ポかリン記憶舎
採点【ポかリン記憶舎】

「わざわざ劇場に行ってまで見なくてもよかったなぁ…」と思う作品も多いのに、カフェ公演!行く側としてはこれはかなりの冒険!必ず開演時間5分前までに到着しないと中に入れないとか…見る位置によって見え方が違うとか…狭いとか…、いろいろな障害はあるが、そういった不便さも公演を成立させている側の気配りで許せてしまった。ありがとうございます。演者が近すぎて気恥ずかしいのはきっとお互い様…!ふんわりと空間ごと楽しむ(味わう)ライブの醍醐味を堪能させていただきました。

 祖師ヶ谷大蔵から徒歩7分ぐらい商店街を進んだところにある、空中庭園のカフェでのお芝居は、客席が20席そこそこの小さな会場での特別な時間でした。私はマチネの回に伺いました。カフェの外のお庭も舞台になりますので、ソワレだと全く違う雰囲気になったのでしょう。

 小さな部屋に恋の喜び、せつなさがいっぱいでした。場所(=カフェ)を愛し慈しむ心が強く伝わってきて、後半は笑いのスパイスもうまく効いていました。
 カフェの中と外の遠近感を使った演出にドキリとさせられ、声と言葉、身体の動きで空気を自在に動かすのはまるで魔法のよう。

 観客が出演者やスタッフと気持ちを合わせて確信犯的に楽しむ種類の、今、ここでしか体験できない演劇空間です。作品の舞台であるカフェと同様、“敷居が高い”ことも合わせて味わうのがオトクな鑑賞方法だと思います。

会場のカフェがほんとに心地よい空間でした。芝居が始まる前は、コーヒーの香りや、静かな音楽が流れるカフェの雰囲気を楽しみつつ待ち、そのままスっと芝居とも、この店の日常ともつかない一幕に誘われました。場所が本物のお店だけに、演技らしい演技をするととたんに浮いてしまうところを、お店の静けさそのままの役者陣の演技がぴたりとはまり、マスター役の人など本職かと思うほど。落ち着きが常態であるべきのカフェだから、当然長い沈黙のシーンもありましたが、立ってるだけで絵になる奥田ワレタさんの姿に、「劇的」とは違う役者の力を見た思いがしました。

階段を上り、一度外に出る。開放感とゲートをくぐるようなドキドキのある、この空にぽつんと浮かぶ空間は、入り口として最高だと思います。 台詞の一つ一つがしっかりと身体に付いていて、その日・その時間を生きている登場人物たちに触れることができました。彼らを通して感じる温度が心地よかったです。 夕方に観てみたかった気もしますが、夜のゆっくりとした時間の中で、小さく劇的に動く彼らのものがたりを堪能しました。

全体的にしっとりした、場の雰囲気を楽しむ作品だったと思います。 本当にその場で風を感じるような空気感を味わえました。 ちょっと照れくさくなるような感覚も良かったです。

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