花柄八景

Mrs.fictions（東京都）

公演に携わっているメンバー：7人

【団体紹介】

轟々と燃え盛るバイクを無表情で眺めながら、ろくでもない人生を振り返る。少しの不注意と偶然が重なれば、大切なものは簡単に失われるんだ。思えばそれの繰り返しだった。
さっきまでいた崖の上から微かにサイレンの音が聞こえてきたのを合図に、相棒に別れを告げ山を下った。無用の長物と化した重たい革ジャンとブーツを軋ませながら藪をかき分け、やっとの思いで国道へ出る。熱と煤で焼けた喉を酒で洗い流したくて、割れたネオン看板に吸い込まれるように飛び込んだのは潰れたディスコの廃墟、そこに偶然まったく同じ理由で居合わせた男達で結成したのがMrs.fictionsだったと思う。違ったらごめんなさい。
俺たちは2007年にチームを結成して『15 Minutes Made』っていうイカしたイベントを何度もやった。だけど2020年の8月に予定していた公演を中止して以降、もう2年近く活動していない。一つの予定も立てなかった。今はそれが自分たちを理解ってもらう一番の自己紹介になるんじゃないかな。そうでもないかな。

【応募公演への意気込み】

公演への意気込みは常にあるよ。今回は再演作品だから、とにかくお客さんに満足してもらえる公演にしたい。
理由があって沈黙した以上は、動き出すのにも理由が要る。俺たちはそういう不器用なタイプだから、再開の狼煙はどうしてもこの『花柄八景』であげたかった。
『花柄八景』は2012年に初演した作品で、落語が滅んだ世界でのとある噺家一門の話なんだ。当時はあり得ないような夢物語として書いたけど、今ならきっと全然受け取り方が変わると思う。それでも当時作品のラストに込めた希望のようなものは今も変わっていないし、もっと言えば自分たちがこの2年間何を思って沈黙していたかの表明にもなるんじゃないかな。
あまり縁のなかったこりっち舞台芸術まつりだけど、今年は運良く時期も合ったし、こんな時期にお祭りをやってくれるってだけでエントリーする価値があるよ。
何より今これを読んでるあなたが観に来てくれるきっかけになったら嬉しい。

【将来のビジョン】

将来のことはわからない。
特に今はどんな言葉も次の瞬間には嘘になるかもしれない世の中だから大きなことは言えない。2年も黙っていれば声も細くなるし足腰も弱くなる。1か0か、マイナスからのスタートだってことも理解してる。
だけど今はとにかく、表現文化の死と再生を描いた本作『花柄八景』を、東京だけじゃなく他の地域にも届けたいと切実に願っているし、グランプリを受賞したら必ず再演を約束するっていうちょっと困ったルールのこりっち舞台芸術まつり2022がその足掛かりになるならとても嬉しい。