各団体の採点
舞台は80歳になる老人・正治(ショウジ)とその義理の息子・真佐彦が2人で暮らす家の居間。壁や家具などのほぼ全てが、コンパネや角材などのおそらく廃材であろう木材でできています。無造作に打ちつけられたような、不器用に組み重ねられたような家具の佇まいがいとおしい。
ごく普通の人々の日常を描く現代口語劇で、役者さんは実年齢に近い役柄を自然体で演じます。いわゆる“静かな演劇”というジャンルに入る作品です。現代日本で「生きる」ということについて、真っ直ぐ目をそらさずに向き合った戯曲でした。登場人物1人1人を愛情いっぱいに見つめる視線も感じました。
舞台の上にいる人たちご自身の優しさ、大らかさが体に染み渡るように伝わってきました。青森の方言が話されているからだけでなく、この空気はこの人たちにしか作り得ないものだと思いました。
作・演出の畑澤聖悟さんが演じるローカル芸人と彼の弟子のカップルは、ちょっと元気が多い目に演技をして、空気をパっと変えるスパイスのような役割を果たしていた気がします。初日だったせいもあるかもしれませんが、少々ぎこちない印象でした。
娘婿とともに二人で暮らすショウジさん役の宮越さんが、自然体の好々爺をを演じていて、とても惹きこまれました。やはり80歳という役の年齢に近いことのリアリティーは、演じることを超えてにじみ出ますね。息子がショウジさんを老人ホームへ預けようとした真意が判明した後の、二人のシーン。泣きながら寿司をつまむ息子と、本当の息子をいつくしむかのように微笑みうなずくショウジさん。今年上半期でもっとも涙腺ダムが崩壊しかけた瞬間でした(なみだ目でしたけど)。さいたまゴールドシアターもそうだけど、プロで長年やってきたベテラン俳優さんとは違う、うまさではない「味」のようなものに触れると、もっともっと年配の方が演劇にかかわる機会が増えてもいいように思いますね。
現実で実感として触れているものが不足(?)しているのは、個人的に悔しいところ。「悔しい」というのとも違いますが。10年後の自分が観たら、どうなのだろうかとか考えてしまいます。 ありのままで舞台に生きるお二人と、その圧倒的な存在感を半分力技も使いながら、演劇として軽やかに魅せようとする周りの演技の対比が印象的。
登場人物全員に愛があり、非常に心温まる作品でした。 ストーリーはみんなに起こりうる、楽しい話ではないのですが、役者の方々のリアリティが感じられる演技や、各人それぞれの優しさが随所に感じられる作品で面白かったです。 また、劇場では観客の方々が団体を応援しているような雰囲気も感じられ、良い時間を過ごさせて頂きました。