アルトナの幽閉者 公演情報 アルトナの幽閉者」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-4件 / 4件中
  • 満足度★★★★★

     重くのしかかる歴史的な背景。しかし描かれるのは普遍的な家族愛。
    戦争中の悲惨な経験がトラウマとなり
    部屋に閉じこもったきりの長男、
    次男とその妻、妹、独裁的な父親。

    妹だけは入室を許されていたが、
    次男の妻の介入でバランスが崩れ始める。

    憎しみ合っていても、根底にある家族の
    絆が消えることはない。
    それは、次男の妻だけには理解できない。
    最終的に下された選択において、
    それでも父としての幸福があったのではないか
    と思う。

    出演者の皆さんの熱演、特に岡本さん、
    美波さんの緊張感あふれる演技がいい。

  • 満足度★★★★

    有事の家族劇として秀逸
    もっと肩の凝る内容なのかと身構えて、観劇しましたが、意外にも、笑う場面もあり、高尚な内容ながら、最近の我が国の状況などもダブって、非常に身近な感覚に囚われる問題作でした。

    私の凡庸な頭や知識では、30%ぐらしか、理解できなかったような気もするのですが、でも、この家族の物語は、ある意味大変普遍的な要素を含有していて、誰もが、有事の際のひとつの家族のモデルケースとして、共感できる部分がたくさんあったように思います。

    最近、とみに演技力が冴え亘っている岡本さんが、ここでも、苦悩する主人公の常軌を逸したような言動を、、見事に体現されて、ドキュメンタリーを観るような実在感が圧倒的でした。

    もちろん、他のキャストも、皆さん、生身の人間を具現化できる役者さんばかりで、全てにおいて、大変クオリティの高い舞台作品でした。

    難解ではという先入観に囚われず、インスピレーションで選択して、大正解!

    共感すること数多ある、素敵な人間ドラマだったと思います。

    ネタバレBOX

    戦争に翻弄されて、精神を病むような状況に置かれた長男と、彼に、ある意味、心身を拘束される家族の物語。

    13年間、自分で、鍵の掛かる部屋に閉じこもっている兄と唯一、接見できるのは、妹だけでした。その兄と妹の関係は、まるで、ギリシャ神話のよう。

    兄が、そんな状況なので、弁護士を辞めて、父親の会社を継いだ弟。元女優の弟の妻は、自分も精神を病んで、それを救ってくれた夫と結婚したのに、夫が、今は、自信を無くして、父親の意のままに、社長になってしまったことを不服に感じています。

    そんな美貌の嫁を使って、余命幾ばくもない父親は、ある勝負に出ます。

    弟の妻は、最初は、自分達夫婦の将来のために、父親の説得に応じ、義兄に会う内、どんどん、心が兄に囚われてしまいます。

    そして、判明する、兄の戦争中の罪。

    父親と、兄が選択した、最後の決断。

    難解な台詞劇の形態を取りながら、用意された、スリリングなシナリオに固唾を呑んで見守る内に、あっという間に、3時間半の長丁場の舞台を観終えてしまった印象でした。

    ただ、全てが、精巧だっただけに、気になった点が一つ。兄が引きこもっている部屋に、ヒットラーの肖像写真が掲げてあるのですが、そこに向けて、兄や弟の妻が、激昂して、物を投げるシーンが何度かありました。その時、たとえば、ワイングラスを投げたとしても、割れもしなければ、落ちた音もやんわりなんです。たぶん、プラスチックか何かなんでしょう。危険はないかもしれませんが、やはり、場面の高揚感に反して、違和感があり、作り物感を露呈して、白けました。緊迫感のある場面では、小道具にもリアリティーがあった方が良かったように感じました。
  • 満足度★★★★

    戦争に翻弄され幽閉された家族
    戦争と責任について問う内容ながら家族のドラマとしても描かれていて、人間の愚かさや滑稽さがうっすらとユーモアを感じさせながら表現されていました。

    戦争中にあったに出来事によって精神が不安定になり13年間部屋に閉じ籠り、妹としか部屋に入れない男の所へ、血の繋がらない部外者である、弟の妻が訪れることによって家族の関係に変化が生じる様子がじっくりとスリリングに描かれ、次第に戦争で犯した罪を裁くことというテーマになり、色々と考えさせられる物語でした。
    主人公だけで家族のそれぞれが何かしらの理由でもって自分を幽閉していて、原題が「Les Séquestrés」と複数形になっているのが納得出来ました。

    こけ脅し的な目を引く様な派手な演出は無く、理屈っぽい対話が延々3時間半近く続くものの、共感出来る台詞や演技に引き込まれて長さを感じませんでした。
    男が妄想上の蟹達に話し掛けるシーンが何度もあり、蟹のハサミを上げる姿とナチス式敬礼が重ねって見えたり、地面から離れられない人類を思わせたりと、象徴的で印象に残りました。

    岡本健一さんが本当に狂っているのか正気なのに狂っている振りをしているのか分からない人物をコミカルな一面を持たせつつ演じていて、多面的な魅力がありました。

  • 満足度★★★

    力が入る舞台
    硬質で怒張したセリフのやり取りを聞いていたら、多少身体がぐったりしそうになる、見ているだけで痩せそうになったw
    戦時下に犯した行為をキッカケに、生と死の二面が常に付きまとい正気なのか狂気なのか危うい精神を保ったまま部屋に引きこもる男、それを世話する妹、夫婦仲がぎくしゃくしてくる弟夫婦、終盤の父の生きる為に行なった行為と息子の受難多き会話を聞いていると見ているこちら側にも厳しさが沁みてくる。
    それぞれの愛国心と家族愛が見え隠れした、静かに重い舞台でした。
    吉本さんが裏ヒロイン。休憩込の約3時間20分。

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