でも慶安の変で本懐を遂げることなく果てた、由比の無念をも晴らす内容があるのであり、表現する者の意図する所を感じさせる。同時にそれが、一種の精神的代理戦争の様相を呈し、江戸幕府によってがんじがらめにされた庶民の誇りが、辛うじてお上に楯突くことを応援することにあったのも、無論のことだからである。
 このシナリオが実に優れているのは、このような日本の特殊な社会とそこで暮らす人々の独自でレアな生き方を抉って見せているからであり、日本が江戸時代と現在に於いて、本質的に一切変わっていないことを証拠だてても居るからである。だから、サブストリームが見直されなければならないのである。
 ところで、演出の篠本 賢一は、日本の古典芸能である能に長く携わってきただけに、歌舞伎や文楽、更にはそれらが成長し隆盛を迎えた時代の背景にも詳しい。その底力が演出に活きている。登場人物が、舞台上のどの位置に座を占めるかで、役の人物の軽重とその役割をメタレベルで見事に示している※。
  この演出によって、今作は、単なるリーディングを越え、通常の演劇の齎す立体感を醸し出している。役者陣も立ち居振る舞いの所作こそ少ないものの、その表情の作り方、間、勘所を捉えた発声などで、千変万化の人情を巧みに表現するだけの芸達者が多い。感心したのは、演出を手掛けながら演技もする篠本の間と発声、魂魄の込め方についてである。
  ※(つまり、立体化しているということだ。もっと分かり易く説明しておこう。スノーデンの暴露によって確証が掴めたように、アメリカは、世界中から、例えば携帯電話顧客の位置情報をプリズムと呼ばれる盗聴システムによって盗んで、他の諸情報、地図・気温・気象データ・緯度・経度データ・時刻データ等々と照合して個々人のプライベートデータを相当程度正確に掴むことが出来る。特定の個人に特化すれば、その行動パターンから、性格や付き合う人間のタイプ迄原理的にはかなりな精度で突きとめることができるのはあきらかだ。これは、直接電話等を盗聴するデータと異なり、いくら集めても個人の特定に至らないという言い訳が可能な限りに於いて多くの人間の類型的な動きを追えるタイプのデータだということだ。これが、メタ情報である。そしてアメリカは、現代という短い時間の中で、世界中という空間でこのメタデータ収集を行っている。
  篠本の用いているのはこのようなデータの演劇的類型化、即ち古典時代からの人間観察に基づく類型化であろう。空間的には狭い代わりに時間的に長い。だから演劇的に用いれば、人間の行動パターンの類型として定式化され得る。そして、この点に気がつく演出家はそうそう居まい。仮に気がついても、それを舞台上で観客に伝えるには、作品に描かれている世界観や歴史観、価値観に基づいた正確な座標軸が同時に必要である。篠本は今回の演出でその双方を持っていることを示した。そして、出演している役者の演技はこれに応えようとしている。)
 おまけに今回、鳴り物は、生である。タイミングの妙も味わえる。而も、小屋は、浅草寺直ぐの木馬亭。通常、ベしゃり芸人の出る小屋であるから、リーディングにはうってつけ。こういう小屋の選定も憎いではないか? 長丁場なので途中、10分の休憩が入る。
ヒトヒトヒト

ヒトヒトヒト

キリンバズウカ

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2014/11/23 (日) ~ 2014/11/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

永遠の中間
要領だけ良く、他人を出し抜くことだけを目指して、迷走する現代社会を鋭く風刺。話の持って行き方が上手い。
(現在、公演中なので楽日以降に更に追記する)

ネタバレBOX

 どちらかというと、価値観をハッキリさせ、正義が、悪がとシャカリキになっていた時代と、それほど、明確に価値体系なんか位置づけられないんじゃにゃいの? とゆるやかに構える時代とのギャップを含め“移行する・常に中間でしかあり得ない”人間という存在の在り様を描いて秀逸。
AMMP[aemp]

AMMP[aemp]

劇団たくあん

吉祥寺櫂スタジオ(東京都)

2014/11/23 (日) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

満足度★★★★★

近未来の恋
高性能アンドロイドが人格を持ち、人間と同じような感情を持つようになった時代と場所を描いた近未来という設定だ。但し、今作が書かれたのは2006年、この時点での設定は2014年であったが、世界のロボット工学は、未だ此処まで発達していない。(追記2014.11.26)

ネタバレBOX

 
 何れにせよ、今作で描かれたようなアンドロイドが作られるのは、そう遠い将来ではあるまい。プロトタイプが出来てしまえば、その後の発達は半端なものでは無いハズだ。従って今作に描かれたようなことは、現実化する時の為に考えておかなければならない問題だと考える。
 人格を持ったアンドロイドと人間の関係をどうするかという問題を、一つのロールプレイングゲームとしても考えられる“愛”の問題として再提起したのが、後半部である。研究助手を務めているアンドロイドが、開発者に恋してしまった。これだけなら、ありきたりで陳腐な展開になっただろうが、アメリカ映画でもブロードウェイでも、愛は金科玉条の如く表現され、他の多くの問題点を覆い隠す愚衆操作に使用されている。おまけに、最近は殊にその傾向が露骨で食傷気味だ。
  が、今作の愛の形は、無論、純愛である。その純愛を詩人の夢見る形“愛して死ぬ”という完全形で表現している点で爽やかだ。くだらないプロパガンダが無いのである。
 舞台美術、演出、演技も質の高いものであった。この劇団、今後が楽しみだ。
言の葉の散りぬるを

言の葉の散りぬるを

wordleafproject

高田馬場ラビネスト(東京都)

2014/11/21 (金) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

満足度★★★★

言の葉とひと と
 シナリオが適度に複雑で楽しめる。オープニングでの言の葉の説明や言葉と人の関係を示すシーンで謎の多い“いろは”うたを用い、行燈のような火を灯して黒子が舞うシーンも幻想的であり気に入った導入部である。演出のセンス、シナリオライターの言語感覚の良さを感じた。

ネタバレBOX

 講談師は声の大きいことも芸の内とはいえ、箱が狭いのだから、余り声を張り上げるのは如何か? と思う。噛んだ役者が何人か居たが、この点も注意したい。
 全体として、シナリオ、演出、舞台美術、演技、何れも良い出来である。言の葉の意味する所迄、深く考え、言葉の重みを考察している点、ミュータントとしての術者が、被差別者であるとの捉え方が良い。この視点が、妖怪としての天邪鬼を呼び込み、彼らが相通じることで、余計者・被差別者として最小単位でアイデンティファイされている点も見逃すべきではなかろう。
 初見だが、延びシロを感じる劇団である。間のとり方を更に研究し、予算に余裕があれば、スモークを焚いて妖かしの雰囲気でも演出すれば、更に効果的な舞台になろう。
バルカンのスパイ

バルカンのスパイ

日本・セルビア演劇交流プロジェクト

ブレヒトの芝居小屋(東京都)

2014/11/21 (金) ~ 2014/11/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

らあらあらあ 政治音痴は観ておくべし!
                               
 論理というものは、そのオーダーを一旦、固定的な公理として定めて仕舞ったが最後、その展開は唯一つしか無い。即ち尖鋭化することである。
今作は、その恐ろしさを、端的に描いた秀作。
カリスマ指導者、チトーの死を経、ユーゴスラビア解体以降益々混迷の度合いを増した、各民族、宗教諸派、異言語集団、政治体制の異なる集団、バックアップする大国の違いによる利害の相違等々を通して育まれ、徹底した不信・疑心暗鬼に陥った人々の「非日常的」な何気なさに巣食う、最早客観への糸口を失った狂気の哀れを骨太に描いて秀逸である。
彼らは、不信と分断故に、互いに孤立の陥穽に陥り、最早、自壊してゆくしかないように見える。この状況をグローバリゼーションとトリクルダウンの論理に染まった、迷妄の巷に暮らす日本人に当て嵌めてみると、興味深い結果が透けて見える。

第二回学生シアタースポーツ大会

第二回学生シアタースポーツ大会

インプロカンパニーPlatform

宇宙舘(東京都)

2014/11/22 (土) ~ 2014/11/23 (日)公演終了

満足度★★★★

楽しめる
 今年で第二回目を迎えたTheate Sports Platform cup for Studentsだが、拝見したのは、マチネ。予選のオープニングである。先ずは“KICK・おふ”VS“劇団しおむすび”が、次へ駒を進める為に闘う。

ネタバレBOX

即興は観客から直前に書いて貰ったメモや貰ったお題。其々のタイトルに沿った即興が、その時点で決められたルールに従って作られてゆく。尤も、ルールはその場で演じる者達が、決めて良い。審査員は4人。Platform大学教授の面々だ。文学部教授は、シナリオの出来を。商学部教授はエンターテインメントとしての採算性・利潤を。法学部教授は法的妥当性を。保健体育学部教授は、身体に落とし込むレベル・技法を。其々、優5点、良3点、可1点、不可0点の札を挙げて評価するが、ラッパ音が鳴らされた場合は、その時点で演技は強制終了である。評価は強制終了時点で行われる。無論、高い得点の者達が、勝者であるが、同点の場合は、今回は無かった。その場合は、MCなりスタッフなり審査員の意見なりで決まるだろう。何れにせよ、遊び心と適度な緊張感の入り混じった楽しい催しである。
 2劇団対決の後は、ロングフォームの、やや長めのヴァージョンが、観客からお題を貰って演じられた。
 各グループは各々のカラーを持っているが、総体としての実力に、大きな径庭は無いように思う。従って勝敗を分けたものは、お題が向いていたなどの偶然が働くこともありそうだ。
互いに切磋琢磨して、瞬間的な判断の切れ味アップとスピードアップ、観客の予想しなかった展開を即座に作ることができるような地力をつげて欲しい。同時に、社会的な側面、政治・経済・紛争・社会問題などにも広く目を向けて、単に真面目に対応するのではなく、大人のやってきたことが駄目だと思うなら、それを揶揄できるような力をつけて欲しいものである。くれぐれも遊び心を忘れず!!

包囲網

包囲網

チタキヨ

小杉湯(東京都)

2014/11/20 (木) ~ 2014/11/23 (日)公演終了

満足度★★★★

癖になりそう
  銭湯演劇というのは初めて観た。高円寺の駅近くにある小杉湯が、今回の上演会場である。話も銭湯に関わりがあるものだから、壁の絵なども活きてくる。無論、演じられる舞台は、洗い場なので、カランや浴槽、シャワーなどもある。観客は脱衣場に設えられた観客席から観る仕掛けだ。入場は、履き物を下駄箱に入れたら、番台でチケットを購入する。すると手作りのとても可愛らしいリーフレットをくれる。(追記2014.11.22,公演が終了したので、更にネタバレ追記11.26)

ネタバレBOX

番台を過ぎたら、奥は、寛げるスペース(壁に猫島訪問をした女性の猫写真が貼ってあるから、猫好きは必見。上演中は、まだ貼ってあると思う)で、このスペースの左側が、会場である。また、小杉湯の宝をあしらったシャツが上演中に出てくるから、小杉湯の建物に入る前に、切妻風屋根の破風の辺りに気をつけて見ておくと良い。観劇記念に通常より少し値引きされた入浴券を買って湯に浸かってきても良かろう。ハンダラお気にいりの銭湯である。
 さて、前置きが長くなったが、もう少し、銭湯と芝居・表現の共通項を挙げておきたい。自分は良い銭湯というものは、表現に通じる世界観を持っていると思っている。何故なら、銭湯は、昔から人々の交流の場であり、噂、知識、雑学、世相談議、芸談に至るまで、幅広い知識や世間との窓口であり、社交の場、時に男女の愉しみの場でもあったからだ。何れにせよ、湯に浸かった体は、ゆったりと寛ぎ、憂き世を一瞬忘れて桃源郷にでも浸る気分を味わうことのできる時空間であり続けた。現在でもその伝統は良い風呂屋に受け継がれている。上に挙げた様々なことは、表現に繋がる。また、これらの根底にあるのは、自由闊達な精神である。多くの人が、銭湯で演劇という発想すらしないが、考えて見れば、共通項は結構ある。更に、小杉湯のオーナーが自由闊達な精神の持ち主なのであろう。客に対する考え方は入ってみれば分かる。実に良心的な上に、健康や環境に配慮したインフラであり、休憩所なのである。
 この心休まるハズの銭湯と共通項のあるはずの芝居の内容は、寧ろ、単純素朴では飽き足らなくなったひねくれ者の都会人に楽しめる作品になっている。極めて日常的で、誰にでも起こり得ることを感じさせる設定が憎い。同時に、風呂屋の姉・弟、その妻、そして、その駈け落ち相手で姉の親友という4人が、実際に登場する人物であるが、この銭湯のオーナー夫妻が、話として登場し、サブプロットで大切な役割を果たしている。
 弟は姉の親友と3年前に駈け落ち。身重の女房には、一通の書き置きが残されただけであった。駈け落ち相手は、なうての浮気症。兎に角、ドキドキが続かなくなれば、他人の男を自分のものにし、罪悪感を香辛料に恋のボルテージを上げることしか考えていない。というより、そういう病気である。弟はだが、この女に魅入られた如く、逆らうことが出来ない。妻は、結局、精神的な問題から、子供を失くしてしまった。それでも、6つ年下の夫の帰りを待ち続けて、嫁ぎ先の風呂屋で働いている。父母も息子遁走のショックで、引き籠りと過食で埒も明かない。そこで、姉に手伝いに来て貰っているが。3年ぶりに弟が舞い戻って来た。而も、恋人を連れてである。
 総領息子が生まれて以来、余計者と見做されていると感じている姉は、自分の立場を失くす。妻は、浮気相手に子供ができたから離婚してくれ、と迫る夫に、自分が失った子はどうなのだ! との思いが拭えず離婚を認められない。一方、浮気相手の女は、現在働く場所の板長、支配人、高校生の泊り客、他の客等々と散々浮気をしまくってきた。従って、本当の所、彼女の腹の子は誰の子か分からない。但し、彼女の主張に従えば、弟以外の男とのセックスでは、避妊はしていた、という。夫は夫で、妻の料理の上手さや、滲みでるような女性らしさを思い出して、彼女と寝て仕舞う。最終的に、浮気相手と別れる決心をしてよりを戻そうとするが、妻は、離婚を承知してくれた。亡くなった子供が夢に何度も現れて彼女の後悔を新たにしていたのだが、今迄一度も見えなかった子供の顔がイメージできたからである。結局、駈け落ちカップルが成立。子供は3人授かった。姉の夫は、自分がほって置かれる状況を面白く思わず、終に離婚を決意する。そして、再婚。妻は、アルバイトに来ていた男の子と一緒になったが、別れた後は1人で過ごした。
 男女関係の綾を“飽きる”という恐ろしいコンセプトでなで切り。当然、飽きられる、という恐怖を抱えても居る訳だが、一般家庭の何処にもある、男女関係の可能性とその結果としての子供(生命)、家族成立・崩壊の問題等々を実に巧みに女性的な視点で纏めて見せる。
8分間

8分間

燐光群

座・高円寺1(東京都)

2014/11/21 (金) ~ 2014/11/30 (日)公演終了

満足度★★★★

Loop
8分間でループする話である。舞台は、とある駅のプラットホーム。似たような場面が延々と繰り返されるので、観客を飽きさせない為の工夫があちこち為されているが、シナリオ、演出の妙を楽しみたい。無論、繰り返される内容は、微妙に異なったり、重なったりしつつ、解釈に必要な情報は除々に明かされてゆく。その緊迫感を楽しんで欲しい。

ネタバレBOX


 深読みすれば、似たような日常の中に、仕組まれた取り返しのつかない事象や、一見、何の変化も無いように振る舞っている、我らの日常の直ぐ裏側にびっしり貼りついた脅威のいつ起きるとも知れない不気味で不可逆的な地平を示唆しているとも取れる。
とけない鎖

とけない鎖

劇26.25団

OFF OFFシアター(東京都)

2014/11/19 (水) ~ 2014/11/23 (日)公演終了

満足度★★★★

保険金殺人
の母と共犯にされた者と、実の娘(更なる追記2014.11.26)

ネタバレBOX

彼女、ななしは14歳の時、父の計らいで家を出た。実母、冬子が詐欺罪で逮捕されたのみならず、母の犬となって共犯にされた世話役のさゆりも同様に捕まったからである。この事実が顕在化する前に、父は、娘を事件の齎す喧騒の渦中から救い出したいと考えたのであった。警察の家宅捜索は、単なる詐欺では無く、それ以上の罪を疑っていると考えるのが、至当だと思われる熾烈なものであった。事件が起こったのは九州、そして事件は冤罪でもなければ、単なる詐欺事件でもなく、父の懸念した通り、保険金殺人という重罪であった。
 父は、知り合いのつてを頼って、芸能関係の会社が持つ寮に娘を預け、毎月の仕送りを欠かさなかった。一方、ななしは、器量も良く、才能も見込まれた為、芸能事務所はアイドルとして売り込めると判断し、初期投資を積んだが、彼女に母の暗い思い出がある為か、彼女の才能が花開くことは無かった。為に、終に事務所も彼女のデビューは諦め、芸能界からは干されて、愈々、住む所も無くなり掛けたその時、担当は、彼女を雑用係として、自分の所で雇う形にしてななしをフォロー、小説執筆ができる環境を提供する。ななしは、自分の生い立ちをベースにした小説を仕上げ、その作品で見事、純文学の登竜門とされる文学賞を受賞した。受賞インタビューでの思いがけない返答や容姿の麗しさから、忽ち時代の寵児となった彼女であったが、有名になり、人気が出れば、彼女の生い立ちを詮索する輩も出てくる。ネット上では、早くも彼女の母親に纏わる噂が、囁かれ始めていた。彼女の実母が殺人犯なのではないか、との噂である。それを事実だと、ななし自身が自分のブログで認めてしまったから、業界は大騒ぎ。手のひらを返したような、ななしへの過剰なバッシングや担当編集者への嫌がらせ等々が重なった。
  ななしは、自らの影響力の大きさに愕然としながらも、自ら表現者の位置・意味を見出し、その重い責任を果たす為にも表現する者として生きて行くことを選択する。このラストが、実に良い。
通る夜・仰げば尊し

通る夜・仰げば尊し

劇団芝居屋

ザ・ポケット(東京都)

2014/11/19 (水) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

満足度★★★★★

後代の育成
 
 今回、増田 再起さんの出番は、とても少ないのだが、これも後代の育成の為と観た。
再起さんの出番が少ない分、恵美さんが、迫真の演技をしている。(追記後送)

ぜんぶのあさとよるを

ぜんぶのあさとよるを

Pityman

pit北/区域(東京都)

2014/11/19 (水) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

満足度★★★★

ディストピア
 言いたいのはラスト他は総てこれを導く為の導線と観た。
評価は分かれよう。(追記後送)

ぼくたちの学校

ぼくたちの学校

演劇企画ハッピー圏外

TACCS1179(東京都)

2014/11/19 (水) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

満足度★★★★

解釈の多様性
大学の男子寮内にある食堂が舞台だ。時は、1972年。沖縄闘争も終焉を迎え、ベトナムからアメリカの地上部隊も撤収した。2月には、京浜安保共闘が、合流して永田 洋子が、赤軍メンバーを粛清したことで非難を浴びたあさま山荘事件が起きた。然し、巷間に流布されたことは事実ではない。(追記後送)

LACK.

LACK.

projectDREAMER

小劇場 楽園(東京都)

2014/11/18 (火) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

満足度★★★★

Aキャストを拝見

 今公演は、「ユートピア」と「病の王国」の2本上演である。まあ、通常の時間内で収まる。
では、先ず「ユートピア」から参ろう。(初日を終えたばかりなので、ネタバレは途中迄)
 フェニックスのマスター役、武田 祐一の演技は、新宿独特の優しさや寂しさ、ゲイの持つ雰囲気を醸し出してとても気に入った。

ネタバレBOX


 新宿2丁目のゲイバー“フェニックス”マスターのシンは、薬チュウだった性同一障害者、ケイを薬禍から救った。その後、立ち直ったケイは、精神科の看護師となったが、店に来た大学事務員のヒロミが倒れたのが、薬の所為だと知って他人事とは思えず面倒を見、彼女の薬が切れる迄の間、シンに頼んで、店内に監禁し、禁断症状から解放しようとするが、ヒロミは、逃げ出してしまった。彼女は、高卒で大学の事務をやっているのだが、コンプレックスから、大学に進学する望みを持ち、デリヘル嬢をして金を貯めていた。一方、仕事の関係で知り合った、勤務先の学生が、薬の売人をやっていたことから、薬を入手、1年ほど前から薬チュウになっていた。
次「病の王国」だ。
lackとは、欠如、それも必要なものの欠如を表す名詞でもあれば、他動詞でもある。他動詞の場合、本質的属性を欠くというケースもあるので、意味する所は、かなり深いと言わねばなるまい。
 彼女のロストバージンは、実父であった。父の女癖の悪さと、彼女自身が応募してグランプリに輝いた美少女コンテスト後のメディア攻勢に母は精神を病み、彼女に当たり散らし、虐待を繰り返すが、娘は母が若い頃やっていたと同じように、売りに走り、中年、初老の男達から大枚を巻き上げていた。
 そんな娘も15になった。誕生日のその日、懇願する義母に誘われるように娘は。
男肉 du Soleilのマーマレード男子

男肉 du Soleilのマーマレード男子

男肉 du Soleil

シアター711(東京都)

2014/11/17 (月) ~ 2014/11/19 (水)公演終了

満足度★★★★

祭りのノリに入れれば
 JK、女子高生物が、一幕で演じられる。

ネタバレBOX


 高2迄、全然友逹のできなかった小石川は、高3になると同時に、父の仕事の関係で転校。移った学校では、女子3人と仲良くなる。こうして、4人組に加わって初めて、早く終われと考えるだけだった学校生活が頗る楽しい充実したものに変わっていった。男子たちとも仲良くなって、一緒にキャンプに行ったり、恋を知ったりで、今迄の遅れを一挙に取り戻すような、健康的で明るく、誰もが経験する、恋のドキドキ感や照れ、そして、好きな人は自分が眼中に無く、自分を好いてくれる人は、自分の興味を惹かないとおいうまどろっこしさも経験しつつ、卒業を迎え、進学する迄を、描く。
 二幕は、一幕とは何の繋がりも無い。寧ろ、子の繋がりの無さが小気味よいほどである。余り上手では無いが、観客にエネルギーを貰いながら、プレデターと戦い抜き、最終的な勝利を収めるというだけの作品だが、その間、唯一の武器がダンスなのである。このバカバカしさをあっけらかんと楽しんで欲しい。この祭り行事に入り込めれば楽しめる。
たとえばあしたのこと、とか。

たとえばあしたのこと、とか。

ともサンカク

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2014/11/16 (日) ~ 2014/11/17 (月)公演終了

満足度★★★★

野暮用で開演前の作品は観れず。残念!
 放送室ジャックだの、結婚だの、呆けてゆくお馴染みさんの老女と売り子の、気の毒に思う心と迷惑を掛けているのではないかとの懸念の交錯に、老女の東京大空襲の記憶等を重ねた作品だののオムニバス。小林 知未の一人芝居だ。

ネタバレBOX


 心に残った科白は、シンプルだけど深いものだけが、本物だ。という表現。実際、自分も出雲崎に出掛けた際に、廻船問屋をやっていた2番目の母の先祖が建てた寺の世話になったことがあって、この寺では、味噌、醤油等も自分の家で作っているのだが、山菜などは、裏の山に入って採る。シンプルなのだが、実に深い味わいで、東京に戻って1カ月程は、テンヤモノを食べると味の元の味が、嫌で嫌で堪らなかった記憶がある。
 彼女が自分自身で到達している認識にも可也深いものがあるのだが、ハイデガーやサルトル、できればフッサール、そしてハイデガーの愛弟子であったハンナ・アーレントなども読んで欲しい。全然タイプの違う思想家ではウィトゲンシュタインもお薦め。
 更に、自らのスタンディング・ポジションを確立した後は、自由とイマジネーションを最大限に活かして精神の遊びを確立して頂ければと思う。「梁塵秘抄」はお薦め。また、多和田 葉子の作品もお薦めである。
舞台「靖国への帰還」

舞台「靖国への帰還」

ネリム

滝野川会館 大ホール(もみじ)(東京都)

2014/11/14 (金) ~ 2014/11/16 (日)公演終了

満足度★★★★

我、どこからきてどこへゆくか
矜りは自ら立てるべし!

ネタバレBOX


 1945年5月末、未明の空へ飛び立った夜間戦闘機、月光に搭乗した武者らが海軍厚木基地を飛び立ち、B29の大編隊を迎撃したが、敵機は500機以上、友軍は漸く40機という劣勢であったが、武者らはB29一機を撃墜後被弾し、雷雲に突入して的の目を欺き、帰投しようとするが、雷雲を抜けた時、彼らが見た物は、見覚えのない物だった。
 武者が気付いたのは、どうやら病院である。戦友の姿は無かった。腹部の傷が酷く助からなかったのである。ところで、何だか様子がおかしい。米国の軍人と日本人が訪ねて来たのである。何と、彼は、21世紀の厚木基地へタイムスリップしてきたのであった。不時着したのが、月光だった為、政府は、この事実を隠蔽、助かった武者を観察したり、未だ信じられないタイムスリップの実例なら実証研究の対象にしようとしていた。偶々、彼の面倒を見るとう名目で忍び込ませていたスタッフから、靖国問題について戦時中の軍人が何を考えていたかの実例として政治的に利用できそうだとの話を聞いた総理、内閣調査室らが画策、首相VS武者のTV対談を組み、靖国公式参拝を既成事実化しようとの計画が持ち上がるが、諸外国からの抗議・外交問題化を懸念する声に負けて頓挫した。然し、武者自身は、自分が生かされているのは、何らかの意志によるものと靖国への忠誠とプロパガンダを素直に信じ込んだ人々のイデオロギーを喧伝する広告塔になろうと決意。反対派ジャーナリストとのTV討論に参加するが、スタジオ入りしていたオブザーバーの女性から本質的な批判を浴びせられ、己が見解の根拠を崩されてしまう。
 一方、心に秘めた純愛の対象であった女性は、未だ存命であり、彼女の兄の孫は、大伯母に瓜二つ。その彼女は、21世紀現在、見た目は自分と殆ど変らない武者に大伯母の愛が乗り移ったような恋愛感情を抱いていた。彼女は、武者と結婚を望んでいる。
 一方、大伯母、ゆみこは、武者 滋以外、総てが、空襲で焼け死んだ彼の家族の墓をずっと守り続けてきてくれていた。墓場で彼らは、偶然再会する。時は、流れ、二人の青春は返って来ない。
 武者を中心とする純愛の品の良さと純度の高さが、今作の一つの柱、そして靖国を巡る様々な立場、意見、主張がもう一つの柱だ。
 純愛に関しては、女性の歩き方、言葉遣い、しとやかさ、羞恥心の在り様などをキチンとした滑舌で伝え、演じたヒロインを褒めるべきだろう。
 武者役も、朴訥なキャラクターを過不足なく演じたと言って良かろう。自分は、武者の戦友を演じた役者の演技も気に入った。
 劇団の姿勢として、真摯に取り組んでいることが、良い印象を齎している。単に、靖国問題を掘り下げたのみならず、その本質に近い所迄、表現して見せたからである。
私見だが、靖国問題の本質とは、本来、個々人と崇拝の対象である神仏の不可侵の関係を宗教と定義するならば、宗教をスポイルし政治化したことである。実際、これこそ、靖国神社が歴史的に行ってきたことであるから、これは、宗教の脱宗教化という手術を強いた上で、宗教とは無縁な何かに対して宗教という名を冠し、大衆操作の具と化した政治であるという以外に的確な言葉を自分は見付け得ない、ということである。実際「国家神道」という政治的役割を歴史的に果たして来、現在もその延長にあるのが「靖国神社」というシステムなのである。これは、丁度、ユダヤ教を脱宗教化した上で政治的に利用している、イスラエルの「国家」イデオロギー、シオニズムにそっくりである。そんなものは、紛争しか生まないのではないか? 現に、公式参拝が国際問題化することを見ても。

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