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- 応募作品
わが友ヒットラー
CEDAR(東京都)
公演に携わっているメンバー:5人
- 【団体紹介】
- CEDARは2017年に結成された演出家・松森望宏、俳優・桧山征翔、演出助手・石川大輔の演劇ユニットです。
世界中に数多くありなかなか上演されない優れた名戯曲にスポットをあて、劇作家が綴る人間の苦悩や葛藤や愛情を丁寧に舞台上に表現し、人間の複雑さや滑稽さや神秘を一緒に体験しあえる集団という理念のもと活動しています。より硬派に「なぜ生きるのか」をテーマに哲学を通して、日常生活をより善く生きることを目標に演劇活動を続けています。
演出の松森望宏は2012年英国シェフィールドの国際演劇祭において、三好十郎の『胎内』で最優秀演出家賞を受賞しました。戯曲が持っている人間ならではの本質や哲学を丁寧に描き出し、どの国で上演しても深く観客の心に届く作品作りを目指しています。過去上演作はユージン・オニール『夜への長い旅路』、三好十郎『胎内』、フリードリヒ・フォン・シラー『群盗』、フェルナンド・アラバール『建築家とアッシリア皇帝』、ドストエフスキー『悪霊』。
- 【応募公演への意気込み】
- CEDARではこの度、コロナ禍の情勢の中、ご出演いただく皆様に対しての安全、お客様や劇場関係者やスタッフの安全を最大限考慮し、出演人数を最大限減らした作品として三島由紀夫の傑作戯曲『わが友ヒットラー』を企画させて頂きました。
この『わが友ヒットラー』という作品は、ナチスが独裁主義政権に台頭していく前夜を描いた血で血を洗う政治劇。三島文学の中でも特に男性的内容で、国民に対する欺瞞のため「政治的中道」という仮面を成し遂げるため、友人をも粛清していくヒットラーの内面の狂気性の萌芽がおぞましく現れる三島由紀夫の才能をいかんなく発揮された氏の代表作です。
新型コロナウイルスが全世界を襲い、我が国でもコロナ禍による経済打撃に五輪開催と、混迷を極めてきました。今後振り返って内閣の総決算が議論されるべきでしょうが、政治の表舞台の裏にはどれほどの影や闇が潜んでいたのか。猛烈な光を浴びれば、その影はより漆黒に、そしてクリアに姿を現します。第一次世界大戦後のドイツがそうであったように、社会不安は全体主義をつくりかねません。政治の表舞台に潜む闇を、三島のレトリックに乗せ、鮮やかに蘇らせたいと思っています。
演劇の価値は「空間の共有」に尽きると考えています。劇場に携わる者たちが正しく考え、より善い日常生活を取り戻すためにも、演劇という媒体を通し「善く生きる」ということをテーマに演劇活動を取り戻していきたいと思っています。
- 【将来のビジョン】
- 「モニュメント」私はこの言葉が大好きです。劇場に行くことができなくなって、初めて劇場の価値を考え始めています。
コロナ禍に於いてオンラインで盆踊りや祭りというものはあまり行われませんでした。盆踊りには必ず櫓や太鼓といった「モニュメント」が必要で、その場所に思想が宿るという考え方です。その空間を共有するからこそ、櫓にも踊る人々にも目に見えないエネルギーの一体感を共有することができます。盆踊りの櫓自体には実用的価値はありませんが、そこに集まる人々は先祖を敬い霊を慰め明日の糧にします。櫓には実用的価値はありませんが、精神のよりどころとして寿がれてきました。リモート墓参りができないように、その場で墓と空間を共有しなければ魂と再会することはできません。
劇場という建築物そのものには実用的効果はありません。しかし、その場所で生まれるエネルギーは祭り同様、出演者や スタッフ、観客の精神や思いや哲学が込められています。コロナ禍で次々劇場が封鎖されている今、空間を共有し哲学を語る場所がどんどん奪われてしまいました。コロナという不条理にも人々を混乱に陥れたくさんの人々が傷ついたこの時代、人間のつながりをもう一度再確認する場所として、ひとびとの心を癒し慰める祠としての劇場の価値を再確認していきたいと思っています。
公演に携わっているメンバー(5)