満足度★★★★★
鑑賞日2016/03/04 (金)
作者が英国ウェールズで取材した、ウェールズ国旗のデザインにもなっている、赤い竜の伝説
当地で建設が進められている原発プラント(日立や東芝が関係しています)への反対・推進両派の対立
を基に作られた寓話的音楽劇。
赤い竜は「大地の意思=自然」を、黒い竜は「原発に代表される、人々の暮らしに大いなる利便を与えつつも、一つ間違えればカタストロフィを招く人類の英知」を、象徴したもののようです。
最後、赤い竜・黒い竜は、もみ合いながら消滅していくのですが、(うがちすぎかもしれませんが)その姿は、大地の意思と、人類の英知とが、まるで手を合わせて未来のために祈っている…ように、私の目には映りました。
社会的に様々な意見のある問題ですが、対立ではなく、互いの意見を昇華した先の、未来への希望…勝手ながら、作者の意図をそのように解しました。
作品自体への感想。
メロディアスでノスタルジックでもある出演者たちの唄
荒波や放牧された牛などを表現していく、白い椅子を用いての巧みな描写
イギリス南部の貧しい住民そのものの衣装
2時間強の上演時間を感じさせない、テンポの良いストーリー展開
そして何よりも、活き活きと舞台で演じ・唄う出演者たち
2016年の個人的ベスト5にカウントさせて頂いた、素晴らしい舞台でした。
満足度★★★
音楽劇としての意味、ウェールズとの交流の意義
主演の片足の少年(村田慶介)の演技、歌声ともにすばらしかった。貴種流離譚の一種かと思ったのだが、彼が片足であるということが、本編にそれほど影響していなかったのが残念だ。もっと、片足の設定に因果めいたものを持たせることができただろう。
台本の前半に歌が集中しており、後半の見所はぜんぶアクトでおこなわれていたので、音楽劇としては少し物足りなかった。音楽については、ラストのテーマソングをもっと雄大に聴かせるように盛り上げることはできたのではないか。
全編にわたり、物語はとても楽しめたのだが、村人たちの台詞、アクトがややのっぺりと、ありきたりだった。ありきたりというのは「台詞以上」のことを何も伝えられていないという意味である。台詞の言葉以上の深みがない。寓話が現実を越えていない。現実のその先を照射して、考えさせないと「寓話」として見せる意味がなく、遠い国のおとぎ話で終わってしまうのだ。そこに本作の限界を感じてしまった。そのためにはエンディングで主人公たちに「待つ」だけでなく積極的な選択をさせてもよかったかもしれない。体に穴があくという描写から、放射能汚染による差別を描くこともできたのではないか? 人々が窯の力を捨てられなかった強欲さ(核の利便性)と、原爆による殺戮(核兵器)を、もっと描きわけられたのではないか。死の恐怖と故郷をなくす悲しみは別物のはずで、そこがこの物語のさらなる発展の余地だと思う。
ウェールズ国立劇場との連携プロジェクトの意義は深く、すばらしい。このような海外との結びつき方もあるという例を知ることが出来て、私自身も大変勉強になった。作品については厳しいことを書いてしまったが、とても期待していて、舞台芸術集団 地下空港の創作への真摯さはじゅうぶん理解できたと感じているし、これからの作品もぜひ拝見したいと思っている。
満足度★★★
寓話的な現代の物語
日本とウェールズという全く違う風土を持った国をつなげ、世界の現状を映し出す手法に、深く考え抜かれた趣向を感じました。壮大な世界を広げていく表現の勇敢な手つきにも、他の劇団にはないオリジナリティーを感じています。と同時に、こういった遠い世界へ観客をさらう作風には、もっと技術力を高め、完璧に“ここではない異世界”を「信じさせてほしい」という気がしました。椅子を使って竜を表現した場面が実に面白かったのですが、このダイナミックさ、洗練された表現を随所に見たかった気がします。
クラウドファンディングによってインターネット生放送を実現したりと、運営力/制作力も高く、発信力を持った集団という点にも、大いに期待します。
満足度★★★★
原発、難民問題などを力強いファンタジーに
ある田舎の島に漂着した旅人が持っていた“釜”の不思議な、巨大な力が、人々の暮らしを一変させます。釜の力の由来や、それを利用しようとする勢力、やがて起こる大きな災害…。物語に日本の原子力政策や東京電力福島第一原発事故、そして事故後の世界を映していることは明らかです。
そんな社会派と言い切っても問題ないお芝居ですが、オリジナルの楽曲とイスを使った表情豊かなステージング、工夫を凝らした身体表現によって、躍動感のある娯楽作に仕上がっていました。衣装とヘアメイクが凝っていて、役の区別もつきやすく、デザインも良かったです。
ドローンを用いた予告編ミュージック・ビデオのクオリティーの高さに驚きました。クラウドファンデイングで資金を得て、3/12(土)19時の回は英語字幕付きで、Ustreamで無料中継されました。この作品が生まれるきっかけとなったイギリス・ウェールズ国立劇場のスタッフもご覧になったようで、国境を超えたアーティスト同士のつながりを維持する努力が素晴らしいと思いました。
本番直前に病気降板になった俳優に代わって、奥田努さんがタンレ役で出演されていました。タンレはいわゆる悪者として物語を引っ張っていく主要人物です。奥田さんが所属されている劇団Studio Lifeは中劇場ツアーも行っている、数十年の歴史がある劇団です。奥田さんは大勢の俳優を抱える同劇団で主役も経験されています。中堅舞台俳優の底力を見せていただけたように思いました。
満足度★★★★★
これを見たら音楽劇にハマる
まず衣裳が素晴らしかった。そして竜の作り方、椅子の使い方など演出も面白かった。
難しいテーマに挑み、そしてなにより、「皆で唄う」ことで昇華されるものがあるのが素晴らしかった。
満足度★★★★
素晴らしい! これこそ舞台芸術!
自分たちが制御し切れないような力を人間が持つ事への警告。そして、自然の怒り。
本作を観て自分が感じ取ったメッセージは、今年1月に観た劇団ショウダウンの『錆色の瞳、黄金の海』と共通するものでした。こうした寓話性のある作品が相次いで上演されるのは、世の中が不安に包まれている中で、多くの人が演劇の力を信じてやまないからなのでしょう。
しかし両作品とも、決して重いテーマを観客に押し付けるような事はしません。何を感じとるかは観る人それぞれに任せつつ、そっと祈るように、心に投げかけて来ます。
純粋に演劇として充分に面白い作品です。だからこそ、そこに含まれたメッセージは、役者に強い口調でぶつけられた激しい台詞よりも、ずっと心に響き、残り続けます。
ほとんど舞台装置も無い素舞台に近い空間で、椅子と役者が密集したり散開したりしながら、時には波になり、時には船になり、羊になり、窯になり、そして、竜になる。観客の想像力を掻き立てるその手法には、劇団ではなく「舞台芸術集団」と冠しているのも納得です。
役者の熱演だけでなく、歌唱も本当に素晴らしいものでした。
終演後、思わず上演台本を購入しました。
(他の劇団と比べて高額な上に、A4横向き印刷が縦に綴じてあって読みにくい…。)
これを読んで、またあの独特の世界を堪能したいと思います。
満足度★★★
期待していたが…
何となく予想はついていましたが、ありふれた演出。全てにおいて雑な感じがしました。純粋にもっと考えてほしいなと思います。 とにかくグッとこなかった。 衣装はすごいなと思わされました。作品自体は、もっと斬新なイメージがありましたが、期待してたのとは違いました。
満足度★★★★★
「生きぬく」ことの重み
背景もなければ小道具もない。
幕さえもないのだ。
だから本番直前にそれぞれ気を高める出演者の様子がいやでも目に入る。
当初はその意図がわからず大いに戸惑った。
が、
劇が進むうちに腑に落ちてくる。
そもそも最初の前口上で、その意図らしきものも述べられている。
「伝えたいものは『想い』だ」と。そして「皆さん、俳優でも観客でもなく、皆で一緒に考えましょう」ということなのだろう。
そしてその意図は、登場人物の極めてリアルな人間関係と、俳優の熱演によって、見事に達せられている。
満足度★★★★★
無題1771(16-061)、1772(16-062)
3/5(土)14:00(曇)、3/13(日)14:00(曇)の2回。
13:00受付、整理番号あり、13:30開場。
桟敷童子の造り込んだ舞台装置からは想像できない、素のフラットな舞台。客席はひな壇。
役者さんが客席誘導(足もとに機材があるが、お客さんはなかなか注意しない)、あるいは自由に過ごしている。
茶系の衣装のなかで野田さん(おひとりだけ雰囲気が違う)と田代さんは黒。左右に白い椅子、中央奥は黒の椅子。
毎回ビジュアル的には異なった印象を受けますが、お話しの本質は変わらないのではないかと思いました。
SFを読み始めた頃、それはa long time ago in a galaxy far far awayの頃のこと、ジュブナイルものやNHKの少年ドラマシリーズに夢中になっていました。
きっとそのときのテイストと同じものを感じるのだと。
「OLと魔王(2011/1@BIG TREE)」から7公演目。
満足度★★
拝見しました。
歌のメロディーが、印象に残らないのが不思議でした。初見で楽しむには難しいメロディーラインなのかな、と思います。
前評判から何となく予想はついていましたが、やはりどこかで観たような道具の使い方、演出。もう少しスタイリッシュなイメージがありましたが、今回に関しては、どちらかというともっさりしてました。ちょっと雑かなー。すべてを椅子で表現するには、あまりに捻りがなさすぎる。
メッセージも私には散漫な感じで、ダイレクトに伝わるものがなく、残念。
前の方で見たので、衣装の凝ったすごさに感動しました。
満足度★★★★
目先の利得ばかりを追い求めて『深く関心がなかった』人たちは加担者となる
テーマはそこにあるような気もしました。
何も引っかからず周りに同調している人が殆どで、そういう見えないもの、空気の怖さを感じたりもしました。
さっきまで味方だったのにって。
音楽劇であるが故、歌詞にはとても大事な意味があります。
そこがちゃんと聞き取れなかったことが唯一悔やまれる点だと思う。これがリアルタイムに解っていればと。
もちろん好き嫌いはあって良いと思う。
それでも、今、非常に観る意味があると思うし感じることができて良かった。そう思います。
満足度★★★★★
震災を思い出させる
日本の風潮をあらわしていて、人によって見方が別れる、考えさせてくれる感動劇でした。
個人的には、流されずに自分の意見持たないといかんな、家族を大切にしようと改めて思い起こさせてもらいました。
満足度★★★★
初めての地下空港
がらんとした舞台で、椅子を使って表現。小道具や舞台装置を使いすぎるより、こちらの方が好みです。皆さん思った以上に歌がお上手でびっくりしました。とても楽しめました。
満足度★★★★
観てきました!
正直、 こちらでの評判がイマイチだったので あまり期待せずに拝見したのですが、 思いのほか良かったです☆
”音楽劇” というだけあって 歌うシーンがたくさんあるのですが、 その歌が なんとも いい感じで 自分は好きですね~ ☆
満足度★★★
観てきました!
普通会場が寒いことが多いのですが、こちらなぜか暑かったです。
初めての劇団さんで椅子が道具ろいうのも、よく枠組みだけでみる舞台と同じ手法
こりっち10作品の選ばれているので、期待しすぎてしまって竜というよりかもめに見えてしまう道具
セリフ両サイドからの声が合わなく何を言っているのかききとれなかったこと。
アカデミー賞と同じで、評論家受けはいいと思うのですが娯楽としてみる舞台だと前日しっかり寝て観ないといけない感じで。いい作品なのですが眠くなるのは何
故だろうと考えてしました。
隣の女性も寝ていたので長いのかな
満足度★★
窯が眼前に立ち上らず
そのことはこの芝居を観る者にとって残念で悔しいこと、窯を空目できなければ果たしてこの芝居は観なかったも同然。椅子でいろんな表現(手抜きに見えないこともない)していたことも含めて美術をもっと大掛かりにしてほしかった。震災の年に恵比寿で観たやはり核を扱った作品の方を観ており当然それを超えてくるだろう期待したのだが、前観た作品の方がおもしろかったしそっちの方がいろんな意味でレベルが高かったように思えた。