満足度★★★★
「ドレッサー」作者による本邦初演作品。戦時下で芸術家の葛藤と顛末を描く良心作。
「ドレッサー」作者による作品で、本邦初演。
カトケンの作品選びの選択眼は、常に鋭くて、
毎回良質の翻訳作品を提供してくれます。
そして、カトケンの芝居は常に安心して観れます。
このことは観客が作品のテーマにより集中できる
ということです。
戦時下における芸術家の苦悩、
すべてを犠牲にしても表現の自由のために戦うのか、
家族を守るために体制に寄りそうのか。
後世において、その時の判断を問い正すことができる者は
いるのだろうか。
導入からは、二人の芸術家の出会いと作品を作り出す
コラボレーションの喜びを生き生きとユーモラスに描き、
中盤からはナチの影との戦いと顛末を描く。
カトケンは音楽家として何とか生き抜こうとする姿を、
福井貴一はその逆に追いつめられ破滅していく姿を
ウェットさはない二人の大人の友情を背景に対照的に
演じている。
加藤忍(カトケンの劇団員ですが娘ではない)は静かに
影となり支える妻を、塩田朋子はより強く支える妻を
地味ではあっても的確に演じてます。
そして、唯一の悪役、ナチ党員を演じた加藤義宗
(こちらはカトケンの息子さん)の登場は、
2シーンのみながら冷静な怖さを感じました。
カーテンコールでは、演出の鵜山仁が歌うシュトラウス
の録音が披露されました。これもなかなか見事でした。