たゆたう、もえる 公演情報 マームとジプシー「たゆたう、もえる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    物凄い!渾身の一作!
    こんなに感動したのは今年になって初めてかもしれない。しかしこの感動は爆発的なものではない。あの「F」のようなじんわり感じる繊細さだ。物語は優しげで温かみがあって日向でうずくまる猫のいる家を思い起こさせる。だけれどもその家族の風景は誰もが記憶の中にある一コマとして持っているものだと思う。だから・・・、確実にワタクシの記憶にリンクして、心に突き刺さった。間違いなく今年の一押しだ。登場する全てのキャストが秀逸なのも作品を盛り上げた。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    序盤、ある家族のちっさい姉妹らのシーンから始まる。あさ(ゆうの姉)、ゆう、しんやの3人兄弟の風景。そこに泊まりに来たななちゃんや同級生らが絡む。これらのシーンが実に懐かしく可愛らしい描写だ。

    これらに幼い頃のゆうの心の動きが加わる。物事をはっきり表現するあさ。お姉ちゃんとしての自覚が芽生え全てを仕切りたがるあさ。一方で弟の面倒をちゃんと見ているものの、姉の仕切り方に戸惑いつつ、言いたいことが言えないゆう。この場面でのゆうの心の内が痛いほど分かって切なくなる。ゆうはゆうなりに懸命にそして健気にななちゃんとの微妙な距離を保とうとする。しかし、その中に姉が土足で入ってくると感じてしまうゆう。

    どうしても受け入れることができない、許すことができない理不尽さがゆうの心にびっしり蔓延り、一層ゆうは自分自身を閉じてしまう。その閉じ方が子供ゆえにイジケたり捻くれたりしてしまう。

    これらの家族の風景と近所、同級生らと関わりの描写を時代とともに追っていく手法だが、この見せ方が素晴らしい。序盤に張ったいくつもの複線を角度を変えて同じ場面を何度も魅せる。まるで円形劇場で回転している舞台を観てるような感覚になる。場面場面の、描写と時代の異なったシーンを、複雑に交差させながら、作中に生きる人物たちの情景を同時進行に描く手法だから、一見複雑そうに見えるが物語の進行は単純で解り易い。その手法は撒いた伏線を回収するものではなく、撒いた伏線をパズルのように組み合わせ、また散ばせるような感覚がある。

    だから・・・記憶の断片は常に空中で待機してるような感じだ。

    ちょっと納得できないことや容認できないことが起きるとフラフープに逃げるゆう。自分の胸にわだかまってる重苦しい霧を表現する場面だ。ここでのフラフープがゆうの心の繊細な襞のようにクルクル回って揺れる。愛しいと思った。ゆうも、弟のしんやも、そしてあさも、穏やかな両親も、そうたも、はなも・・・。登場人物の全てに共感できる。

    大人になったそれぞれはいつか自分を振り返り過ごした時間に時代という言葉を冠するときがくる。青の時代があり、そして赤の時代があり、そしてその全てを受け入れる。

    大人になった彼らも家族という新しい形態が出来上がり、それぞれ家族の距離を保ちながらも、両親の介護のシーンも登場する。父さんがよろよろの字で「しなせてください。」と書いた情景に、思わず涙する。そして残された母親の介護の場面でもあさの心意気が見える。今だに独身で8年間も家に寄りつかなかったゆうを気遣うあさと、しんやの描写も素敵だ。ゆうが幼馴染から借りた10万の借財の理由が、堕胎する為と解った瞬間の「上手に生きられないゆう」を思うとなんだか、ズシン!と突き刺さる。

    「いつでも帰っておいで。大丈夫だから。待ってるから。」とゆうに伝えるあさの言葉も素敵だ。

    ゆうの同級生、しのちゃんが登場した時には殺されるかと思ったくらい爆笑した。何あれ?(苦笑!)パンツのお尻のほっぺたに何やら貼り付いてるもの・・、そして人形をおぶったしのちゃん。もう、ワタクシ、理性という線がプッツリ切れてしまって、笑いを堪えようとすればするほど可笑しくて・・、どーしようもなく可笑しくて、とうとう切れた!笑

    観終わった後、胸が温かい甘水に満たされたようなこころもちになった。そしてこの素敵な物語をいったいどうやって表現したらいいのか、なんだかとっても重要な気がして何回も消しては書いたけれど、まあ、ワタクシの表現能力はこんなものなのです。素晴らしい!ってことだけ解ってもらえたら嬉しいのだけれど・・。

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    2010/02/15 15:52

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  • あきら>
    ワタクシ、ものすっごく好みの舞台でした。序盤の姉妹のあのゆるゆる感から一転して姉との距離を徐々に離していくゆうの心理状態は観ていて切なくなったほど。
    何かが胸に突き刺さって、その刺さったものがじわじわーっと膨張していくような感覚になりました。
    そんな場面をほぐすように登場するしのちゃんの絶妙なタイミングはこちらの感情の振れ幅を見透かしてるようで、その点でも秀逸でした。すんばらしい~。。

    2010/02/18 17:30

    私のほうにコメントありがとうございました。

    良かったですよね、この舞台!

    同じものを観て、同じように感じても、表現方法や微妙な感じ方の違いがあるので、ほかの方のレビューを読むのは、私も楽しいです。

    >フラフープに逃げるゆう

    確かにフラフープというのが、ひとつのミソでしたね。

    >ゆうの同級生、しのちゃん

    「お相撲が見たい」というのは、笑わせすぎでした(笑)。

    2010/02/18 07:51

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