満足度★★★
ハツビロコウ版とはずいぶん違うなあというのが第一の感想である。医者一人をとっても今作の医者は酒を飲んでもしっかりした態度であった。ハツビロコウ版では「酒に飲まれている/世の中に斜に構えている」度合いが強く駄目な人間と私は感じた。
2つの版を観た結論は、「寒花」という作品は、良く言っても安重根の収監と死刑執行という事実からインスパイアされたファンタジーであり、悪く言えば注目度の高い安重根を客寄せに使い実際は自分の好きなことを描いただけのものである。これを観て安重根について何かを語ることは止めた方が良いだろう。
歴史的事実により近いことを知りたいと思ったらウィキペディアの「安重根」の項目を読んだ方が1,000倍もためになる。そこには弟たちが面会に来たことが書かれている。「寒花」では家族の面会はなかったことになっていたがどうしてそんな嘘の設定にしたのか理解不能である。演劇なんてそんなものなのさとつい斜に構えてみたくなるキョウコノゴロデアル。まあこの作品も「リチャード3世」なんかと同じ態度で観るべきなのだろう。歴史的事実は別にして、演劇としては長時間にもかかわらず飽きずに観ることができた。