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ドクターズジレンマ

ドクターズジレンマ

せんがわ劇場

調布市せんがわ劇場(東京都)

2024/10/18 (金) ~ 2024/10/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ジレンマとはどちらも選択肢を選べない板挟みの状態のこと。今作では結核の名医(佐藤誓氏)が邪悪な天才芸術家の夫(石川湖太朗氏)を救うよう美しい妻(大井川皐月さん)に懇願される状況。この心美しい女性の頼みを聞いてやりたいが、夫はクズ中のクズ、死なせた方が良い。でも奴の描く絵は天才的、彼の絵に夢中になってしまう自分がいる。

客席三面でステージを囲む。役者は最強の布陣。これだけの本物をよくキャスティングできたな、と政治的手腕に感心。ここまで名優集めに集めたら凝視する以外に手はない。凄いレヴェルでの対決。
石川湖太朗氏はやるじゃねえか。「芸術に現実生活以上の価値はあるのか?」「いやあるんだよ、そうでなければ人間の存在に意味などない!」
昔、今村昌平の助監に付いていた人が言っていた。「あの人は映画製作以上に価値があるものはこの世にないと本気で信じている。良い映画を作る為にお前等が犠牲になるのは当然なことだと。」常軌を逸したエピソードの羅列にゾッとした。キチガイじゃん。でもそれに興奮する自分もいた。
今作がファム・ファタール、大井川皐月さんの代表作になるだろう。(表情が時折、菅野美穂に見えた)。

個人的MVPは山口雅義氏。場内を爆笑の渦に叩き込む。
是非観に行って頂きたい。普通じゃこのランクの役者は揃わない。

ネタバレBOX

1796年、エドワード・ジェンナーが牛痘(牛の天然痘)から膿を精製して作った種痘を人が接種すると天然痘に罹らないことを発見。これが世界初のワクチンとなった。少量の毒を自ら体内に保持することで強き毒から身を守るという新しい発想。

1906年の今作発表の段階では結核はまだ完全に治療が可能な病気ではなかった。(1943年ストレプトマイシンの発見まで待たなくてはならない)。主人公が画期的な治療法を発明したとするフィクションである。

佐藤誓氏=ワクチンを免疫力が上がるサイクルに投与すると回復に至り、下がるサイクルに投与すると死に至ることを研究。各個人の免疫のサイクルを知らないとそれは毒にも薬にも成りうる。
髙山春夫氏=もう引退した身であるが、誰の医学的発見も既に過去に誰かが見付けたものの模倣に過ぎないと冷ややか。
清水明彦氏=貪食(どんしょく)細胞こそが病原体を食い尽くしてくれる医療の根本だと信じている。全ての医療は貪食細胞の援護であると。
山口雅義氏=この世の全ての病気は敗血症であると固く信じている。病原菌が溜まった核嚢(かくのう)?を手術で切除すれば皆が健康になると。
※口蓋垂(のどちんこ)を除去する手術(全く何の意味もない)で大金を儲けた当時の医師に対する皮肉らしい。
内田龍磨氏=ユダヤ人医師というだけで意味ありげ。欧州のユダヤ人という十字架は日本人には想像もつかないものなのだろう。
佐藤滋氏=『名もなく貧しく美しく』を地で行くプロレタリアート医師。
石川湖太朗氏=三四郎の相田をナルシシスティックに酔わせて大倉忠義ライクにした感じ。往年の石田純一風味の着こなしが判り易い。第二幕の爆発は彼によるもの。人間のクズがその生き様に揺るぎがない為に、逆に周りの連中の理性が揺らいでいく。メタ・ギャグを観客に言うシーンは沸いた。(元々戯曲にある台詞らしい)。

バーナード・ショーの今作に込めた皮肉は医療業界に対しての非難だそうだ。医師達の虚栄心と高額な報酬を払える患者だけを求める傲慢な私利私欲。医師としての崇高な社会的使命、啓蒙思想を見失ってしまった現実。
穏やかな社会主義を標榜するフェビアン協会にて政治活動、大学設立を為した彼はこの社会の最大の問題は構造的な貧富の格差にあると主張した。

最後まで何の話だか分からない。戯曲の意図も伝わり辛く、演出の意図もどうもハッキリしない。そこが狙いなのかも知れないが、「芸術も等しく糞だ!」で良かったんじゃないか。

※呼び鈴が鳴って来客が入って来る通路が毎回違うというギャグは面白かった。第二幕のアトリエの舞台美術は美しかった。
セツアンの善人

セツアンの善人

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2024/10/16 (水) ~ 2024/11/04 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

この演劇は主役で決まると言っても過言ではないと思います。
主役は一人二役で終始舞台に立ち、歌う。
その主役、葵わかなさんの演技が素晴らしいので、この舞台は
素晴らしものとなっています。

世田谷パブリックセンターは奥行きがあり、演出家冥利につきる劇場だと思います。
前回、倉持裕さん演出の「お勢断行」を観てしまったら、今回の演出はもう少しな
印象です。

ニッポン狂騒時代~令和JAPANはビックリギョーテン有頂天~

ニッポン狂騒時代~令和JAPANはビックリギョーテン有頂天~

劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)

サンシャイン劇場(東京都)

2024/10/17 (木) ~ 2024/10/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/10/21 (月) 13:00

座席1階

スーパーエキセントリックシアターは45周年。カーテンコールのいつものトークで、三宅裕司は50周年まで頑張りたいと宣言した。小倉久寛も70歳だ。ぜひ、頑張ってほしい。

今作は、学生運動とロカビリーブームの時代にタイムスリップする物語。自分から見ると一つ上の世代の話だが、子ども心にもあの激しい安保闘争は記憶に残る出来事だった。客席は比較的高齢者が多かったのですっと理解は進んだと思うが、20代~Z世代などはちょっと感覚がつかみにくかっただろう。ヒロインの女の子は田舎から集団就職で出てくる設定で、そもそも集団就職というワードが分からない。仕方のないことだとは思うが。

今作も踊りあり歌唱ありのSETらしい舞台だったが、これまでより三宅と小倉の掛け合いが少ないような気がした。SETの若手に劇団を引き継いでいくための助走でもあり、70代のメーンの二人の負担を減らしているということでもあるだろう。心なしか、三宅のトークにも切れがないように感じたのは、自分の三宅へのノスタルジーであるかもしれない。

SETが50周年に向けてどんな舞台をつくっていくのか楽しみだ。応援を続けたい。

Nel nome del PADRE パードレ

Nel nome del PADRE パードレ

サカバンバスピス

APOCシアター(東京都)

2024/10/17 (木) ~ 2024/10/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

内容は説明通りで
舞台を中央として
客席を対面式にした
二方向配置でした

緊張感のある
何となくヒリついた感じの
1時間45分の作品でした

ネタバレBOX

何となく部屋のある建物から
出られないらしい男女二人が
会話を重ねてゆく話

内容がシリアス サスペンス風なので
プロローグは主役と別な男女が
舞台の部屋のセットをコメディ風
少し加味して整えてく演出してました

話をしたがる男と
話はしたくないという女が
段々と互いの過去や現状を
語り明かしてゆくスタイル

男が女の手術の内容を
明かして人形で再現するのは
なかなか怖い感じしましたわ

結局は明確な情報開示は無く
多分らしいなぁと
大まかな概要を提示する感じでした

舞台で表現したかったのは
物凄い緊張感だったのかなぁと
それは大成功だったなぁ

この男女二人の正体は
主宰のブログに明記してあるのよ
見て納得したデス
one〜やがてひとつになる物語〜

one〜やがてひとつになる物語〜

松本プロデュース

ステージカフェ下北沢亭(東京都)

2024/10/18 (金) ~ 2024/10/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

4人の演者様と日替わりゲスト様が
一人芝居で繋ぐ
リーガルサスペンスの
それぞれのドラマが
終盤ガッツリ集結し
熱演も相まって小劇場ならではの
見応えある作品でありました。

音楽朗読劇『パレード』

音楽朗読劇『パレード』

E-Stage Topia

上野ストアハウス(東京都)

2024/10/16 (水) ~ 2024/10/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

末永みゆ観たさに伺いました。統一された白シャツが新鮮!若手役者人の実力試しのような劇だったかと。やっぱり、基礎の発音、活舌が悪いと何言ってるのかわからなくなる・・・特に男優人。劇の間に入るロック調の音楽は結構騒々しくて耳障り。ラブレターズや頭の中の消しゴム、声優の朗読を見慣れていると、前述の粗削り感や迫力は見所がある。
再演かと聞きましたが、起承転結きっちりさせて、せめて1時間半はやりましょう。きょうびのK-POPかと思いました。劇場前も嫌がらせのような工事中。通りのお出迎えの方に感謝感謝。上野ストアハウスは本にアクセス悪。王子小劇場とか中野ザ・ポケットあたりのほうが良かったかも。

ネタバレBOX

途中間延びしてて飛んでしまったけれど、ラストの彼女の死は、これまでに見たことのない衝撃的なラストだった。こんなカワイイ末永みゆ、殺すなや!といった感じ。
アンティゴネアノニマス‐サブスタンス/浄化する帝国

アンティゴネアノニマス‐サブスタンス/浄化する帝国

お布団

アトリエ春風舎(東京都)

2024/10/04 (金) ~ 2024/10/14 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

冒頭、登場した姉妹が「これまでのあらすじ」としてギリシア悲劇のオイディプス関連のストーリーを語ってから始まるが、いざ始まるとそこは死体をゾンビ化する技術が確立された3000年後の世界。
そうして語られるのはギリシア悲劇ともブレヒトの戯曲とも異なり、2017年の初演(未見だがCoRich舞台!の公演情報を見た)とも異なる(初演版のアイテムや元ネタの基本設定は踏襲)「思想劇(?)」。
前半では死生観というか、生と死に関する哲学的なものを感じたが、後半では「戦争を起こすもの/戦争を持続させるもの」に言及してあちこちで戦火が起きているイマだけにズシリとした重みを感じる。
あれこれしんどかった。

Nel nome del PADRE パードレ

Nel nome del PADRE パードレ

サカバンバスピス

APOCシアター(東京都)

2024/10/17 (木) ~ 2024/10/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

何とも臨場感のある男女2人の会話劇。ほぼ情報なしでの観劇でしたが、途中であの有名な話をベースにしていると気付かされました。廃人にされた人間の哀しみ。やるせないですね。

一寸先が闇だとしても

一寸先が闇だとしても

人畜無蓋

ART THEATER 上野小劇場(東京都)

2024/10/18 (金) ~ 2024/10/20 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

Nel nome del PADRE パードレ

Nel nome del PADRE パードレ

サカバンバスピス

APOCシアター(東京都)

2024/10/17 (木) ~ 2024/10/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

濃密な会話によって不思議な世界観が…。
物語は、ここがどこで どのような目的をもって、どうしてこの男女2人なのか といった謎、その世界がぼんやりとしており 捉えることが難しいところが魅力。多くの不明や不安が逆に観客の関心を刺激し、それを圧倒的な演技力で牽引していく。

父親から見捨てられた子供、しかし それでも父親を慕い敬うような愛憎を交々に語らせ、家父長的な行為への反発や抵抗、その在り方を問うているようである。少しネタバレするが、黒電話が時々鳴り 誰か異空間・異次元の第三者と会話するような。これがヒントのような、そして不条理(世界観)に通じるような気がする。
当日パンフに、この作品には、ある”秘密”があり記載のQRコード等で検索とある。この秘密を見ることなく、この感想を記しているが…。少し考えてから拝見する。
(上演時間1時間45分 休憩なし) 追記予定

現代韓国演劇2作品上演「最後の面会」「少年Bが住む家」

現代韓国演劇2作品上演「最後の面会」「少年Bが住む家」

名取事務所

小劇場B1(東京都)

2024/10/04 (金) ~ 2024/10/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「少年Bが住む家」。
座高円寺での韓国現代戯曲リーディングでの上演は2019年、まだ5年?という感覚だが(コロナが作った時間的空隙は大きい)、その実演を名取事務所がやった初演(2020年)を見逃しており、今回の再演でどうにか観劇に漕ぎつけたが、圧巻。
行間が凄い。脚本の導く所大ではあろうが、何処までも深く刺さって来る舞台のベースとなったに違いない初演の陣営を後で確認すると、出演者の一部(母役・鬼頭典子と姉役・森川由樹)以外は役者が変わり、しかも演出も異なっていた。
重苦しい物語の展開であるにも関わらず見入ってしまうのは、人(びと)が生きる瞬間を為す人の感情の襞、もどかしいながらの愛らしさ、殺伐の中の微かな潤いが、舞台に刻印され、観る者を満たすゆえだ。
ふと今思い出したのが聖書にある五つのパンと二匹の魚が数千人を満たしたという逸話。
芝居のテーマを思いめぐらすにも聖書が過ぎる。
イエスの逸話や喩え話でしばしば言及される「罪人(つみびと)」の概念が、年々リアルに像を結んで来るのだが、イエスの論的・政敵である律法学者と罪びとの関係の構図は人類普遍の業について考えさせられる。
律法学者自らはそれをひたすら守り続けている事をもって身分を保障されている「律法」が、それを厳密に守る事の出来ない庶民との間の境界を作り出している。
例えばローマ支配下の(属国的な身分の)イスラエルでは徴税人は罪びととされる。だがイエスは彼らを食事の場に招き入れる。また姦淫の罪を犯した女が石撃ちの刑に処せられようとした時イエスは「一度も罪を犯した事のない者だけが彼女に石を投げる事ができる」とし、人々を帰らせる。
そこで問題とされているのは彼らが人を裁く根拠とするルール(律法)が果たして適切なのか、であり、神が統べる国の本当のルールと全く相容れないルールを破ったか破らないかをもって人を抑圧し、支配し、マウントを取る馬鹿らしさである。

さしずめ、年始に起きた能登大地震に「道路事情に鑑み現地入りは控えるべし」と官房長官が発信したが、道路事情によって幾らでも変容し得る過渡的なルールとも言えないルールを「破った」として一人の国会議員の現地入りがバッシングの対象となった。
これを思い出せば、「ルール違反」と称して人を裁く事の本質が分かる。
能登の災害を最優先で考えているのではない、「悪」にカテゴライズして叩く事の快楽、安心、保身と、災害に積極的な支援を為さない自らの正当化。最も醜い人間の姿を拝んだ今年の年頭であった。
犯罪報道に触れて無為に人を殺した者への怒りが湧く。自然な感情だ。だが一方でそうした「怒りの対象」を欲している自分がいないかどうか、自分が良き社会を「本心から願っている」のかどうか、常に自問すべき一つのテーマだと思う。

さて本作はそうした日本社会へのもどかしさを抱える自分に、「人を裁く」偽善と訣別して違う道を見出して行く人たちの物語を見せてくれ、しこたま溜飲を下げさせてくれた芝居であった。深い感動へと導くのは彼ら(加害者として針の筵を歩くように生きる)が、心ない他者に一矢報いる事によってでなく、乗り越えて行く姿を描いているからに他ならないが、ハッピーエンドがご都合主義とならない稀有な舞台である。

ソーセージ

ソーセージ

クオーレ

博品館劇場(東京都)

2024/10/10 (木) ~ 2024/10/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/10/16 (水) 14:00

2組のカワイイそっくりさんをよくぞ見つけたと思います。ベテラン勢におんぶにだっこだったけど。

Nel nome del PADRE パードレ

Nel nome del PADRE パードレ

サカバンバスピス

APOCシアター(東京都)

2024/10/17 (木) ~ 2024/10/27 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

一寸先が闇だとしても

一寸先が闇だとしても

人畜無蓋

ART THEATER 上野小劇場(東京都)

2024/10/18 (金) ~ 2024/10/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

面白かったです。
笑いとシリアスな部分があり、その台詞の中にはリアル感もありました。
暗転部分が多く、その際に、ストーリーが途切れてしまう感がありましたが、一生懸命に作られた旗揚げ公演だと思いました。

ロミオとヂュリエット

ロミオとヂュリエット

東京あたふた

千本桜ホール(東京都)

2024/10/18 (金) ~ 2024/10/20 (日)公演終了

実演鑑賞

面白かったです。

三人吉三廓初買

三人吉三廓初買

木ノ下歌舞伎

兵庫県立芸術文化センター 中ホール(兵庫県)

2024/10/19 (土) ~ 2024/10/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

キノカブキ、5時間。大きなホールで、また若き役者たちの熱演でまさに疾風怒濤の熱き力がずぶずぶ体に入り込む体験をする。

歌舞伎が苦手な僕でも十分面白かった。歌舞伎だから5時間は仕方がない。でも当初大丈夫かなあと疑問符がいっぱい。

演劇では5時間は僕の最高記録だ。それが、途中休憩が2回あるからこれがいかにも歌舞伎風で、内容も娯楽いっぱいで難しくなく、それなりにストーリーも通俗的と言われればそうだが、なかなか人間考察的に深いものがある。

いやあ、これはすごい演劇でした。観客の5時間もそうだが、役者たちのセリフの難しい言い回しも全然自然で、よく練習されてたなあと感心。

終わってからの5,6回続く拍手喝采、なんと全席割れんばかりのスタンディングオベイション、すごい迫力でした。

ガード下のオイディプス

ガード下のオイディプス

フライングシアター自由劇場

すみだパークシアター倉(東京都)

2024/10/18 (金) ~ 2024/10/28 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

現代のアングラ劇って言っていいのかな。ちょっとトリッキーですが、すごくポップで惹きつけられました。

小夏の青春

小夏の青春

きむら劇場

高円寺K'sスタジオ【本館】(東京都)

2024/10/18 (金) ~ 2024/10/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

初めて観る演目、面白い。ご案内いただいた公演。
当日パンフに高円寺K'sスタジオオーナーの日下諭 氏が、つかこうへいが木村夏子さんへ書き下ろした作品で、観たことがある人がこの世に数百人しかいない文字通り幻の作品である旨 記している。
「蒲田行進曲」を小夏の観点から描いた青春物語。その小夏を木村夏子さんが一人芝居で熱演する。勿論 蒲田行進曲を芝居や それをもとにした映画鑑賞または小説を読んでいれば分かり易いが、この公演だけ観ても その面白さは十分に堪能出来る。当日パンフに、木村さんは つかこうへい劇団で学び 15年ぶりの再演とある。その長い空白の期間を埋めるかのような情熱的で心情溢れる舞台だ。

少しネタバレするが、冒頭 スクリーンで映画に関わる物語であることを表す。そして小夏が出生の秘密、母はテレサ・テン (中華圏での名前は 鄧麗君 〈デン・リージュン〉)だと明かすところから始まる。物語は、映画スターの銀ちゃん、銀ちゃんのためなら命も惜しくない大部屋のヤス、その2人の間で揺れる小夏の切ない愛が描かれている。公演の見所は 演技力。何度か衣裳替えのため 舞台上には誰もいなくなるが、そんな不在を感じさせないほどの高揚感と余韻を漂わせている。それを支える音響・音楽や色彩豊か・諧調する照明技術が巧い。それを日下 氏が担っている。
(上演時間65分) 

ネタバレBOX

会場入り口で 木村夏子さんが着物姿でお出迎え。舞台は素舞台で後景がスクリーン。冒頭 映画タイトル「蒲田行進曲」が映され、♬虹の都 光の港 キネマの天地♬の音楽が流れる。また何か所かでナレーションを日下氏が、そしてラスト暗転後 「カーット」という台詞が心地良く響く。

物語は、人気俳優の倉岡銀四郎と新人女優の小夏が出会い、破天荒な彼に惹かれていく姿、彼を慕う大部屋俳優ヤスの奇妙な友情、2人の間で揺れ動く女優 小夏の姿を描く。勿論一人芝居であるから、銀ちゃんの我儘や女遊びなどは小夏の心情として語り、ヤスは相手を詰るといった一人会話で情景を表す。
「新選組」の撮影真っただ中の京都撮影所。最大の見せ場である「池田屋の階段落ち」が、危険であることを理由に中止になろうとしていた。そんな中、小夏の妊娠を知った銀ちゃんは、スキャンダルを避けるため ヤスに彼女を押し付ける。銀ちゃんを慕うヤスは、小夏と結婚し自分の子として育てることを誓うが…。

小夏が銀ちゃんやヤスの人物像を立ち上げることによって、逆に小夏の心情や心根が映し出される。その相対する人物を通して小夏という女優、そして1人の女性が鮮明になる。見所は、演技力によって 小夏が<愛>もしくは<情>といった目に見えないコトに目覚めていく過程が切々と描かれているところ。小夏の心情・心境の変化といった情念にも似たような感情が迸る。驚いたことに、時々 「飛龍伝」の神林美智子や「売春捜査官」の木村伝兵衛といった、別作品の女性の影がチラつく そんな錯覚に陥る。やっぱり つか節(台詞回し)がそう思わせるのだろうか。

銀ちゃんとの関りは、着物からショート丈タンクトップというような肌が露わな薄着へ、そして撓るような姿態が艶めかしい。ヤスに対しては危険なスタントに対する忠告をしつつ、それを強く止めない。銀ちゃんを思う気持、一方 ヤスはこんなにも危険な仕事をしているのに 小夏がまだ銀ちゃんを慕っている、その心の内の苦しさ故の妬みや荒み。しかし そんなヤスに対して小夏は普段着。そこには本来の 着飾らない素直な小夏が居るよう。つかこうへい が、最後の付き人兼運転手だった木村夏子さんのために…それに応えるかのような気迫ある芝居。1人で主役3人の微妙な心持と奇妙な関係を見事に表現した好公演。

少し気になったのが、始めのうち 声が掠れて聞き取り難いところがあり惜しい。
次回公演も楽しみにしております。
まだここ通ってない

まだここ通ってない

KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2024/10/18 (金) ~ 2024/10/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

公共劇場らしい有意義な試みである。
演劇は、そのアートの原型として他の領域との交流がさけられないものであるが、このイベントのように、科学と身体表現(ここではダンス)の交流の場を、考察し、実施してみたのはなじめてのことではないか。確かに「まだここ通っていない」領域である。
科学の方では、「AIなどの人工意思の表現」、演劇の方からは、「言語(戯曲)に束縛されてきた表現からの脱皮。この一つの成果として最近のダンス」。この二つのものを交流させてみる。
科学者としては東大の物理学の教授・池上高志の発想、演劇側ではコンテンポラリーで実績のある山田うん。もちろん、先端領域の人々の考えは一般観客の一人である私などには雲をつかむような話で、まずとっかかりがまるでない。かなり客は入っていて、ほぼ客席は埋まって、130名ほどだが、関係者を除いて、このイベントの意図を開演前に把握していた人は多くないし、私の解釈にも誤解があるに違いない。
そこをこのイベントはかなりうまくやった。そこは五つ星である。
まず、開演前に池上高志教授が出てきて、黒板を前に解説をやる。5分ほど、心得ておいてもらいたいことが三つある、とか言って内容を紹介する。ドローンを使っているから、劇場内電波が弱いので、頭上に落ちるかもしれないが心配ない、などというのは誰にでもわかるが、AIの基礎的な科学が、どう装置に使ってあるか、という初歩的ブリーフィングもあるが、ここでもう、私などはわからない。わかるのは、舞台に二十株ほど、ススキがたっているが、これは仙石原の薄の原で薄が風になびく動きが、どう制御されるのか、やってみたものだ、という解説。ふーん、と聞いてはみるもの、よくわからない。
舞台の後方には上手にドローンなどを操作する技術者。下手に電子楽器、演奏者一人と池上教授。あとでわかったが、この楽器の演奏者がなんと!高橋悠治ではないか。パンフレットを見てびっくり、専門家は知っていただろうが、素人は帰国していたとも知らなかった。まったく昔と変わらぬ前衛音楽の演奏である。
 始まった舞台は、コンテンポラリーダンスで、身体がいい男女五人のよく訓練されているダンサーたちと、最初に床に置かれた三十もあろうかというドローンの光体との共演になる。前説通り、いくつかのドローンは床に落ちる。
ストーリーもあるのだろうがそこはよくわからない。後半になると、薄の原もなるほど、ということにはなるが、言葉で説明されるわけではない。結局、制御されていたと見えた薄の原は暴風の後のように乱雑に荒らされて終わる。
 このイベントのいいところはここから40分である。
演技終了後ただちにトークになる。芸術監督の長塚圭史が聞き手になって、池上高志と、簡単に言えば、解説が始まる。ここで、長塚のきき方が実にうまい。よくこういう機会だと、芸術監督は創作側に回って、観客を忘れてしまっていい格好をするだけになるものだが、観客が疑問に思うことを、巧みに掬い上げてひとつづつ、わかりやすい言葉にしていく。
現代のアートのテーマは人間の記憶にあるのだが、それを演劇にどうすれば引き出せるか、、あるいは表現できるか、その時現在の科学の力をどのように借りる可能性があるのか、人間の記憶そのものの科学的、時間的構造、など素人にもわかりやすく解説されていく。
 二時間足らずのイベントではよく呑み込めないが、かつてのように、ダンスの身振りの解説を聞いたり、科学との共存と称して、ドローン人形と共演したりした子供じみた理解とは全く違う演劇と科学への現状認識を新たにできた。
 阿佐スパの初期、やんちゃ坊主だった長塚もよく周囲の見える芸術監督が務まるようになったと感慨無量だが、本人も、そういえば、このテーマにつながる舞台「老いと建築」(2021)をやったことがあるし、今年はKERAも別の形で「江戸時代の思い出」という舞台を作っている。時宜を得た「記憶」をテーマに、公共劇場らしい取り組みが評価されるところだ。



パイライフ

パイライフ

オリゴ党

ウイングフィールド(大阪府)

2024/10/19 (土) ~ 2024/10/20 (日)公演終了

満足度★★★★

イギリス ロンドンのパブに集まる日本人コミュニティで巻き起こるイベント?話 作家、演劇留学生、雑誌編集者、パブのオーナー、スパイ等々が集まりロンドンに溶け込めず…話の最後にはパイライフが顔を表しながら、不気味とも思えるこのコミュニティが… 拠り所となるもの?を持つことは大切だが、依存し過ぎるのも…ということなんだろうか パイライフはそこに潜む空想の生物なのかも❗

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