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関西演劇祭 in Tokyo

関西演劇祭 in Tokyo

関西演劇祭

新宿シアタートップス(東京都)

2022/03/08 (火) ~ 2022/03/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/03/09 (水) 18:00

#オパンポン創造社 / #くによし組 を観た。面白かった。
 オパンポンは関西で活動する劇団で、初見のユニットだが、2017年初演で本祭でもかつて上演したらしい『最後の晩餐』を上演。代表作の一つらしい。惑星が地球に衝突する地球最後の日に、夫が家に帰って来たら、妻がしてみたかったSMの女王様をしていた、というシュールながら、コントなどでよくあるオープニングから、物語はドンドン展開し、相当に深遠な方向に向かい、割と予想できるかな、というエンディングに落ち着く。終演後のティーチインで、その辺を計算して上演するというあたりは見事だと思ったが、オパンポンパンツはやりすぎと思う。尤も、劇団の方針なのでしょうがないが。
 くによし組は当然ながら新作で『眠る女とその周辺について』を上演。眠る病気になった女の子と幼い頃婚約した男が、自分の住むシェアハウスで女の子を引き取り、同居人と一緒に面倒を見るが…、の物語。いつも通りの「異常な」設定で始まり、そういった中で「正常に」暮す人々が「シュール」になる、という、いつも通りのくによし組だった。最近は、社会的に重く感じる人々を描くことが多く、今回もちょっとそんな感じで、笑わせてくれるんだけど、後で考えることが多くある、そんな感じだ。

サンシャイン・ボーイズ

サンシャイン・ボーイズ

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2022/03/03 (木) ~ 2022/03/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/03/11 (金) 14:00

座席1階

数年前からカトケンワールドを拝見させていただいているファンの一人として、事務所創立40周年おめでとうございます。役者人生としては50周年ということで、今作でも背の高いイケメン俳優の息子さんと何度目かの共演。パンフレットの文章ではお孫さんもいるみたいな感じで。政治家と違って役者に世襲は似合わないかもしれないけど、事務所が末永く続くことを。息子さんには新たなカトケンワールド(息子は健一ではないからカトケンではないが)を切り開いてほしい。

さて、今回はニール・サイモンの名作とのことで、さすがに熟練、相方の佐藤B作との呼吸はぴったりだ。コメディー界の名コンビと言われながらも内実は犬猿の仲でちょっとしたことで大喧嘩になるという間柄。そのケンカのネタで笑わせるのが主体なのだが、個人的には「大笑い」というところまでいかなかった。
それはきっと、コンビの二人が結構、年を重ねているということと、加藤健一が演じたウィリーが病に臥せってしまうというリアリティー感がある物語であることがきっと影響している。病の床にある人のトークを笑っていいものなのだろうかという、気を回しすぎなのかも。でも何だか、高齢の二人のギャグを見ていて、心から笑えないというか、笑うのだがどこかブレーキがかかってしまうというか、そんな思いで2時間半の舞台を見た。

かつての演目で、レイ・クーニ―の「Out of Order~イカれてるぜ!~」があった。これは本当に大笑いをした。ニール・サイモンとは笑いの質というか、空気が違うのだろうか。
でも、周囲のお客さんは(高齢の人が圧倒的に多いが)結構声を出して笑っていらっしゃった。思い切り笑えないようなもやもや感があったのは、自分だけなのかもしれない。



『無表情な日常、感情的な毎秒』2022年2月公演

『無表情な日常、感情的な毎秒』2022年2月公演

エンニュイ

STUDIO MATATU(東京都)

2022/02/25 (金) ~ 2022/02/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/02/27 (日) 14:00

店長の葬儀帰りのバイトと元バイト、それにその夜も働いているバイトという知り合い同士5人の深夜の居酒屋での会話。構成は一応起承転結あるいは序破急に分けられないでもないが物語性はほぼ無きに等しくいかにも深夜の居酒屋な会話が続く。
その会話は従来に近いが今までは謂わば「会話の放し飼い」だったものが先述の状況によって「柵で囲われた」感? ゆえにその状況に関するものもあるが、今までに語られたネタもあり、「言葉とは?」などの部分はいかにもエンニュイと言えよう。
また、酔っての大声や深夜ならでは(?)の声量をセーブした話し方、さらには多少の倦怠感などまさしく深夜の居酒屋の雰囲気で、中盤で照明が切り替わって以降の演技エリアはまるでそこだけ異なる時空のよう。演技・演出の賜物だね。
なお、終盤のちょっとした「騒ぎ」で感じたカタルシスに既視感があったが、相米慎二監督「台風クラブ」だろうか???

廻人〜めぐりびと〜

廻人〜めぐりびと〜

sirenproject

アトリエファンファーレ東池袋(東京都)

2022/03/09 (水) ~ 2022/03/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

江戸時代の吉原遊廓を舞台にした人の悲しみと怒りを絢爛に観(魅)せた物語。上演時間は、途中休憩を挟み2時間20分で、前半と後半で劇風が異なって観える。前半は吉原、遊女(花魁)といった場所や人物の描写を中心にしているが、後半は人が宿す業(ごう)のような情念がアクションを交え立体的に立ち上がってくる。冒頭と最後のシーンに人間の縁を思わせる巧みさ。それがタイトルに通じる。
(上演時間2時間20分 途中休憩10分含む)

ネタバレBOX

舞台セットは中央に階段、上部に衣桁に掛けた色打掛、上手下手に格子窓のようなもの。吉原の見世イメージである。段差があるから、花魁などは優雅に上り下りするが、アクションシーンは逆に躍動感を見せることが出来る。天井には丸提灯、客席側壁には役者の名入提灯で風情を演出する。衣装は人物に合わせ、花魁は俎板帯 着物、警護人の軽装、巫女、そして現代人のスーツといった観(魅)せる丁寧さ。

冒頭、人に必要とされず自暴自棄になった仁科穂乃花さんが飛び降り自殺を図るところから始まる。場面は変わり、江戸時代末期の文久年間?の吉原へ。花魁の矢島かえ さんを始め、他の花魁や警護人の人柄なりを多少コミカルに描く。吉原を覆う不吉な出来事を得体の知れない者と警護人の攻防として挿入し興味を惹く。
後半は、脚本・演出担当の亀井美緒さんの因縁・復讐劇のような展開。自身も以前は花魁でもう少しで年季が明ける時、梅毒(リアリティとして台詞のまま)に罹り吉原(見世)を追い出される。いわゆる年季放棄の仕打ちである。相思相愛だった元警護人隊長・わたなべそう さんとも別れる。今、彼は矢島さんと結ばれ、2人の間に子が生まれようとしている。

亀井さん始め、一見 艶やかな吉原の花魁やそこに居る人々ー人が持っているであろう七味唐辛子「恨み・辛み・妬み・嫉み・嫌味・僻み・やっかみ」を点描して、それらの総体として悪霊的な魔物(者)を作り出す。終盤…巫女の除霊+スピード感ある殺陣シーン、優美な群舞が見せ場だろう。堪能した。なお、吉原・遊女・花魁・梅毒といった女性蔑視の問題も内包しているが、公演の観点としては深追いしない。

演技は、花魁を頭に遊女という女性ならではの優雅さ、一方 アクションシーンでのキレのある立ち回りといった違いで際立たせる。特に亀井さんは扇踊と殺陣を融合したような動きで美しい。元恋人的な存在の わたなべ さんとの殺陣シーンは圧巻。
ちなみに、花魁達の名前は卯月・皐月といった旧暦の異称であったが、全員は覚えきれなかった(失礼→よって役名ではなくキャストの名前で記入)。
音響音楽は和楽器を用いたもので、劇中に流れる音源制作&歌は情緒たっぷりで場面にマッチしたもの。
次回公演も楽しみにしております。
ネオンキッズ

ネオンキッズ

OFFICE SHIKA

座・高円寺1(東京都)

2022/03/03 (木) ~ 2022/03/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

タイトルはネオンキッズとなっていますが、歌舞伎町のゴジラの建物の前の広場に集まる「トー横キッズ」と呼ばれる若者たちの生態に迫る社会派、時事的ステージ。ドキュメンタリー的要素も強く感じました。次に歌舞伎町のあのへんに行ったら、風景の見え方が少し変わってるかも。音楽もステキでした。

其ノ街の涯ル

其ノ街の涯ル

中央大学第二演劇研究会

シアター風姿花伝(東京都)

2022/03/10 (木) ~ 2022/03/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 中央大学第二演劇研究会2021年度卒業公演と銘打っての公演。(
追記後送)

ネタバレBOX

舞台美術も懲り登場人物数も三十名を超える大所帯。五感を奪われる街、水没する色付きと色無しの街、月が落ちてくる満たされることの無い街。3つの世界が描かれるが今、日本で生きる若者の観ている日常を露わに見るかのように総てがディストピアだ。

二ツ巴 -FUTATSUDOMOE-

二ツ巴 -FUTATSUDOMOE-

壱劇屋

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2021/12/22 (水) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

いつの日かYoutubeにて無料で「独鬼」をやっていたのはみていて、この劇団の方々を生で見たら絶対他の殺陣みれんくなるわ~、、、と避けてきたのですが、絶対見た方がいいと突き落とされ、満を持して遂にみてきました。
やっぱり殺陣凄かったです。レベチの水神様はもう当たり前のように凄い人として、そんな弓の表現あるんだ~と感心しました。

想路列車

想路列車

FEVER DRAGON NEO

王子小劇場(東京都)

2021/10/13 (水) ~ 2021/10/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

今更ですいません。
塩崎こうせいさんはいいぞ、と言われたのでみました!小劇場といわれる劇場自体初めてでみんな近くてびっくりしました。

BABEL

BABEL

演劇企画 heart more need

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2021/12/01 (水) ~ 2021/12/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

今更ですいません!
想路列車で気になった遠藤さんが出演ということで観てきました。

ネタバレBOX

色々複雑そうで案外単純明快な動機で引き起ったクライマックス、結局殺っちゃうんかい!と笑ってしまいました。が、終演後冷静になって考えてみると
いざ大義名分を振りかざすのはSNS上での一部の卑怯者たちと同じゃ~んと思いました。

松藤さんという方がちょっとだけ気弱そうな男の子として出てくるのですが、別の舞台では凄い暴れん坊だったりイケイケ系だったので大変驚きました。
BABELでは刀も握ったことのないような男の子なのに、、、演技力ってすごい…と思いました。
『脱兎を追う』

『脱兎を追う』

楽園王

d-倉庫(東京都)

2021/12/21 (火) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

今更ですいません!d-倉庫最後の公演ということで観てきました。劇場に入った時から物語が始まっていたので凄い驚きました。

ネタバレBOX

ちょうど、世間的に神田さんの飛び降り自殺で賑わいを見せていた時の作品になります。
画面の中の現実と薄暗い空間の虚構が入り混じって頭がクラクラしました。私ですらクラクラするんだから、役者さんはもっとグラグラしてそうだな、と。
不思議の国のアリスみたいな感じかな!?と思っていた自分をぶん殴りたかったです。
パダラマ・ジュグラマ

パダラマ・ジュグラマ

おぼんろ

Mixalive TOKYO・Theater Mixa(東京都)

2022/02/13 (日) ~ 2022/02/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

2014年の円盤で恋焦がされてしまい、これはこのままで素晴らしいような、またやった方がいいような気持ちでいました。
2021年2月、自分が生きているうちに生で見れて本当によかったと思います。

其ノ街の涯ル

其ノ街の涯ル

中央大学第二演劇研究会

シアター風姿花伝(東京都)

2022/03/10 (木) ~ 2022/03/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

凄く好きなジャンル。世界がいよいよ終わろうとしている最中、三つの世界の人々が何かに手を伸ばしている様を描く。冒頭、街頭に立つ女性が道往く人々に世界がまもなく終わることを告げる。「最後は貴方の愛する人と一緒に過ごして下さい」と。

A 現代の日本。女子大生コウは世の中が嫌になり、世界の涯てを目指し山の奥深くへと。そこには野人やら修験者、人外のモノが息を潜め目を光らせている。
B 三神(さんしん)の支配する中東のような街。三神はただの遊戯として、人間達の五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)を奪って遊んでいる。アケビはこんな世界から脱け出す方法を探る。
C 神による信仰に支配された街。色付き(異能者)と色無し(普通の人)で差別されている。教祖の説く真理は歪で民衆を苦しめる。マチは病気の妹を救う為、反体制異能者グループに加わり、テロ活動を起こしている。

三つの並行世界が重なるように存在している。崖にある底無しの穴が向こうへの通路らしい。

キャスト33名がカーテン・コールで現れるのだが、全員一人ひとり見れば何となく役を把握出来る。これは凄い事でよくも上手に振り分けたものだ。大作映画並みにプロデューサーは有能。

三神は白のカラコンの上に白目を剝き出すなど土方巽テイストたっぷり。
マチの病気の妹はこの御時世にゴホゴホ盛大に咳込み続ける演出が興味深い。
包帯でぐるぐる巻きにされた癩病患者の会話のシーンを投影された字幕で表現。文字が背景に浮かび上がる遣り取りが美しい。
色付きは身体の何処かに幾何学的な印があるなどの工夫がいい。
教祖役は綾野剛っぽくねっとりとして、狂気は松田優作の『蘇える金狼』を思わせる。

これだけの話を全く退屈させない工夫が見事。面白かった。

ネタバレBOX

全く本筋に関係の無いコンビニ店長と女子大生(?)店員のエピソードが凄く良かった。世界の終わりに一世一代の告白をする店長と世界の終わりにそれをぞんざいに跳ね除ける店員。「世界の終わりだからこそそこを貫きたいの」、素晴らしい。こういうキャラこそ物語の主軸向き。

A もうすぐ月が落ちて、世界は滅びる。その事を知った女性アナウンサーは報道管制を破りTVで人々に伝える。「最後は貴方の愛する人と一緒に過ごして下さい」と。人々はそれぞれ思い思いの人のもとへと向かう。コウは全く解り合えなかった父のもとに帰る。
B 三神は遊びに飽きて別の世界へと向かう。
C 洪水が起こり、世界は滅びていく。マチは教会の巨大な鐘を落として教祖を暗殺しようとするが、その刹那Aの世界に飛ばされる。牢獄の奥深く幽閉されている教祖の父は最期の力を振り絞って、教祖と修道女の双子の兄弟姉妹(=もう一人の自分)を呼び寄せる。癩病患者として隔離されていた二人、それぞれ魂の融合を果たすかのように一つになる。

山に隠れ棲むカオナシのような物の怪は世界の終わりにすら誰にも相手にはされない。そんな彼の姿で終幕。

ラスト、三つの世界が重なって同時に終わる絵が欲しいところ。
開演時間を勘違いしてギリギリに到着してしまい、すみませんでした。
薔薇と海賊

薔薇と海賊

アン・ラト(unrato)

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2022/03/04 (金) ~ 2022/03/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

3幕3時間(10分と15分の休憩あり)という長い芝居。とにかく人物設定が(三島由紀夫のいつものことながら)凝っている。高校生時代に行きずりの男に強姦され、その男と結婚して(復讐のために)夫婦生活を拒否している童話作家・阿里子(霧矢大夢)。知恵遅れの30歳の美青年・帝一(多和田任益)は、自分は阿里子の童話のなかのユーカリ少年なのだと信じている。阿里子の夫(須賀貴匤)、その弟(鈴木裕樹)もイケメンで、美男美女がねじが一本も二本も外れたような話を演じる。

三島由紀夫の芝居は実に人工美の世界であって、人間と社会の真実を描こうなどという志向とは真反対であることがよくわかる。セリフもしたがって、普段は言わないような修飾・レトリックにあふれている。

この中で、現実的存在ともいえる額間(大石継太)は、よれよれの背広が本当にみじめったらしくていい。阿里子の娘(一度の強姦で妊娠した)(田村芽美)が、意外とかわいらしく、したたかで、自己主張もあり、この異常な家から出ていく生命力のあるキャラクターでよかった。

ネタバレBOX

その人工美の極めつけは、3幕のファンタジー。ディナーを終えて、さあこれでお別れという段に、老夫婦の幽霊が現れ、阿里子と帝一以外は追っ払ってしまう(この二人以外には老夫婦は見えない)。そして「月の庭」から妖精たちが現れ、お花畑のなかの二人の結婚式を祝う。「夢落ち」というのは、伏線回収放棄のしょうもない手法だが、これはどうなのだろう? とにかくあっけにとられる終わりである。
怖い絵

怖い絵

関西テレビ放送

よみうり大手町ホール(東京都)

2022/03/04 (金) ~ 2022/03/21 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

ベストセラーの西洋絵画エッセーを舞台化する、どんな風に?と思った。無理に物語にしないで、絵画のうんちくを尾上松也(絶品!)が舞台回しとして大いに語る。その潔さがまずいい。そこに、御曹司社長(寺脇康文)の妻の自殺が、実は他殺ではないか、犯人はだれ?というなぞ解きをからめる。

社長が殺したと疑う社長愛人(比嘉愛未=好演)の話を、その弟分(鷹野雄二=よかった)が「画廊レストランオーナーの尾上に持ち込む。尾上が名探偵ポワロよろしく、事件の意外な真実、それぞれの人物の隠れた思いを明らかにしていく。このミステリーも、二転三転(言葉通り)の意外性の連続で、楽しめた。そして、この事件の謎が解けた時、舞台に掲げられていた数々の絵が、実は「怖い絵」だったことが明らかになる…。鈴木おさむの脚本・演出のうまさが光る。

ネタバレBOX

実は、冒頭に別の放火殺人事件の話がある。母親が息子を助けようとして死んだが、父親の「たかし様」が火をつけるところを、生き残った連れ子に見られた、という話だ。その連れ子が鷹野雄二…。と始まるのだが、これはイントロ。本題は上記の事件である。では、最後に冒頭の事件の謎を回収するのだろうと思っていたら、何にも触れないで終わってしまう。気づいてみると、思い切りのいい伏線回収放棄である。多分、7,8割の観客は冒頭の話はすっかり忘れてしまっているのではないか。
放火の話は、落語の枕ではないが、つかみのための捨てネタなのだ。

もう一つ、愛人を妊娠させたのは社長ではない、という「処女懐胎」のような話でびっくりさせるが、では誰なのか?はふれずじまいだった。まさか神の子を流産した? のわけないよね。
サンシャイン・ボーイズ

サンシャイン・ボーイズ

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2022/03/03 (木) ~ 2022/03/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白かったが、レイ・クーニーなど加藤健一得意のシチュエイション・コメディとは大いに違う。元人気コメディアンで今は尾羽打ち枯らしたウィリー(加藤健一)が、かつての相棒アル(佐藤B作)と一夜限りのコンビを組むという話。ところが、この二人、名コンビといわれながら、実は犬猿の仲…。久しぶりに二人が会うと、ホテルでも、テレビスタジオのリハーサルでも、そして病気のベッドの上でも、たわいもないことで言い争いになる。その大人げなさ、意地の張り合いが笑える。なんとなく、加藤も佐藤もおり目正しいコントをやっている。品のある笑いだ。

窮地を脱しようとするあの手この手が、次々裏目に出るようなおかしさではない。
アルがいない場面では、甥のマネージャーや年配の看護師を相手に、言葉でくすぐる笑い。
コントのナース役のグラマーぶりの強調は、一時代前の眼福。テレビのADが加藤健一の息子の加藤義宗だったとは、後で気づいた。

ネタバレBOX

アル「お前はまじめに受け止めすぎるんだよ。ジョークだよ、ジョーク。43年間で一度も楽しんでやったことないだろ。舞台で」
ウィリー「楽しむためならチケットを買うよ」
このせりふで、ああアルはわかってたんだなあと気づかされる。
廻人〜めぐりびと〜

廻人〜めぐりびと〜

sirenproject

アトリエファンファーレ東池袋(東京都)

2022/03/09 (水) ~ 2022/03/13 (日)公演終了

実演鑑賞

おおみせって大店(おおだな)のことかな?
他にも色々ねえ。

良いところも色々。

ネタバレBOX

ちょっと「パラレル・パラダイス」などに似ているところも。
天は蒼く燃えているか

天は蒼く燃えているか

世界劇団

調布市せんがわ劇場(東京都)

2022/03/10 (木) ~ 2022/03/11 (金)公演終了

実演鑑賞

ポエトリーリーディング

横濱短篇ホテル

横濱短篇ホテル

劇団青年座

紀伊國屋ホール(東京都)

2022/03/09 (水) ~ 2022/03/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/03/10 (木) 14:00

座席1階

劇作家マキノノゾミと演出家宮田慶子のコンビを「MMコンビ」と言うのだそうだ。紀伊国屋ホール総支配人だった故金子和一郎氏の言葉とのこと。「MMコンビの芝居は間違いなくおもしろい」とおっしゃっていた、とパンフレットにあった。
自分もこの芝居を観るのは二回目だ。「間違いなく面白い」と当然、事前に分かっていて紀伊国屋ホールに足を運んだ。もう一度、初めて見た時の感動というか「ああ、来てよかった」という気持ちを味わいたい、味わえるのだと確信してみる芝居には、特別な味がある。

物語は港にほど近い横浜の老舗ホテルを舞台に、7つの短編から構成される。もちろん、7話はそれぞれ関連している。時を追って登場人物たちの人生を描いているのであり、ホテルという不特定多数が行きかう場を舞台にしているが7つのストーリーは深くつながりあっている。
また、1970年から2000年代まで、その時々の時代のトピックや風俗なども織り込まれ、ああ、そういう時代だったなと50代以上のお客さんは自分の人生に重ね合わせて楽しむことができる。

この7つの物語が人々の心をつかむのは、理屈では割り切れない人間の思い、行動をある時はオブラートに包みながら、ある時はストレートに描き出しているからだろう。いつの時代も変わらぬ、老舗ホテルという味わいのある場所が醸し出す空気の中で、少なからずの偶然が招く運命のいたずらに感謝しながら、人間交差点と言うべき暖かな物語に仕上がっている。

今や青年座の屋台骨であり、ほかの劇団への客演も多数ある野々村のんの絶妙な演技を筆頭に、この舞台の初演の時にはまだ役者をやっていなかった、今回が初舞台の若手の生きのいい姿。バランスのいい俳優たちも安定感を保って今回の再演に彩りを添えている。だから、2回目の鑑賞である自分にも、初めて見るときと同じようなドキドキ・ワクワクの気持ちがあふれてくる。

前回、☆5つをつけたのは間違っていなかった。今回も減ずるところなし。芝居で幸せな気分になりたい人は、見て絶対に損しない舞台である。

天は蒼く燃えているか

天は蒼く燃えているか

世界劇団

調布市せんがわ劇場(東京都)

2022/03/10 (木) ~ 2022/03/11 (金)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/03/10 (木) 14:00

観応え十分。お薦め。
第10回せんがわ劇場演劇コンクール「オーディエンス賞受賞公演」。

脚本のメッセージ、演出の緻密、演技の強靭、舞台技術の印象 そして舞台美術の奇抜さ、舞台要素のそれぞれが調和し、芸術性を高めている。公演は2020年2月に四都市ツアーをする予定であったが、コロナ禍により全公演が中止になっている。この劇団は、愛媛大学医学部 演劇部を母体に結成されており、代表の本坊由華子さんも現役の医師である。医者の「世界劇団」は なかなか公演を行うことが出来なかった。そんな事情を抱えながらの上演である。しかも東京公演は3回のみ。案内をいただかなかったら、危うく見逃すところであった。

チラシには「世界劇団が全人類に捧げる人間賛歌」とあり、高邁な謳い文句のようであるが、それに見合った内容である。当日パンフに本坊さんは「私は、この世と深く対話したい」「真実の世界を描きたいと願う」とある。人は世の中の出来事や風潮に疑問を持ち、自分で考え行動する自立する力、一方、見えざる手のような神の啓示、その抗いきれない不思議 もっと言えば不条理かもしれない。その混沌とした世界観を舞台芸術として見事に昇華させている。

ちなみに、色々な意味での「火」が表されるが、芥川龍之介の「アグニの神」をモチーフに描かれている。心の奥底に潜む傲慢は、紅蓮の炎で焼き尽くされそうだが、真摯になって見上げれば 蜘蛛の糸 ならぬ希望が蒼く見える、といった印象だ。全体的には抒情豊かな演出。万雷の拍手も肯ける。
(上演時間1時間50分)

ネタバレBOX

招待公演。
舞台美術は、ベット・椅子・本箱・箒・洗濯物・木枝、そして所々破けた布など、雑多な物が宙に吊るされている。それらが物語が進むにつれて少しづつ降りてくる。途中で突然布が幕状に広がり、人影として心象風景を映し出す。また宙にある本箱を傾け入っていた雑誌や書類を上から落とす。タイミングが狂えば役者の頭上に落下する。全ての物が舞台上に下ろされ、吊るしていたワイヤーが舞台上下に張られた形は、何かを操る・・そぅ見えざる手を連想させる。抗えない何かは、人が知らぬ間に少しずつ静かに忍び寄ってくる。そんな光景を緊張感をもって描く。時に突然(不慮)の出来事、自然災害などを、雑誌を落とすといった比喩で表しているようだ。

物語は、東のはずれにある島(暗に日本)での出来事。ある処に今日と明日の狭間に占いをする老婆と軟禁されている娘(タエコ)を巡る話。狭間は生・死をも暗示する。他方、学校で教えることを信じて疑わない青年と何事にも疑問を呈し、自分で考える青年の話。この2つの話が交錯し、人間の本性、社会の欺瞞を暴く。娘と青年たちは同級生。

軟禁されている娘は、視点を変えれば老婆の介護。介護は現実を見つめては出来ない辛いこと。だから別の人格(エレン)になることが必要。この世は一酸化炭素・二酸化炭素=環境汚染され、人の脳は小さくなる。一見 認知症を思わせるが、自立しない果ての姿のよう。後期高齢者という台詞、続けて死ぬに死ねない=無為に生かされているだけの刹那的な話に変容していく。

考えない青年は、先生に教えられたとおり五輪賛成の行進をするが、万歳(バンザイ)の声に交じって微かに反対(ハンタイ)の声が聞こえ、いつの間に賛否が分からなくなる。先生は教師であり医師にもなるが、絶対間違えてはならない、もし間違えれば自分は火だるまになる。自縛するような強迫観念が怖い。

 辛い現実を見続けることは惨い、しかしそこから抜け出すことは出来ない。ならば全てに迎合した方が楽。一方、考えなければ環境汚染の悪化や繁栄の謳い文句に五輪を無条件に歓迎する。五輪の聖火、命の灯、誹謗の炎上、そして祈りの煙。何もかも崩壊し無に帰するようなラストだが…。

照明は炎が燃えさかるような、幾本かの赤い照射、晴天を思わせる青い照射は対照的な場面を演出。波間か水の揺れのような回転照明が妖しく蠢く何かを表す。
音響音楽は、大音量で流し高揚感を煽る一方、不穏・不気味な音で不安感を増す。役者の演技は一種のムーヴメントで、実態がある なしという曖昧な姿。しかし 肢体の動かし方は、幕に映し出された人影が実際の姿態と連動した効果を出すから不思議だ。まさしく、身体と言葉を燃やし、炎の創成期を紡ぎ出した。
衣装はエスニック調で、何となく宗教性を感じてしまう。社会問題を背景に、人間を冷徹に見詰めた幻想怪奇譚イメージ。

卑小と思いつつも、ラストのエピローグ的な場面は微かな希望を提示するために、取って付けたかのような印象を持ってしまった。
次回公演も楽しみにしております。
ナマリの銅像

ナマリの銅像

劇団身体ゲンゴロウ

ひつじ座(東京都)

2022/03/09 (水) ~ 2022/03/13 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2022/03/10 (木) 14:00

最前列で観させてもらいました。
有難う。

凄い迫力が有りました。
チラシを読んで、天草四郎がお百姓さんだったのではという発想がとても良いなぁと思いました。
実際に面白かったです。
ひつじ座にはピッタリのお芝居だと思いました。
皆さんも楽しめますよ。きっと、。

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