満足度★★★★★
久々に才能を感じる作品・・
久々に「才能」というものを感じた・・。
世間と隔離された人格矯正施設、まずのっけから異次元の世界へ、ぐっと引きずり込まれる。
そこには、自身の人生をスピンアウトした人間が、「擬似」家族として生活している。
様々なルールに縛られ、それぞれ集められた他人が、家族として生活することを強いられる。
何とも不思議な発想・・。
日本の法律に触れて塀の内側に入れられたとしても、こういう生活にはならないだろう。
ただでさえ自分の社会ではみ出た個性が集まり、時折、痛々しい風景も描写される。
社会的な動物として、感情を有した人間と言うのは、何と厄介な生き物なんだろう。
それぞれが内包する問題を抱えつつ、やがて物語は急転する。
中盤から一挙に加速したストーリーは、一転ミステリアスでおぞましい世界を垣間見せる。
社会で抹殺された人間をモルモットに、新薬投与の人体実験。
健康な若者が、匙加減一つでどんどん衰弱していく姿に戦慄を覚える。
実験の果て、スクラップと成り果てた生身の人間の臓器提供。
そこには、現代社会のブラックマーケットなら或いは・・・、と思わせる妙なリアリティがあり、観るものを凍らせる。
フミヤが地下室の鍵を受け取った辺りから、物語はどんどん緊張感を増し、最後の最後でこの施設のほんとの姿が浮き彫りにされる。
人間の精神の病にスポットを当てた秀作。
よく練られた構想と相まって、最後までドキドキさせられた。
目の付け所、発想の大胆さ、緻密に練られた構想・・。
久々に凄い才能だな、と唸らされた。
今後の作品も注視して行きたいと思う。
満足度★★★★
演技力!
第三回公演って事だったから、はっきし言ってあんまり期待してなかった。
それでも観たい!と感じたのは『どうてい』ってタイトルに惹かれたからなのでした。
ここで、諸君!中でもチェリーボーイズの諸君!(^0^)
『どうてい』はどうていでも君達が考えてるドウテイではない!
高村光太郎の『道程』なのですっ!
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道程
高村光太郎
僕の前に
道はない
僕の後ろに
道は出来る
ああ
自然よ
父よ
僕を
一人立ちさせた
広大な父よ
僕から目を離さないで
守る事をせよ
常に
父の気魄を僕に充たせよ
この遠い
道程のため
この遠い 道程のため
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最初に感じたことはこの劇団、プロに近い。
発声や台詞回しなど、素人ではない。
むむむ・・・この劇団、中々やるんじゃないの?って感じた。
ストーリーはそれぞれ問題を抱えた人達を家族という単位にはめて、家族ごっこをさせられるところから始まる。
しかしながら、この脚本には非常に恐ろしい罠があって、拝島(皆木)率いるNPO法人にはどろどろした裏があったのだ。
家族という枠の中でもごっこしながら生きてるニンゲンはやはり孤独で、それを形成させた拝島自身が一番孤独なのだ。
家族という得体の知れないものに違和感を感じた者たちが求めたものは、自分を必要としてくれる人なのだ。
そうして、拝島自身が一番欲しかったものは今は無き『家族』で、執拗に執着しながら家族を追い求める拝島こそが一番孤独で哀れなのだ。
物凄く重いテーマだけれど、笑いの場面もあり、あれよあれよといううちに深みにはまっていく。
この重い空気を役者の演技がひっぱっていく。
素晴らしい演技力です!
戦え!人生を戦え!もう負けるんじゃないぞ。
そう、NPO法人『常世』はちょっとずつ人生に負けた人達が集まってる場所なのでした。