Hey ばあちゃん!テレビ点けて!
Bee×Piiぷろでゅーす
新宿スターフィールド(東京都)
2023/06/28 (水) ~ 2023/07/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/06/30 (金) 14:00
エンタメ系のお笑い作品だと思って観始めましたが、
サチ子さんの第一声がとても良い声で、芝居にグッと引き込まれました。
声圧のある落ち着いた通る声。劇団の大黒柱ですね。
作品内容はとてもシンプル。説明欄にも記載されているように、
亡くなってしまったサチ子が夫の治の前にロボットとして現れる。
死んでからさせたかった100のコトをミッション形式にして、1つずつ家族や仲間たちと
協力して叶えて行く。それが治のためにもなっていき…あとは乞うご期待!
ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)
劇団チョコレートケーキ
シアタートラム(東京都)
2023/06/29 (木) ~ 2023/07/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
子供向け番組を超えた深いテーマも盛り込んだウルトラマンシリーズへのオマージュであり、在日・同和・関東大震災の朝鮮人虐殺・同性愛者差別まで、差別問題に果敢に取り組んだ挑戦作である。小劇場としては間口の広いシアタートラムの舞台を、上手から順に、企画会議室、撮影スタジオ、書斎と使い分ける。
ユーバーマンシリーズの「老人と少年」(帰ってきたウルトラマンの「怪獣使いと少年」がモデル)を下敷きに、脚本家は差別をテーマに、善意の宇宙人が人々から迫害を受ける「空から来た男」を書く。それだけなら「社会的深みのあるエンタメ」に終わるが、当事者でもないのに差別をネタにする欺瞞性にも十分自覚的なところが一味違う。
場面転換や物語進行にもたつきを感じるところも少々あったが、後半、テーマと趣向がぐんぐんかみ合っていく。作り手たちの舞台裏と、カメラの前で(あるいはけいこで)演じるドラマがうまくかみ合って、差別の愚かさと、それを超えていく希望の片りんを見せてくれた。
ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)
劇団チョコレートケーキ
シアタートラム(東京都)
2023/06/29 (木) ~ 2023/07/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
アンジーの『天井裏から愛を込めて』を彷彿とさせるタイトル。アンジーはメルダックでデビューしたのだが、先に同事務所でデビューし大ブレイクしていたブルーハーツを踏襲させられた。本来は「頑張れロック」路線ではなかっただけに非常に不運。実際は『たま』系の独自世界のアーティストだった筈。
小学生の頃、再放送の『帰ってきたウルトラマン』で観た『怪獣使いと少年』。滅茶苦茶衝撃を受けた。灰色の工業地帯で繰り広げられる全く救いのない物語。プロレタリア文学のような目線。『帰ってきたウルトラマン』はスモッグのどんよりとしたイメージで、ディストピアの日本の姿を突き付ける(ただそれ以後観ていないので記憶による美化はあると思う)。後年、切通理作氏のデビュー作『怪獣使いと少年』を読んだ時、凄く腑に落ちた。
巨大変身ヒーローモノが1990年に作られている世界線。(実際は『ウルトラマン80』放送終了の1981年から1996年の『ウルトラマンティガ』までは空白)。
テーマは『差別』。誰にも正解の見えない永遠の難問。TV番組『ワンダーマン』にて、伝説の『怪獣使いと少年』に挑もうという若き脚本家の心意気。子供向けTVドラマで一体何処まで本質を描けるのだろうか?
主人公の脚本家は伊藤白馬氏。特撮モノに初挑戦。
大学時代の先輩で『ワンダーマン』のメイン監督は岡本篤氏。木下惠介っぽい清潔感。
特撮監督は青木柳葉魚氏。
助監督は清水緑さん。
主演のワンダーマン役は浅井伸治氏。ペナルティのワッキーを思わせる役作り。
大物ゲスト枠は橋本マナミさん。気負い過ぎて少し固かった。
宇宙人(コクト星人?)役の足立英(すぐる)氏の振り幅が素晴らしい。
MVPは東特プロのプロデューサーの林竜三氏とTV局から出向しているプロデューサーの緒方晋(すすむ)氏。ここのリアリティがドラマの厚み。社会で生活している人間の重みがあってこそ、ただの絵空事のファンタジーにはしない。
是非、観に行って頂きたい。
アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」【7月6日昼公演中止・7月7日~9日まで映像公演実施】
モダンスイマーズ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2023/06/29 (木) ~ 2023/07/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
舞台は中学3年のクラス。主役の姉妹は二卵性双生児で父は日本人だが母は在日朝鮮人であり、姉妹が生まれて1年で両親は離婚した。それ以来、姉のソジン(瑞生桜子)は母と、妹のゲン(藤松祥子)は父と暮らしていたのだが父が亡くなってゲンが二人と同居することになりソジンのクラスに転入してくる。
という最初の設定だけで重さに押しつぶされそう。さらに妹は転校してきてすぐに父親の形見の自転車を盗まれる。大事なものだから一緒に探してくれと頼む妹に姉は取り付く島もなく断る。ゲンはクラスの不良が犯人だと思い危険な裏山にまで出かけるのだが…。ここで更に重りが大量に追加される。
実は2年前の公演も観たのだが重さに耐え切れず休憩時間に帰って来てしまった。重さといっても作られた重さと感じたのだ。当時はまだ演劇のわざとらしさへの耐性が低かった。そして今回、心の準備はできているので再度の挑戦である。その結果はちょっと欲張りすぎて散漫ではあるが結構感動的じゃないか、ということになった。
登場人物は生徒24人と担任、副担任それに用務員のおばさんの計27人である。その人々が単独あるいは2人から4人の塊になって恋愛、部活、子育てなどでそれぞれの1年間のストーリーを紡いで行く。それらは独自の世界を持っていて見ごたえがある。さらには全員によるダンスもあったりして、姉妹のことを忘れたころソジンがゲンに「生まれて初めて母親に逆らって二人の前から消える」ことを宣言する。そしてソジンのいない卒業式へ…
ダンスが素晴らしくて星一つ増しとなった。しかしこのダンス、キレッキレの人もモタモタの人もなく、かといって全員の動きをピタリと合わせようというのでもなく、個性を出しつつほどほどに調和させるというこの劇全体の作りがそのまま出ていたように感じた。
ラ・ボエーム
新国立劇場
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2023/06/28 (水) ~ 2023/07/08 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
雪の中、ロドルフォ(スティーヴン・コステロ)とミミ(アレッサンドラ・マリアネッリ)が「春になったら別れよう」と歌う第3幕がよかった。幕開けの冒頭のスタッカート的メロディーから、幕切れのアリアまで実に緊密で、飽きない。シリアスなミミたち二人だけでなく、ムゼッタとマルチェッロの滑稽味ある痴話げんかとの四重唱になっているのも巧みなつくりだ。ただ、一緒に見た芝居友達とも話したが、この二人がなぜ別れるのか、なぜ春までそれを延ばすのか、という整合性は突っ込みどころ満載。
テノールのコステロがよかった(らしい)。1幕の自己紹介の歌「冷たき手を」からブラボーが飛んでいた。それにたいして、マリアネッリの「私はミミ」は、高温の伸びや迫力が物足りない。ブラボーもなかった。しかし、4幕の最後の二重唱はしっかり決めてきた。
ミミより、第二幕のムゼッタのヴァアレンティーナ・マストランジェロが魅せた。「私が街を歩くと」は素晴らしい歌声で(青いサテンドレスに黒い毛皮のコートの派手な衣装も相まって)圧巻だった。
4幕は「外套のうた」の渋い輝きに開眼させられた。フランチェスコ・レオーネのバリトンに、ブラボーが飛んだ。「ポケットには、思想家や文豪が洞窟に遊びに来た」など歌詞もいい。ミミの臨終という悲しいしめっぽい場面に、滑稽味ある内容でその場の気分を和らげながら、、シリアスな雰囲気をぎりぎり壊さない絶妙なバランスがすばらしい。
ミミが死んだあと、しばらくはロドルフォが気付かない。観客はじりじりし、しばしのためのあと、一気に管弦楽も歌も最後のクライマックスを盛り上げる、この「間」も素晴らしい。
舞台「いま、会いにゆきます」
Sh!nkiяo
阿倍野区民センター・大ホール(大阪府)
2023/06/30 (金) ~ 2023/07/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
映画(2D)→本(1D)→今回(3D)の順で体験したが、今回がやはりナンバーワン 最後の高校生男子が重要なセリフをカンダのには残念だったが、愛嬌と言うことで…
隣のオヤジが終始船をこいだり、寝息をたてていたことも集中力を欠いたが、舞台の人は何も悪くない
寝るくらいなら最初から来るな⚡家で寝とけと言いたかったが…😰
もう一度観たいです Tシャツ買いました‼️
この雨やむとき
海外戯曲をやってみる会
雑遊(東京都)
2023/06/29 (木) ~ 2023/07/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
#井上幸太郎 #大沼百合子
#斉藤麻衣子 #相樂孝仁
#田中里衣 #松本みゆき
#三宅勝 #山森信太郎
(敬称略)
魚、スープ、帽子……さまざまなバトンを渡し、繋ぎ、紡ぐルーツ。語らないこと、語れないこと……知りたいこと、知らせたくないこと……守りたいモノ、守り得ないモノ。
とても興味深い作品。
斉藤麻衣子さんが滲ませた葛藤がわたしにとってハイライトだった。
松本みゆきさんがはめる最後のピースで世界が終わりを告げる。目眩がする。
最後の晩餐のような最初の晩餐。田中里衣さんの眼差しは神を信じない者にもマリアに見えただろう。彼女の瞳に映る者への慈しみが、穏やかで柔らかなその表情から溢れた。美しかった。
逆に大沼百合子さんが見せた絶望の闇の深さに、どうしようもない人間の愚かさを思い知る。
井上幸太郎さんが渡す最後のバトンが、すべてを浄化させる扉の鍵であることを祈る。
劇場空間の使い方も興味深かった。
あぁ、自殺生活。
劇団夢現舎
新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)
2023/06/27 (火) ~ 2023/07/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ずーっと見たいと思っていた作品、また見られたことが素直にうれしい。
メインの2人のストーリー以外は、ほぼ総取っ替えだったような。
独特な入場方法がなくなったのはちょっとだけ残念。
それにしても日本人は「道」とか「力」とか好きですなあ。
黒星の女
演劇ユニット「みそじん」
吉祥寺シアター(東京都)
2023/06/30 (金) ~ 2023/07/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
黒星と言えば、相撲では負けを意味するが、そんな負け人生の女の観点…時事ネタを織り込み、現代日本の世相・物情を皮肉り酷評する。社会派 娯楽劇のような…これがニシオカ・ト・ニール女史の世界観とでも言うのだろうか。
この公演は、2020年下北沢のOFF OFFシアターで上演する予定であったが、コロナ禍で延期。そして 主宰の大石ともこ女史の言葉を借りれば、「この広~い会場にて、満を持しての上演」である。やはり吉祥寺シアターは広くて、役者間の距離(間隔)があるため、全体的に大きな動作と素早い動きをするが、なんだか慌ただしく観える。また初回だからだろうか、シンプルだが、場転換にも 少し時間がかかったのが惜しい。
少しネタバレするが、黒星とは女囚を表し、犯した罪の背景にある不寛容・無理解・無神経などを彼女達に負わせて紡ぐ。しかし、その描き(観せ)方は軽妙洒脱だ。歌・ダンス・緊縛…等々、しっかり聞かせ観(魅)せる。
彼女たち 1人ひとりの犯行、その動機や経緯を オムニバスのように展開させ、全体を通してみると現代日本の〈膿〉のような事象が浮び上がる。表層的な面白さ可笑しさだけではなく、その奥を覗くと哀しみ、怒り そして遣る瀬なさが…。
脚本と演出が、何となく骨太と滑稽といったアンバランスな魅力。勿論 観応え十分、ぜひ劇場へ💨
(上演時間1時間50分 途中休憩なし)2023.7.2追記
Hey ばあちゃん!テレビ点けて!
Bee×Piiぷろでゅーす
新宿スターフィールド(東京都)
2023/06/28 (水) ~ 2023/07/02 (日)公演終了
ヴィクトリア
シス・カンパニー
スパイラルホール(東京都)
2023/06/24 (土) ~ 2023/06/30 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/06/27 (火) 18:00
2度目の観劇。今さらではあるが、とにかく大竹しのぶらしい芝居。67分。
1度目に観たときとはオープニングの演出が変わっている気がしたのだが、勘違いか。
Hey ばあちゃん!テレビ点けて!
Bee×Piiぷろでゅーす
新宿スターフィールド(東京都)
2023/06/28 (水) ~ 2023/07/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
とても面白かったです!
クセのある(ありすぎる)登場人物達が可笑しくて、ずっと口元が緩んでいました。
AIになったサチ子が何とも言えない可愛さで、夫や家族を思う気持ちに涙でした。
そして、サチ子を愛する夫に感動でした。
ラストは涙腺が緩んで、涙が流れました。面白くてニヤニヤししながら観ていたのに、こんなに泣くとは思いませんでした。
楽しいだけではなく、とにかく感動の舞台でした!
Pickaroon! -ピカルーン-
壱劇屋
すみだパークシアター倉(東京都)
2023/06/24 (土) ~ 2023/07/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
最高にして最強の舞台でした。
華奢な女優さんが最強の盗賊を演じるなどキャストの見どころも満載でした。
効果映像を使わず人力での舞台効果に特化しているところもオンリーワンの成せる業だと感じた。
このまま頂点を目指していく劇団だと思いますよ!
SUNNY
梅田芸術劇場
東京建物 Brillia HALL(東京都)
2023/06/26 (月) ~ 2023/07/05 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
あらすじ:夫や娘との生活もまあまあ順調な奈美(花總まり)は母親の入院先で偶然30年前の高校時代の遊び仲間「サニー」のリーダー千夏(瀬名じゅん)に会う。千夏はガンで余命1か月だという。彼女の願いで昔の仲間を探すことになる。彼らはある事情で連絡を取り合うことが無くなっていたのだった……
舞台は二段に分かれ、主に下の段で現在を上の段で高校時代を展開する。同じ人の現在と過去の姿が全然似ていなかったりするのはあまり気にしないことにしよう。
よくあるお話で普段なら絶対に行かないのだが「SUNNY」という題名に引き込まれてしまった。「SUNNY」は1966年のBobby Hebbの大ヒット曲。もっとも1976年のBoney M.のディスコバージョンの方が私の耳には馴染んでいる。それでこの曲を中心に60-70年代のアメリカンポップスが歌われるのかと思いきや、他は80年代の日本のポップスであった。オープニングは花總+スクールメイツもどきの「センチメンタル・ジャーニー」である。たしかにこの時期のJ-POPは大豊作なのでこれも良しと頭を切り替えた。何にも考えずに歌とお話を楽しんでいる分には結構快適である。
母娘混合のダンスは体操のレベルだったが、若者だけになって「ダンシング・ヒーロー」の2017年登美丘高校ダンス部版「バブリー・ダンス」で一気にスピード&パワーアップして盛り上がる。ミュージカルとしての不満はここから始まる音楽の怒涛の大波であらかた吹き飛ばされてしまう。
…としても満足度は3つ星半だなあ。
Hey ばあちゃん!テレビ点けて!
Bee×Piiぷろでゅーす
新宿スターフィールド(東京都)
2023/06/28 (水) ~ 2023/07/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
笑わせ泣かせるといった王道のハートフル ヒューマンドラマ。
また、前説での温め・カーテンコールでの内輪ネタなど、スタッフ・キャストの対応も楽しませようという姿勢が好ましい。
説明にある「AI化したサチ子、彼女から課せられたミッション『死んでからさせたい100の事』をクリアする」、そのために奮闘する家族や仲間の姿を面白可笑しく描いた物語。勿論AI化したサチ子の様子・動作もコミカルで可愛い。
映画「死ぬまでにしたい10のこと」という、残りの人生を悔いなく生きる様を描いた感動作があったが、この公演は 逆に死者から生者へ力強く生きてもらうための応援譚だ。中盤までは緩い笑いを誘いながら、後半・ラストにかけて怒涛のような展開、そして悲哀と滋味に感動。思わず涙腺が緩む。
少しネタバレするが、第一のミッションはガラ携帯からスマホへ替え、LINEが出来るようになること、第二は若者言葉を覚えること といった実に他愛のないもの。
ミッションの一つ、サチ子を愛している証しとして<変顔><セクシー>そして映画「ローマの休日」に準えた<バーバの休日>という3枚のポスターを貼り…。「ローマの休日」は境遇や時間的制約がある中で、どう結末を迎えるかという興味を惹くが、この物語でも 制約ある中で最後のミッションは、という最大の関心事へグイグイと惹きこむ。この自然な展開が実に心地良い。
(上演時間1時間40分 途中休憩なし)㊙️ネタバレ
ウェルカム・トゥ・ホープ
ラッパ屋
紀伊國屋ホール(東京都)
2023/06/24 (土) ~ 2023/07/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/06/29 (木) 13:30
座席1階
マキノノゾミと鈴木聡のアフタートークまで含めて、とても楽しめた。鈴木いわく「劇作家は夢と希望を書く」からなのか、夢と希望が盛り上がったところでその後の結果を示さず幕を引くという、少し食い足らないところが残念だった。しかし、それを差し引いても、「夢と希望」を十分、客席に振りまいてくれた。(食い足らないから☆4つでもいいと思ったけどね)
タワマンに住む実業家の女性がコロナ禍で事業が傾き、家財などを売り払って場末の安アパートに転居してくる。この安アパート「ホープ荘」には、さまざまな訳ありの人たちが住んでいる。物語は住人たちのそれぞれの事情を明らかにしながら進むが、後段で大事件が持ち上がる。ここで住民たちは一致団結する。
1時間半というコンパクトな作りの中にさまざまなドラマを盛り込んでいて、これぞ劇作家・演出家の腕が光るところだ。ラッパ屋の舞台は軽快な会話劇が身上だと思うが、今回も軽快さの中にユーモアたっぷりで笑えるところが随所にあり、飽きずに楽しむことができる。また、場面転換などで使われる佐山こうたのピアノ演奏がすばらしい。佐山もアパートの住人であるピアニストの役柄で、舞台に見事に溶け込んでいた。
この暗い世の中で、鈴木の言う通り夢と希望をもらいに劇場に来る人は少なくない。今作はシンプルなストーリーだが、そんな小さな期待にきっちり応えてくれる舞台だ。
アフタートークでマキノノゾミが言っていた。「演劇のチケットが12000円なんて、何を考えているのかと思う」。大きな拍手がわき起こった。トークを聴いていると、もちろんどの劇場でやるかにもよると思うが4000円~5000円が採算ラインらしい。小劇場ファンとしては、この4000円の舞台で夢と希望を売る劇作家や役者たちに「ありがとう」の思いを込めながら劇場へと足を運んでいる。とてもすてきなアフタートークで、得をした気分になった。
いつか道化となってみんなを笑わせます
劇団やりたかった
ザムザ阿佐谷(東京都)
2023/06/20 (火) ~ 2023/06/28 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/06/28 (水) 19:00
価格4,000円
少年フリックの冒険譚。
ザムザの木の空間の中には簡素なテーブルとイスだけがポツンと。鍛冶場の音とこわばった表情のフリックが印象的な緊張感ある導入。食器やパンを配る姉のポリーはフリックのところにだけは投げやりに、パンも少量だけ引きちぎって投げて寄越すような仕草。ポリーの夫のケリーは心優しい性格で、些細なきっかけで癇癪を起すポリーをなだめつつ、フリックにはパンを分けてあげたりもする。後に説明があるのだが、両親がいない中でポリーは一日も休むことなく働き、フリックを養ってきて消耗しきっているのだ。また、せっかく手に入れたケリーとの生活の為にフリックを追い出したいという願望もある。単に性格が悪いだとか狂人というのとは違う。
フリックも辛くないわけがなく、常に表情は引きつり、言葉もたどたどしい。外では小汚いノロマ呼ばわりも受けているようだ。先天的な障害ではなく、この家庭環境による抑圧の影響が大きいのかなと思う。
また、空想癖がある。イマジナリーな存在にロンリネスと名前を付け、語り掛けている。現実逃避の産物でもあるのだろう。そしてこの空想の向こうには「確かなもの」がある。後述。
そんなある日、フリックはケリーから横笛を贈られる。隠し事を嫌うポリーに咎められ、ケリーからも正直に言うよう促されるが、フリックは笛を隠し通してしまう。余程笛が嬉しかったのだろう。ずっとそのままなら隠し事では無いから許すとポリー。フリックが笛を隠した位置は股間。巨大なイチモツが屹立した状態にしか見えない。フリックはその姿のまま家を出る。
こうして冒険が始まるのだが、「ぷぷぷ」と紹介されている作品、毎回開演が押す(来るのがギリギリな人が多過ぎる)ような弛緩した流れ、フレンドリーな前説からの空気が文字通り一転して、会場全体が緊張感を帯びたのはお見事だった。
最初に訪れたのは孤児院。関西弁の男の子がリーダーとして盗賊団を名乗っている(本当に盗みを働いているのかどうかは描写がない)。設定がやたら細かく、どこか中二病的。盗賊団加入に際して、秘密を漏らしてしまった時の代償、通常であれば両親の命という脅しだが、両親がいないフリックはケリーを殺していいと提案、懇願する。こんな形で義兄への愛情、感謝を吐露する姿が切ない。
こうしてほうぼうを旅して沢山の人物と出会い、教訓を得ながらフリックは成長していく。この場面ならリーダーの男の子の「自分の舟は自分で漕ぐしかない」が印象的だ。
孤児院に中年の三銃士が登場する。湧き上がる孤児の子供たち。子供たちに下ネタを炸裂させたりと感心する大人像でもないのだが、笛を屹立させたフリックをダルタニアンと呼んで仲間に加え、会話の中で教訓を与えてくれる。なお、この時点でフリックの言葉遣いが滑らかになっていて、良い方向に向かっている感じが嬉しくなる。そしてやや唐突な三銃士との別れ。
舞台は変わって近世ヨーロッパのような街。街の人々とストリートパフォーマー。パフォーマーといっても現代の夢追い人のような立ち位置ではなく、チップを貰って生業としている人たち。3人の技はドラム、ジャグリング(玉投げ)、ブレイクダンスなのだが、これが賑やかで楽しく、エンターテイメントとして充実。世界が回っている。そんな彼らに刺激されるフリック。だが、口上は上手くなったが笛はまだロクに吹けない。
次に訪れたのは日本の江戸時代のような街。この世に飽き飽きしたお殿様は面白い人物を集めては飽きて投獄してしまう。牢屋にいるのは何故か昔話の面々で、花咲か爺さん、浦島太郎、雪女、三年寝太郎、そして一寸法師だ。一寸法師から笛の指導という名目でこき使われながら、フリックの笛が着々と上達していく。道化らしいパフォーマンスも体得しつつ。
一寸法師からはもう教えることはない、もっと上手くなりたいならと名人の西の魔女の元を訪れるよう促される。この時の「上手くなりたいのか」に対して「当たり前だよ!」の力強い返し。成長が見て取れて嬉しい。
また、この場面で見えない女性から自分の名前を呼ばれている感覚を覚えるフリック。単なる幻聴では無い不思議な感覚。同じ村にいても出会えない者もいれば、世界の両端にいても出会える者もいると一寸法師。
6人の西の魔女。笛吹きの名人という触れ込みだったが、どうやらアダルトなお店のようで、笛とは男性の…事のようだ。完全にズレたアドバイスなのだが、それでもフリックの笛は格段に上達。なお、この指導の影響か色気らしきものも帯びたようだ。
ヨーロッパの街に戻り、笛を披露すると人々の人気者になる。そこでパフォーマーの面々に仲間になりたいと申し出るも拒絶される。彼らも商売敵に成り得る存在には敏感なのだ。三銃士もそうなのだが、大人が決して甘やかしてはくれない辺りが本作の成長物語としてのリアリティ。
ここにきて迷いを感じるフリック。
場面は変わり、少女と少年。激高して家を出ると吠えているのは少女はエスメラルダ。自分は公爵(侯爵?)の血筋の特別な人間であると。更には遠くの果てに自分を探している男の子がいて、しかも自分の名前を間違っているから正しに行くのだと。同じパーティーに出ていても出会ない者もいれば、世界の両端にいても出会える者もいるのだと!
太陽のような女の子というより太陽のフレアのような女の子。途轍もない熱量、勢い、突飛な想像力に幼馴染のロドリゴもタジタジである。後に人を寄せ付けない生き方だったと語っているのだが、この激情ぶりに付いてこれる人がいなかったのだろう。フリックとは違う意味で居場所を求めていた少女。なんという運命!
後半になってからの登場で既に人物は出揃い、場も温まりきっていたのだが、登場するなり叫び、走り、一瞬で追いつくどころか更に加速、加熱させて行った。役者(有田好さん)としても途轍もない。
フリックを探して旅をするエスメラルダ。孤児院では関西弁のリーダーと張り合い、王侯貴族オタクの孤児にとまどいつつ、三銃士ならぬチン重視に襲われそうになりながらも西の魔女に助けられたり(三銃士と西の魔女で大人の時間に)、江戸っ子には投げキッスを振舞ったりの珍道中。
一方その頃、迷いの中のフリックだったが仲間たちの声に後押しされ、エスメラルダを探して走り始める。
お殿様に絡まれ、全力のエピソードトークもウケずに危機に陥るエスメラルダ。そこに淡々と走りながら到着するフリック。チン重視の場面で遠くからの笛の音と同時に現れてたら最高にカッコよかったのにあえての展開。遠く離れた距離にいながら空想を通じて繋がりあっていた二人の出会い。感動したお殿様に許され、この場の窮地は脱する。
苦しい生活、働きづめの日々で笑顔を失ったポリーとケリーを救おうと決意する二人。ボーイミーツガールの冒険譚、成長物語として最後の仕上げだ。またにその頃、ポリーとケリーは黒い影ロンリネスに襲われていた。世界中の悪意、負の感情の連鎖で増幅するロンリネス。対抗する為にこれまでの冒険で出会った仲間たちを次々に呼び寄せるフリック。強力なロンリネスピラミッド(組み体操)により悪に寝返る面々も。危機の中、お殿様はそんな珍奇な光景に笑いの声「面白い!」を上げる。認められたい欲求こそが存在の根源であり、弱点であったロンリネス。フリックの心の中に戻り、事態は無事に収束。これぞエンターテイメント!
40人の出演者が総出で、頭と身体をブン回しながらのエンディング曲。劇中のメッセージ、歌詞の内容、発散されまくるエネルギーに刺激され、笑顔でいながら涙が溢れた。
「エネルギーに満ち溢れた」「活気を貰った」という舞台の感想はあるあるなのだが、本作はまさにそう言うしかないし、その具合が飛び抜けていた。
以前に他の作品を観た時には癖のある作風の団体と受け止めていたのだが、本作ではその癖とファンタジー的要素とテーマの前向きさ、人数の多さとエネルギーが良い塩梅で融合。
登場人物も癖があったり何か欠けていたり、でも人間臭くて親しみが持てる。役者陣(当パンはなく、HP等にも記載が無いので役と一致させられないのがネック)も文字通りの熱演。個別の名前が無い(出てこない)役も多いのだが、しっかり区別、思い出せるぐらいに個性が整理されているし、声のマッチングも良かった。ケリーがポリーをなだめる際の声やお殿様の殿様らしい笑い方が良き。
そして改めて、エスメラルダ役の有田好さん。ここだけはお名前を知りたくてスタッフさんに訊きました。前述の通りで後半からの登場なのに、一気に追いつき、更に加速・加熱させた爆発力はまさに圧巻だった。セリフも膨大で常に絶叫気味で、でも全く噛まない。声も潰れない。声の通りもよく、声質もプリっと可愛らしい。「もう!」などは声フェチとして痺れた。お顔自体もとてもとても可愛らしいのだが、これでもかと表情も動く動く。出ハケも殆どが全力疾走。
作品を象徴するセリフ「この世は喜びで満ち溢れている」「楽しい事があり過ぎて嫌な事に目を向ける暇なんてない」を担うに相応しい存在感に生命力。
見とれてました。途轍もない役者さんでした。
素晴らしい作品、出会いに感謝。
旅立つ家族
劇団文化座
あうるすぽっと(東京都)
2023/06/27 (火) ~ 2023/07/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
初演を観た印象と随分変わっているが、動くパネルや台を駆使した金守珍演出の躍動は健在。グレードアップしている。
主人公李仲燮(イ・ジュンソプ)の妻山本方子(現代=佐々木愛)の静かな語りから始まり、美術館の壁に掛った絵(パネル1枚に一作ずつ、プロジェクターで投影)を一枚、一枚と見て歩きながら語るのだが、視線をかけた絵が眼球のズーム機能のように拡大しやがて霧散、次の絵に目が移るとまた拡大し始め、霧散・・最後の横長の絵は左側にぐーっと伸び、他のパネルが一面の壁を作って大きく映し出す・・といった目が釘付けになる演出。そこから音楽が高まり、パネルが散ったかと思うと、荒々しい筆で書かれた牛が二頭、両手で持つ板切れを7、8名(×2組)で繋ぎ合わせたのが、角を突き合わせる鬼気迫るムーブを見せ、砕け散った後、起き上って歌われる歌は梁山泊そのものである。大貫誉の短調を基調にした音楽が、悲運の画家の物語の通奏低音となり、導く。休む間もなく働くテント芝居のアンサンブルのように文化座の俳優が黒ずくめですっくと立ち、力の限り歌う声に序盤から圧倒される。近くにいた観客は(まだ物語の端緒も語られていないのに)涙を拭っていた。
明転すれば照明一転、のどかな朝鮮の田園の中で、絵を教える林(イム)先生と生徒に混じったイ・ジュンソプ(彼を呼ぶ時はジュンソ、と言う)。日本の植民地時代、大戦が起きる前。反植民地闘争のため満州に行く、という選択もこの時代の若者にはあったらしく、ジュンソもその夢を語るが、先生は「こういう時代だからこそ、お前は絵を描くべきだ」とジュンソプに言う。
やがて日本へ絵を学びに渡る時がやって来る。そして芸術学院での学び。慣れない東京生活の中で、一人の女性と出会う。愛の物語でもあるこの作品の、この出会いの場面は印象的。そしてその中心には「絵」がある。
戦争末期、ついにジュンソプが方子を朝鮮に呼び寄せる。皮肉にもこの時が最も良き時代である。その後、波乱に富む家族とジュンソプの軌跡は中々見ていてつらいが、うまく描かれている。
瀬戸内の小さな蟲使い
桃尻犬
OFF OFFシアター(東京都)
2023/06/21 (水) ~ 2023/06/28 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
当日は開演時刻の19:30に駆け込むため午後から職場で諸々算段をし、「えー今日はもう行っちゃうの薄情だなぁ」と交替要員に言われぬよう、余裕も見せつつやんわり退座を告げ、自転車に乗るや全力疾走(そのためか翌朝通勤時にチェーンが切れた)、目指す電車には乗れたのだが、1分余の遅れのため乗換失敗、手を尽くすも結局下北沢駅着19時28分15秒。劇場へダッシュするも1分超、既に開演後であった。
ドア前に佇むと場内の音楽がやがて大きくなり開幕したらしい。途切れると男女の会話がボソボソと聴こえて来た。始まりが肝心な芝居だろうか・・と受付の方に開演シーンを聞けば、「ネタバレになるのですが」「私、これから観るので知りたいんですが」「(少し考えて)男女が他愛ない会話をしています」精一杯答えてくれて有難う、と言う間はなく中へ案内されると、既に「乗りづらい」会話となっている。が、シチュエーションは明白でコントが成立しそうな設定だ。以前一度だけ観た桃尻犬舞台は「具象に満ちた」セットとお話だったが、今回は過剰を排し、あるいは逆に誇張な道具で「演劇的遊戯」が勝ち、お話の方はやや綱渡りの感覚。予期せぬ二部構成など意表を突く演出、展開からの劇の収束は、やはりコント色が強かった(上演時間も短い)。
楽しみだった俳優では、先日観たゆうめい舞台で独特キャラを演じた鈴鹿氏が、今回でも煮え切らない役どころ(だけの存在なのかどうなのか..)。橋爪女史が関西弁の喋りの場面を締める。飛び道具的なてっぺい氏の飛び具合は芝居の飛び具合と相殺されたような。。
さて冒頭の欠落がカバーされたか否か、だが、じつはこの部分が感想を左右したのではないか?という後味が残ってしまった。そのあたりはネタバレにて。
『[フキョウワ] × 演劇ユニット衝空観』
火曜日のゲキジョウ
in→dependent theatre 1st(大阪府)
2023/06/20 (火) ~ 2023/06/20 (火)公演終了