コウセイ
ラビット番長
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2023/02/23 (木) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
昭和24年(1949年)2月、岡山県で発覚した『岡田更生館事件』を舞台化。この事件の面白さは江戸川乱歩的で何故当時映画化されなかったのか不思議。これをやるだけでも興味が湧くが、更に将棋界のスーパースター・升田幸三を絡めるアイディアに痺れた。複雑だが逆に解り易い構成、パッパッパッパッと次々にシーンが展開する演出は唸らせる。松本清張のサスペンスっぽい戦後まもなくのおどろおどろしさ。
独りヒールとして立ちはだかる野崎保氏がMVP。“城西の虎”添野義二や三島由紀夫を思わせる武道家顔。「こんな奴がいる施設に収容されたら地獄だろうな」とつくづく思わせてくれる。
更生館からの決死の脱走に成功した宇田川佳寿記氏はチャンス大城を思わせる愛嬌。やたらご飯への強い執着、「食べます!」が笑わせる。
井保三兎氏演ずる人間愛に溢れた将棋指しはいつもながら優しい。「こんなふうに生きていけたなら」と誰もが胸の何処かで憧れる。
奥さん役の江崎香澄さんのあったかさ、生活感のリアリティー。
隣家の娘役の鈴木彩愛さんの可愛らしさ。
能勢綺梨花さんはエロエロ、観客はメロメロ。
地元の老婆役や仲間を売って自分だけ助かろうと考える密告者役など物語の要を担う松沢英明氏は裏MVP 。声色一つで観客をゾッとさせてみせた。
実話の虚構化の方法論としてずば抜けている。そして夜に浮かぶのは余りにも美しい月。どの時代であろうと人は皆輝く月の美しさに心を奪われる。自分がどんな境遇になろうと変わらぬ月の美しさ。月の光に照らされていつも何処か遠くの誰かを想うのか。
ネタバレBOX
実際に脱走した北川冬一郎は施設と岡山県の支配下の公的機関はグルだと睨んで、徒歩で毎日新聞大阪本社まで逃げる。「国も警察も信用出来ない、せめてマスコミはこの真実を世間に報道してくれ。」と。毎日新聞の記者、大森実と小西健吉は証拠を得る為、潜入取材に踏み切る。
結果、事件は国会で審議されるまでの話題に。更生館は廃止、館長は投獄。
クライマックスの辺りから、何かスッキリしない展開が続く。更生館の裏にGHQがいるような陰謀論。この辺はモヤモヤするだけ。作り手側の混乱。後日談の書籍の発売中止も判り辛い。
升田幸三と隣家の息子のエピソード。敗けた将棋に膝を付く息子に「お前は実は勝っていた。気付いてさえいれば」と升田は告げる。息子はその詳細を尋ねるが升田は教えない。「戦争から無事に帰って来るまでに答を見付けろ」と。
召集された戦地で息子はその答を到頭見付ける。『2三と』。
『コウセイ』に隠されたダブルミーニング。『更生』と『恒星』なのか?ただ月は恒星(太陽)ではなく、衛星。いろいろと考えたがしっくり来ない。升田幸三は月にこだわった印象。まさしく『月下の棋士』。
※当日パンフに書かれていたのは多分Colaboの件。(仁藤夢乃さんは仁藤萌乃さん〈元AKB48〉の姉である)。
『好晴』、『厚情』?
コルチカムの花
刹那のバカンス
シアターOM(大阪府)
2023/02/25 (土) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
満足度★★★
最近のエンタメの傾向として、LGBTをよく取り上げている
時代の流れだと思うし、考え方も理解はできるが、自分自身では受け入れられないところ
自由気ままに生きていくことは否定しないけど、なるべく周りに迷惑をかけることは…
今までの当たり前が、崩れる時代
光と虫
わたしたちのヒカリPROJECT
未来ワークスタジオ(大阪府)
2023/02/24 (金) ~ 2023/02/25 (土)公演終了
満足度★★★★★
コロナを題材に、隔離された各々の人々の現在や過程を振り返り進んでいく
戦争、国際恋愛、転職、イベントの中止、LGBT、夢等々悩みはつきない
でもそれが生きている実感であり、生きていく意味を持つファクターでもあることを、理解させてくれる
とても良かった‼️
コウセイ
ラビット番長
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2023/02/23 (木) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
㊗グリーンフェスタ2023 BASE THEATER賞受賞
今まで観てきた介護・将棋・野球とは一線を画すノワール作品(敢えて言えば「白魔来る」系か)。
戦後あった実話、それを実在したと思われる棋士と絡め、上手く物語化している。主宰の井保三兎氏が演じた増山棋士、その<増山>を<升田>に置き換えると、将棋界で有名な棋士が連想できる(エピソードは知らなかった)が…。勿論、実話〈岡山県〉と人物〈広島県〉とは地理的に近いが、接点があったか否かは定かではない。それだけに興味を惹くところ。
内容は虚実綯交ぜに紡いでおり、脚本は重厚、演出は抒情、演技は重軽妙といった異なった観せ方をする。それでも全体的にはバランス良く仕上がっている。
特に演出…戦場で見た月、帰還して見た月、そして〈コウセイ〉内から見た月、同じ月だが見る場所や心持ちによって印象が異なる…文学的な情景描写のよう。
少し気になるのは、この舞台化を通して伝えたいことは何か?戦後間もない頃の施設、それを時間・地続きである現代に問うこととは…。
(上演時間1時間45分 途中休憩なし)2023.4.14追記
ネタバレBOX
舞台美術は、いつもと同じ二層、上部に格子窓がある別空間<多くは増山家>、下段 上手は机・椅子、下手は横石のようで、更生施設の寝床にもなる。
この公演は、今までのラビット番長作品に較べ、舞台技術が印象的であった。窓は明り取りのような照明効果、その諧調が時や状況を表す。勿論、劇中 台詞にある月明かりをもって抒情的な場面を描き出す。また音響は場面転換時に水滴が落ちる音、それが不安・不穏を感じさせる。今までのテーマ…介護<高齢化>・将棋<生き甲斐>・野球<反戦>にしてもヒューマンドラマとしての描き、それだけに本作は新鮮な切り口だった。ただ、戦後間もない事件を通して、今 何を伝えたかったのか?
物語はタイトル「コウセイ」から、岡田更生館事件であることは容易に検索できる。そこに将棋界では有名な増山=升田幸三棋士(井保三兎サン)を登場させ、舞台という虚構性の中に2つの事件を<間接的に>結ぶ。1つ目は先の事件、2つ目はGHQによる将棋禁止という動き。どちらも戦後という混乱期に起きたこと。
翻って、今の日本に同じようなことが起きているのか。確かにハンセン病強制隔離、介護老人保健施設での虐待 保育園(保育士)の虐め、更には入管施設の問題等々あるだろう。また新型コロナウイルスに感染した人やその家族への誹謗中傷なども問題になった。公演では直接的な訴えではないが、理不尽なことはまだまだ続いていると、そんなことを連想させる。
しかし、一概に国政批判なのかと言えば、少し違うような。法・制度なのか、運営・運用なのか、人の問題なのか、一方 取材のために潜入することへの慎重さ、躊躇いといったマスコミの姿勢…色々な問題意識を散りばめた内容になっている。ただ、物語は2つの出来事が並列に描かれ、緩く結びつけたといった印象だ。どちらもネット検索で可能なもの。それだけに 底流に流れる太いテーマが感じられ(観え)なかったのが残念だ。
将棋とは切っても切れないラビット番長?…増山家の隣家、そこの長男が復員して来るまで大事にしていた思い「2三と」は、棋譜であることを示す。潜入取材する記者同士が将棋対決をする。その時に増山がさり気なく棋譜をアドバイスする。所々に細かい伏線が仕込まれており巧い観せ方になっている。
次回公演も楽しみにしております。
15 Minutes Made in本多劇場
Mrs.fictions
本多劇場(東京都)
2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/02/25 (土) 13:00
座席E列2番
思ったほど……という感じでした。
誤って2回分買っちゃったので気が重い。
★が1.0ごとだから4.0だけど、★が0.5ごとだったら3.5としたいです。
公式Twitterで「当日券が無限に出ます」と言っていた通り、
前列左右は3席ずつくらい空席。4×2×3=24席は空いていた計算。
2回目は千秋楽。満員で良いのよね?
ネタバレBOX
①ロロ『西瓜橋商店街綱引大会』 ★★★/★★★
結婚してしばらくした風の夫婦。近所の商店街で、商店街の端から端まで使った綱引き大会があるらしい。
なんと優勝商品はハワイ旅行4泊6日ペア。ペア?よく考えると、この時点でおかしいのだが。
いざ現場についたものの、誰もいない。仕方なく旦那の方が綱の端っこを持つ。
商店街の反対側にも誰か居て、「綱引きに参加する人ですか?」「綱引き始めますか?」にいずれも両腕で⭕を作って
応えるので、綱引きスタート。
長い綱の表現に工夫というか、ありきたりなシステムがあって、綱の端から舞台の袖に向かって綱が伸びている×2、
パックマンのワープ通路的な表現方法が取られている。
そして、旦那の対戦相手はエイリアンvsプレデターのエイリアンみたいな感じで、人外である。緑色。
そんな異形が腕で⭕を作るので面白いのだが。
嫁の鼻の穴にブラジリアンワックス、離婚、などの要素があるけれど、いまいち話の中身が詰まっていないというか、
ふんわりと物語が流れていって終わる。夫婦が離婚に至る道程が「奥さんがハワイ旅行に行きたがっている」という旦那の
思い込みの一点からスタートしているのだとしたら、それはそれで寂寥なものだ。うーむ。
【2回目】
そういえば、離婚のもう一つの原因として、
「旦那の財布から毎日1,000円抜いてたのに気付いてくれない。
その総額が先日めでたく50万円になったので?離婚」
というのがあった。優しい旦那だろうが、あまりにも気付いてくれないと
寂しくなっちゃうことって、あるよね。というのは良く分かるんだろうけれども。
②演劇集団キャラメルボックス『魔術』 原作/芥川龍之介『魔術』★★★★/★★★★
魔術ができる異国の少年のもとを訪れた日本人の青年の話。
魔術を教えてくれ、という願いを快く受け入れる少年。ただし、私利私欲のために術を使わないのなら、という但し書きのついた試練に、
結局は私利私欲が出てしまって、という中身。2人芝居で演者は3人。演者が話者になったり、ナレーターになったり、
そして全員がバケツドラム的なものを叩いたり、という構成。非常によく出来たお芝居で、
芥川龍之介の「魔術」を知らないので、どういう話なのか知れて良かった、という感想。
そこまで突き抜けて何か、というものはなかったかもしれない。
【2回目】
1回目と2回目の間で、芥川龍之介の「魔術」が青空文庫にあったので、
寝しなにMacのスピーチで読ませながら寝た。
今回の脚本との違いは、後半の主人公が人に魔術を見せる場面で、
原作では友人数人が相手だったのが上司になったこと、
上司の奥さんが主人公の元恋人という設定が追加されていたこと、でした。
上司の奥さんも賭けの対象になるんですが、元恋人も自分の下に戻ってくると思うと、
やっぱり欲望が上乗せになっちゃうよね!という感じはある。
③ZURULABO『ワルツ』★☆/★
花束を持った男性がいろんなきっかけ(交通事故音)でボロボロになり、
「まゆに会いたい」「ピアノの発表会」などの文字が流れる。
声が登場し、「ピアノの先生の精子になれれば」みたいな、訳の分からない言葉を言う。
そして、まゆが登場し、ピアノを弾くのだが。
最初の男性がピアノの先生になって、ピアノを弾くまゆに襲いかかる。
で、なんか今度はまゆが倒れて、声が「ピアノの先生の奥さんの卵子になれれば」みたいなことを言う。
えーと、全体的によく分からなかったです。冊子には、
「男性はピアノが聞きたかった。女性はピアノが弾きたかった。声は頑張りたかった」と書いてありました。
男も女も声もやりたいことがあったということかもしれない。私は置いてけぼりにされた。
【2回目】
1回目が一番分からなかったので、注意して見たのですが。
男がキモめだったので、まゆという女の子に好意を寄せているストーカーかと
思ったんですが、後ほど一緒に暮らしている場面(?)も出てくるので、
夫婦か親子ということになるのだろうか。
まゆという女の子(31歳)のピアノの発表会に、
旦那か親が行こうとしたら事故に遭ってなくなってしまう。
どうしても発表会を見に行きたいので、「声」の助けを借りてピアノの発表会に行く手段として、
ピアノの先生の精子になる、ということのようです。
男の人が派手めの衣装を着たときは、それは男ではなくピアノの先生ということなんですね。
で、声が「ピアノの音がキ○タマに響くと良いのだけど」と言うんですが、
実際に響いてしまい、ピアノの先生の精子が暴走してまゆという女の子に突進して、
まゆという女の子は「まさかのショック死」するという訳なんですね。なるほど分からん。
まゆがショック死した後に男と女が一緒に暮らしていて、
男の方が役所に出かけると、女(まゆ)は「タッキーに会いたい!」と
叫び始めます。ここで、あれ?男と女は夫婦じゃなく親子なのか?と思っちゃった訳なんですけれども。
で、タッキーに会いたい女のために、「声」がアイディアとして
「ピアノの先生の奥さんの卵子になれば」とアドバイスするんですが、
ここはいよいよもって全く訳が分からなくなって自分が爆裂四散した。
この演劇、分からないな〜って人も少なくないと思うんですが、
笑いどころのたびに数人が「ハハッ」て笑うのが聞こえるので、
理解できる人もいるのだろう、と思いながら見ていました。
④ブリーズアーツ『真夜中の屋上で』★★/★★★
最後の方に出てきた派手なビジュアルの人は誰だろう、と思ったんですが。
最後の挨拶で「声優による演劇」ということで、ああ、緒方恵美さんだったんですね。と納得しました。
声優さんだからマイクがあったんだー、とも思ったんですが、
席が端っこの方で人の影になって誰が今喋ってるか分からなくなったりとか、
基本ビジュアルでなく声メインのお芝居なので、次第に眠くなってしまいました。
話としては、もう亡くなっちゃった兄貴的な存在の人に、真夜中の屋上に行くと会えるから会いに行こうぜ、
という話だと思います。演者の中に中学生声優さんも居た模様。
【2回目】
こちらも今度は1回目より見やすい席だったので追いかけられました。
思ったよりもちゃんと?朗読劇になっていて良かった。
ただ、脚本がありがちで、ENBUゼミナール卒業制作作品みたいな感じに思えてしまったところは否定できない。
⑤オイスターズ『またコント』★★★★/★★★★☆
踏切の前のサラリーマン。鞄を置いて穏やかではない。
そんな自殺しそうなサラリーマンの前に男女が現れ、女の方がサラリーマンに、男のお笑いの相方になって欲しい、と申し出る。
巻き込まれたサラリーマンが途中からノリノリになって……という展開。
口ひげのキャラ強めの男性はアホロートルの安田さんというお笑いの方。知ってる。ような気がする。
アホマイルドの方が印象強いけど。(アホマイルドずいぶん前に解散してた)
まぁ、素直に笑える演劇でした。
【2回目】
あまりロジカルじゃないけれど雰囲気と勢いと元気さでハハハッと笑える作品ですね。
初回も2回目も暗転と同時に拍手が起こったのは、この作品でした。
⑥Mrs.fictions『 上手(かみて)も下手(しもて)もないけれど』★★★★☆/★★★★
3回目か4回目か5回目か6回目。
ひょんなことから主演俳優の楽屋に入り込んだ新人女優が、主演男優といろいろな
関係になりながら人生の終幕を迎えていく物語。楽屋で化粧をしたり衣装を替えて行くうちに、お互いに老けていくという組み立て。
結局泣いちゃうけど、さすがに何回も見てるからなー。
【2回目】
昨日は数年?ぶりでしたが、4回目か5回目か6回目か7回目の観劇の今回は昨日ぶり。
きれいにパッケージされた作品ですが、さすがに昨日より感激の度合いは下がりましたね。
15 Minutes Made in本多劇場
Mrs.fictions
本多劇場(東京都)
2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
ロロ、オイスターズ、キャラメルボックスが良かった☆
なるべく派手な服を着る
MONO
AI・HALL(兵庫県)
2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/02/25 (土) 13:00
座席D列21番
初演よりしっくり来たというのが、正直なところ。もう15年も前が初演だなんて月日が経つのも早いと感じます。物語も普通に見えて出てくる人たちが少しおかしく、バカバカしく笑えました。
この劇団の代表作と言えるでしょう。MONOを初めて見る人にもお勧めします。
アプロプリエイト―ラファイエット家の父の残像―
ワンツーワークス
赤坂RED/THEATER(東京都)
2023/02/16 (木) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
コウセイ
ラビット番長
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2023/02/23 (木) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
すごい。
今までに見たラビット番長で一番の衝撃作。
ネタバレBOX
予想の上を行く結末。
もやっとした重いものが心に残る。
それがまた良い。
ノワール作品を作ってきた成果でしょうか。
コウセイ
ラビット番長
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2023/02/23 (木) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
実話がもとになっているという。如何にも人を人として扱わないこの国の状況をよく映し出している。
オープニング、自分ならもっと残虐な台詞を置く。とは思ったものの、そこは「ラビ番」の戯曲家・井保さんの温かいお人柄のよく出た冒頭である。当初予想していた通りタイトルに当てはまる表記は幾通りも在る。(追記2.26)
ネタバレBOX
もとになった事件は、今作を観て初めて知ったが岡田更生館事件と呼ばれる。今作で描かれているように収容者の1人(詩人)が脱走に成功(1949年2月)し、施設内の凄惨な実情を訴えた事がきっかけであった。凄いのは詩人の訴えを受け本当に毎日新聞社会部の記者2名が潜入取材を行ったことである。
衆知の如く戦後の混乱期に於ける一般都市庶民の飢えは、食うや食わずの戦中よりも酷かった。というのも戦中は曲がりなりにも食料分配自体が配給制で庶民に行き渡っていたが、敗戦後のどさくさの中では弱者には行き渡らない。ハイパーインフレの影響で不法な闇市や買い出し で食料を調達しなければ飢えて死ぬのみであった。実際、法を順守して餓死した裁判官が実在した、という噂話は自分たちが小学生時代には何度も聞かされ“愚かな奴”と考えて居たことを思い出す。大人になって、本当にそんな裁判官が居たのであれば、その頃は未だこの「国」にも正義の観念は生きており実践した大人が居たのだと考えるに至ったが。
By the way,サンフランシスコ講和条約がオペラハウスで結ばれたと同じ日、アメリカは旧安保条約調印式を、オペラハウスではなく米第6軍の下士官クラブで、吉田茂との間に上げた。この2つの条約の内、旧安保条約に現在の地位協定と実質は殆ど変わらない日米行政協定が含まれていたわけだ。アメリカは2つの条約発効(1952.4.28)によってポツダム宣言でもサンフランシスコ講和条約でも禁じられていた占領軍撤退を免れ、その真の目的を果たした。即ち日本はこの協定によって実質アメリカの植民地と化したのである。(詳細を知りたい方は、地位協定や行政協定について書かれた書物、資料を自分で渉るべし。上記の文章に若干矛盾があるように感じる方々は秘密協定もあるからと答えておく、調べてみなされ。)
さて基の話・岡田更生館事件に戻ろう。当時は未だ、復員兵や引揚者、被災者、戦災孤児が溢れ浮浪者化していた。GHQはこの有様を問題視、解決するよう命令した。これを受け日本政府は浮浪者強制収容施設を全国62ケ所に設置、岡田更生館はそのうちの1つであった。
実際、施設内で行われていた虐待、虐殺、死体遺棄、施設費等の横領は、今作に描かれた通りの凄まじいものであったようだ。また、今作で描かれている通り施設長の巧妙な施設実態隠蔽工作及び巧みな偽善的言辞によって、記者たちの命懸けの潜入取材によって実態が暴かれる迄は模範施設との評判を得ていたことも事実である。
これらの隠蔽構造や詭弁は、現在の愚劣極まる政治とそれを許容している、臣民としか思えない事大主義者・日本人の大多数に呼応するが、この事大主義を支えているものこそそれを殆ど意識できていない日本人の差別意識の慣習化としての財産贈与の基本形・男子・長子相続を浮かび上がらせているのであろう。法的実態は美濃部達吉らが主張した天皇機関説に近かったかもしれないが、この形は大日本帝国憲法で天皇を唯一の主権者と規定し国民を臣民として差別化・人間として扱うというより単なる戦場の駒として扱う本質的非人間化をも意味している。そして非人間化されたヒトは最早人間では無くなっているから、奴隷としてアメリカに今も収奪され続けていることに痛痒を感じることも無い。それどころか、この事実を指摘されると悪あがきをするのである、滑稽なことだ。ということまで深読みしてしまった。
一方、今作が如何にもラビ番の作品であるのは、棋士・増山の天衣無縫と温かさ(当然、某著名棋士を想像させる)とその妻・葉子{(将棋以外は何もできない夫をそれでも、見捨てず掌で遊ばせているような素敵な女性。而もそれができるのは、彼女が田畑を遺産として受け継いでいるからである)この相続の形が男子・長男でないことに着目したい}そして隣家の娘・帰って来るお兄ちゃんとの対局の為駒を動かす里子との関係、脱走した詩人が実は里子の兄を殺害していたという悲劇に、にーさんと(棋譜)が絡む諧謔。新聞記者4名の関係、配役の面白さ等々だ。
コウセイにどのような漢字を当てるかは簡単だから幾通りも考えて欲しい。
15 Minutes Made in本多劇場
Mrs.fictions
本多劇場(東京都)
2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
6団体トータル4つ☆
ネタバレBOX
舞台美術はちょっと変わった発想で作られているように思う。かなり大胆で限られた空間を巨きく見せる工夫が為されているように感じた。6つの団体が各々15分の持ち時間で1作品を上演するという企画なので、どのようなタイプの作品にも対応し得ると同時にマッチするある種の抽象度も具えた優れた舞台美術であり、照明も良い。
各団体、各々の個性を出しているが特に気に入ったのは、キャラメルボックスの上演した「魔術」と主催のMrs.fictionsがトリを飾った「上手も下手もないけれど」
信長ピンポン
劇団ベイビーベイビーベイベー
萬劇場(東京都)
2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
高校卓球部のスポ根舞台
強豪校と弱小高のわかりやすい対立構図とヒロインと幼なじみの三角関係、更に信長と光秀の亡霊も出てきて対立関係で卓球合戦というベタな内容。
伏線的なものは無く、まっすぐな青春ストーリーの学園ものが好きなのでとても楽しめました。
ただ、150分は長い。
点と線のオブリビオン
9-States
駅前劇場(東京都)
2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
字幕が投影されるようになっていて、この使い方もグー。華4つ☆
ネタバレBOX
いきなり出てきたのがCogito ergo sum.(Je pense, donc je suis.)、デカルトの有名な「方法序説」(Discours de la méthode pour bien conduire sa raison, et chercher la vérité dans les sciences)の要である。このフレーズこそが中世神学の絶対概念に自我を対置しそれまでの神的絶対に対し、思惟する自分を置くことで、当に時代を画す近代への扉を拓いた。この実に数学的な書物の要諦を単に記憶の有無に置き換えている点で違和感を感じたのだが、まあタイトルのOblivion(忘却・忘れられている状態)が主要テーマとなっている今作であり、近代的自我の喪失が惹起する思考根拠の喪失が今作生成の要ともなっているので良しとしよう。ほんの一例を挙げればCovid-19に対する非科学的で矛盾だらけの対応にも何ら一貫性が無いこと(皮肉なことにその出鱈目だけが一貫して変わらなかったという事実)が我々庶民に強いた不合理を暗に示唆してもいようからこれ以上は言わないが、こういった社会的混乱を招いたのが、本来混乱等を抑制しできる限りダメージを低く抑える為の政治や社会システムが、実際には真反対なことを多くやり(ワクチン開発の為の研究費切り、PCR検査機器はいくらでもあるこの国でその使用を不可能にした施策等、政治的には余りにもアホなことが多すぎたし皆さんが既にご存知だろうから書かない)そこで生じた矛盾を利用する悪賢い連中が最も弱い者たちを餌食にしたという物語(実際に多くの詐欺等があった)を創作することによって世間を炙り出した点を評価したい。
舞台美術も見事である。
ミュージカル 若草物語
桐朋学園芸術短期大学演劇専攻
俳優座劇場(東京都)
2023/02/19 (日) ~ 2023/02/20 (月)公演終了
実演鑑賞
桐朋学生の舞台を観るのは3度目。前回観た「RENT」と比較してしまうが、楽曲・脚本が持つポテンシャルに左右されるのは否めない。桐朋学園だけに福田善之作品には(指導者にとって)思い入れのあるものなのだろう、と思いながら観ていた。1945年の日本の4姉妹と母(夫は出征か戦死か..)の場面と、その次女が心酔して翻訳を試みている「若草物語」の物語世界(劇中劇)の関係性が、今一つ整理されて見えなかった所、後半を占める劇中劇の方のクライマックスを終えて終局に日本に戻り、その日が1945年8月6日と聞くに及び別の物語性が起動する。そして「その時」が訪れるのである。ここで漸くテーマ性から選んだ演目であったと判る。
学生たちはミュージカル専攻のせいか、あるいは演出の問題か、「演技」面で生白さが目立ち、年齢を違えた役柄とのギャップが厳しかったりする。が、後半それなりに見えてくるのが不思議である。
ネタバレBOX
日曜~月曜3公演の初日2ステージ目を拝見。日曜昼から器材トラブルがあり開演が45分遅れるとの案内があり、なおかつ上演時間は休憩込み2時間45分との事だったが、腹を決めて観る事にした。
カーテンコールでは学生らがこれを最後に私たちはそれぞれの道を行く、と挨拶がある。桐朋学園の卒公は「卒業」のドラマ性に集約される所があるな、と思う。終末論ではないが「最後」というだけで誰もがその中にドラマを見る。役者を目指す訳でない人達が集まって一つの舞台を作った感のある舞台にも、「一期一会」の物語性からか情感が漂うことも。舞台での「事故」も物語性を発動させる事がある。芝居とは不思議なもの。。
15 Minutes Made in本多劇場
Mrs.fictions
本多劇場(東京都)
2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
6作品のうち、特に好きだったのはオイスターズとMrs.fictions。次いでZURULABOか。「上手も下手もないけれど」は、Mrs.fictionsを知るきっかけになった『再生ミセスフィクションズ2』で初めて観た大好きな演目で、本多でこれを観ることができて嬉しい。
『Auld Lang Syne』(オールド・ラング・サイン)
渡辺源四郎商店
こまばアゴラ劇場(東京都)
2023/02/17 (金) ~ 2023/02/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ナベ源で知ってる名前、山上由里子の元気姿を目で探したが見えない。そう言えば「私も出演します」と言って前説から役に入った畑澤氏、実はこの日だけの出演で山上女史の代役であった。(後になって気づいた)
この畑澤氏の熱演は芝居にガッツリ組み込まれ、違和感がない。戦争の時代を生き抜いた擬人化された船たちの口から「時代へのコミットの意志」がこぼれるのを聞いて、早くも涙腺が緩みそうになった。
(今は日本では歴史は軽視され、道具化され、平然と塗り替えられる。墓の奥に押しやられ、偽物が闊歩する・・不遇の歴史たちが今きちんと自らを主張して立ち上がった、そんな風に感じる自分がいた。日本の惨状の裏返しであり、溜飲を下げたわけである。)
時代の移り変わりとともに登場する船たちの友情、反目、そして和解・・・全てが可愛らしく微笑ましく、ナベ源のミラクルにハマった。
(題名は所謂「蛍の光」の原曲、スコットランド民謡のタイトルらしい。)
コウセイ
ラビット番長
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2023/02/23 (木) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
実話をベースにしたこの話を、井保さん演じる棋士を絡めて100分にまとめる手腕がお見事。観客に陰鬱な気分だけで帰らせるようなことはしない、この辺の匙加減がラビット番長のいいところ。
イノセント・ピープル
劇団青年座研究所
川崎市アートセンター アルテリオ小劇場(神奈川県)
2023/02/10 (金) ~ 2023/02/12 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★
畑澤聖悟氏の本戯曲の舞台は初めて拝見。初演は2010年昴でであった模様。ナベ源のお店で戯曲は売られていないので版権は劇団が持っていると思われる。青年座の研究所発表では数年前にも上演。史実を元にし、原子力研究に携わった当事者が登場する、外国が舞台の話(終盤に日本も舞台になる・・ここは畑澤氏の創作なのかどうかは不明)。研究が行なわれた建物(当時は研究所で今は別の用途になっている)に久々に集まった数名とそのパートナーたち。ホストになるファミリーが物語の軸となり、その時点から年齢を更に重ねて行き、主に3つの年代の場面を時系列で描くという、テーマありきの芝居にしてはユニークな手法で、「家族の物語」という構造を取った事が成功した戯曲とも言える。
最初の場面はベトナム戦争の頃。成績優秀でコロンビア大学合格した息子が訪問者からの祝福を受けるが、本人は別の思いを抱いている。海兵隊に入隊したいという願望が、この場面の終盤で明らかにされる。その後の場面で彼は車椅子姿で登場する事になる。彼の妹は日本人の交際相手を初めて親の前で紹介する。広島出身の彼は反核運動の一環で海外にも原爆の恐ろしさを伝えようと渡米し、そこで彼女と出会った。
集った者らの一部は、原爆は狂ったジャップに戦争を終わらせる僥倖であったと信じ、別の者は自分の研究の倫理性に疑問を拭えない(転職して教員になった)。寡黙なホストの一家の長は、自分は原爆の研究には携わったがそれを使ったのは軍人だ(自分は科学者の使命を全うしただけ)、と考える、最も平均的なスタンスである。だが、老齢になった彼が、息子らと共に、彼氏に嫁いで日本で暮らしていた娘の訃報を聞いて日本を訪れ、彼女と共に活動をしてきた仲間からの言葉をもらう。そして、彼の中で頑なに信じていた(あるいはしがみついていた)考えがほどかれる。ラストシーンまでには、彼の妻の死、教員だった男の自死、原爆を善だと信じていた二人の老いと、時代の移り変わりと個々人の中の変化が(まるで季節が移るように)描かれ、そして自然な成り行きであるかのように、父の変化が描写される。
イノセントとは、原爆の正義に対する淀みない信仰を意味するが、ラストでの父の姿がイノセントに見えてくるのは、娘の存在を介して、その友人たちへの素直な感謝の心が、「謝罪」という態度になった、と見えるからだろう。父が関わった「罪」を背負い、米国人という立場で活動を続けてきた彼女の思いに呼応できる(まっすぐな)人間がそこに居た、という事である。個人に焦点を当てた事により、加害とその罪(ギルティ)、その対極のイデアとしてのイノセントが見事に描かれた作品。
若い役者たちは役柄上自然な事として背伸びが見られるが、奮闘していた。
スプリング・スプリング
yoowa ユウワ
王子小劇場(東京都)
2023/02/23 (木) ~ 2023/02/28 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
初見のユニット、と言うより、事実上の旗揚げ公演らしい。ミュージカル・ファンタジーとでも言おうか(^_^;)。138分。
重い心臓病で入院した青年の物語と、彼が書く「劇」の物語が絡み合う、やや複雑な展開をミュージカル仕立てに。技術的な高さは分かるのだが、終盤になっても新たなエピソードが出て来る感じがしてしまい、物語に入り込めないのは私がミュージカル好きではないからだろうか。老人という設定のナカザワ役がそう見えないのも勿体ない。
15 Minutes Made in本多劇場
Mrs.fictions
本多劇場(東京都)
2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
参加団体の出来にも依存する本企画を折節に開催して16年、改めてMrs.fictionsというユニットの独特さを感ずる。ラストは必ず同ユニットの作品が締める。本多劇場での開催について「漸く・・進出」と前説今村氏が口にしたが、名のみならず実も、スペースに見合う堂々たるもので、久々に観客と同じ感覚を共感した気になれた「劇場」の時間であった。
個人的にはオイスターズが一番の目当て。期待に違わずであった。
ネタバレBOX
舞台の背面に格子状の線が渡され(装置にグラフィックを重ねたような)、演目の間にそこがぼうっと光って(暗転明かり)、「これなんだろう」とぼんやり観劇中は眺めていたが、終演後劇場の階段を下りる時に「あ、本多劇場の玄関口のデザイン」と気づいた(遅い)。そう言えばチラシの写真もそれであった。
さて観劇の方。必ず一度は襲われる睡魔は二作目が始まって程なくやってきた。しかも芝居といのが間断なく早口で台詞を連打し合い、音を意味に転換する速度が眠気で落ちている所へ、それより少し先を行くスピードで喋るので、意味を持たない「音」が脳内に積み上がり、終いに追いつかなくなり、ついに寝落ち。途切れなく続く「意味なし音」が、非常に心地よい眠りを確保する。そして芝居が終った静寂で目が醒める。完璧だ。おかげで他の演目を全て晴れ渡った頭で観ることができた。
(割と最近あった例外は、鹿殺しの最新公演にて、体は休息を欲しているのに目を閉じさせない=それだけ観客を飽きさせない。それで段々と気分が悪くなり、青ざめてきた。やはり寝たい時に寝るのが健康のコツ、健康コツである。)
オイスターズは大いにツボであったが、予期せず秀逸であったのはラストを飾ったMrs.fictionsの二人芝居。
スター気取りの主演俳優の楽屋に入ってきた、田舎出の新人女優。稽古初日に遅れてきた上に女性楽屋は一杯なので、空いた席を貸して下さらない?・・・無遠慮というより鷹揚でしかしソツがなく相手との距離の取り方が絶妙。自頭の良さに男が次第に惹かれて行くような、そういう女性(というか男にとってのそういう存在)を形象し、男の方は相手に翻弄されているのか守ろうとしているのか、曰く言い難い関係性が続いて行く時間経過が描かれる。
「気取り」、と書いたが、最初そう見えたのは二人の演技スタイル?というのが米産ドラマの吹替バージョン(昔友近となだぎ武がやってたコントのような。といってもこちらは茶化してはいない。時々笑いにはなる)。この喋りが合う芝居である。
初日以来二人はずっと隣同士でメークをし、「結局ずっとこの楽屋に居ちゃったわね。迷惑じゃなかった?」。最初が良かったからゲンを担ぐっていうか・・。競争の激しい中で女はうまく生き残り、男とコンビで主演を張るようになる。数年が経ち、また時間が経つ。二人は一方を袖から舞台へ送り出し、また自分が去る。女が俯いている時、男は済まないと言いながら「出番だから」と出て行く。
時間経過の目印はなく、台詞の様相の変化で大きな時間経過を伝える。本番に備える楽屋(舞台袖)を比喩的に用いた一組の夫婦の物語のようであり、また疑似夫婦のように長い付き合いとなった男女の俳優のようでもある。
ある時、後輩が入ったと語る女優はナイーブになるどころか「可愛がり過ぎてしまいそう」と嬉々とはしゃぐ。観客の心も洗われるのであるが、程なく「彼女、いなくなった」と落胆する。後輩とは、二人の間の子供であった(あるいはそれほどの大事な存在を失った)と知れる。
話す内容も風貌も、齢を重ね、老境に至って二人の間に信頼、安心がようやくのこと、芽生えている事が見える。袖へ向かう女優が「私、今日が最後だから」と言い、「あ、そうだった。」と男。何かを言わなければと探す男は、自分は相手が最も必要とする時にその事を与えてやれなかった、と長年積もった思いを吐き出す。その埋め合わせもしない内に去って行くのか、と泣きそうになる男に女は、「いつか来る日だから」と男を慰める。
言葉の妙で、両義的な場面をその曖昧なままに心地よく見せる磨かれた舞台。