記憶の通り路 公演情報 記憶の通り路」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-5件 / 5件中
  • 満足度★★★★

    名前だけは随分前に知っていた劇団。何と言っても目を引くのが<レパートリーシアターKAZE>なる自前の劇場だ。アトリエを持つ劇団は多いが、間借りのため制約があったり、古びたそれらとは一線を画して、表に高々と看板を掲げた十割自前な劇場である。大久保通りを背にして右手にある天井の高い展示スペース(普段は舞台装置やトラックでも収納しているのだろうか)の受付机で受付を済ませると、左手の建物の1階入口でなく、幅の広い外階段を昇って行く。幅が広いせいか?負担感がさほどない。体感的には2・5階ぐらいか、入ると階段式客席の裏手で、ぐるっと前に回って客席へ登っていく。そこにはこの劇団が望んだ理想的なサイズの劇場空間があった。水が張られた長方形の背後に板があり、照明を当てられた水面の波紋を映して絶えず影が揺れている。天井高く周囲は黒の闇に吸い込まれている。開演後「板」は動いてその浅いプールの屋根となったり、上へ引っ込んだり・・舞台上の視覚美が一貫して保たれ、詩のような幾つかの場面が重ねられていく。
    さてその舞台。今年は30周年企画として数公演を掲げ、今回は何年か前に話題となったタイトル『なぜヘカベ』の作者による新作(この作者のものは幾つか上演している)。チェーホフ、ブレヒトと海外作品を中心にレパートリー上演を重ねる劇団の今回の上演は単体で評価できないものがある。(→ネタバレへ)

    ネタバレBOX

    実に沢山の演劇の「形」がある。私が「演劇」の範疇と捉えているのは、現実の飽きたらなさからやむにやまれぬ思いの発露として現前したもの・・芸術は皆そうだと言えるかも知れないが、そうなのだと思う。
    耽美的な舞台、美しさだけを目指したような舞台も、その狂おしさは時間と共に移りゆく現実が美をそこにとどめおけない無常観に由来すると感じるし、結末の見えるような人情芝居もその背後に人の情に与れず去り行く人の背中を想像すれば(ご都合主義が勝ったものも当然あるが)舞台上に美談を作り上げたい動機も分かる気がする。
     と来て、強引だがこの段落で今回の芝居に視線を移す。
     抽象的な表現だし戯曲である、と大括りできる。海外の作家のものでもある。ただしこの作者の作品を(書下ろしで)上演し続けている劇団である。レパートリーシアターとしてあろうとする劇団にとっては、今回の新作も、新たな鉱脈を探り当てようというのでなく、この作者と仕事をし続けている、という側面が重要だと思われるのだ。
     私自身はこの作者の過去作品を一作も見ず、それは今回の舞台の理解にとって当然不利な条件だが、「初見の者に不親切」との理由で不平を言う気になれないというのが正直な気持ちである。
     「言葉」もさる事ながら、舞台上の造形もそれに劣らず抽象的で、何より美的である。そこに何が込められているのか、テキストとの関係が不明である以上この造形を評価する資格もないが、一つだけ敢えて言えば、地上10メートル(くらいはあるだろう)に設置された劇場空間の独特な味わいと、可能性に強く印象づけられた。

     もう一つ、「?」を残したのが役者。「語り」を担う者の佇まいがあったが、演技者という佇まいに見えなかった。感情移入を「しない」形象を意図的に行なっているのか、どうなのか・・そのあたりも独特な後味である。
     冒頭に戻れば、独自の方法論やこだわりは「現実世界に一針刺そう」という気概と裏腹であるに違いない、などと想像してしまうが、残念ながら今回の観劇のみではこの劇団の核を捉えられず。要再訪である。
  • 満足度★★★★

    いろいろと想像力を掻きたてられるすばらしい作品でした。
    一つの作品でありながら、いくつものイメージが次から次へと湧き上がってきます。
    登場する人形たちも本物以上に表情を現します。
     お薦めです。

    ネタバレBOX

    これは、波に飲み込まれてしまった男自らの記憶の断片なのか、老婦人の幻想、夢の世界の中なのか、、
     プロローグ...私は「大潮」だと少女はいう。これは彼女自身「海馬」であることを意図しているように思えた。

    この短編の戯曲中で特に印象的だったのは、

     星や月を見上げる人がいなくなってしまった。ねえ、皆は星や月も見みないで何に夢中になっているの、領地の奪い合い、侵略、殺し合い、金銭欲、物欲、独占欲、、そんなことより自然を楽しんでもっと大らかな気持ちになろうよ、と。
     万国人権領土の国境、紙切れ一枚で国籍が決められてしまって、どこにも行けないの、鳥のように自由にどこにでも行ける、住みたいところに自由に住める争いのない世界を創ろうよ。そしてそういう世の中を次の世代に引き継ぎましょう。と言っているかのよう...
     また、入力のために用紙に記入さしたものは詩的で今までにない新しい考え方、発想のもの、そのようなものに対する知識も処理方法も知らないコンピュターは煙を出し機能しなくなった、これはコンピューターシステム等による管理(支配)されていることで合理的で手間は掛からないが機能を停止した時や間違った判断をした時、暴走し人間に対応できなくなって社会も機能停止してしまう...大丈夫なの...
    AIの利便性に突き進む現代社会への風刺ともとれるもののように...
     そんなメッセージが籠められていたように感じました。
     
    役者の皆さん個々に魅力的で、人形もまるで生きているかのように演じられていました。
    幻想の世界に迷い込んだような不思議な体験をしました。

      現実の世界はエピローグのみ...  しかし、ここにも幻想を漂わせて...

    すごく面白かったです。


  • 満足度★★★★

    短編集なのでバラバラなテーマが次々に出てきて、個々の場面はそれぞれ引き付けられるものがありましたが、全体としての筋は分かりませんでした。どちらかというと役者さんの演技比べとして見るほうが良かったのかも。

    ネタバレBOX

    犬の人形の扱い方の違いとか面白かったです。
  • 満足度★★★

    初めて観に行く団体でした。

    ネタバレBOX

    舞台装置の大部分がまさかの水面で、それにより照明がより効果的に映え。
    芸術的で台詞は難解ではあるものの、排他的な感じはなく、観客に対しての暖かさを感じました。
  • 満足度★★★★

    鑑賞日2018/08/28 (火) 19:00

    印象的な演出だ。
    私はほぼ3年ぶりくらいに風の舞台を観たが、江原さんの演出は次のステージに上ったと思う。
    この舞台は頭で考えては分からない。ただ感じるだけ、それでいいのだろう。海がすべての大地につながっているように、水面に映る役者たちに自分の来し方を投影したい。

    ネタバレBOX

    私は結構開演ギリギリにたどり着いたので出来なかったが、観客が折紙で帆掛け舟を折って客席前の水面に浮かべる。舞台はこの水面ですべて進行する。浮かべた舟を「大潮」さんが拾ってカゴに入れることで、客席の人生が舞台に溶け込んでいく。

この公演に関するtwitter

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  1. 東京演劇集団風/記憶の通り路 水を張った舞台とそれを反映するスクリーン…夢幻の世界に立ち上がる十数景が、様々な想いと思考を喚起する。大潮を写すべく海辺の村を訪れた中年男と風変りな少女の邂逅、注文の多い戦死者達の戦慄の“処理”法、国… https://t.co/wdT7wPNd4s

    約6年前

  2. 東京演劇集団風「記憶の通り路」観劇。 人が確実に手中にできるものがこの世にあるのだろうか? 戦争も国境も富も貧窮も形などなく手に触れることもできず、考えてみれば人間の概念として存在しているだけ。記憶でさえも。手からこぼれ落ちる海の… https://t.co/pgNTNURdNL

    約6年前

  3. 「東京演劇集団 風」が30周年締めくくり公演「記憶の通り路」 短編15本で構成 /東京みんなの経済新聞ネットワーク

    約6年前

  4. 東京演劇集団風『記憶の通り路-孤独に苛まれている老婦人には気をつけて』 縁あって観に行きました。 舞台装置の大部分がまさかの水面で、それにより照明がより効果的に映え。 芸術的で台詞は難解ではあるものの、排他的な感じはなく、観客に対… https://t.co/WIL1dP0sU6

    約6年前

  5. 東京演劇集団風「記憶の通り路」 仕事の〆切の隙をぬって、行ってきた。 マテイ・ヴィスニユックの作品は、今回で3度目。 エリック・ドゥニオーの人形、マスクとともに、すっかり魅了されている。 今回、アンドラ・バドゥレスコの衣裳も素晴らしかった。

    約6年前

  6. 東京演劇集団風 創立30周年記念企画 第94回公演【新作】『記憶の通り路 〜孤独に苛まれている老婦人には気をつけて』作:マテイ・ヴィスニユック、翻訳:川口覚子、構成・演出:江原早哉香。15の短編から選ばれた7本、見応えある創作。「… https://t.co/R6aOe6smhU

    約6年前

  7. 風『記憶の通り路』ヴィスニユック作。水を張った浅いプールの舞台。11のエピソードのオムニバス。幻想的、詩的で魅力的なシーケンスはあった。布を使った人形の造形は秀逸。ただ訥々としたセリフの言い方、演技の単調さで眠くなってしまうところも。https://t.co/9IBTg13r1L

    約6年前

  8. 東京演劇集団 風の『記憶の通り路−孤独に苛まれている老婦人には気をつけて』を観た。笑って、そして泣いた。一編の詩をIDにできるような人になりたいと思った。水と光の演出も良い。素晴らしい。

    約6年前

  9. 風邪『記憶の通り路』水を張った浅いプールの舞台。11のエピソードのオムニバス。幻想的、詩的で魅力的なシーケンスはあった。布を使った人形の造形は秀逸。ただ訥々としたセリフの言い方、演技の単調さで眠くなってしむうところも。

    約6年前

  10. ルーマニア人で、現在フランスで活動している劇作家マテイ・ヴェスニュックの作品の上演ということで見に来た。東京演劇集団風の公演を観るのはこれが初めて。 場所: レパートリーシアターKAZE https://t.co/pXGTbb4tvI

    約6年前

  11. 風「記憶の通り路」M・ヴィスニユック、江原早哉香。水面の反射が何とも美的。詩的な構成。人は記憶の穴の住人。大潮(白根有子、辻由美子)を撮る写真家(柳瀬太一)。時は一瞬にして過ぎ去る。人権(難民=高階ひかり)、抑圧(帰還兵)はルーマ… https://t.co/bwacXIL94d

    約6年前

  12. @nakanokeizai @YahooNewsTopics 8/28は演劇。東京演劇集団風第94回公演の新作,「記憶の通り路 PASSAGE DE LA MEMOIRE」観劇しに 来ました🚶作:M… https://t.co/oQ3qr19i4V #レパートリーシアターKAZE

    約6年前

  13. 「東京演劇集団 風」が30周年締めくくり公演「記憶の通り路」 短編15本で構成 /東京みんなの経済新聞ネットワーク

    約6年前

  14. 「東京演劇集団 風」が30周年締めくくり公演「記憶の通り路」 短編15本で構成 https://t.co/DtNeFYZXEd

    約6年前

  15. 東中野の「レパートリーシアターKAZE」(中野区東中野1、TEL 03-3363-3261)で8月28日から、「東京演劇集団 風」の新作「記憶の通り路−孤独に苛まれている老婦人には気をつけて」が上演される。 https://t.co/6K6mO6IAFx

    約6年前

  16. 【みんなの経済新聞】 「東京演劇集団 風」が30周年締めくくり公演「記憶の通り路」 短編15本で構成 https://t.co/X6BhwpScQ7

    約6年前

  17. 「東京演劇集団 風」が30周年締めくくり公演「記憶の通り路」 短編15本で構成 /東京(みんなの経済新聞ネットワーク) - Yahoo!ニュース https://t.co/KGEDGdphIC @YahooNewsTopics… https://t.co/adK25C1DVY

    約6年前

  18. 「東京演劇集団 風」が30周年締めくくり公演「記憶の通り路」 短編15本で構成(中野経済新聞) https://t.co/FPqkojnx1v #みん経 #地域ニュース

    約6年前

  19. 「東京演劇集団 風」が30周年締めくくり公演「記憶の通り路」 短編15本で構成(中野経済新聞) https://t.co/wSAlfT3sPj #minkei_books

    約6年前

  20. 「東京演劇集団 風」が30周年締めくくり公演「記憶の通り路」 短編15本で構成(中野経済新聞) https://t.co/UTC84vEMBG #minkei_cinema

    約6年前

  21. 「東京演劇集団 風」が30周年締めくくり公演「記憶の通り路」 短編15本で構成(中野経済新聞) https://t.co/RC92tGYEMx #みん経 #地域ニュース

    約6年前

  22. 東京演劇集団風『記憶の通り路』(創立30周年記念 第94回公演)[新作] https://t.co/pGMUbWEVSD

    約6年前

  23. "東京演劇集団 風 星の王子さま 2010年公演" https://t.co/FuxjdZbT72 https://t.co/Q2eKX8Ily7 ここで利用されてる図案はすべてサン=テグジュペリ権利継承者から原版を提供され、複製… https://t.co/ptaVcs2Qhv

    約6年前

  24. 東京演劇集団 風の「星の王子さま」は1989年初演なので、権利継承者事務所(財団?)以降は演劇が許可されなかったということはないかと。許可されなかったとすれば、権利継承者事務所(財団?)以前かも。… https://t.co/xPxul1pX2t

    約6年前

  25. 東京演劇集団 風 星の王子さま フランス共和国芸術文化勲章シュヴァリエ受章 https://t.co/FuxjdZbT72 "1994年には、サン=テグジュペリ作品の著作権継承者であったフレデリック・ダゲイ氏とその代理人であるガリ… https://t.co/iLJxGurcch

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  26. 平成27年度 文化芸術による子供育成事業 ―巡回公演事業― 東京演劇集団 風 ミュージカル Le Petit Prince 星の王子さま 文化庁 https://t.co/t7LyIZQGpH “Le Petit PrinceTM… https://t.co/E5ENgZHnyD

    約6年前

  27. 東京演劇集団風「記憶の通り路-孤独に苛まれている老婦人には気をつけて」(みんなで作る都市観光サイト まるっと中野) https://t.co/zIipXTxi0H

    約6年前

  28. 10 星の王子様 東京演劇集団風のを中学の芸術鑑賞で見て、未だになんとなく曲とか覚えてる。学校の先生方が舞台に出てたのも面白かった。いま思えば手間のかかることをしていたなぁ。劇団も学校側も、ちゃんといいものにしようと頑張ってたんだな。

    約6年前

  29. 【こりっちチケットプレゼント!8/10(金)〆切(東京)】 東京演劇集団風「記憶の通り路」08/28(火)~09/02(日)於:レパートリーシアターKAZE CoRich舞台芸術!: https://t.co/WI52Bd9KmWhttps://t.co/br5PcjvkHT

    約6年前

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