満足度★★★★
青年座初観劇
今回、贔屓にさせてもらっているパラドックス定数の野木萌葱主宰が脚本提供という事で初観劇です。
青年座の役者さんのクオリティがすごい。
小劇場の若い役者さんでは出ない重厚さでした。
野木さんのイメージはどこまでいかされたのだろうか。
老舗劇団の厚みを感じた公演でした。
重厚な会話劇。瞬きも忘れるくらいの緊迫した空気感の中、あっという間の2時間35分。
青年座劇場は天井が高く気持ちの良い観やすい劇場でした。
パラドックスファンとしては、野木さんのキャスティング、演出でも観たいところです。
満足度★★★★
再演希望
約2時間30分、休憩10分含む。通路席まで満席。A級戦犯となった外交官たちが、日本が戦争へと突き進むきっかけとなった数々の事件を回想する。歴史を辿って悶々としながら、「男」「男優」を眺めていた。青年座だけどパラドックス定数の空気感になってるのが楽しい。
満足度★★★★★
骨太の歴史フイクション劇を堪能
やはり期待通りのコラボレーション舞台でした。
「東京裁判」同様、野木さんの創造する歴史フイクションドラマの、史実と見紛うまでの緻密な構成劇に、心底脱帽しました。
パラドックス定数の役者さんも、演技力には劣るところはないものの、年齢的に幅がないので、今回の青年座書下ろしの芝居には、早くから期待感を持っていました。
重厚な脚本、ぶれない演技力の結集、シンプルな舞台に、時代の流れを見事に投射した、演出力、三位一体のプロの演劇人の描く舞台の力に圧倒されながら、最後まで、目の離せない芝居でした。
今の時代に、多くの人に観て考えて頂きたい作品だと思います。
満足度★★★★
史実を再構成する面白さ
青年座で野木萌葱作品を初観劇。歴史モノを割と書く人か・・。満州事変から日米開戦・敗戦までの日本の「悪行」の立役者たちを、東京裁判の被告席に並んだ面々に見ることができるが(小林正樹監督「東京裁判」参照)、その中の重光、東郷、広田、松岡ら、外交部門を担った外務大臣と、それを取り巻く外務官僚がこの芝居の登場人物だ。かの戦犯法廷の開廷前夜、一つ所に集い、「破滅」への道のりを決定づけた幾つかの節目を振り返り、証言し、議論する。そこに流れているのは「外交官」というアイデンティティと誇りであり、それゆえに成り立つ真剣で熱い議論が、綴られている。
実在した彼らが、主観的に「国を憂い」「最善を尽そうとした」かどうかはともかく、「外交官」の視点を一本貫く事で、15年戦争史が(一般的な記述と大きく異なる訳ではないが)独自の記述で構成され直す、ユニークさがあった。会合を行なっている「現在」のシーンと、話題になった過去の回想場面が交互にある。
「外交官ならばどうあらねばならなかったか」という問いは、今の日本の「国を売る」(事によって米国の傘を得る)外交のあり方の異様さを浮き彫りにする要素を持つものだ。
ただ、焦点の当てられる史実について、一通り知っておかないと、どの登場人物が、何に、どう関わったかを台詞を追って把握して行く作業が大変だ。人物を特徴づけて名前と顔を一致させる配慮は、戯曲を書く上で念頭にあるべき要素だと思うが、作者は上に挙げた人物くらいは皆知っている、という前提で書かれたかと思われる。私は後半で人物が判別できるようになったが、それで前半と繋がるかと言うとそうはならず、ぼやけたまま。それゆえか、どうしても70年前の歴史の「内部」に生起し終息した出来事に見えてしまい、「現在」に反射して来るようではなかったのが惜しいと思った。受け取る側の感性次第かも知れないが。。
史実としては柳条湖事件(満州事変)〜リットン調査団、国連脱退、日独伊防共協定、日華事変、ハルノート〜日米開戦までが扱われ、最後に一人の重鎮に「国民への責任」を吐露させ、戦争終結を送らせた事による非戦闘員数十万の死(沖縄戦、空襲、新型爆弾)を仄めかした。
中盤、鋭い対立のシーンがある。在外領事館で外務省生え抜きの官吏が辞令を受けた直後、新たに赴任する軍出身の官僚がやって来てかち合い、火花を散らせる場面だが、こういう判り易い場面がもっと序盤にあると良かったかも。
国のリーダー的存在に見える風貌はさすがに青年座の人材という気がしたが、その功罪はネタバレにて。
満足度★★★★★
戦争の周辺を垣間見ることができました。
大戦といえば、軍隊・天皇陛下となるわけですが、その周辺にいろいろな人間模様・力学があり、外交官が反戦を唱えつつも、戦争への力動を抑えることがかなわなくなる。結果として、じわじわと戦争へと進むのだということがリアルに感じられました。ひたすら、反戦・平和を願って信じ、しかしA級戦犯になってしまった人たちのことや彼らの深い苦悩に触れることができました。戦後70年にふさわしく、重厚な設定、野木脚本の世界を堪能できました。
満足度★★★★★
虚構を交えながらも、歴史を物語にすることは、過去を検証する糸口を示してくれる
「A級戦犯に問われた外交官たちの証言から開戦の真実に迫る」とフライヤーにあった。
ということは……、と思って観た。
満足度★★★★
見ました。
戦前官僚達の政の舵取り。長い年月をかけて積み重ねた平穏な日常も、ほんの一瞬で脆くも崩れる。現在進行形の時勢がどこか未来図のように透けて見える。その当時に実在してたような配役の役者さん達も渋い。
英語劇じゃないのに、ヒアリングにも集中した史実とフィクションが巧みに混ぜ合った野木さんの重厚会話劇でした。
簡単に面白かった、とは言いづらい題材だけど面白かったです。
休憩込み約160分。
満足度★★★★
渋さに痺れて
劇団青年座さんの熟した男優さんたちをこのように観ることができて大満足。物語の内容に関しては映画でもできるんじゃない~?的な。。。舞台装置がシンプルで、動きで時代・場所の違いの分かる演出は分かり易かったです。
満足度★★★★★
この「昭和史」はすごい!
終戦直後、東京裁判の対策と称して、広田弘毅、松岡洋右ら名だたる外交官らがホテルに集まる。自分が下した政策決定を振り返り、国を導いた自分を反省する。日本が国際連盟を脱退したときの決議案を始め、劇中で使われる英語に通訳も翻訳もない。歴史的な背景や経緯の説明もなく、昭和史をある程度知っていないと、よく分からない舞台だ。だが、これぞ本物だ。客席に堂々とこれを提示した青年座には拍手を送りたい。実際に、観劇後の拍手の強さはかなりのものだった。
もう一つ、これを書いた野木萌葱さんという若い劇作家はすごい。「パラドックス定数」を主宰し、既に人気だというが、実在した人物にこれだけの仮想現実を語らせるとは、ものすごい昭和史だ。
満足度★★★★★
時代の重み そして苦悩
期せずしてタイムリーな公演を魅せていただきました。
私たちの世代から観れば、いったん咀嚼したものを、今度は改めてその確認と、時代の舞台裏での人々の苦悩とを結びつける機会となりましたが、若い世代の人にとっては、かなり難解であったのかと思います。しかし、その難解さは、どうしても観劇後の学習で埋め合わせてほしいとも願います。
日本が国際的に孤立し、さらに戦争に突き進んでいくことを、なぜ誰も止めることができなかったか。
この命題は、現在にも通じるものです。今も「先の戦争は、やむを得なかったのだ」とする人の多さ。さらには「日本は列強にはめられたのだ」と、肯定する考えも市民権を得ているむきもあるほどです。
優秀な外交官をもってしても、戦争への時代の流れは食い止められなかった。だからこそ、戦争につながる、どんな些細なことにも敏感になって、芽を摘んでいく努力を、国民の1人1人がしなくてはならないのだと思いました。
青年座は、大学生時代に、労演を通じて知った劇団です。40年ぶりの観劇でしたが、その真摯な劇団の姿勢は、相変わらずで安心して終わりまで観ることができました。
さて劇評です。
まず脚本。骨太で、よく練られた構成です。時代を前後させ、記憶をだどりながらの展開は、無理なく私の頭に入ってきました。
そして役者陣。それぞれ個性を持った外交官を、誰もが演じきっていて、これは役者さんの力量と、練習量、そして演出の優秀さに由来するものでしょう。
二時間半。ちょっと腰が痛くなりましたが、また、後部座席は鉄骨の上に設けられたもので、1人が動いても「横揺れ」が大きくて「もしや崩壊してしまうのでは・・・」と心配してもいましたが、それ以外は、長い時間もあっという間の凝縮されたものとなりました。
ありがとうございました。
また、代々木八幡に来ます。
戦争法案も、なんとか廃案にするための勇気ももらったものですし・・・