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黒星の女

黒星の女

演劇ユニット「みそじん」

吉祥寺シアター(東京都)

2023/06/30 (金) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2023/07/01 (土) 13:00

座席1階

歌あり踊りありの陽気な舞台かと思いきや、ラストでぐっと締める意外にも感じる展開。それぞれ罪を背負って入っている女子刑務所のメンバーたちが、個性豊かに躍動する。いい舞台だった。

刑務所が舞台のはずなのだが、二段ベッドに置かれているアイテムはまるで女子高生の持ち物のようだ。本物の刑務所は私物の持ち込みは制限されているはずだから、設定は少しファンタジーの世界。どんな罪を犯したのかは「言ってはならないことになっている」そうだが、問わず語りに明らかに。スーパーの万引き(常習累犯窃盗)、覚醒剤…。どうして実刑になったのかが、舞台が進むにつれて明らかにされる。
おもしろいのはこの受刑者たちの人間関係だ。刑務所のイメージは牢名主がいて新入りをいびったり、という感じだが、ここでは仲良しグループのように友情の筋が通っている。なぜか房対抗ダンス大会をやるという話になって、ファンタジーの色は濃くなっていく。
だが、それぞれが背負った罪の背景には社会の不条理が詰まっていてハッとさせられる。罪人と言うには無邪気な振る舞いも、その裏にあるものとして闇深い事情、思いが表現される。

個性的なメンバーによる少数精鋭。カーテンコールの後思わず涙ぐんだ主宰の大石ともこに声援が飛んだ。コロナ禍で延期になった今作の経緯が胸に去来したのだろうか。それとも…。

SHINOBI SASUKE

SHINOBI SASUKE

劇団そとばこまち

ABCホール (大阪府)

2023/07/01 (土) ~ 2023/07/03 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/07/01 (土)

いつもながらのワクワクドキドキのオープニングでした。女優さんだけで戦国時代を演じられていましたが、迫力のあるお芝居でした。中でも、服部半蔵役の殺陣と徳川家康役の演技は素晴らしかったです。

ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/06/30 (金) 19:00

130分。休憩なし。

放課後、重ね着、□△

放課後、重ね着、□△

チリアクターズ

千本桜ホール(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/06/30 (金) 14:00

110分。休憩なし。

ホールドミーおよしお

ホールドミーおよしお

オフィスマウンテン

こまばアゴラ劇場(東京都)

2023/06/28 (水) ~ 2023/07/09 (日)公演終了

実演鑑賞

鑑賞日2023/07/01 (土) 15:00

初見のユニット。51分。
私が理解できないタイプのパフォーマンス。

Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Bee×Piiぷろでゅーす

新宿スターフィールド(東京都)

2023/06/28 (水) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

大人数でかなりのドタバタコメディーなのですが、なかなかに泣かせてくれるお話でした。

兎、波を走る

兎、波を走る

NODA・MAP

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2023/06/17 (土) ~ 2023/07/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

野田秀樹二年ぶりの新作はいかにも野田らしい不条理劇だが、劇場の空気はむなしい。
素材は北朝鮮の拉致問題。拉致は日本だけでなく、紛争地域でも、極貧国でも、先進国の一部でも現実にある普遍的問題で、現実の社会問題に伴う雑音に臆することなく演劇の素材に選んだのは、さすが日本を代表する劇作家の見識である。かつて木下順二が果たした役割を担おうとしている。ここは本当に偉い!というしかない。たいしたものである。
作りは不条理劇。その点ではすでにピンターが四十年も前に拉致を素材に『バースディ・パーティ』という作品を書いている。ピンターに比すれば、野田は解りやすくこの問題に入っていく。野田演劇らしいメタシアター作りで、こちらの素材は、不思議の国のアリス。母親(松たか子)アリス(多部未華子)物語の入り口の作者に野田秀樹。物語の受け手側に秋山奈津子と大倉孝二。このあたりの布陣は完璧と言って良い当て書きで、この重苦しい物語がずいぶん見やすくなった。こうして物語の中の兎(高橋一生)や母親の不思議な国でのアリス探しと拉致問題を重ねていく。
タイトルから物語を発想したと野田が言っているが、無垢と無知のウサギが、波に乗るというイメージが不条理劇的でもあって成功している。いつもの言葉遊びも控えめながら健在で『妄想』と『もうそう』なるしかない、を掛けたところなどうまい。
しかし、この作家の久しぶりの現実を直接背景にした全力投球も、作者が言うように『作家の無力をこれほど感じることはない』結果になっている。現実には、場合によっては国家間戦争になりかねない問題が、これほど明らかに提示されても観客には伝わらなかった。一夜のスター俳優を並べた大入りの公演の一つとして二十代の女性を主とした観客のお芝居見物にしかならなかったのは「あーあ」というしかないだろう。
いつもは、最後に何度もカーテンコールで嬉々としてみせる野田も、女性客が立ち上がり拍手しているのに今回は数回で出てこなかった。

帝都狂焔物語

帝都狂焔物語

学園座

関西大学・千里山キャンパス内KUシンフォニーホール(大阪府)

2023/07/01 (土) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

満足度★★★★

演出、構成、舞台芸術全て文句なし
唯一時間が…この劇団はタイムキープが難あり 次がある人には読みきれない 今回も終わってすぐに出て…
関西学生演劇のTopと言っても過言ではない

黒星の女

黒星の女

演劇ユニット「みそじん」

吉祥寺シアター(東京都)

2023/06/30 (金) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

結構、良かったです。
ストーリーも良かったし、動きがあるお芝居で飽きなかったです。

幸せはいつも小さくて東京はそれよりも大きい

幸せはいつも小さくて東京はそれよりも大きい

中央大学第二演劇研究会

APOCシアター(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「崩壊していく共同生活と『監禁の連鎖』を巡る濃厚な密室劇。狂っていく隣人を誰も止められない現代の恐怖をじっくりとあぶり出す」という説明に興味を持ったが、その芯となるところを十分に表出できたのだろうか。何となく中途半端なようで物足りなさがあった。
今 この作品を上演する意味は、そしてアマヤドリ(脚本:広田淳一氏)がいうところの<現代日本>が見えてくるのか。
(上演時間2時間 途中休憩なし)

ネタバレBOX

舞台美術は、会場を斜めに使用し、奥上部にスクリーン、その下にソファ。変形机(テーブル)、色違いの空間(衝立壁・床)をもって個々人の部屋を表す。何となくスタイリッシュな印象だ。

冒頭と最後は人が直線的に交差する動き、それは大都会 東京における人々の忙しく動き回る様子を表しているのか。続いて登場人物全員によるダンスパフォーマンスは何を表現しているのだろうか?意地悪な見方をすれば、上演前のウォーミングアップ、最後の同じようなパフォーマンスはクールダウンのよう。仮に役者紹介であるならば、役名を表すモノがほしい。パフォーマンスがなければ、スッーと大都会(雰囲気)の物語へ入って行けた。

キーワードは【監禁/密室劇】さらに【孤独】が加えられるのでは。
小田ユキヒト、星野カズユキ、仁村ヒトミの三人は、都内で一軒家を借りてルームシェアをしている。星野がある日、長期監禁から逃亡してきたという女、三谷クミコを保護する。星野から彼女を警察に連れて行くよう頼まれた小田は、何となく自分でクミコを守ることを決意し偏愛していく。そうして始まった奇妙な4人暮らしは段々と歪みを見せはじめ…… というのが大筋。小田は、司法試験を諦めて会社員(正社員)として働く。星野は小田の中学時代のハンドボール部の先輩 で、今は居酒屋でバイト。ヒトミも同じ居酒屋で働いており同僚にあたる。他の登場人物との相関関係も、このハンドボール部と居酒屋繋がりである。

初演は2009年…当時は新型インフルの感染が拡大し、経済的にも厳しい状況下(世界同時不況)にあったと思う。全く同じとは言わないが、今のコロナ感染拡大、物価上昇による経済停滞は似たような環境に思える。コロナ禍を例にとれば、ソーシャルディスタンスという名の下に没対人関係の中で、中学時代の部活仲間が出合い飲食する。その楽しい会話と自由な雰囲気を満喫する。一方、監禁は孤独と不自由を強いる。犯罪か愛の束縛かは微妙なところだが、息苦しさを覚えるのでは。
この二つの場面の意味合いが融合し、自由と不自由といった対比が一つの見所だと思う。が、この演出では別々の(分離した)物語と言うか、取って付けたかのよう。だからこそ、飲み会⇨三人の激論という展開に妙がある。
非日常どころではない監禁とその連鎖の異常性が迫ってこない。また多くの人がいる東京の中で、一人ぐらい行方不明(監禁)になっても という漠然とした不安が感じられないのが憾み。

小田のクミコに対する束縛は「新たな監禁」 の始まりで 、当然、星野とヒトミとの間に軋轢が生じる。二人と狂気していく小田の激情した口論がもう一つの見所。
小田にしてみれば自分が守らなければ、という使命感=偏愛を何故二人は分かってくれないのか。司法試験を受験していたという理論家、しかし理性という扉に隠された心の奥に潜む本性〈束縛欲〉が剥き出しになる。一方、二人にしてみれば得体の知れないクミコを保護する必要性はなく=警察に任せればという相容れない不毛な議論。そしてクミコの携帯電話に掛かってくる前の監禁者との緊迫した会話。今にも小田たちの家に来そうな怖さ。
監禁と密室というシーンは観応えがあった。勿論クミコの内にある思いは明かされることなく、彼女の背景等も謎を残したまま、小田たちの家を出る。

辛口になるが、映画館で偶然に会った中学時代の部活仲間との会話、その後の居酒屋での会話、どちらも一本調子で 大声を張り上げた演技。小田・星野・ヒトミの三人での激論も大声だが、こちらは激高している様子が伝わる。大声=熱演ではないと思うので、場面毎の情感にあった演技が求められる。ラストのピアノは印象付けとして実に効果的であった。
次回公演も楽しみにしております。
黒星の女

黒星の女

演劇ユニット「みそじん」

吉祥寺シアター(東京都)

2023/06/30 (金) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

劇場に入った瞬間「え?女子刑務所の話って書いてあった(東京新聞・演劇パラダイス)と思ったけど。刑務所はドラマや映画でしか知らないけど違うよね」と戸惑うほどの舞台セット。これは女囚たちの妄想でできているのかしら・・・

ネタバレBOX

と思って、終演後ニシオカさんに伺ってみたら、それぞれの人生の背景なんだそうです。
きっと普通の暮らしをしていた頃の好みとか趣味が反映されているのだと思うので、次回もっと近くの席で確かめたいと思います。
確かめたいといえば、まきさんがまどかさんを待つシーン。ついつい緊縛希望のまどかさんを見てしまって、まきさんを見る余裕がなかったのでこちらもどんな表情だったのかちゃんと見てこようと思います。
終演後に演者の皆さんとはまだ会えませんでしたが、ニシオカさんとお話しできて良かったです。コロナ前はこうして感想やら疑問やらをその場で話せて、これが小劇場の魅力よねと思っていたので、少しずつでもそれが戻ってきて嬉しいです。
マリコの神像

マリコの神像

劇団森

早稲田大学学生会館(東京都)

2023/06/30 (金) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2023/06/30 (金) 19:00

早稲田大学公認の劇団森。
今回は花園というか、女子大サークルを観ている様な作品でした。
物語の中心となるのはフランス・リヨン地方のミッション系スクール(寄宿舎ものと呼ばれるそう)。
舞台そのものを額縁のように彩るプロセニアム・アーチが印象的。
視界を少し遮ることで、舞台の奥行を感じさせる工夫が感じられました。
音響も全てクラシック。ピアノやチェンバロの音色が心地よくステージとマッチしていました。

ネタバレBOX

まずチケットの予約が成立してから、お知らせ・行き方・当日変更点など、
決まったことを細かく何通も伝えて下さることに安心感がありました。
観劇する前からチームワークがしっかり出来ていると感じるので好印象。

芝居の内容ですが、開演時に「華麗なる大円舞曲」で華やかさ・盛上を狙うのであれば
8人も板付きがいる訳ですから、メインの台詞以外のキャストはもう少し動きが欲しいかな。
例えば小さい声でもガヤを入れるとか。小芝居を挟んでみても良いですね。
アーチや大道具等が殆ど木材だと思うので、声が吸引されている印象も受けました。

それからステンドガラスに映る影の演出、とても素敵で気に入りましたが
讃美歌312番だったかな?…歌うならもっと魅せた方が良いと思います。
最初から音源を使うのか。全員で影歌するか。
独唱なら今回のようだと自信がないようにしか映らないので、朗々と歌って頂きたいです。

脚本に関しては宝塚のような、女性ならではの詩的な台詞まわし。
哲学的な要素や言葉に品位を持たせている様子が、愛を慈悲深く高貴なものに感じさせます。
その一言一言に含みがあるように感じさせているように考えるけれど、
意外と内容は入ってこなかったです。万人受けは難しく、役者たちも理解して演じきるのは
ちょっとハードルがあるように感じました。まだまだ伸びしろがあると思います。
ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

イマイチ深さを感じなかった。平凡で一面的な印象がぬぐえない。‘監督’のほうを主人公にした物語が観たかった。

Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Hey ばあちゃん!テレビ点けて!

Bee×Piiぷろでゅーす

新宿スターフィールド(東京都)

2023/06/28 (水) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/06/30 (金) 14:00

エンタメ系のお笑い作品だと思って観始めましたが、
サチ子さんの第一声がとても良い声で、芝居にグッと引き込まれました。
声圧のある落ち着いた通る声。劇団の大黒柱ですね。

作品内容はとてもシンプル。説明欄にも記載されているように、
亡くなってしまったサチ子が夫の治の前にロボットとして現れる。
死んでからさせたかった100のコトをミッション形式にして、1つずつ家族や仲間たちと
協力して叶えて行く。それが治のためにもなっていき…あとは乞うご期待!

ネタバレBOX

オープ二ングでは、ダンスときらびやかな照明が物語の期待感を高める。
治とサチ子のテンポ感も観ていて飽きないが、特にサチ子さんの笑かすところ。落とすところ。泣かせるところ。
ロボットだけに表現が入っても役の土台がブレず、常に劇団員たちの中軸として機能している。
夫婦だけで成立して行けそうな濃さに、更にアクの強い脇たちが物語を固めます。
小劇場で比較的響きやすい会場に、若手俳優の張った声が少々ミスマッチだったかな。
張るところがあるのは勿論良いのですが、配役作りが殆ど同じように感じました。ノリが似ているというか。
サブキャストも誰が演じても同じようにならない繊細さが、芝居の中でもう少し感じられるともっと良いです。

最後にこの日は、主題歌を歌っている相澤香純さんのミニライブも入るラッキーデーでした。
相澤さんのことも初めて知りましたが、話し声は結構強い胸声なのに、歌声は頭声多めの柔らかい声質。
笑って泣いて、ほっこりしたてんこ盛りの内容だったので、5つ星付けさせて頂きます。
ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

子供向け番組を超えた深いテーマも盛り込んだウルトラマンシリーズへのオマージュであり、在日・同和・関東大震災の朝鮮人虐殺・同性愛者差別まで、差別問題に果敢に取り組んだ挑戦作である。小劇場としては間口の広いシアタートラムの舞台を、上手から順に、企画会議室、撮影スタジオ、書斎と使い分ける。

ユーバーマンシリーズの「老人と少年」(帰ってきたウルトラマンの「怪獣使いと少年」がモデル)を下敷きに、脚本家は差別をテーマに、善意の宇宙人が人々から迫害を受ける「空から来た男」を書く。それだけなら「社会的深みのあるエンタメ」に終わるが、当事者でもないのに差別をネタにする欺瞞性にも十分自覚的なところが一味違う。

場面転換や物語進行にもたつきを感じるところも少々あったが、後半、テーマと趣向がぐんぐんかみ合っていく。作り手たちの舞台裏と、カメラの前で(あるいはけいこで)演じるドラマがうまくかみ合って、差別の愚かさと、それを超えていく希望の片りんを見せてくれた。

ネタバレBOX

「差別」という論争的問題を扱うことに、テレビ局から横やりがはいるが、監督は自分の進退を条件に、脚本通り撮影する。「大人になれ」「局が言うなら仕方がない」という常識的な対応から、議論の末、骨を見せる強行突破路線に変わるくだりが見どころ。朝鮮人虐殺を思わせる、川原の襲撃シーン。そして最後の死んだ宇宙人に、優しかったパン屋の娘の幻が寄り添い、満天に星が輝くラスト(これは甘すぎるとして、監督が却下したので、脚本家の脳内映像)まで、見せ場がいくつもある舞台だった。
ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

アンジーの『天井裏から愛を込めて』を彷彿とさせるタイトル。アンジーはメルダックでデビューしたのだが、先に同事務所でデビューし大ブレイクしていたブルーハーツを踏襲させられた。本来は「頑張れロック」路線ではなかっただけに非常に不運。実際は『たま』系の独自世界のアーティストだった筈。

小学生の頃、再放送の『帰ってきたウルトラマン』で観た『怪獣使いと少年』。滅茶苦茶衝撃を受けた。灰色の工業地帯で繰り広げられる全く救いのない物語。プロレタリア文学のような目線。『帰ってきたウルトラマン』はスモッグのどんよりとしたイメージで、ディストピアの日本の姿を突き付ける(ただそれ以後観ていないので記憶による美化はあると思う)。後年、切通理作氏のデビュー作『怪獣使いと少年』を読んだ時、凄く腑に落ちた。

巨大変身ヒーローモノが1990年に作られている世界線。(実際は『ウルトラマン80』放送終了の1981年から1996年の『ウルトラマンティガ』までは空白)。
テーマは『差別』。誰にも正解の見えない永遠の難問。TV番組『ワンダーマン』にて、伝説の『怪獣使いと少年』に挑もうという若き脚本家の心意気。子供向けTVドラマで一体何処まで本質を描けるのだろうか?

主人公の脚本家は伊藤白馬氏。特撮モノに初挑戦。
大学時代の先輩で『ワンダーマン』のメイン監督は岡本篤氏。木下惠介っぽい清潔感。
特撮監督は青木柳葉魚氏。
助監督は清水緑さん。
主演のワンダーマン役は浅井伸治氏。ペナルティのワッキーを思わせる役作り。
大物ゲスト枠は橋本マナミさん。気負い過ぎて少し固かった。
宇宙人(コクト星人?)役の足立英(すぐる)氏の振り幅が素晴らしい。
MVPは東特プロのプロデューサーの林竜三氏とTV局から出向しているプロデューサーの緒方晋(すすむ)氏。ここのリアリティがドラマの厚み。社会で生活している人間の重みがあってこそ、ただの絵空事のファンタジーにはしない。
是非、観に行って頂きたい。

ネタバレBOX

ネタ元
①ウルトラマン『故郷は地球』
事故により遠い惑星で見捨てられた宇宙飛行士ジャミラは棲星怪獣ジャミラと变化、復讐の一念で地球に舞い戻る。
②ウルトラセブン『超兵器R1号』
惑星攻撃用超兵器R1号を無生物のギエロン星にて実験。成功に終わり惑星は粉々に。しかし実はそこに居住していたギエロン星獣は復讐の為、地球を襲う。
③ウルトラセブン『ノンマルトの使者』
古代、人類より先に地球で繁栄していた先住民ノンマルトは人類の侵略に地上を追われ、海底都市を築いて静かに暮らしてきた。海底開発が進む中、抵抗してきた海底都市を地球人は全滅させる。
④帰ってきたウルトラマン『怪獣使いと少年』
川崎の工業地帯、河川敷の廃工場で暮らす老人(メイツ星人)とアイヌの少年。かつて地球の気象調査にやって来たメイツ星人だったが、汚染された地球の環境に耐え切れず重病を患っている。強大な念動力を持ち、公害で畸形化した怪物ムルチを地底に封印している。気味の悪い余所者がのさばっていることに不快感を感じた地元民は暴力で排除に出る。群衆にリンチされる少年を庇ったメイツ星人は惨殺される。それと共に封印の解けた怪物ムルチが暴れ出す。人々は泣き喚いてウルトラマンに助けを求めた。
モデルになった史実は関東大震災後に起きた朝鮮人大虐殺。判明しているだけで、2613名の朝鮮人が虐殺されている。

〈今作の展開〉
暴徒と化した群衆は宇宙人(足立英氏)を襲撃する。心優しいパン屋の店員、橋本マナミさんは誤解を解こうと必死に止めに入る。だがどうにもならない。橋本マナミさんは惨殺されるも、死の間際に想いを伝える。「(他者を)怖がらないで。私も怖がらないから。」
差別の本質は恐怖であることを告げる。恐怖を乗り越えた先に解り合える未来が生まれることを。
(舞台上をセピア色一色に染めた照明が効果的)。

この後の展開をどうするかで二転三転する。

〈最終的に作品化されたもの〉
一人自らの寿命が尽きるまでただただ生き続けた宇宙人は死の訪れと共に彼女との再会を果たす。

もし自分が小学生でこのTV放送を観ていたとしたら腑に落ちない気がする。人間が衝撃を受けるのは顔を背けたくなる程のリアル。綺麗な作り話ではない。『デビルマン』の牧村美樹邸の魔女狩り、『カムイ伝』の正助への残酷なる私刑、『ブッダ』のタッタの蜂起。理屈や綺麗事では納得出来ない人間の動物としての本能。『デビルマン』では怒りに狂った不動明が人間達を皆殺しにした。「俺は悪魔の体を手に入れたが人間の心を失わなかった。お前達は人間の体を持ちながら悪魔になったんだぞ!これが俺が命懸けで守ろうとした人間の正体か!?」
実はここが重要な点。人間の“何”を守ろうとしているのか?

監督が同性愛者であることはすぐに気が付いた。差別を受けることに敏感な弱者である少数派がこの手の話題に大声を出せない事。

何が正解なのか、未だに解らない。多分、正解は時間の経過。時間が経って何もかもが消えて無くなるだろう。どんな結末を自分は求めていたのか?
アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」【7月6日昼公演中止・7月7日~9日まで映像公演実施】

アンカル「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」【7月6日昼公演中止・7月7日~9日まで映像公演実施】

モダンスイマーズ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

舞台は中学3年のクラス。主役の姉妹は二卵性双生児で父は日本人だが母は在日朝鮮人であり、姉妹が生まれて1年で両親は離婚した。それ以来、姉のソジン(瑞生桜子)は母と、妹のゲン(藤松祥子)は父と暮らしていたのだが父が亡くなってゲンが二人と同居することになりソジンのクラスに転入してくる。

という最初の設定だけで重さに押しつぶされそう。さらに妹は転校してきてすぐに父親の形見の自転車を盗まれる。大事なものだから一緒に探してくれと頼む妹に姉は取り付く島もなく断る。ゲンはクラスの不良が犯人だと思い危険な裏山にまで出かけるのだが…。ここで更に重りが大量に追加される。

実は2年前の公演も観たのだが重さに耐え切れず休憩時間に帰って来てしまった。重さといっても作られた重さと感じたのだ。当時はまだ演劇のわざとらしさへの耐性が低かった。そして今回、心の準備はできているので再度の挑戦である。その結果はちょっと欲張りすぎて散漫ではあるが結構感動的じゃないか、ということになった。

登場人物は生徒24人と担任、副担任それに用務員のおばさんの計27人である。その人々が単独あるいは2人から4人の塊になって恋愛、部活、子育てなどでそれぞれの1年間のストーリーを紡いで行く。それらは独自の世界を持っていて見ごたえがある。さらには全員によるダンスもあったりして、姉妹のことを忘れたころソジンがゲンに「生まれて初めて母親に逆らって二人の前から消える」ことを宣言する。そしてソジンのいない卒業式へ…

ダンスが素晴らしくて星一つ増しとなった。しかしこのダンス、キレッキレの人もモタモタの人もなく、かといって全員の動きをピタリと合わせようというのでもなく、個性を出しつつほどほどに調和させるというこの劇全体の作りがそのまま出ていたように感じた。

ラ・ボエーム

ラ・ボエーム

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2023/06/28 (水) ~ 2023/07/08 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

雪の中、ロドルフォ(スティーヴン・コステロ)とミミ(アレッサンドラ・マリアネッリ)が「春になったら別れよう」と歌う第3幕がよかった。幕開けの冒頭のスタッカート的メロディーから、幕切れのアリアまで実に緊密で、飽きない。シリアスなミミたち二人だけでなく、ムゼッタとマルチェッロの滑稽味ある痴話げんかとの四重唱になっているのも巧みなつくりだ。ただ、一緒に見た芝居友達とも話したが、この二人がなぜ別れるのか、なぜ春までそれを延ばすのか、という整合性は突っ込みどころ満載。

テノールのコステロがよかった(らしい)。1幕の自己紹介の歌「冷たき手を」からブラボーが飛んでいた。それにたいして、マリアネッリの「私はミミ」は、高温の伸びや迫力が物足りない。ブラボーもなかった。しかし、4幕の最後の二重唱はしっかり決めてきた。
ミミより、第二幕のムゼッタのヴァアレンティーナ・マストランジェロが魅せた。「私が街を歩くと」は素晴らしい歌声で(青いサテンドレスに黒い毛皮のコートの派手な衣装も相まって)圧巻だった。
4幕は「外套のうた」の渋い輝きに開眼させられた。フランチェスコ・レオーネのバリトンに、ブラボーが飛んだ。「ポケットには、思想家や文豪が洞窟に遊びに来た」など歌詞もいい。ミミの臨終という悲しいしめっぽい場面に、滑稽味ある内容でその場の気分を和らげながら、、シリアスな雰囲気をぎりぎり壊さない絶妙なバランスがすばらしい。

ミミが死んだあと、しばらくはロドルフォが気付かない。観客はじりじりし、しばしのためのあと、一気に管弦楽も歌も最後のクライマックスを盛り上げる、この「間」も素晴らしい。

舞台「いま、会いにゆきます」

舞台「いま、会いにゆきます」

Sh!nkiяo

阿倍野区民センター・大ホール(大阪府)

2023/06/30 (金) ~ 2023/07/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

映画(2D)→本(1D)→今回(3D)の順で体験したが、今回がやはりナンバーワン 最後の高校生男子が重要なセリフをカンダのには残念だったが、愛嬌と言うことで…
隣のオヤジが終始船をこいだり、寝息をたてていたことも集中力を欠いたが、舞台の人は何も悪くない
寝るくらいなら最初から来るな⚡家で寝とけと言いたかったが…😰
もう一度観たいです Tシャツ買いました‼️

この雨やむとき

この雨やむとき

海外戯曲をやってみる会

雑遊(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/09 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

#井上幸太郎 #大沼百合子
#斉藤麻衣子 #相樂孝仁
#田中里衣 #松本みゆき
#三宅勝 #山森信太郎
(敬称略)
魚、スープ、帽子……さまざまなバトンを渡し、繋ぎ、紡ぐルーツ。語らないこと、語れないこと……知りたいこと、知らせたくないこと……守りたいモノ、守り得ないモノ。
とても興味深い作品。
斉藤麻衣子さんが滲ませた葛藤がわたしにとってハイライトだった。
松本みゆきさんがはめる最後のピースで世界が終わりを告げる。目眩がする。
最後の晩餐のような最初の晩餐。田中里衣さんの眼差しは神を信じない者にもマリアに見えただろう。彼女の瞳に映る者への慈しみが、穏やかで柔らかなその表情から溢れた。美しかった。
逆に大沼百合子さんが見せた絶望の闇の深さに、どうしようもない人間の愚かさを思い知る。
井上幸太郎さんが渡す最後のバトンが、すべてを浄化させる扉の鍵であることを祈る。
劇場空間の使い方も興味深かった。

このページのQRコードです。

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