赤い竜と土の旅人 公演情報 舞台芸術集団 地下空港「赤い竜と土の旅人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「生きぬく」ことの重み
    背景もなければ小道具もない。
    幕さえもないのだ。
    だから本番直前にそれぞれ気を高める出演者の様子がいやでも目に入る。
    当初はその意図がわからず大いに戸惑った。
    が、
    劇が進むうちに腑に落ちてくる。
    そもそも最初の前口上で、その意図らしきものも述べられている。

    「伝えたいものは『想い』だ」と。そして「皆さん、俳優でも観客でもなく、皆で一緒に考えましょう」ということなのだろう。

    そしてその意図は、登場人物の極めてリアルな人間関係と、俳優の熱演によって、見事に達せられている。

    ネタバレBOX

    「黒い竜」は明らかに「原子力」だ・・・単に原発に止まらず原爆をも含む、本来人間の手に余る巨大な力だ。
    そして、その力を利用しようとする「商人」も「役人」も登場する。

    では、その「商人」や「役人」を倒して万々歳というストーリーなのか?
    正義の味方「赤い竜」によって、無事に「黒い竜」を倒してめでたしめでたしという結末なのか?

    どちらでもない。
    sの、凡百の「反原発もの」と異なる展開こそが、本作の大きなポイントだろう。
    「商人」も「役人」も、思ったほど悪人には描かれていない。
    人々も、罪を背負おうとする人々も存在する一方で、誰かのせいにしたがる人もいる。
    「赤い竜」は「黒い竜」と相打ちとなり、その声は最早聞こえない。町は人の住めない土地となってしまった。
    ・・・何ともリアル過ぎる結末ではないか。

    そんな中、主人公達はこの現実に雄々しく立ち向かおうとする。
    何とも強かなことに、利益のみを追求する「役人」の思いを利用しようとさえする。
    「赤い竜」の声はもう聞こえないが、「いつか必ずまた聞こえる」と信じる。
    そして、
    今は住めないが、「必ずここに帰る」と固く心に誓う。

    ・・・気負った様子もなく、
    上から目線ではなく、作り手も観客も同じ立場の者同士として、語りかけ、問いかけるのだ。

    ようやく「原発」に真正面から向き合い、決して逃げ隠れしようとしない作品が生まれた。
    そのことが、嬉しくて仕方がない。

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    2016/03/16 21:46

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