アルトナの幽閉者 公演情報 新国立劇場「アルトナの幽閉者」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    有事の家族劇として秀逸
    もっと肩の凝る内容なのかと身構えて、観劇しましたが、意外にも、笑う場面もあり、高尚な内容ながら、最近の我が国の状況などもダブって、非常に身近な感覚に囚われる問題作でした。

    私の凡庸な頭や知識では、30%ぐらしか、理解できなかったような気もするのですが、でも、この家族の物語は、ある意味大変普遍的な要素を含有していて、誰もが、有事の際のひとつの家族のモデルケースとして、共感できる部分がたくさんあったように思います。

    最近、とみに演技力が冴え亘っている岡本さんが、ここでも、苦悩する主人公の常軌を逸したような言動を、、見事に体現されて、ドキュメンタリーを観るような実在感が圧倒的でした。

    もちろん、他のキャストも、皆さん、生身の人間を具現化できる役者さんばかりで、全てにおいて、大変クオリティの高い舞台作品でした。

    難解ではという先入観に囚われず、インスピレーションで選択して、大正解!

    共感すること数多ある、素敵な人間ドラマだったと思います。

    ネタバレBOX

    戦争に翻弄されて、精神を病むような状況に置かれた長男と、彼に、ある意味、心身を拘束される家族の物語。

    13年間、自分で、鍵の掛かる部屋に閉じこもっている兄と唯一、接見できるのは、妹だけでした。その兄と妹の関係は、まるで、ギリシャ神話のよう。

    兄が、そんな状況なので、弁護士を辞めて、父親の会社を継いだ弟。元女優の弟の妻は、自分も精神を病んで、それを救ってくれた夫と結婚したのに、夫が、今は、自信を無くして、父親の意のままに、社長になってしまったことを不服に感じています。

    そんな美貌の嫁を使って、余命幾ばくもない父親は、ある勝負に出ます。

    弟の妻は、最初は、自分達夫婦の将来のために、父親の説得に応じ、義兄に会う内、どんどん、心が兄に囚われてしまいます。

    そして、判明する、兄の戦争中の罪。

    父親と、兄が選択した、最後の決断。

    難解な台詞劇の形態を取りながら、用意された、スリリングなシナリオに固唾を呑んで見守る内に、あっという間に、3時間半の長丁場の舞台を観終えてしまった印象でした。

    ただ、全てが、精巧だっただけに、気になった点が一つ。兄が引きこもっている部屋に、ヒットラーの肖像写真が掲げてあるのですが、そこに向けて、兄や弟の妻が、激昂して、物を投げるシーンが何度かありました。その時、たとえば、ワイングラスを投げたとしても、割れもしなければ、落ちた音もやんわりなんです。たぶん、プラスチックか何かなんでしょう。危険はないかもしれませんが、やはり、場面の高揚感に反して、違和感があり、作り物感を露呈して、白けました。緊迫感のある場面では、小道具にもリアリティーがあった方が良かったように感じました。

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    2014/03/09 21:02

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