Hey ばあちゃん!テレビ点けて! 公演情報 Bee×Piiぷろでゅーす「Hey ばあちゃん!テレビ点けて!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    笑わせ泣かせるといった王道のハートフル ヒューマンドラマ。
    また、前説での温め・カーテンコールでの内輪ネタなど、スタッフ・キャストの対応も楽しませようという姿勢が好ましい。

    説明にある「AI化したサチ子、彼女から課せられたミッション『死んでからさせたい100の事』をクリアする」、そのために奮闘する家族や仲間の姿を面白可笑しく描いた物語。勿論AI化したサチ子の様子・動作もコミカルで可愛い。
    映画「死ぬまでにしたい10のこと」という、残りの人生を悔いなく生きる様を描いた感動作があったが、この公演は 逆に死者から生者へ力強く生きてもらうための応援譚だ。中盤までは緩い笑いを誘いながら、後半・ラストにかけて怒涛のような展開、そして悲哀と滋味に感動。思わず涙腺が緩む。

    少しネタバレするが、第一のミッションはガラ携帯からスマホへ替え、LINEが出来るようになること、第二は若者言葉を覚えること といった実に他愛のないもの。

    ミッションの一つ、サチ子を愛している証しとして<変顔><セクシー>そして映画「ローマの休日」に準えた<バーバの休日>という3枚のポスターを貼り…。「ローマの休日」は境遇や時間的制約がある中で、どう結末を迎えるかという興味を惹くが、この物語でも 制約ある中で最後のミッションは、という最大の関心事へグイグイと惹きこむ。この自然な展開が実に心地良い。
    (上演時間1時間40分 途中休憩なし)㊙️ネタバレ

    ネタバレBOX

    舞台美術は田所家のリビングルーム。中央にソファとローテーブル、飾り棚が置かれている。棚の上にカレンダー(5月14日)があるが、場面が変わっても日付は変わらないことに違和感を持っていたが、ラストにその意味が氷解する。また後景は黒と白といった鯨幕で、サチ子が亡くなり葬儀の日から前に進めていないことを表している。

    妻 サチ子が亡くなり、消沈している夫 治〈オサム〉。そこへAIを駆使して蘇ったサチ子、虫のような触覚を頭につけ、ぎこちない動作で100のミッションを突き付ける。呼び掛けは「Hey サチ子!」、そうしないと反応しない。
    治は不承不承行いだすが、内心では喜々としている。他愛のないミッションだが、何となく生活に関わることが多い。そんな充実した日々、しかし そこへ総務省役人が電波法に抵触している疑いがあると…。
    サチ子(AI)は試行(実験)段階で、彼女が発する電波は謂わば違法状態にある。それがバレるまでに何とか100ミッションをクリアしたい治と家族(長男・長女とその夫、子供<孫>)の思いは叶うのか? 99番目は「もう一度プロポーズしてほしい」、100番目は「私を忘れてほしい」である。

    治は まだ定年前、現役で仕事を続けていたが、すっかりやる気を失くしている。職場の後輩たちも心配し、サチ子の知り合いも応援に駆けつける。登場人物が皆 個性豊かで濃い人たちばかり。特にサチ子(きむらえいこサン)と治(坂内勇気サン)の変顔を含めた表情・演技が物語を面白可笑しく牽引する。そのコメディ・タッチの場面を多く散りばめながら、ラストの感動ミッションへ。その感情を揺さぶる 振幅が半端ない。
    治と総務省の役人たち<譲れない思い>の遣り取り…あなた達の言うことは尤もだが、ミッション遂行は譲れない、一方 役人・上司 曰く 違法は放置できない、しかし 部下は市民の幸せを守りたい、三つ巴のような会話が印象深い。

    自分が亡くなり治が生ける屍状態…私を忘れ、思い出の品々も燃やしてほしい。一人で生活が出来るように鍛え、どうか前を向いて生きて行ってほしい、というのがAIになったサチ子の思い 願いである。治は言う「(いつも)思い出は胸の中にある」と。

    ラスト、ずっと切ない劇中歌が流れ、朱色照明によって燃え上がる品々をイメージさせる、その余韻付が見事。年月の移り変わり…カレンダーが7月22日に変わり、今日も田所家の人々は元気だ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/06/29 18:56

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