独り芝居『審判』 公演情報 独り芝居『審判』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
1-6件 / 6件中
  • 満足度★★★

    独り芝居の『審判』といえば…
    カトケンさんがライフワークとして何回も上演しているのが有名だとおもうが、重い話だと判っているので観たいとおもったことは無く。しかも翻訳物だし。
    なのに観に行ったのは、つまり演者が多田くんだからだ。
    独り芝居だし、すごい大作だし、彼にとっては大きな挑戦なはず。
    多田ファンとしては、こんな機会を見逃す手は無い。

    ネタバレBOX

    という訳で、観てきた。ら。
    …つかれた…。
    翻訳物にありがちな、不自然な語彙や言い回しがなかなかに難しく、言葉の意味を汲み取るだけで難儀したからもあるけれど。
    いやー、判ってたけどやっぱ重かったわー。
    あんなヘヴィなのを毎日…時には2ステの日も…。多田くん大丈夫かな。

    2時間10分の上演時間を最初から最後まで喋り尽くし。
    一度も捌けることなく、水も飲まず。
    ただ立って喋っているだけなのに、多田くんの額には汗が滲んでいた。
    いつもは飄々としていて、体温の低そうな、つかみどころのない多田くん。
    けれどヴァホフは坦々と、あるいはシニカルに、時に昂り、涙し…。
    週刊誌の安っぽい煽り文句などではない、本当の激白だった。

    はあ、すごかった。
    よくやったねと、素晴らしかったと称えたい。
    お芝居の内容自体は予想していた通り、というか予想よりも生々しさが勝っていたというか。
    きっとアタシ、何度か顔をしかめていただろうとおもう。
    それはそのまま、舞台上の「裁判にかけられるヴァホフ」と、客席の「傍聴人」にぴたりと嵌っていたのだろうなあ。
    客席がふわっと薄明るくなるシーンが何回かあったけれど、そんな時にお客さんはみな、どんな顔をしていただろう。ヴァホフにはどんな風に映っただろう。

    決して好きなタイプの作品ではなかったけれど、それでも観に行って良かったとおもう。もし観なかったとしたら激しく後悔するに違いない。
    でもう一回観るかと訊かれたら、無理だわ(^^;
    観る方も激しく消耗する芝居であった。
  • 満足度★★★★★

    名作……
    言語に絶する体験を語り続ける1人の男。
    ときに激し、ときに涙ぐみ、ときに冷笑し、しかし、揺れ動きながらも務めて平静かつ理性的であろうとする。

    久しく感じたことのない緊張感と集中力。
    張り詰めた空気が会場中を支配し、200人近い観客が、眼をそらすことも身じろぎさえできずに、
    ただただ息をひそめて1人の男の言葉を受けとめ続けた2時間15分。

    壮絶な内容以上に、それを語る男の意志と、演じる役者の覚悟に圧倒された。

  • 満足度★★★★

    観客もまた誇りを持って
    「観劇してきた」というよりは、「陪審員として裁判を体験してきた」という方が相応しいでしょう。

    敵軍の捕虜となったロシア軍の将校7人は、地下牢に閉じ込められ、水も食料も与えられないまま置き去りにされてしまいます。60日後、ようやく味方に救出された生存者は2人。彼らはいかにして生き残ったのか。生存者の1人ヴァホフ大尉の証言によって、仲間を1人ずつ殺し、その肉を食らって生き延びてきた様子が、時に生々しく、時に激しさを持って語られます。

    人が人を殺して肉を削ぎ、貪り食う極限状態の描写。そのあまりの凄惨さのせいでしょうか。途中退席する人や、体調を崩して倒れてしまう人が現れるほどでした。今後の上演に当たっては、そうした描写が苦手な人のケアや事前の注意は必要かもしれません。

    セットも小道具も最低限に抑えられたシンプルな舞台でたった一人、2時間強の間、一瞬も緊張感を落とす事無く訴え続ける気迫には圧倒されるばかりでした。

    多田直人の演劇人生のターニングポイントになるだろうというこの舞台。観客もまた近い将来、本作品を観たことを誇りを持って思い出すことでしょう。

  • 満足度★★★★

    生きることと人間であること
    重かったし辛かった…が、すごかった。
    多田くんの顔が、どんどん多田くんに見えなくなっていきました。
    鳥肌立ちましたし、鳥肌以上に、身体が震えました。
    怖かった。
    多田くん以外では、この演目を観たいとは思わないだろうなと思いました。
    「私は皆さんの審判を待っています。」と言われても、私には裁けません…。
    ただただ、この戯曲を知ったことが、観に行ったことに意義があるようにも思います。(参加することに意義がある。)
    アンドレイ・ヴァホフになった、多田直人さんは、すごいと思いました。

    ネタバレBOX

    価値観の違う場所で培われた常識は、そのコミュニティの中でしか有効ではなく。
    その価値観は、環境や状況に左右されて成り立つであろうことを考えると…全員が辛い…。
    統一見解なんぞ、出る余地もない。

    ヴァホフが「ルーピンの介護をしたい。」と言ったのは、あの体験を共有できたのは彼だけだし、その気持ちを理解できるのは、やっぱり彼だけだと思うし、ルービンが嫌悪の視線にさらされて世話されるよりも、自分が傍にいるという選択肢は、至極納得のいくものでありました。
    また、「できればまた兵士に戻りたい。」と言ったのは、人肉を食べてしまった自分は、この世界に居場所はないと感じたのではないかと思いました。
    言い方がすごく難しいけれど、自分が人ならざるものになったと理解したヴァホフには、人ならざるものになる世界(戦争)に行くことが、唯一の彼自身の居場所だと感じて選択したのかな?と思いました。
    そこまでの冷静な選択が出来る正気を保っているなら…それはそれで怖いような。

    ヴァホフが、もし正気だったら…。
    でも、あの状況で発狂しないでいられるというのは、どれだけ大変なことでしょうか?
    いっそ死んだ方がマシと、思うのは、間違いなんでしょうか?
    なんとも言えない悲しさと悔しさとうちひしがれ感を感じる2時間10分でした。
    観てる観客のほうが発狂しそうな舞台は初めてかもしれません。
    観てる方も疲れ果てました。

    すっごく、考えさせられる舞台という意味では、いい作品、いい脚本なのでしょうけれど、辛すぎる。
  • 満足度★★★

    血と肉
    面白い。作品自体初めて。140分。

    ネタバレBOX

    捕虜となった7名が軍服剥ぎ取られ、食事も水もない地下室で人肉食にて命を繋ぐ。生き残った二名の内、ヴァホフ大尉は裁かれるため法廷に立ち、その顛末を傍聴人(客)へ語る…。

    傍聴人へ一言一言を投げかけるスタイル(裁判資料をご用意くださいといった演出)で、凄惨な状況と人の情を訴えてくる。人肉食ってショッキングな要素ってこともあるが、戦争の傷痕をくっきりと見せ付けてくれ、また、裁くことの価値を問うようなつくりでもあり、いい本と思う。観てるこちらが音を上げそうになるような。

    演技がだめと思わないが、いまいちノリきれない感触もあった。表現力の問題かなと思うし、あくまでドラマな作品でないからノリもへったくれもないのかもしれないけど。
  • 満足度★★★

    これは凄い
    演目については超有名戯曲で
    わたしの好き嫌いなどあまり関係ないので置いておくが、
    感想としては「多田くん凄い」につきる。
    何かが憑いたように語っていた。
    時には冷静に、時には感情を爆発させながら。
    そして最後は本当に別人のように観えた。
    顔がね、全然違っていて驚いた。
    縷々として語られる台詞は、
    変なたとえだけど落語の語りのようにも思えた。

    ネタバレBOX

    美術はシンプルで、暗い背景に証人台の柵があるのみ。
    動きはそれほど無い。
    翻訳戯曲独特の難解な台詞回しは予想通り。
    面白いな、と思ったのは途中何回か客席を明るくし、
    観客を陪審員に見立てていた演出。
    そして「裁判記録」として7人の兵士の名前を書いた紙を
    当パンと一緒に配っておき、劇中に参照させる演出。
    ロシア人の分かりにくい名前を観客に事前に知らせる事により
    ヴァホフの証言からイメージを引き出そうとしていたのだろうか。
    数少ない効果音の威力が大きかった。

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