満足度★★★★
戦争に翻弄され幽閉された家族
戦争と責任について問う内容ながら家族のドラマとしても描かれていて、人間の愚かさや滑稽さがうっすらとユーモアを感じさせながら表現されていました。
戦争中にあったに出来事によって精神が不安定になり13年間部屋に閉じ籠り、妹としか部屋に入れない男の所へ、血の繋がらない部外者である、弟の妻が訪れることによって家族の関係に変化が生じる様子がじっくりとスリリングに描かれ、次第に戦争で犯した罪を裁くことというテーマになり、色々と考えさせられる物語でした。
主人公だけで家族のそれぞれが何かしらの理由でもって自分を幽閉していて、原題が「Les Séquestrés」と複数形になっているのが納得出来ました。
こけ脅し的な目を引く様な派手な演出は無く、理屈っぽい対話が延々3時間半近く続くものの、共感出来る台詞や演技に引き込まれて長さを感じませんでした。
男が妄想上の蟹達に話し掛けるシーンが何度もあり、蟹のハサミを上げる姿とナチス式敬礼が重ねって見えたり、地面から離れられない人類を思わせたりと、象徴的で印象に残りました。
岡本健一さんが本当に狂っているのか正気なのに狂っている振りをしているのか分からない人物をコミカルな一面を持たせつつ演じていて、多面的な魅力がありました。