express 公演情報 express」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.1
21-24件 / 24件中
  • 満足度★★★

    笑う箇所もさまざま。
    物語の粗筋はhell-seeさんの感想の中で実に明瞭に描かれているのでそちらを観てください。これ以上の詳細な説明をされる方は居ないかと。笑)
    今回ほど、観客によって笑うツボが違うことを思い知らされた。だって一斉に笑う場面というのがあまりなく、客席のあちらこちらで、まるで犬の遠吠えのようにちょっとずつ、ずれながら笑いが起こっていた。苦笑!)

    初日の為か、噛みが目立ち滑りも悪かった。


    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    物語が少しずつ繋がっているショートコント。しかし、過去に観た「 i r r e g u l a r 」ほどの工夫はない。あの時はセットというセットはなく箱を一つ使用しただけのコントだったが、度肝を抜かれるような斬新さがあったのだが・・。

    今回はコントの中に、キリストがゴルゴダの丘で処刑されるまでの経緯や、マリーアントワネットの名言、銀河鉄道の夜などを盛り込みながら、「知る人ぞ知る」高度な内容にしていた。コントというよりもダークコメディを匂わせるような。

    個人的に好みだったのは鉄道マニアと自称する鉄ちゃんが実はニワカ鉄ちゃんであまり熟知していない事柄に居合せた隣の客(窓際に座っていたのを鉄ちゃんが無理にどかせてしまうのだけれど・・)が突っ込みを入れるコント。ヲタ特有のリュックサックにメガネがポイント高い。

    また、駅に住みついている浮浪者が妄想の中で妻を回想するシーンが面白い。結局薬局、そいつはチカンの常習犯だったのだけれど。
  • 満足度★★★★★

    コントっていう、わかりやすい皮を被った何か、だったような気がしている
    笑ったし、唸ったし。
    満席だったのもうなずける。

    ちょっとセンスのいいフライヤーに惹かれたんだけど、結果、これはいいモノを観たのだった。

    ネタバレBOX

    この劇場をこんな風に使っているのを初めて観た。
    それは、どの席からも舞台が近くなることを目的としているのだろう。
    イス4つ、とかのシンプルな装置・セットも可能だったのに、あえてこのようなセットにしたのも素晴らしい選択だったと思う。

    オープニングの雰囲気から、これは鉄道というキーワードを(鉄分多い表現をすれば)連結器のようにして連なっていく、コントの連作かな、と観ていくと、(鉄分多めの表現をすれば)ちょっと終着駅が違うようである。
    単に連作コントが単純に1つにつながっていくのではなく、「演劇」としての全体像が浮かび上がってくるのだ。それは鉄分多めに言うとすれば・・・しつこいっ!

    まあ、とにかく鉄道がキーワードであることは間違いはない。

    基本は、2人芝居。彼らは、いろいろな役を必ず1対1の状況によって演じる。そういう形は、コントの印象が強いのだが、実際に行われていたのはそうではない。彼らは、コントとして役をやってます、というよりは、その役を演じている、というほうが妥当だった。

    とにかく、成り切り方がうまい。テンポもいい。引き込まれるテンポだ。2人とも最高だ。

    1つひとつのエピソードは、コントに仕上がっていて、「笑い」も十分にある。だけど、確かに、ボケ&ツッコミ的な要素はあるのだが、そういうコントではなく、実にいい台詞と間(&タイミング)で笑わせてくれるのだ。こういう笑いを観たかったという欲望を満たしてくれる。
    この気持ち良さはなかなかない。

    コントっていう、わかりやすいキーワードで、誰でも入れるように間口を広げ人を引き寄せ、結局のところ何か別の世界に連れて行ってくれるような、まさにこの舞台の中の列車のような世界であったとも言える。

    中盤での、1人芝居風の展開から、それが「形式的にも物語的にも」1人芝居ではないということに気がついたときの、ちょっとゾッとするようダーク感もいい。なんとなくにやにやして観ていたら、冷水を浴びせられたようだ。
    うまいよ。

    各エピソードの微妙な時間差や異なる場所での結びつきもうまい。

    そして、ダークな感じから「最近はナスやキュウリも用意してくれないし」と言うあたりで、少しコントとは違う方向へガチャリと、(鉄分多めに言えば)レール切り替えポイント切り替えてくる感じがいい。
    さらに「パンと魚」「銀貨30枚で裏切る」の展開は、漫才台本の形をとりながらも、ラストに結びつくという、なんかシビレる展開になっていく。これはちょっといいぞ、と思った。それらを、細かい説明なし、さらりと言ってのけ、さらに笑いのほうに持って行く手法も含めていいのだ。

    また、そのエピソードの中の台詞「悪いことは必ずばれるのだ、ばれることによって、許されるのだ」(そんな感じの台詞)は、ドストエフスキー的展開じゃん、なんて思ったり(もちろんキリスト教的だから)。

    まさかと思うけど、今回の登場人物は、1+13名ってことはないよね?(笑)

    裏切りは必ずばれ、そして、それはバレることによって(必ず)許されるという、凄まじいラストになるのだよ、これが。笑いの中で。
    これが何かの集会だったら、思わず入信しちゃうよ。しないか。

    次回も必ず観ようと思ったのだった。
  • 満足度★★★★★

    ハイセンスでハイグレードすぎる連作コント集。
    フライヤーに『これはコントの広告です。』なんて詠っているものだから、てっきりボケとツッコミに役割分担がなされていて、「ショートコント!」という前振りからネタがはじまるのを予想していたのだけれども見事に裏切られた。

    たとえば今日日のバラエティ番組で見受けられるような一発ギャグ的なウケ狙いをかましたり、あきらかに常軌を逸しているキャラクターに頼って笑いを取ろうとするお手軽さはまるで皆無で『オチ』に重点を置くというよりも、あるシチュエーションのそれぞれの会話の掛け合いから生まれる『ズレ』から『おもしろみ』をガシガシと広げていくような。
    で、そうしたなかにさり気なく、人生の思わぬアクシデントだったり、何とも腑に落ちない不条理さだったり、誰かの誰かに対する想いが織り込まれていたことが、すごくよかった。
    妙な共感を得ようとせずに、描きたいことをスマートにはめ込む辺りも都会的で、作家のキラリと光るセンスを感じた。
    そしてあれだけの広い空間をたったふたりの役者で表現したことにも驚かされる。また、フライヤーから抱いた浮遊感のある、不思議な世界というイメージを美術、照明、音楽、衣装が盛り上げていた。

    所々気になる点はある。けれどもそれを差し引いても圧倒的におもしろかったし、コント界の新しい夜明けを感じた。

    ネタバレBOX

    入口から対角線上に構築された名もなき場所のとある駅。
    線路はなく、プラットフォームだけが真ん中に浮かび上がるようなつくりになっていて、浮世離れしている感じ。天井には、重厚感のある鉄塔が組み込まれ、かなり本格的な舞台装置。

    物語は、終電に乗るためにホームに駆けこんでくるサラリーマン風の男性(安藤)と鉄道員(吉田)のやりとりからはじまる。
    ここでの会話は、この沿線は今日で今日で廃線である、というアクシデントによって、電車に乗り遅れるだけでなく、交通手段も失ったと嘆く悲劇的な男性に、本日限りで仕事を失う自分よりはマシではないか、と励ます鉄道員の悲喜が主。とりわけ斬新な話ではないけれど、冒頭で”もうすでにひとを乗せたからこの男性は乗れないのだ”という後々明らかになる意味深な伏線(キーワード)を張っている導入部としては悪くないとおもう。

    一度暗転になり、上手側の壁に取り付けられた電光掲示板に今回のタイトルと団体名、そして電車に乗り込む際の注意事項が表示される。
    私の座った席が空調が近く、音響があまり聞きとれなかったのだが、この時列車の通過する音はあったのだろうか。定かではないのだが、暗転時に列車の名前、列車の通過音、諸注意等を音響でアナウンスが入る方がこれから旅がはじまる予感が更に醸しだされるような気がした。

    いくつかの木箱を並べてボックスシートに見立て、先ほどまでプラットホームであった場所が、車内になると隣の席に綺麗な女性が座ることを想定してナンパの練習をする若者(吉田)が。
    どうやら客席に近い側が窓側という設定であるらしいので、観客に向かってナンパの練習をしているように見せかけるのが、なかなか滑稽である。そこへ頭にネクタイを巻いたよっぱらい(安藤)が現れて、若者の妄想は砕け散る。
    そしてさきほどの妄想をよっぱらいに見透かされ、若者は若干たじろく。
    それからふたりの話題はボックス席の間に位置するテーブルに置かれた不審な黒いバッグへ。
    中を開けてみると中には冷凍ミカンが入っていた。ふたりともこのミカンには覚えがない。爆弾が仕掛けられているのでは?と疑ったよっぱらいはミカンを剥いて調べて、窓の外へ放り投げてしまった。
    このミカンがこの作品のなかのふたつめのキーワードである。

    この後も『同じ列車』に乗り合わせた『人々』というシチュエーションから更にキーワードを投げかける。順番が前後するかもしれないが、その詳細は以下の通り。

    ・先ほどの同じ?若者(吉田)と時刻表が恋人の鉄ちゃん(安藤)。
    実はちょっとモグリの鉄っちゃんは山手線の駅名を全部ちゃんと言えなかったりする。日本一長い駅名もわからなかったりもする。それを若者に指摘される。みっつめのキーワードになるのが日本一長い駅名。

    ・浮浪者(吉田)と元車掌(安藤)の会話。
    戦争で命を落としたふたりは、この列車が戦時中に軍需鉄道として使われていたことを懐かしみ、「また来年会いましょう」と言って別れる。彼らは死者の国から年に一度だけ現世に帰ってくる守り人(霊)なのだ。
    冒頭で交された会話の廃線と敗戦を掛け合わせたようなエピソードであり、
    ふたりの会話のなかから”ひとり生きてる人間が乗ってしまったらしい”ということを示唆する。この列車は、死者の魂を乗せて走るものである、というのがよっつめのキーワード。

    ここまでに、冒頭で投げかけたもうすでにひとを乗せた列車は、死者の魂を乗せて走る列車であることがわかった。
    あとは、冷凍ミカンと日本一長い駅名がどう繋がるのか、である。

    とここで、挿話がひとつはいる。
    駅で暮らしている浮浪者(吉田)は仕事の出来が悪く会社をクビになり、妻からは離婚を突きつけられて、明日喰う種にも困っている宿なしの浮浪者なのだが、自分はまだまだ現役バリバリのサラリーマンだと信じている。
    がしかし、車掌(安藤)に連続痴漢犯として検挙されて夢から現実に突き落とされた彼は、絶望を抱く余裕もなく、ただ呆けていた。
    この話は特に本筋とは関係がないのだが、役者の技巧と脚本の完成度が非常に高く、純粋のひとつのショートショートの独立した作品として楽しめた。

    終盤、冷凍ミカンの謎が明らかになる。
    冒頭の若者(吉田)はクリス(安藤)とお笑いコンビを組んでいて、これから本気でプロを目指し、お笑いで食って行くために、クリスを連れて田舎へ帰る道中の『列車のなか』である。がしかしクリスはすでに他界していてこの世にはいない。

    クリスに会いたい一心からか、はたまた偶然からか、
    若者は死者の魂を乗せて走る列車に乗った。列車は走り、分岐点につく。それが日本一長い駅名の場所、人生の分かれ道である。クリスは過去と時間の入り乱れるサザンクロスに乗り、時空を超えて相方へ別れの挨拶をしにやってきたのだった。

    最後まで謎の残る冷凍ミカンは、これが『最後まで解けない未完(成)の物語』であるということをロジカルに掛け合わせているのだ。

    未完であるにせよ、クリスはいかにして死んでしまったのか。永遠にわからないというのは消化不良感が残る。

    しかしながらクリスが最後、満点の星空のひとつになり、expessの行きつく先が永遠の別れ、であるとするのなら、それはとても切ないことだ。
    そんなふたりは、まるで銀河鉄道の夜のジョバンニとカムパネルラみたいだった。
  • 満足度★★★★

    面白い!
    2人の魅力的な役者と1人の座付き作家のバランスがすごくいいのだろう。まだまだ荒削りな部分はありながらすごく将来性を感じる。

    コントというよりコント風に装った二人芝居という感じで、全体としてはノスタルジックなファンタジーを感じた。

    ただただ面白い。

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